カラオケ装置のリース業者の共同不法行為責任の成否 - 北海道大学

カラオケ装置のリース業者の共同不法行為責任の成否−ナイトパブ G7 事件
田 村 善 之
最高裁平成 13 年 3 月 2 日第二小法廷判決
〔著作権侵害差止等請求事件,最高裁平成 12(受)222,破棄自判〕
民集 55 巻 2 号 185 頁,判時 1744 号 108 頁,判タ 1058 号 107 頁
〔事実〕
X(日本音楽著作権協会:JASRAC)は,著作権に関する仲介業務をなす許可を受けた音
楽著作権仲介団体である。被告Y1 とY2 は,Y3 からリースされたカラオケ装置を「ナイトパブ
G7」「パブハウスニューパートナー」に設置し,これを操作してXの管理著作物を演奏,上映し,
顧客や従業員に歌唱させていた。Xが著作権侵害を理由に,Y1,Y2に対し,カラオケ装置を
利用して演奏,上映することの差止め,カラオケ装置の撤去,そしてY1,Y2,Y3に対し損害賠
償を請求して,本訴に及んだ。
一審判決(水戸地判平成 11.4.14 参照民集 55 巻 2 号 247 頁)は原告の請求を一部認容。
原被告ともに控訴した。控訴審判決(東京高判平成 11.11.29 参照民集 55 巻 2 号 266 頁)は,
カラオケ店がカラオケ装置の使用禁止等の仮処分命令の執行を受けたことを認識しながらカ
ラオケ装置を再度リースした行為については,カラオケ店がその後も使用許諾契約を締結し
ない可能性があることを十分に予見できたということを理由に,リース業者の共同不法行為責
任を認めたが,それより以前,当初のリース契約締結時においては,カラオケ店にJASRAC
から使用許諾を受けるよう説明すれば足り,それ以上に実際に使用許諾契約を締結したか
否かということを確認しなかったとしても,責任を負うことはない旨を説く。そして,本件のY3は,
リース契約を締結する際,注意記載のある契約書面を使用し,Xとの著作物使用許諾契約に
ついて口頭でも説明しており,締結時および締結後もY1がXの著作権を侵害し仮処分命令
の執行を受けたことを知るに至るまでの間は,許諾契約を締結していない可能性を疑わせる
ような特段の事情があったとは認められないので,Y3に注意義務違反はない。しかし,仮処
分の事実を知ったあとは,特段の事情があり,Xとのトラブルを責任をもって解決し迷惑はか
けない旨のY1の誓約を軽信し,漫然とカラオケ装置を再度リースした行為には過失が認めら
れる,と判示した。
Y3に対する請求に関してXが上告。
〔判旨〕
破棄自判。
1 カラオケ装置のリース業者が負担すべき注意義務について。
「カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該
1
装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用さ
れるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著
作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者と
の間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を
引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である。けだし,(1)カラオケ装
置により上映又は演奏される音楽著作物の大部分が著作権の対象であることに鑑みれば,
カラオケ装置は,当該音楽著作物の著作権者の許諾がない限り一般的にカラオケ装置利用
店の経営者による前記 1 の著作権侵害を生じさせる蓋然性の高い装置ということができること,
(2)著作権侵害は刑罰法規にも触れる犯罪行為であること(著作権法 119 条以下),(3)カラオ
ケ装置のリース業者は,このように著作権侵害の蓋然性の高いカラオケ装置を賃貸に供する
ことによって営業上の利益を得ているものであること,(4)一般にカラオケ装置利用店の経営
者が著作物使用許諾契約を締結する率が必ずしも高くないことは公知の事実であって,カラ
オケ装置のリース業者としては,リース契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結し又は申
込みをしたことが確認できない限り,著作権侵害が行われる蓋然性を予見すべきものである
