SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) 光ディスク装置の光学系に関する研究 近藤, 光重 Citation Issue Date URL Version 1993-12-22 http://doi.org/10.11501/3072797 ETD Rights This document is downloaded at: 2016-01-06T21:00:58Z 電子科学研究科i. 0002515468 静岡大学博士論文 光ディスク装置の光学系に関する研究 /端 ・ 1一熱一l l熱 1993年9月 近 藤 光 重 本論文は、情報単位がミクロンオーダーの光ディスク装置において、ミクPン オーダーの集光光束により情報の記録・再生を行う光ヘッドの光学系に関する研 究をまとめたものである。特に、光源として半導体レーザーを用いた場合の集光 方法と特性解析・集光系簡素化、集光点の光軸方向位置をミクVンオーダーで検 出するフォーカスセンサー、情報トラックの中心との半径方向の誤差をサブミク ロンオーダーで検出するトラッキングセンサー、光学系の小形化によって顕著に なる戻り光との干渉によるレーザーノイズを低減する方策等について検討した。 半導体レーザーの楕円形発散光をミクロンオーダーに集光する方式として、直 接集光方式を提案した。この集光方式について回折理論を用いて、ディスク上の 集光光束の形状、信号再生周波数特性、隣接情報トラックとのクロストーク特性 を解析する計算式を導出した。さらに、楕円光束の対物レンズ透過率計算式を導 出した。この集光方式では楕円形状の集光光束になるが、対物レンズ入射楕円光 束の短軸方向径を対物レンズの有効径程度にし、かつ楕円集光光束の短軸方向を 情報トラックと平行とすることにより従来のHe−Neレーザーを用いた場合と同等 以上の特性が得られることを集光光束径、隣接情報トラックとのクロストーク特 性、再生周波数特性の点から明確にした。クロストークについては、情報トラッ ク間隔により最適なけられの係数(入射楕円光束の短軸方向径と対物レンズ有効 径の比)が存在する事を明確にした。また、入射楕円光束が対物レンズ中心より ずれるとクロストークが増加することを示し許容値計算手法を明確にした。さら に対物レンズ入射楕円光束の長軸方向の光束を捨てているが、ディスク面上のパ ワーが10mw以下の追記形光ディスク装置、書換形光ディスク装置にも直接集光方 式が適用可能であることを明確にした。さらに、直接集光方式の特徴を生かして、 対物レンズとコリメーターレンズを非球面プラスチックレンズにより一体化する 光学系の簡素化について提案した。この方法によっても従来と同等の再生性能が 得られることを収差とジッターとの関係を実験的に求める経験式を導き明確にし、 実験的に確認した。また、プラスチックレンズの収差の経年変化を検討し、問題 ない事を確認した。 1 フォーカスセンサーとして非点収差法とフーコー法について検討した。非点収 差法の特性解析式を導出し、基本特性が実験と良く一致することを確認した。さ らに、光検知器の位置ずれに対し検出センサー特性の変化を計算すると同時にず れの許容値を明確にした。フーコー法については特性解析の式を導出し、この方 式の欠点と言われているリニアゾーン幅の狭さを広げる方法について提案し、効 果を解析および実験により確認した。 トラッキングセンサーは、3ビーム法とプッシュプル法について研究した。3 ビーム法については、センサー特性解析式を導出し、情報トラックに対する3ビ ームの回転位置としてセンサー感度が最大になる位置を明確にした。また、光ヘ ッドの情報トラックと平行方向への位置ずれ許容を明確にした。プッシュプル法 についてはセンサー特性解析の計算式を導出し実験との比較で解析式の使用可能 性を確認した。 半導体レーザーを用いた場合に問題となるディスクからの戻り光によるノイズ 低減について検討した。光帰還法では、戻り光を2%以上に設計すると再生のS/N が改善されることを明確にした。提案の負帰還法では、ノイズ低減が制御理論に 従うことを明確にし、最大14dBのノイズ低減を確認した。また、高出力の半導体 レーザーを用いて、高周波重畳によるノイズ低減効果を確認した。 直接集光方式の有用性を示すため、コンパクトディスク装置、ビデオディスク 装置、追記形光ディスク装置、書換形光ディスク装置への光ヘッドの適用試作例 を示した。これにより、再生装置だけでなく、記録再生装置にも直接集光方式が 有用であることが実際に確認された。 