無巻きひげ形質のスイートピー新品種ムジカラベンダーの育成 中岡 直士

無巻きひげ形質のスイートピー新品種‘ムジカラベンダー’の育成
中岡
直士・○中村
薫・郡司定雄・福元孝一 1)・八反田憲生 2)
(宮崎総農試・ 1)宮崎県西諸県農林振興局・ 2)宮崎県中部農林振興局)
の割合に分離した。鮮紫の個体を選抜したところ,
【目的】
宮崎県では,冬季の豊富な日照条件を生かし,
F5 世代では明紫の花色で固定した。F6 世代で各形
スイートピーの切り花促成生産が盛んに行われて
質が固定し,優秀と認められたので F7 世代で能力
いる。産地は消費地から品種の豊富な品揃えを求
検定を行った。さらに栽培現地での適応試験を行
められているため,宮崎総農試は 1989 年から産地
い,有望と認められたので育成を完了した(第1
独自のオリジナル品種の育成に取り組んできた。
図)。
その結果,これまでに‘シルキー・ピーチ’,
‘式
【品種特性】
部’,
‘美々’,
‘桜川’,
‘紅式部’等 14 品種を育成
草型はやや高性で,草丈はやや高である。茎の
した。これらの品種は宮崎県内で栽培され,切り
アントシアン発現はない。節間長はやや長である。
花は海外にも輸出され評価を得ている。今回は,
複葉対数は 3 以上で,無巻きひげ形質である。葉
本県の気象条件に適し,省力形質である無巻きひ
柄着生部に色はある。花の着生密度は中で,花の
げ形質を持った新品種‘ムジカラベンダー’を育
向きは斜上,花形はウェーブである。花径は中。
成したので,その育成経過と特性の概要を報告す
花弁に斑紋はなく,旗弁の中央部は明紫(JHS チ
る。
ャート 8604),翼弁の中央部は浅青味紫(JHS チャ
【育成経過】
ート 8303)である。花柄長はやや長で,花柄の太
2003 年春に春咲き性品種‘ロゼ’(花色:明赤
さは中である。1花房当たりの花数は 4.5 輪で,
紫)と無巻きひげ形質を持つ冬咲き性品種‘セレ
花の香りは中である。開花習性は春咲き性である
モニーラベンダー’
(花色:浅青味紫)の組み合わ
(第1表,第2表)。9 月上旬に播種する作型で 28
せで交配を行った。その F1 世代の花色は浅青味紫
日間の種子冷蔵を行うと 10 月中旬に発蕾し,11
で巻きひげ形質であった。F2 世代において巻きひ
月上旬から収穫可能であった。収量では出荷本数
げ形質と無巻きひげ形質は 71:12 に分離し,花色
が株あたり約 25 本と多く,切り花用品種として充
は明紫と鮮紫ピンクに分離した。それぞれの花色
分な形質であった。
で無巻きひげ形質を選抜した。F3 世代はすべて無
【利用】
巻きひげ形質となった。F2 世代で明紫であった個
‘ムジカラベンダー’は無巻きひげ形質である
体の後代は花色が明赤味紫,鮮赤味紫,浅紫の 3
ため,巻きひげ除去作業等の管理作業がこれまで
色に分離した。これらのうち,浅紫の花色の個体
の巻きひげ形質に比べ省力化が期待できる。なお,
を選抜した。F4 世代では花色が浅紫と鮮紫が 4:3
‘ムジカラベンダー’は 2012 年 4 月 4 日に品種登
第1表 種子冷蔵の有無が‘ムジカラベンダー’の発蕾および収量に及ぼす影響
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切り花本数
発蕾日
発蕾節
うち出荷本数w
冷蔵週数
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(月.日)
(節)
(本)
(本)
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0
3月4日 ± 14
71 ± 4
3.3 ± 2.6
0.4 ± 0.5
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㪊㪅㪊 ±㫧 1.6
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㪇㪅㪌
34.2
25.1
4㪇
10月12日
2 㫑 12㪎㪈 ±㫧 2㪋
z 第2表 ‘ムジカラベンダー’と対照品種の主な特性
平均値±標準偏差
㪋
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㪉㪌㪅㪈
㫧
㪉㪅㪊
w
㫑
‘ムジカラベンダー’ ‘スーパーミッドブルー’
品 種
落蕾が無く第1小花までの花柄長が20㎝以上、小花数3以上の切り花
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やや高性
高性
草型
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㫎
やや長
長
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ウェーブ
ウェーブ
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中
中
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旗弁中央部
明紫
明青味紫
(JHSチャート)
8604
8004
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䉡䉢䊷䊑
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花色
ਛ
ਛ
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翼弁中央部
浅青味紫
浅青味紫
(JHSチャート)
8303
8003
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花柄の長さ
やや長
短
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1花房当たり小花数
4~5輪
5~6輪
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開花習性
春咲き性
春咲き性
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節間長
花形
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花径
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‘ステラ’
高性
長
オープン
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中
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淡黄
2503
䉥䊷䊒䊮
ਛ
淡黄
2503
᷆㤛
㪉㪌㪇㪊
中
3~4輪
᷆㤛
春咲き性
㪉㪌㪇㪊
録された(品種登録番号 21766 号)。
‘ロゼ’
F7
‘ムジカラベンダー’
‘セレモニーラベンダー’
㵬䊨䉷㵭
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第1図 ‘ムジカラベンダー’の育成経過
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