こと,(5)カラオケ装置のリース業者は,著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否
かを容易に確認することができ,これによって著作権侵害回避のための措置を講ずることが
可能であることを併せ考えれば,上記注意義務を肯定すべきだからである。」
2 本件への当てはめについて。
「これを本件についてみるに,A が本件管理著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見
せ又は聞かせるためにカラオケ装置を使用するものであることは明らかであるから,被上告人
は,本件リース契約に基づきカラオケ装置を引き渡すに際し,著作物使用許諾契約の締結
又は申込みをしたことを確認する措置を講じて A らによる著作権侵害が行われることを未然
に防止すべき注意義務を負っていたにもかかわらず,被上告人は,A に対し,上告人との間
で著作物使用許諾契約を締結するよう告知したのみで,著作物使用許諾契約の締結又は申
込みをしたことを確認することなく,漫然と同人にカラオケ装置を引き渡したものであって,前
記条理上の注意義務に違反したものである。それにより A らの著作権侵害が行なわれたもの
であるから,被上告人の上記注意義務の懈怠と A らの著作権侵害による上告人の損害との
間には相当因果関係があるものといわざるを得ない。」
そのうえで,本判決は,本件各店舗の著作物の使用について受けるべき金銭の額(X の著
作物使用料認可規程に基づいて一審判決,原判決が認定した額に基づいて算定された)の
限度で,X の Y に対する賠償請求を認容した。
〔評釈〕
1 本件は,カラオケ装置のリース業者にリース契約の相手方であるカラオケ店が働いた著
作権侵害行為について共同不法行為責任を負うのはいつの時点からか,ということが問題と
2
なった事件である。原判決のような取扱いは,カラオケ装置を用いた無断演奏や上映の横行
に対し,著作権の実効的な救済を困難とするものであって,以下,敷衍するように疑問を覚え
ざるを得ず(1),これを破棄した最高裁は穏当な判断を示したものといえよう。
ちなみに,本判決が,カラオケ店におけるカラオケ装置を利用した上映,演奏,歌唱につ
いてカラオケ店に著作権侵害行為を認めた点は,最判 63.3.15 民集 42 巻 3 号 199 頁[クラ
ブ・キャッツアイ](2)を踏襲するものである。もっとも,本件で問題となったカラオケの利用方法
は,最判で問題となった録音テープの再生ではなく,レーザーディスク・カラオケや通信カラ
オケによるものが含まれているが(すでに先例として,大阪地決平成 9.12.12 判時 1625 号 101
頁[カラオケルーム・ネットワーク]),客の歌唱をもって店による歌唱と同視する最判の説示の
射程はこれらのものにも及ぶと考えるべきであり,その点に関し本判決は特に目新しい説示
をなしたわけではない。ただ,動画の再生を伴うレーザーディスク・カラオケを再生すると,侵
害される権利の対象が演奏権から上映権に変わる点(すでに,大阪地判平成 6.3.17 知裁集
29 巻 1 号 230 頁参照[魅留来一審](3),大阪高判平成 9.2.27 知裁集 29 巻 1 号 213 頁[同二
審],大阪地判平成 6.4.12 判時 1496 号 38 頁[大阪カラオケスナック刑事],東京地判平成
10.8.27 知裁集 30 巻 3 号 478 頁[ビッグエコー上尾店一審],東京高判平成 11.7.13 判時 1696
号 137 頁[同二審])が最判[クラブ・キャッツアイ]と異なるに過ぎない。また,録音テープの再
生については,著作権法附則 14 条(1999 年改正で削除された),旧著作権法 30 条 1 項 8
号により著作権侵害が否定されることになるのではないか,ということが議論されていたが(4),
本件のように動画の再生を伴う上映の場合や,送信を受信して演奏する場合は,1999 年改
正前附則 14 条や旧著作権法 30 条 1 項 8 号の対象外であると解される(5)。この点は,本件で
は争点になっていないので,これ以上,言及しない。また,カラオケ装置の撤去が認められる
かという論点(本判決は肯定)についても,別の機会に論じたことがある(6)。したがって,本評
釈ではもっぱらリース業者の共同不法行為責任の成否に議論の焦点を絞ることにする。
2 カラオケ装置のリース業者が,カラオケ店の著作権侵害行為を幇助した者として共同不
