☆ トピックス ブランド強化と新製品投入を急ぐ国内ビールメーカー 作成者 柳葉夕佳 ◎ 前 14/12 期は天候不順などの影響があったものの、アサヒGHD(2502)、サントリーHD (未上場)は増収営業増益、サッポロHD(2501)は増収営業減益、キリンHD(2503)は国内 のビール類、飲料の不振や医薬事業の薬価改定の影響などから減収減益となった ◎ 今 15/12 期は 4 社とも増収増益を計画。主力ブランドの強化と機能性カテゴリー、クラフ トビールなどへの取り組みを積極化させる 1. 前 14/12 期のビール大手 4 社を比較 〈図表 1〉2014 年ビール類市場構成比 ビール酒造組合、発泡酒の税制を考える会が発表したビール 5 社 (アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ、オリオン)の 2014 年ビー ル類出荷数量は▲1.5%(課税、箱数ベース)と、消費増税や夏場の天 候不順などの影響を受け、10 年連続で前年を下回った。内訳は、ビ ール▲1.0%、発泡酒+4.4%、新ジャンル▲4.4%だった。ここで、 前 14/12 期の国内ビールメーカー大手 4 社の業績を比較したい。 *課税数量ベース 新ジャンル 35.4% ビール 50.2% アサヒグループホールディングス(2502)は 14 期連続で過去最高純 発泡酒 利益を達成。「ドライプレミアム」の本格展開などが奏功した主力ブ 14.4% ランドの「スーパードライ」、新ジャンルの「クリアアサヒ」などが (出所)ビール酒造組合、発泡酒の税制 堅調に推移し、ビール類出荷数量は 2 年連続で増加した。国際事業は を考える会資料より当社作成 オセアニア事業の収益改善が進んだ。 キリンホールディングス(2503)はビール 4 社で唯一の減収減益となった。 「一番搾り」は堅調だったものの、 新ジャンルの「のどごし〈生〉」が振るわず、販売促進策が奏功しなかった。ブラジル事業は競合との競争が 激しく、ビール販売数量は前年を下回った。 サントリーホールディングス(未上場)は米ビーム社買収の寄与もあり、2 ケタ増収増益。 「ザ・プレミアム・ モルツ」は+0.3%と 11 年連続で販売数量を伸長。新ジャンルの「金麦」は+9.5%と好調だった(数字は出荷 数量ベース)。 〈図表 2〉前 14/12 期業績の比較表 ()は前期比、売上高・営業利益は億円、ビール類出荷数量は万箱・出荷数量ベース、マーケットシェアは課税数量ベース 銘柄( コード) 売上高 営業利益 ビール類出荷数量 ビール類マーケッ ト シ ェア アサヒグループ HD( 2 5 0 2 ) キリンHD (2503) サントリーHD ( 未上場) 17,855(+4%) 21,958(▲3%) 24,552(+20%) 5,187(+2%) 1,283(+9%) 1,145(▲20%) 1,648(+30%) 147(▲4%) 16,321(±0%) 14,163 ※(▲6%) 6,531(+3%) 5,238(+1%) 15.4% 12.3% 38.2% 33.2% サッポロHD (2501) ※キリンHDは千kl単位の発表を箱換算した (出所)各社資料、ビール酒造組合、発泡酒の税制を考える会資料より当社作成 このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。 ☆ トピックス サッポロホールディングス(2501)は「ヱビス」「サッポロ黒ラベル」などが堅調に推移。他社に先駆けて 発売したプリン体ゼロのビールテイスト飲料「極ZERO」の税率適応区分修正に伴う酒税納付額の差額 (116 億円)を特別損失に計上し、純利益は大幅減となった。 2. 機能性カテゴリーやクラフトビールの投入を急ぐ 酒税改正が検討されるなか、各社は主力ブランドに販促費を投入するが、頭打ち傾向の国内市場を打開 すべく、機能性カテゴリー(プリン体、糖質、カロリーなどをカットした健康訴求型の発泡酒、新ジャン ル)やクラフトビール(地ビールなど、醸造所ごとに作られる個性派ビール)への取り組みを積極的化させ ている。 サッポロHDはプリン体ゼロの機能性ビールテイスト飲料を世界で初めて販売。各社も続いており、昨 年 9 月からは大手 4 社すべてでプリン体ゼロのビールテイスト飲料が発売された。健康訴求型の機能性カ テゴリーへのニーズは今後も続くと思われ、各社は新商品の投入を急いでいる。 クラフトビールに注力するのはキリンHD。「よなよなエール」を展開する軽井沢の地ビールメーカー、 ヤッホーブルーイングと昨年 9 月に業務・資本提携した。アサヒGHD、サントリーHDは期間限定のク ラフトビールを展開、サッポロHDは今 15/12 期より本格的にクラフトビール事業に参入する計画。 3. 今 15/12 期会社計画は各社増収増益を見込む 4 社の今 15/12 期ビール類市場予想は▲2%~前年並み。対して今 15/12 期の会社計画は、全社が増収増 益を計画している。天候不順だった昨年と異なり猛暑となれば、ビール類の売れ行きには追い風となろう。 アサヒGHDは主力ブランドを核にしつつ、限定パッケージ、限定味の投入などで消費者のニーズを取 り込む計画。機能性カテゴリーも強化する予定で、発泡酒、新ジャンルで品ぞろえを強化する。 キリンHDは「一番搾り」ブランド再構築のため、販促を強化する。機能性カテゴリーも順次投入する 予定。事業を本格化させたクラフトビールは足下好調に推移している模様。海外事業では、ブラジルキリ ンの立て直しが課題となろう。 サントリーHDは「ザ・プレミアム・モルツ」 「金麦」に注力する計画。ビール類以外のリキュール飲料、 ワインなどのアルコール類も好調を予想する。今後はビーム社とのシナジー発現も期待されよう。 サッポロHDは「ヱビス」など主力ブランドを強化しブランド価値の向上を図るほか、 「極ZERO」リ ニューアルで機能性カテゴリー首位をめざす。クラフトビールへも本格参入する予定。 当社はアサヒグループホールディングス(2502)に注目する。ブランド強化を目的とした施策は順調に進 捗しており、売上高営業利益率やROEなどの収益性が 4 社の中で相対的に高い点も評価されよう。オセ アニア事業の改善などで国際事業も収益に寄与しつつあり、業績の伸長が期待される。 このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
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