4. 組合せレンズ pp.21-24

平成 19 年 11 月 30 日
木更津高専「光応用工学」
4 組合せレンズ
4. 組合せレンズ
・拡大鏡
人間の眼は2つの物体が視角で 60 秒(1’)以下に接近すると区別して見ることができない。近づく
にしても明視の距離(25cm)以下では眼が緊張し、自然にものを見ることができなくなる。その場合
に拡大鏡(虫眼鏡)を利用することとなる。
L
e
A
A
F
F B
B
f
s
s
d
D
凸レンズを使って物体 AB を距離 D から眺めたときの大きさ:
A' B'
D
一方肉眼で距離 D だけ離れて直接眺めたときの大きさ:
AB
D
拡大率は次のようになる。
A' B' / D
AB / D
A' B'
AB
レンズの公式から、
1
s
1
s'
1
f
作図から、
s' d
従って拡大率は、
21
D
s'
s
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f
m
d
f
D
一般に f=d としたとき、
D
f
m
明視の距離(-25cm)とすれば、
m
25/ f
市販されている拡大鏡の最大倍率は20倍ほどである。
・顕微鏡
拡大鏡の倍率を上げるためには焦点距離の短い凸レンズを用いればよいが、1 枚の凸レンズで焦点距
離の短いレンズを作ろうとすると、そのレンズの曲率半径は極めて小さくなってしまい、レンズの加工、
収差、使い勝手に問題が生じる。
そこでレンズを組み合わせて使い、1 枚目のレンズ(対物側)でm0倍に拡大した実像を作り、その
実像をさらに 2 枚目のレンズ(接眼側)で me 倍に拡大して見る。そうすることで全体の倍率 M は、
M
mo me
となる。これが顕微鏡の原理であり、対物レンズ Lo と接眼レンズ Le を共軸で並べたものである。
対物レンズ Lo の像空間焦点距離を fo’とすると、対物レンズ Lo による倍率 mo は、
so ' f o '
fo '
mo
接眼レンズ Le を拡大鏡として使用するためには、対物レンズ Lo による実像 A’B’が接眼レンズ Le の物
空間焦点距離 Fe のほんの少し内側に作られるようにレンズを配置する必要がある。そこで、対物レン
ズ Lo の像空間焦点 Fo’と接眼レンズ Le の物空間焦点 Fe との間の距離を L(光学的筒長)とすれば、
so '
fo ' L
となる。従って、対物レンズによる倍率 mo は、
L
fo '
mo
一方、像空間焦点距離が fe’の接眼レンズを拡大鏡として使ったときの倍率 me は、
D
fe '
me
である。ここで、D は明視の距離である。
結局、顕微鏡の総合倍率 M は、
M
mo me
で与えられる。
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L D
fo ' fe '
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Fe’
Le
fe
B’
se
A’
Fe
L
so’
Fo’
f o’
Lo
so
Fo
A
B
B’’
A’’
対物レンズ Lo は、対物レンズ Lo の像空間焦点 Fo’と接眼レンズ Le の物空間焦点 Fe との間の距離 L
(光学的筒長)の位置に結像したときに収差がもっともよく補正されるように設計されている。そのた
め、顕微鏡では対物レンズ Lo の取り付けねじの端面と接眼レンズ Le の取り付けねじ端面との間の距離
が定められている。この距離を機械的鏡筒長といい、160mmのものが多い。
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・高倍率対物レンズ
高倍率で開口数の大きい対物レンズで、標本と対物レンズとの間を空気とした場合では、透過し
た光(カバーガラスより出た光)が空気で全反射してしまい解像力が低くなる。 したがって、こ
のようなレンズ(高倍率で開口数の大きい対物レンズ)を用いる場合では、屈折率の高い油滴を媒
介として用い効率よく対物レンズに光を集める必要がある。このように、油滴に接することができ
るレンズを油浸系レンズという。
x100
x100
・無限遠光学系
無限遠光学系は光路上に平行光束部を有し、ハーフミラーや素子等をこの平行光束部に挿入して
も画像の劣化などがなく鮮明な観察像が得ることができる。顕微鏡に様々な機能(蛍光、位相差、
etc.)を付加する際に用いられる。
∼ Memo ∼
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