法行為責任を負うことを認めた先例としては,前掲大阪地判[魅留来一審],前掲大阪高判
[同控訴審]がある(もっとも,控訴審では既に損害賠償債務を弁済したことが認められており,
控訴審判決の結論は請求棄却)。特に,その控訴審判決は(傍論ながら)「①……リース契約
を締結……する際,……被控訴人(評者注:JASRAC)との間で著作物使用許諾契約締結す
ることが必要であることを伝え,これを周知徹底させて契約を締結したり,②契約締結後も随
時右使用許諾契約締結の有無を調査確認した上,未だ許諾契約締結に至っていない場合
には,速やかに被控訴人との間の許諾契約の締結に努めるよう促すべき注意義務があり,③
さらに,ユーザーがどうしてもこれに応じない場合には,リース契約の解消も検討し本件装置
の引き揚げに努めるべき注意義務があるというべきである」旨を判示していた。
単純に事案を比較すれば,本件のリース業者はリース契約締結の際に JASRAC から使用
許諾を取得するように説明していたと認定されているのに対して,魅留来事件のリース業者
3
はカラオケ店が JASRAC からの使用許諾契約締結の申込みに対して種々の引き延ばし工作
をなすよう煽動する文書を配付するなどの行為に及んでいる。したがって,魅留来事件は,
本件に比べれば,締結時の注意義務を厳しく吟味しなくとも責任を認めることができる事案で
あったといえようが,同事件の高裁判決は,少なくとも抽象論としては,リース契約の締結時
ばかりではなく,リース契約締結後も,「随時」,使用許諾の有無を確認しない限りは共同不
法行為責任を負う旨を説いていた点で,特段の事情のない限りはそのような義務を負うことは
ないとの判断を示した原判決と対立する。
3 あるいは,原判決に与する論者は,著作権侵害に利用された装置を侵害者に貸与した
者が,どの程度の責任を負うべきか,という抽象論を論じるのであれば,装置が著作権侵害
に供されるものなのかどうか不明である以上,貸与者がただちに共同不法行為責任を負うこ
とはなく,著作権侵害に利用されることを認識していたか,あるいは認識しうべき特段の事情
が存することが必要である,と主張するかもしれない。
しかし,JASRACから使用許諾を受けることなく営業を続けるカラオケ店が横行していること
は一般に報道されている事実である(7)。リース業者としては,統計的に考えて,(特に事件当
時)リースの相手方がかなりの確率でJASRACと使用許諾契約を締結しないと予測しうる状態
であったのではないかと推察される。そうだとすると相手方が著作権を侵害する可能性がある
ことを認識していたか,認識しえたと評価すべきであろう。仮処分命令の執行があったことを
知るに至るまでの間,リース業者の過失を否定した原判決には疑問を覚えざるを得ないとこ
ろであった。
そして,契約の締結の際もしくは契約締結後,装置の使用開始前に,相手方が JASRAC
から使用許諾を受けていることを確認するということは,当該相手方に関する限り侵害行為を
抑止しうる実効的な予防策であるとともに,リース業者にとっては一挙手一投足でなしうること
である。かなりの確率で侵害がなされることを容易に推察しうるにも拘わらず,その程度の予
防策すら講じることなくカラオケ装置を貸与したリース業者には,過失が認められて然るべき
であろう。結論として,原判決よりも,前掲大阪高判[魅留来],さらには本最高裁判決の方が
穏当な判断を示していると考える。
4 それにも拘わらず,あえてリース業者の過失を否定した原判決の背後には,リース契約
それ自体は,直接,著作物を利用するものではなく,侵害に深く関与するものではないのだ
から,たとえ相手方が著作権侵害行為を働く可能性がある場合にも,これを完全に防止する
必要はない,という発想が存するのであろう。それが,書面や口頭で JASRAC から使用許諾
を受けるよう説明ないし指導すれば足りる,という判断につながったものと思料される(特に,
控訴審判決で付加された説示にその種の発想を垣間見ることができる)。
たしかに,印刷機械のように,大半の場合,侵害以外の広範な用途に供される物に関して
は,貸与先の中に何パーセントかの割合で侵害を行う者がいるかもしれないという程度の認
4
識で貸与者に共同不法行為責任が問われるのでは,著作権者の救済にさしたる必要もない
ところ,過度にこれらの装置のリース業を抑止させることになりかねない。この種の装置に関し
ては,著作権侵害に利用されることが確実に見込まれる場合に限って責任を問うに止めるべ