以上述べたように、本研究により半導体レーザーを用いた、特に直接集光方式 を用いた光ヘッドの光学技術が確立された。本研究により、光学部品数の少ない 小形で簡単な光学系の設計法を示し、半導体レーザーを用いた高性能な記録・再 生光ヘッドが実現できた。 fi 目 次 第1章 序論 ee・・ee・eee・ee・囲・・・…ee②e・eeeeeee・eememe・・ee“囲eeeme・・9 1.1 本研究の背景 eee・eeeeee。eeeeeeeee。eeeeeeeeeeee・eeeemeeee・ pap・e ・1 1.2 本研究の目的 ・。・。… e・・ee・。・。。・。。e・・。・・e。・・。eeeee… ee・ee。。・・4 1.3 本研究の構成 ee・eeeeee。ee・・eeeeeeee。eee… ④eeeeeeeeeeeeeeeee。4 第1章の参考文献 ・eeeeeee・・e・ee・ee・eee・・eeeee… eeeeeeeeee・eeee… 6 第2章 光ディスク装置の構成と原理 ・… ee・e・eeeeeeeeeee・ee・・eeeeeeee7 2.1 はじめに 。ee。eeeeee。eeeeeeeee。eeemeeeeeeeeeeeeeee”e” va eeee⑤eee7 2.2 光ディスク装置の構成 ・eeeee・eeee ・・ eeeee・・… eeeeeeeeeeeee・eeee7 2。3 集光と信号再生 ・ee・・eeeeeeeeeee・・・… ee・eeeeeeeee・… eee・… 10 2.4 集光光束の光軸方向位置ずれ検出 … ee・・eeeee・・・・・・… ee・ee… 14 2.5 集光光束の半径方向位置ずれ検出 eeeeeeeee… eeee・・・・・・・・・・… 21 2.6 光ディスクの種類 ・………………ee・…… …… eee…… 24 2.7 まとめ e・・eeeeeee・・emee・・。・・eeee・… ee・… ee・・eee・eeeee。・。・・24 第2章の参考文献 eeee・… e・・ee・eeeeeee・ee・eeee・・eee… eeee・eeeeee27 第3章 集光系の理論的解析 eeeee・eee… eeee・eee・meeeeeeeeeeeeeeeeee29 3.1 はじめに 。e。ee・。。。・… ee。ee・ee・・eeeeeee。・・e・e。eeee・・。・。ee㊤・。29 3.2 光スポット形状 ・・…・ ・’ ee・eeeee・eeee… ee… eee・eeeee・・ee・eee29 3.3 再生空間周波数特性 e・・e・ee・・eee・・・・・・・・… eeee… eeeeeeeee・・34 3.4 クロストーク特性 …eeeeee……・eeeeee・・… ee・eee・e・eeeee・・38 3.5 対物レンズ透過率 ・・… eeee・eeeeee・・e⑤ee・e・・・・・・・… eee・・eeee39 3.6 まとめ ・e・eeee・。e。・・・・… eee・ee。。・・e… ee・eeeeeee・eee・eeeeee42 第3章の参考文献 ・・eeee・em… eeee・・eeeee・eee・… e・ea・・・・… ee・… 42 第4章 集光光学系の計算と実験 eeeeee・・eeeee・・・・・… eeGee・ee・・ee・ee43 4.1 はじめに ・・e。e。ee・eee。・。・e。e。eeeee。e。・・ee。e・eeee・ee・eeeee・。・43 一IH一 4.2 楕円光スポットの方向と再生特性 ・… 興・・… 囲・・… 囲・囲一… 43 4.2.1 光スポット形状の計算値と実測値 ・・・…囲・・囲・・翻囲・・⑨・・… 43 4.2.2 光スポット形状と空間周波数特性 e・・eee・・…ee・・・・…ee・・・… 44 4.2.3 クロストーク ・eee・eeeeeee・・一・・−ee・eeeeee・eee・e・e… ee・。。… 49 4.3 けられと光スポット、再生特性 ・・・… eee・・・・・・・・・・・・・・・・・… ee・52 4.3.1 一次の極大の強度 e… eeeeeee・・e・e ・・ ・・・… ee・・ee・… e・ee・・52 4.3.2 クロストークと空間周波数特性 ・・eee・e。・eeee−・・一・・・… e㊦・。