マーケットトレンド 2012年:政治的な区切りの到来は 経済のサポート要因となるか グローバルマーケッツ本部 エリアマーケッツ部 アナリスト 藤田 武 Ⅰ 2012年は政治的な区切りの年 2012年は、08年に続く「4年に1度の選挙 南北朝鮮について、次のようなシナリオが考え られると主張しています。まず、中台関係を見 ると、台湾で12年1月には総統選挙があり、こ の当たり年」となります。08年は、ロシア、台 こで現職の馬英九総統が再選されたとします。 湾、米国などの選挙が重なりましたが、12年 台湾総統の任期は2期8年ですから、この瞬間 はこれに加えて、5年に1度の中国共産党大会 の彼は「怖いものなし」となります。他方、中 (総書記が胡錦濤から習近平へ) 、フランス大統 国では胡錦濤国家主席の総書記としての任期が、 領選挙(サルコジ再選?) 、韓国大統領選挙(ポ 12年秋の党大会で切れます。こちらは別の意 スト李明博)が重なることになります。この結 味で、「歴史に名を残したい」という強烈な願 果、国連常任理事国5カ国中、英国を除く4カ国 望を持っているとみられます。そこで、台湾総 の指導者が変わり得る年となります。また、12年 統選から中国共産党大会が行われるまでの約半 は金日成主席の生誕100年に当たり、北朝鮮で 年の間に、両者が「国共合作※」に打って出る は、このタイミングに金正日総書記から金正恩 のではないか、と観測されます。 イ ミョンバク キムイルソン ジョンイル ジョンウン への代替わりが行われるのではないかと、うわ 同様のことは、南北朝鮮の指導者交代にも当 さされています。つまり、東アジアにおいて中 国、台湾、韓国、北朝鮮の指導者が総入れ替えと なる可能性があり、その過程で相当に、ややこ しい事態が起きても不思議ではありません。 (<表1>参照) Ⅱ 東アジアでのシナリオ 双日総合研究所の吉崎達彦氏は、中台関係、 •表1 2012年の主要な政治イベント 米国 大統領選挙 ロシア 大統領選挙 11月 3月 中国 第18回 中国共産党大会 秋ごろ 台湾 総統選挙 韓国 大統領選挙 1月 12月 北朝鮮 第7回 朝鮮労働党大会 未定 フランス 大統領選挙 未定 ※ 中国国民党と中国共産党の間に結ばれる協力関係。 「合作」は協力関係を意味します。過去、1924~27年と、 1937~45年の2度にわたり結ばれました。 16 情報センサー Vol.67 January 2012 •図1 世界的に「政治の季節」には経済が加速しやすい 世界政治指導者選出インデックス(右軸) 世界のGDP成長率 (%) 45 6.0 40 5.0 35 4.0 30 3.0 25 リーマンショック 2.0 20 15 1.0 10 0.0 5 −1.0 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 0 2013(年) (注) 「世界政治指導者選出インデックス」は、主要国(米国、ドイツ、フランス、英国、中国、ロシア、韓国)の政治指導者選出時(も しくは就任時)に1、それ以外には0を、各国GDPの世界GDPに占めるシェアに乗じて加算したもの 出典:IMF、Haver analytics、各国ウェブサイトなどから大和総研作成 てはまります。韓国大統領は「任期5年、1期の 産(GDP)」が、世界のGDPに占める割合を計 み」のため、任期が3年を超えると一気にレー 算したものです。このインデックス値が高い年 ムダック化が進みます。これに合わせて、北朝 は、世界のGDP成長率も相対的に高く推移し 鮮は軍事的挑発も含めて揺さぶりをかけてくる 。これは、政治家 てきました(<図1>参照) 可能性が高いと思われます。何しろ北朝鮮では、 が選挙の前に大盤振る舞いの景気対策を打ち、 「代替わり」を成功させるためには軍を掌握し 景気を加速させる傾向があるからでしょうか。 なければならず、そのためには国内的に軍事的 グローバル経済を見ると、足元ではユーロ危 成果をアピールしたいという、近隣国にとって 機の収束が見えず、新興国の実体経済も減速の は誠に迷惑な「都合」があるためです。つまり、 兆しが見えてきていますが、政治的には12年 10年11月の延坪島砲撃事件に続き、朝鮮半島に はサポート材料が多いのではないかと思います。 ヨンピョン ド おいて再度、緊張が高まるリスクがあるのです。 Ⅲ 経済的にはサポート要因か 一方で、 「政治の季節」においては、経済が 世界的に加速しやすいという主張があります <お問い合わせ先> グローバルマーケッツ本部 エリアマーケッツ部 E-mail:[email protected] (大和総研 熊谷亮丸氏)。熊谷氏の算出した 「世界政治指導者選出インデックス」は、 「世 界の主要国で、その年に国政選挙等が行われ 政治指導者交代の可能性がある国の国内総生 情報センサー Vol.67 January 2012 17
© Copyright 2024 ExpyDoc