きであろう。
しかし,本件で問題とされたカラオケ装置は,その設置先がパブ等の店舗である場合には,
著作権が消滅した楽曲の上映,演奏にのみ利用されるということは滅多になく,しかも,国内
では,殆どの場合,JASRACが管理する楽曲の上映,演奏に用いられるという特殊な事情が
ある。パブ等の店舗を経営する業者にカラオケ装置をリースする者は,ほぼ必然的に
JASRACの著作物の利用を引き起こしているのであって,その関与の度合いは決して低いも
のとはいえないだろう(8)。
このことを裏からみれば,JASRACが管理する著作物がなければカラオケ産業が現在のよ
うに隆盛を迎えることもなく,カラオケ装置が現在のように利用されることもなかったのであるか
ら,装置のリース業がJASRACが管理する著作物の恩恵を被っていることは明らかである。リ
ース業者が業としてカラオケ装置のリースを行い利益の獲得を目指している者である以上(9),
そこから著作権者にカラオケ装置の使用による利益を還流させるように制度を仕組んだとして
も,私人の自由を過度に拘束したということにはならないだろう。
そして,無断演奏,上映を働く個別のカラオケ店舗よりは(10),これにカラオケ装置をリース
するリース業者を捕捉する方が絶対数の点で相対的に容易であるかもしれず,そうだとすると,
リースの相手方の著作権侵害行為を防止する適切な措置を求めうるような制度を設計した方
が効率的に対価の回収を促し創作活動のインセンティヴとすることに資するであろう。著作権
法が,創作活動を奨励して文化を発展させるために,適切なインセンティヴを著作者に与え
ることを目的としている以上,このような観点を解釈に反映させることが,著作権法の合理的な
解釈論というべきである。
5 著作権が著作物の創作活動にその利用価値に応じたインセンティヴとなるためには,
著作物の使用を禁止する権利を著作権者に与えるべきであるようにもおもわれるのに,現行
法が複製を禁止する権利を中心とし,使用行為は公のものに限り,これを禁止することにして
いる。これは,著作権が,印刷技術の登場に端を発して(第一の波),無断複製に対する出
版者の利益を保護するものとして主張された制度から次第に発展してきたという歴史(11)に由
来するが,それに止まるものではない(12)。個別の使用行為(読書や歌唱など)を禁止する権
利を設けても,使用は至るところで行われ,監視することが容易ではない反面,権利処理は
煩雑となりコストが嵩むので,結局は,侵害が横行するだけに終わるだろう。それに比して,か
つては複製は相当の資本を投下した者のみが行いうる行為であったから,これに権利を及ぼ
しても,監視することは比較的容易であり,反面,相対的に数が少ないから権利処理も可能
であり,複製の数は使用の数をある程度反映するから,実効的に対価を還流させる制度を構
築することができる。他方で,使用行為が公に行われる場合には,監視が多少は現実的な話
5
となり,権利処理も不可能ではないので,複製禁止権に併せて公の使用行為も禁止すること
にしている。
これが現在でも維持されている著作権法の基本的な枠組みなのであるが,20 世紀の後半
になって複製技術が普及するとともに,複製数が使用行為と選ぶところがなくなり,複製禁止
権中心主義の合理性が失われつつある(第二の波)。対処策としては,利用価値をある程度
反映しつつ,未だに行為者が限られているところに権利を移していくことになる。それが,日
本の著作権法でいえば,公の貸与を禁止する貸与禁止権(1984 年改正)(13)であり,デジタル
録音録画機器,媒体に課金する私的録音録画補償金請求権(1992 年改正)(14)である。
末端のカラオケ店舗での無断演奏を把握することに困難がある以上,その手前で相対的
に数が少ないとおもわれるリース業者のところから対価を還流させる制度を設計し,もって効
率的な対価の還流を図ることは,著作権法の歴史的な流れに沿う結論だということができそう
である。もちろん,私的複製とは異なり,カラオケ店舗での無断演奏は捕捉することは相対的
にいえば困難ではなく,また,私人の自由への介入の度合いも少ない。したがって,個々の
店舗での使用行為とは完全に切り離して,私的録音録画機器媒体に関する課金制度と同じ
原理で,カラオケ装置のメーカーに課金していく方策を導入することは,立法論としても慎重
に検討すべき話なのかもしれない。しかし,それだからこそ,末端の店舗を監視し対価を還流