・ee54 4.4 入射光束の光東中心ずれと再生特性 ・ee・・・・… e・eeeeeeeee・・・・… 58 4.4.1光スポット径と形状 …・………・・… 囲・… 囲囲一・…… 58 4.4.2 周波数特性・クロストーク特性 eee… ……e・・ee… eeee… 65 4.5 まとめ ・一・囲・・・・・・… 囲・・・・・・・… aee・e・eae・・・・・・・… e・eeee・69 第4章の参考文献 ・・eeeeeee… e・・… ee・ee・ee… ・・ ・・eee・ee・・… ee… 70 第5章 集光点位置の検出 e・eeeeee・・e・eeee・eee… e・e・・・… eeeeeeee・・71, 5.1 はじめに ・e・eee・ee・。eee・。・・。… eme・・eeeeeee…e・ee… 。eeeeeee71 5.2 非点収差法フォーカスセンサー f・ eeee ・・ ・e・。・eeeee・・ee… eeeeeee・71 5.2.1 フォーカスセンサー検出特性の理論的解析 ・・④・・… e・・ee… e71 5.2.2 フォー・:一カスセンサー検出特性の計算と実験 ・eeee・・・・・・… 。・・78 5.3 フー一コー法フォーカスセンサー e。。eeeeeee・eee−・・一・一・・一・e… ee・eee・。・83 5.3.1 フォーカスセンサー検出特性の理論的解析 .・・・・… ee・e…… 83 5.3.2 フォーカスセンサー検出特性の計算と実験 ・eee・ee・・・・・… 。・86 5.3.3 フーコー法フォーカスセンサーのリニアゾーン幅拡大 ・…ee・89 5.4 まとめ e・eeee・・… eleeeeee・ee・・… ee。・・eeeee・… eeee・・eeee・・94 第5章の参考文献 t…ee・eeeeeee・・ee・e… eee・・・・・・… ee・ee… eee・・ee… 95 第6章 情報トラック位置の検出 ・eeme・ee… eeee・eeee・・eee・eeeeeee・ee96 6.1 はじめに ee・。・eeeeee・・。。ee・・… ee・・。・eeeeee・・eeee・・ee。。。eee。・96 6.2 3ビーム法トラッキングセンサー e・eeeeeeeeeee・・・… eeeee・eeee96 6.2.1 3ビーム法トラッキングセンサーの理論的解析 ■・・eee… eeeee96 6.2.2 ゼンサー検出特性の計算 eeeeee・・e・・… eee・ee。・・・… e・… 100 一T▽ 一 6.3 プッシュプル法トラッキングセンサー e・…ee・・・… ee・・・・・・・・… 102 6.3.1 プッシュプル法トラッキングセンサーの理論的解析 … …・・102 6.3.2 センサー検出特性の計算 ee・・・… ee・・・・・… me・・… ee・・… 106 6.4 トラッキングセンサーのディスク傾きに対する検出誤差 … 囲… 109 6.5 まとめ ・e・e。・eeee・・eee。eeee… eeeeee… ee・・eee・。。・・・・・・・・…109 第6章の参考文献 ・… eeee・・eeee・・ee・・・・・・… eeeeee・・eeee ・・ ・・eeee・111 第7章 レンズのプラスチック化 … eee・・・… 。eeee・me・・・… eeee ・・ ・… 112 7.1 はじめに 。・・ee・・eeee・eee・・。・・… e・eeee。eee。・e・・e・・e。eee。… 112 7.2 集光とセンサー光学系 ・ee・・・・・… e・・… ee・ee・eeeeee・ee・・ee・・112 7.3 プラスチック対物レンズ … ……・・・・・・… ’・ ・・・・・・・・… ee・… 112 7.3.1 収差成分が混在した場合のジッター値予測 ・e・ee・… eee・… 113 7.3.2 フォーカシング制御、トラッキング制御と再生特性 ・ee・・… 117 7.3。3 残留収差 ・・geee・ ・’ ・・ee。・。eeee・eee。・・。・e・eee・… eeeeeee・・120 7.3.4 温湿度特性 eeeee・ee… 。eeee。ee。ee。・・… eee。・・ee・eee・eee120 7.4 プラスチックセンサーレンズ ・・… eeeeee・・e ・・・・・・・・・・・・・・・… ee123 7.5 光ヘッドの評価 ・・・・・・… ee・・・… ・・ ,・ ・・eee ・・ eee・・・… ee・・ee・eee124 7.6 まとめ 。ee・ee・㊦・eeeee・一・・一・… eeeeeeeee・・・… ee・ee。・eeee・ee… 127 第7章の参考文献 ・ee・・・・・・… ee・・・・・・・・・・… ee・… e・⑧… eee・・… 127 第8章 光ディスク装置のレー一ザーノイズ低減 ・・… eee…eeeeeeee… ee128 8.1 はじめに … 。