特定非営利活動法人 医学統計研究会

特定非営利活動法人
医学統計研究会
Biostatistical Research Association
Newsletter No.9(42)
2007.9.28
残暑も漸くおさまり,朝夕に涼しさを感じるようになって参りました.いよいよ諸種の形容詞に
彩られる秋本番を迎えます.皆様とご一緒に実り多い秋にしたいと存じます.最近の生起事象を中
心に「ホウ・レン・ソウ」をお送りいたします.
1.
特定主題セミナー「癌治療の評価における生存時間解析の方法」が 9 月 15 日(土)に大阪大学(豊
中キャンパス)大学院基礎工学研究科 J 棟ディスプレイ室にて開かれました.会場の大きさで
人数を総枠 25 名に限定させていただき,実質味のあるセミナーを企図いたしました[実際の有
料参加者は 11 名[学生参加者 2 名を含む]
,講師 5 名,庶務・支援参加者 3 名の計 19 名でし
た].残暑の厳しい日でしたが,講師の方々の熱意のこもった資料の提供と講演,および参加
者の方々の真剣な聴講の姿勢と議論で大変に有意義なセミナーとなりました.
当日,参加者の方々から寄せられました感想を以下に掲載いたします.
―
今後の希望について はやりというか,製薬メーカのおごりというか,大規模臨床試験が
多く行われていますが,その是非に少し疑問があります.プラセボと実薬の間でほんの少
ししかない差を何千例という症例数を集めて感度を高めていっている報告がなされ,そこ
では何千何百という効果のない症例を生み出している.きちんと明確な臨床的差としてマ
ージンを設定できているかというと,意外と少ないような気がします.よく,NNT,NNM
などを用い,それらの臨床試験が臨床的にみて意義があるかどうかの確認も行われるよう
になったと思うのですが.そこで,最も理想的なマージンの設定方法,またその検証につ
いてとり上げていただければ幸いです.また,症例数の設定についてもとり上げていただ
ければ幸いです.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・K.Y
―
この分野の話を聴くことはあまりないので,今回のセミナーは大変に参考になりました.
今後もいろいろな企画が出てくるのを楽しみにしています.是非,Bayes の定理に関連し
たセミナーの開催をお願いします. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・N.T
―
どの演者の発表においても,自身の研究・勉強が深く行われていることを感じました.今
後は演者の一人となり,医学統計研究会に貢献したい思いです.
・・・・・・・・・・A.T
―
薬業で統計解析を実施している者でありながら,癌治療の評価を適正に行うために必要な
統計的基礎知識とは何か,頭を整理できずにいたところ, 本セミナーの存在を知り, 受講
しました.新薬承認審査の視点で,生存時間解析を時務としてこなしていると,解析実行上の
前提条件の点検への意識が甘くなっていることを痛感しました.通常の「セミナー」は統計
担当者の大半が理解できるレベルで講義されるのですが, 本セミナーは「癌治療の適正評
価に貢献する自律した統計科学者」を支援・育成しようという気概のせいでしょうか,ご講
演の先生方は統計業務に取り組む者に, 言葉は平易ながら到達すべき水準を提示してくだ
さっていたように感じました. テキストもしっかり作られているのでしっかり復習して次
回に望みたいと思います.少人数セミナーの設定ということで, 個別質問もしやすく, ご講
演の先生方に丁寧なご教示をいただくことができました.貴重な機会をいただき, ありが
とうございました.関西には国立循環器病センターがあるので,循環器疾患の適正治療への
統計的基礎知識のようなセミナーの開催を希望します.
・・・・・・・・・・・・・・S.T
2. 「定款」に掲げています「医学統計学における諸法の研究・開発,および啓発・普及」
,とく
に地域に根づく形式での啓発・普及を意図して「秋季セミナーかごしま」が 9 月 22 日(土)に
「かごしま県民交流センター」にて開催されました.当日のプログラムは先に Web でお知ら
せしていますが,最終版とともにその実際を写真でご報告いたします[敬称略]
.なお,本セ
ミナーの開催にあたり,新日本科学㈱の古賀 正さんをはじめとするお仲間の方々に大変にお
世話になりました.ここに記してお礼を申し上げます.参加者は 26 名,課題検討会(懇談会)
参加者は 22 名でした.
開会挨拶
S1 統計的方法の再検討
‹
五十川直樹(大阪大学):Bayes流接近法における予測点検関数について
‹
高瀬貴夫(エーザイ㈱):繰り返し2値データの解析 論文化
‹
志賀 功(㈱ソリューションラボ):『医学統計学習塾』の現況
S2 「非臨床」評価における統計的方法
‹
藤澤正樹(あすか製薬㈱):曲線分離の方法
‹
尾崎寿昭(日本臓器㈱):徐放剤と速放剤の定量評価
‹
梅田佳史(㈱新日本科学):カニクイザルとヒトの心電図
S3 最近の臨床評価に拾う話題
‹
山邉太陽(ファイザー㈱)・丸尾和司(興和㈱):要約統計量とその評価
‹
西 次男(大阪大学):臨床試験における割付けの諸法
‹
古賀 正(㈱新日本科学):QT延長の評価に関する試行と事例
S4 計算環境 R とその周辺
‹
杉本知之(大阪大学):生存時間解析におけるR
‹
坂本 亘(大阪大学):シミュレーションにおけるR
閉会挨拶
藤崎恒晏・古賀 正
座長:藤崎恒晏
座長:古賀 正
座長:柴田義貞
座長:越智義道
後藤昌司
[「秋季セミナーかごしま」のひとこま]
3.Webでも既にご連絡していますが,定例シンポジウム2007「医療で必要とされる統計的基礎
知識」を10月27日(土)に大阪大学(豊中キャンパス)で開催いたします.昨年の定例シンポジウム
での主題を,その後のご要望・ご意見を入れて,
「医療で用いられる多変量解析の基礎」において
います.とくに,計量値と計数値の回帰解析を主体として,その方法論と適用上の留意点につい
て講演と議論が行われる予定です.詳細はWebに掲載しています.多くの方々のご参加を期待い
たしております.