させるための方策を講じることが必要となってくると思料されるにも拘わらず (15),原判決の論
理の下では,カラオケ装置を用いた演奏,上映に対する著作権制度の実効性が過度に減殺
するおそれなしとしない。これを正した上告審の判断を至当と考える所以である。
(1)
田村善之[原判決判批]NBL 694 号(2000 年)参照。
(2)
参照,田村善之『著作権法概説』(1998 年・有斐閣)151 頁,井上由里子[判批]斉藤博=半
田正夫編『著作権判例百選』(第 2 版・1994 年・有斐閣)。
(3)
評釈として,角田政芳[判批]特許研究 22 号(1996 年),五味由典[判批]著作権研究 22 号
(1996 年)がある。なお,山口裕博[判批]判時 1531 号(1995 年)。
(4)
田村・前掲注(1)148∼153 頁。
(5)
その理由付けとともに,田村・前掲注(1)152∼153 頁。前掲大阪地判[魅留来一審]も参照。な
お,前掲大阪地決[カラオケルーム・ネットワーク],前掲東京地判[ビッグエコー上尾店一審],
前掲東京高判[同二審]。
(6)
田村善之「知的財産侵害訴訟における過剰差止めと抽象的差止め」同『競争法の思考形式』
(1999 年・有斐閣)158∼159 頁。
(7)
朝日新聞 1999 年 11 月 30 日,電波新聞 1999 年 5 月 14 日によれば,使用許諾契約の締結
率は JASRAC の努力により相当,改善されたものの,依然として 6 割台に止まっているという。本
件控訴審における原告の主張によれば,1999 年 3 月現在で 60.4%,本件各店舗の存する茨城
県では 52%に止まるという。1991 年の事件開始当時は,もっと低い割合いだったのであろう。
(8)
本判決自身,カラオケ装置の撤去を認めており,同装置が侵害以外の用途に供される可能
6
性が殆どないものであること自認しているということができる。これが,コピー機器であれば,侵害
に供されたとしても,その他の用途に用いることができる以上,撤去までをも認めることはできな
いはずである。田村・前掲注(6)158∼159 頁参照。
この点が,趣味で無料で管理している者が少なくないために,厳格な責任を課すことを躊躇
(9)
せざるを得ない BBS の管理者と異なるところである。BBS やホームページで著作権侵害行為が
行われた場合の管理者やプロヴァイダー等の責任論については,田村善之「インターネット上の
著作権侵害行為の成否と責任主体」同編『情報・秩序・ネットワーク』(1999 年・北海道大学図書
刊行会),同「インターネット上の著作権侵害とプロヴァイダーの責任」ジュリスト 1171 号(2000
年)。インターネットの到来を著作権法が被った環境変化の第三の波として捉える発想につき,
同「インターネットと著作権」アメリカ法[1999-2](2000 年)参照(第一,第二の波については,後
述 5 参照)。
(10)
その捕捉率につき,前述注(7)参照。
(11)
白田秀彰『コピーライトの史的展開』(1998 年・信山社),アラン・ラットマン他編(内藤篤訳)
『1990 年代米国著作権法詳解(上)』1∼5 頁,半田正夫『著作権法の研究』(1971 年・一粒社)9
∼12 頁。
(12)
詳しくは,田村善之『著作権法概説』(第 2 版・2001 年・有斐閣)108∼110 頁,同「デジタル化
時代の知的財産法制度」同『機能的知的財産法の理論』(1996 年・信山社)186∼189 頁。
(13)
田村・前掲注(12)概説 124∼131 頁。
(14)
田村・前掲注(12)概説 131∼141 頁。
(15)
立法論ではあるが,共同不法行為という媒介項を介在させることなく,貸与権のアナロジーで
同装置のリース業者に直接,権利の網を被せるという方策は十分に検討に値する。共同不法行
為構成との違いは,立法の仕方にもよるが,過失を問題とすることなく不当利得返還請求や差止
請求をなしうるところにある。
本判決の評釈,解説には,上野達弘[判批]コピライト 491 号(2002 年),辰巳直彦[判批]判時
1767 号(2002 年),高部眞規子[判解]Law & Technology 15 号(2002 年)がある。また,原判決の評
釈には,田村善之[判批]NBL 694 号(2000 年)がある。
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