ee・eeee・。ee・eeee・・。。・。・・eee。eeeee… 。eeeeeee・・128 .8.2 光帰還法 … ee・eee・eee… eeeee・… eeeeee・・eee… eeee… e・eel29 8.3 負帰還法 ・g・e・・・・・・・・・… eeeeee… eee・・… eeeeeee・・eeee・… 132 8.3.1 理論 。。・・geeeeee。eeee㊤・・。・・… 。・囲・。・・… 。… 。。・eeeee・。132 8.3.2 実験、結果 ・… @・・… eeee・・囲… e・・eee・eeeeeee・eeee・・ee135 8.3.3 負帰還法に対する考察 ・・・・・・・・・・・… 幽・一・・・・… 一・… −137 8.4 高周波重畳法 e。。・eeeee。eeeeeeeeee。。eee・。… 。eeeee・・。eee。… 。141 8.5 ノイズ低減法比較 ・ee… …−e・・eeeee・ee …eee−・・一… e… ee… ee143 8.6 まとめ eee。・eee・eee。eeeeeee・・… 。。・… 。・・… 。・・。・・。e。・・・… 143 一V一 第8章の参考文献 ・ee・・eee・… ee・・eeeee・・・・… ee・・ ・・ ・・… ee・・e・… 144 第9章 結論と展望 ・。・・・… 。。・。eeeee・ee・me・eeeeee。eeee・eeeeeee・・ee・145 9.1 結論 ・・… 囲・… 一一囲・・・・・・・… e・・… e・… eeee・e・・eeeeee・・145 9。2 今後の展望 eeeee。・。ee。eeee・e。一・・−ee。eee。。eeee。・。・・・・・・・… eeee148 付録 光ヘッドへの適用 e・・eee・……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… e・ee・151 付.1 はじめに ee・・eee・・eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeme・eeeeeeeeeee・es・e151 付.2 再生専用光ヘッド eee・… ee… seeee・ee・・e・eeeeeeeeeeee… ee151 付2.1 コンパクトディスク装置用光ヘッド(MLP 一・ 2型) ・・eeee・・ee・151 付2.2 コンパクトディスク装置用光ヘッド(肌P−4型) ee・・eeee・ee153 付.3 追記形光ディスク装置用光ヘッド ・・・・・… e・ee・… eee・… ee・・153 付.4 書換形光ディスク装置用光ヘッド eee・… ee・ee・eee・ee… e・… 160 付4.1 光磁気ディスク評価装置用光ヘッド ・・e・eeeeeee… eeee…e・160 付4.2 光磁気ディスク装置用小形光ヘッド ・・・・… ee・e・・… ee・… 160 付録の参考文献 eeeeee・ee・・eeee・・e・… eeeeeeeeeeeegeee・e ・・ eeeeeeee167 本研究に関する関連発表論文 ・ee・eee bl eeeeeeeeeeee・eeeeee・eeeeeeeee・・168 謝辞 ee。eeeeeee㊥eeeeeeeee。eee・ee。・e・eeme。eeee・eeeee・ee・。eeeee。囲・・171 一VI一 第1章 序論 1.1 本研究の背景 エジソンは、1877年蓄音機を発明した。これは円筒に形成された錫箔上に微細 な凹凸形で機械的に音声振動を刻むものであった。その後、ベルリーナによって 今日の円盤形状レコードとなった。1898年には、シェラック(天然樹脂)を原料 とするレコードが作られた。1900年にはプレス機械を用いて大量にレコードを複 製する方法が開発された。そしてレコードはSP、 LP(Long Play)と高密度 化の改良がなされてきた。また、円盤状のレコードに、従来の機械的に情報を記 録する形態で、オーディオではなく画像を記録する試みがなされてきた。1926年 ベヤードが、人の顔を記録したのがビデオディスク(画のでるレコード)の始ま りとされる。画像の情報を高画質で入力するためには飛躍的な記録密度の向上が 必要である。このため、従来の機械式だけではなく、光学的に情報を非接触で再 生する方式、容量変化で情報を再生する方式等が検討された。 LPの技術の延長で機械的に高密度化する試みがなされ1970年にTeD方式と 呼ばれる方式が開発された。