4.特定主題シンポジウム2007「患者像に基づく臨床評価の過程」を下記の次第で開催いたしま
す[敬称略]
.なお,本シンポジウムは,昨年,大阪で開催しました特定主題シンポジウム「患者
像の摘出から迫る臨床評価」を,ご指摘を受けて改題したものです.
日時:2007.11.10(土) 9時30分~17時
会場:エーザイ㈱会議室
講演:患者像を求める統計的方法:樹木構造接近法入門
樹木構造接近法の適用の実際
杉本知之(大阪大学)
下川敏雄(山梨大学)
後藤昌司(特定非営利活動法人 医学統計研究会)
「患者のための薬」情報の抽出
佐藤俊之(第一三共製薬㈱)
患者像に基づく臨床評価:
「疾患 対 薬」情報から「患者 対 薬」情報へ
松原義弘
(臨床研究情報センター)
詳細はプログラムの確定次第に改めてWebにてご連絡いたします.
5.最近の「できごと」を順不同でご報告いたします.
(1)ISI2007 (56th Session of the International Statistical Institute) が2007年8月22日~29
日にリスボン(ポルトガル)で開催されました.その参加報告を坂本 亘先生[理事]にまと
めていただきました.
ISI2007に私のほか,白旗慎吾教授をはじめ数名の医学統計研究会会員が参加し,研究発表を
行いました(私は大学での業務の都合で24日以降の参加になりました)
.ISIの大会は2年に1度
開催される統計関連で最大規模の国際会議で,今回は基調講演をはじめ500件以上の口頭発表と
200件余りのポスター発表がありました.発表時間が1件15分(質疑応答含む)と短かったこと
もあり,私の発表したセッション(ノンパラメトリック関数推定)では殆ど質問が出ることなく
終わりました.カジノ・エストリルで行われたフェアウェル・パーティではディナー付きの煌び
やかなショーが印象的でした.ISIには2度目の参加でしたが,どちらかといえば「お祭り」の色
彩が濃いように思います.なお,プログラムの公開が大幅に遅れたり,全体的にセッション構成
と実際の発表とが合致していないものがあったりして,運営面で若干の不備が見られたように思
います.次回(2009年)はダーバン(南アフリカ)での開催です.リスボンの街は,赤レンガ造り
の建物や旧跡の多い旧市街と,近代的なビルが立ち並ぶ新市街とが対照的でした.路面電車(ト
ラム)が市内を縫って走る風景がよく合っていました.休日は郊外に出て,世界遺産の王宮があ
るシントラなどを訪れました.ヨーロッパ最西端のロカ岬から見る大西洋はすばらしい景色でし
た(写真参照)
.
ポルトガル料理は魚料理が豊富で,焼き魚などは日本で
食べるものに近いので比較的食べやすかったように思い
ます.ただし量が多く,1人分ならスープと料理各1皿
で十分満足できます.ポルトガルは,日本から遠い
(飛行機を乗り継いで18時間以上かかる)ためか,日本
人にとっては他の西欧諸国と比べて人気がないようです
が,観光地としては意外と良い所でした.ただし,言葉
(英語があまり通じない)や習慣の違いに戸惑いを覚える
ことがしばしばありました.かつては世界中に植民地を
もっていたことの名残でしょうか,
多人種・多民族の国であることを改めて実感させられました.
(2)㈱ソリューションラボと共同で開発しています『医学統計学習塾』の「医学統計2年生」が
完成し,Webで配信(有料)が開始されました.多くの会員のご支援・ご協力をよろしくお願い
いたします.以降,専門課程として「多変量解析の基礎:相関・回帰解析の過程」に入ります.
(3)大分統計談話会・第36回大会のプログラムが完成し,事務局より配信されています.多くの
方々のご参加が期待されています.
(4)第10回定例研究会(東京)が2007年10月24日(水)に予定されています.会場およびプログラム
は,改めてご連絡いたします.参加,および講演のお申し込みは幹事にご連絡いただくと幸い
です.
幹事:河合統介
藤澤正樹
[email protected]
[email protected]
(5)会員の方々の周辺で起こる最近の事象や諸種のニュースについてご連絡いただくと幸いです.
有用な情報をできるだけ会員の方々に配信したいと考えています.
Newsletter 編集:
後藤昌司・栗林和彦・坂本
亘・冨金原 悟・河合統介・藤澤正樹・杉本知之・大門貴志・下川敏雄
連絡先:
医学統計研究会
後藤昌司
[事務局:佐々木裕子・後藤 孚・五十川直樹・大江基貴・中村将俊]
〒560-0085 豊中市上新田2丁目22-10-A411号
Tel & Fax:06-6835-8790 /
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