これは、機械的な凹凸で記録された高密度のディス クから圧電素子の先端に取り付けられたダイヤモンド針で画像情報を電気信号に 変換し、TV画面上に再生する方式である。機械的な凹凸の記録方式は、ディス クがプレスで大量に複製可能である特徴を有する。しかし、実際の製品化は行わ れなかった。 容量方式は機械式と同様接触式で、導電性ディスクを用いて凹凸情報を容量変 化で検出する方式であり数種類研究された。その中でVHD方式は実際にビデオ ディスクとして製晶化されたが、ディスク寿命の点で光学式に劣り、現在は生産 されていない。 1961−1963年に、従来の機械式ではなく、光学的に信号の記録再生を行う方式 が研究された1)。原盤は、銀塩感光体を塗布したガラス円盤で作られていた。原 盤記録は、高圧水銀灯の光を画像情報で変調してガラス円盤上に照射することに より行われた。ディスクは、原盤を密着複写して大量に量産されることを想定し ていた。ディスクより画像情報を高圧水銀灯の光を用いた光学式ピックアップで 一1一 再生し、TV画面上に再生画像を得ていた。この研究が、光ディスク装置の最初 の研究であると言われている。 現在の光ディスク装置の原形は、1973年のW.van den Busshe、 K.Compaan等に より公表された2’3)。最大の特徴は、光源としてレーザーを用いた事である。デ ィスクはプレスや成型による物理的複製方法を考えたものである。ディスク面に、 輻0.6μm、深さ0.1μm、長さ数μmのピット(凹部)が、1.6μmピッチで半径方 向にならんだもので構成されている。この情報を1.1mmの透明層を通してHe−Neレ ーザーにより非接触で読み取るものである。読み取りの集光光束は、有限開口 (開口数約0.4)の対物レンズで集光され、大きさは約1.5μm(ピーク強度の1/e2 での直径で定義)である。ディスクからの反射光は、ピットの無い部分では反射 光のほとんどが対物レンズに再入射し光検知器で受光されるが、ピットの部分で は光が回折されて対物レンズに再入射する光束が減少する。この強弱により信号 を再生する。ここで光ディスク装置の基本原理に従った動作が確i立されたものと 見ることが出来る。 このようなシステムで正確に情報を読み取るためには、ディスク上にミクロン オーダーの良好な集光光束を形成するだけではなく、この集光光束とディスク上 のピットとの光軸方向位置ずれを対物レンズの開口数で決まる焦点深度内(±1 ∼2μm)に、この集光光束とピット中心との半径方向位置ずれを0.1∼0.2μm以 下に抑える必要がある。しかし、ディスクはプラスチックから出来ており、反り や中心穴の誤差のため面振れや偏心を生じる。このため、集光光束の光軸方向位 置ずれと半径方向位置ずれを補正する必要があり、当初から集光技術だけではな く、集光光束の位置補正技術が重要な課題として研究されていた。 光ディスク装置は、当初画像情報を入れる目的で開発が進められてきたが、そ の高記録密度を利用して他の用途に応用する事も研究されてきた。1977年8月に、 従来の画像情報のかわりにデジタル的に記録されたオーディオ信号を再生するデ ジタルオーディオディスク(DAD)に適用された4・5)。デジタル化により・オ ーディオ信号のダイナミックレンジを大幅に30dB以上広げることが可能となった。 なお、この最初の装置は、光源としてHe−Neレーザーが用いられていた。これを 契機にDADは各社で開発が推進され、1980年には光学式コンパクトディスクシ ステムがDAD懇談会に提案され、1981年には規格化がなされた。1982年には 一2一 CDという商品名で発売が開始された。このときの光源には半導体レーザーが主 に用いられた。このCDは直径12cmで、従来の30cmのディスクよりもはるかに小 径だった。これに見合ったサイズのシステムを製品化するため、各社で光源を He−Neレーザーから半導体レーザーにする事が研究されていた。 CDはさらに CD−ROMとして展開する一方、光ディスク装置は書き込み可能な追記形光デ ィスク装置や消去可能な書換形光ディスク装置へも発展しており、1988年には 130mm追記形が、 I S O(lnternational Organization for Standardization) において規格化され、1989年には130mm書換形の規格がほぼ決まった。そして、 さらに小径の90mm書換形へと開発は移行し、今後の普及が期待されている。 このような展開の中で光ディスク装置の普及を促進するためには、光源を半導 体レーザーにして光ディスク装置を小形・簡素化することが重要な課題であった。 当初再生に用いられていた光源は上述のようにHe−Neレーザーである。 He−Neレ ーザーはガスレーザーであり、放電を用いているため高圧電源を必要とし、高価 で、ガラスチューブのため壊れやすく、重く、サイズが大きく、寿命が短埜等の 欠点があった。また、追記形光ディスク装置、書換形光ディスク装置に高出力の He 一一 Neレーザー・アルゴンレーザー等を用いた場合、変調のため新たに変調器を 必要とした。半導体レーザーは、順方向に駆動されるp−n接合ダイオードであ り、端子電圧は2V以下の低電圧で、機械的衝撃に強く、軽く、小形、長寿命、低 価格等の長所がある。半導体レーザーは駆動電流を変調することにより出射光を 変調することが可能であり新たに変調器を必要とせず、追記形光ディスク装置、 書換形光ディスク装置を汎用的に用いるのにきわめて好都合な画期的なものとな った。 一方、半導体レーザーには、以下のような問題点があった。出射光束は、ガス レーザーのような円形・平行光束ではなく楕円形状の発散光束であり、従来の集 光方式や集光点位置補正方式をそのまま採用できなかった。そのため、当初は円 形の出射光束をもつ半導体レーザー等も研究された6)。また、初期の半導体レー一 ザーは出射光束が単純なガウシアン形状ではなく、さらに対称性が悪く微小周期 のサブピーク等が重畳されていた。また、ディスクからの戻り光が再び発光点に 入射し干渉することによりノイズを発生した。さらに従来のHe−Neレーザーを用 いた光ディスク装置では、集光光束の光軸方向位置ずれ検出のセンサー(フォー 一3一 カスセンサー)と半径方向位置ずれ検出のセンサー(トラッキングセンサー)と して信号再生以外にも光束を設けており、そのための部品と調整を必要としてい た。 以上のような問題点解決のため、半導体レーザーを用いた場合の集光方式、集 光点位置補正方式、レーザーノイズ低減等の研究がなされた。半導体レーザーの 集光方式として、楕円光束を円形光束に変換する光学系、楕円のまま楕円集光光 束に集光する光学系が研究された。フォーカスセンサーの方式として、光学系簡 素化のため信号再生光束を共用する方式が各種研究された。トラッキングセンサー の方式として、当初から採用されていた3ビーム法を改良すると同時に、3ビー ム分割に用いられていた回折格子の不要な方式が研究された。ノイズ低減策につ いては、半導体レーザーの構造改善と同時に各種ノイズ低減策が検討された。 1.2 本研究の目的 以上の背景のもとに、本論文は、光ディスク装置の信号書き込み・読み取りの, 心臓部分である光ヘッドの主に光学系に関し研究した結果を述べた。特に半導体 レーザーを用いた光ディスク装置に適した集光方式、フォーカスセンサー、 トラ ッキングセンサー、レーザーノイズ低減等の光学系に関し研究したものである。 集光系に関しては、He−Neレーザーを用いた光学系と同等の性能を維持しつつ 簡素化した光学系について研究する。半導体レーザーからの楕円形発散光束を楕 円光束として集光する直接集光方式Z8)につき最適集光条件を検討すると同時に 配置誤差許容を調べる。 フォーカスセンサーに関しては、基本特性解析手法を確立し、部品配置誤差許 容と検出範囲の拡大をはかる。 トラッキングセンサーについては、光スポットの半径方向位置制御系の設計に 必要な基本特性解析手法を確立し、最適な使用条件を求める。 レーザーノイズ低減に関しては、負帰還法の提案実証を行い、光帰還法の帰還 率有効範囲を調べ、高周波重畳の有効性を確認する。 1.3 本研究の構成 本論文は9章と付録からなり、光源として半導体レーザーを用いた場合の集光 一4一 方法と再生特性、集光点位置をミクロンオー一一・・ダーで検出するフォーカスセンサー・ 情報トラックの中心との半径方向の誤差をサブミクロンオーダーで検出するトラ ッキングセンサー、プラスチック化による集光系簡素化・光学系の小形化によっ て顕著になる戻り光との干渉によるレーザーノイズを低減する方策・光ディスク 装置への適用等から構成される。以下に本論文の各章の概要を述べる。 第2章では光ヘッドの重要な機能である信号再生、集光光東の光軸方向位置制 御、集光位置の半径方向位置制御について基本動作を述べると同時に解決すべき 課題を明確にし、本論文展開の基礎を与えている。特に、半導体レーザーの発散 形の楕円出射光束を集光する方式を検討し、本論文で検討する直接集光方式の特 徴を明確にする。 第3章では楕円光束を楕円形状の集光光束に集光する直接集光方式を用いた場 合の再生光学系の特性を理論的に解析する手法について述べる。回折理論を用い て、ディスク上の集光光束の形状、再生信号の空間周波数特性、隣接情報トラッ クとのク・ストーク特性・ディスク上の光パワー等を解析する式を導出し}4章 における具体的な問題に対する計算の基礎を与えている。 第4章では、第3章で導いた光ヘッド光学系の解析式を用いて、集光特性、再 生特性について実験と比較しながら検討し、最適値・許容値を明確にする。再生 特性の点から集光光束の情報トラックに対する最適な方向、および、対物レンズ 入射楕円光束の光束径の最適値を明らかにする。また、製造時に問題となる入射 光束の設計値からの位置ずれに対する再生特性変化について明確にする。 第5章では、非点収差法とフーコー法フォー一カスセンサーの基本特性、および 特性改善について述べる。特にコンパクトディスク装置、ビデオディスク装置に 広く用いられている非点収差法については、楕円光束を用いた場合のセンサー検 出特性解析式を導き、実験と比較して解析式の有効性を示し、製造時の位置ずれ に対する許容値について検討する。フーコー法については、センサー特性解析式 を導き、検出範囲拡大策を提案実誕する。 第6章では、3ビーム法とプッシュプル法トラッキングセンサーの特性解析式 導出と計算を行い実験と比較する。3ビーム法についてはセンサー特性解析のた めの計算式を導き、最適使用条件と光ヘッドの位置ずれ許容値を明確にする・プ ッシュプル法に対しては、センサー特性解析式を導き、実験との比較で解析式の 一5一 有効性を確認する。 第7章では、光学系の簡素化について検討する。部品の主要パーツであるレン ズのプラスチック化について述べる。特にコリメー一ターレンズと無限共役形対物 レンズを一体化した有限共役形プラスチック対物レンズで、従来と同様の特性が より簡素化された光学系で得られることを提案実証する。 第8章では、半導体レーザーを用いた場合に問題となるディスクからの戻り光 によるノイズを低減する方策について研究する。負帰還法を提案実証し、光帰還 法の有効帰還範囲を検討し、高周波重畳法の改善効果について実験する。 第9章では、第2章から第8章までの本研究の成果を総括し、光ディスク装置 の今後の展望について述べる。 付録では、直接集光方式の有用性を示すため、コンパクトディスク装置、追記 形光ディスク装置、書換形光ディスク装置に対応した各種光ヘッドの具体的試作 例について紹介する。 第1章の参考文献 1) P.Rice: J. SMPTE 79 (1970) 997. 2) W.van den Busshe, A. H.Hoogendijk and J.H.瞬essels: Philips Tech. Rev. 33, No.7 (1973) 181. 3) K.Compaan and P.Kramer: Philips Tech. Rev. 33, No.7 (1973) 178. 4)三菱電機、ティアック、東京電化”PCMV一ヅサウンドディスクおよびプレヤ”広報資料, 8 (1977). 5) T.Iwasawa, T.Sato and A.Ogawa:”Development of the P. C. M. Laser Sound Disc and Player”, AES 58th Col}vention, P.10 (1977). 6) Y.Takeda and T. Tsunoda: ApPl. Opt. 17 (1978) 867。 7)近藤、岡田、久保:第42回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1981)p.83. 8)近藤:特許No.1678206(1992). 一6一 第2章 光ディスク装置の構成と原理 2.1 はじめに 光ディスク装置は、非接触でディスクからミクロンオーダーの情報を読み出す システムであり、高密度であり同時に情報記録媒体の交換と長期保存を可能とし ている。ミクロンオーダーの情報単位から正確に情報を読み取るためには、ディ スク上のピットにミクロンオーダーの光束を集光すると同時にミクロンオーダー の集光光束(光スポット)を正確に照射する必要がある。ディスク上にミクロン オーダーの光スポットを集光する集光光学系、ディスクの情報面に絶えず最小光 スポット位置がくるように制御する光スポットの光軸方向位置自動制御(フォー カシング制御)、ディスク上の情報トラックを光スポットが正確にトレースする よう制御する光スポットの半径方向位置自動制御(トラッキング制御)の技術が 重要となる。これらの光学的・機械的要素を含む装置が光ヘッドである。 本章では、光ディスク装置、特に光ヘッドを中心に構成と原理について検討す る。その中で、光学系に要求される課題について検討する。最初にコンパクトデ ィスク装置、ビデオディスク装置を一例とする光ディスク装置について述べ、信 号再生原理、ミクロンオーダーの集光光学系、光スポットの光軸方向位置ずれ検 出センサー(フォーカスセンサー)、光スポットの半径方向位置ずれ検出センサー (トラッキングセンサー)について検討し、光学系に要求される性能及び課題に ついて明らかにする。最後に追記形光ディスク、書換形光ディスクの構成と記録 再生原理を述べる。 2.2 光ディスク装置の構成 CD、ビデオディスク(VD)を一例とした光ディスク装置のブロックダイヤ グラムを図2−1に、光ヘッドとディスクの構成を図2−2に示すi)。また対物レンズ をディスク面と直交する方向(光軸方向)および情報トラックと直交する方向 (半径方向)に駆動する2次元対物レンズ駆動機構(2次元アクチュエーター) を図2−3に示すL2)。ディスクはモーターによって回転され・ディスクの情報は 光ヘッドにより電気信号として読み取られ、その電気信号は信号処理されてビデ 一7一 ディスク を_光ヘツド 信号処理 モータ ビデ ビデオ信号 オーディオ信号 Iー フオーカシング ァ御 トラッキング ァ御 回転制御 図2−1光ディスク装置のブロックダイヤグラム \\∼一 /ディスク 光スポット(∼1,5μm) 憶トノ嘉1.6μ, si ’ O・ 4μm 金属膜 対物レンズ 0,1μm 光検知器 コリメーターレンズ センサーレンズ (拡大レンズ+円筒レン ームスプリッター 回折 半導体レーザー 図2−2光ヘッドとディスクの構成 一8一 トラッキング フオーカシング制御 制御 対物レンズ アルミ軸受 ホルダー ヨーク トラッキング コイル べ一スヨーク フオーカシング コイル 図2−3 軸摺動回動型2次元アクチュエーター 一9一 オ信号やオーディオ信号に変換される。図2−2の光ヘッドにはディスク面振れに よる最小光スポット位置とディスク情報面とのずれ(焦点ずれ)や偏心による光 スポット中心と情報トラック中心とのずれ(トラックずれ)を検出するための光 学的センサーが内蔵されており、焦点ずれやトラックずれに応じて対物レンズを 光軸方向や半径方向に図2−3に示す2次元アクチュエーターにより補正駆動され るよう構成されている。 2.3 集光と信号再生 図2−4は再生専用光ディスクの信号再生原理を示す図である。ピット外(ラン ドと呼称)に光スポット(∼1.5μm)が照射されたとき反射光は大部分対物レン ズに再入射するが、ピット上に光スポットが照射された時には反射光が回折され 対物レンズに再入射する光束が減少する。この反射光強弱によりディスク記録情 報が再生される。回折の程度はピット深さに関係し再生信号レベルに影響を与え る。この関係を図2−5に示す3)。図からわかるようにピット深さが読み取り光瀬 波長の1/4で変調振輻は最大となり、1/2で変調振輻は零になる関係にある。なお、 ディスクに照射される光束は厚さ1.2mmの透明基板を通して集光されるので、デ ィスク表面では光束は約1mmφに広がっており、比較的塵埃や傷に強い特長があ る。 次にミクロンオーダーに集光する集光光学系について述べる。当初製品化され たビデオディスク装置の光源であるHe−Neガスレーザーは、光出力約lmwで光束径 0.7mmφ程度の平行光束であり、図2−6に示す様な簡単な集光光学系が用いられて いた。一方、ビデオディスク装置、コンパクトディスク装置では半導体レーザー として波長780nm、光出力3∼5mw程度のものが用いられている。そのような半導 体レーザーから出射される光束は図2−7に示すように発散光束でかつ楕円形状で あり、このような光束をいかに簡単な光学系で損失を少なく集光するかが研究課 題の一っだった。当初、楕円光束をそのまま集光すると楕円光スポットになり応 用上好ましくないと考えられ、円形の光スポットを得るため楕円光束を円形光束 にする方法が研究された。円形出射光の半導体レーザー開発の研究もなされた4)。 楕円光束を円形光束にする方法として、楕円の平行光束を円形光束に変i換するプ リズムによるビーム整形方式(図2−8)5)や円筒レンズによるビーム整形方式 一10一 レーザー光 レーザー光 対物レンズ ノ /鰯トラツク 回折光 回折光 ランド ピット / / (a)ランド上 (b)ピツト上 図2−4光ディスクの再生原理 波長λ:0,78μm ディスク基板屈折率:1。55 λ/4:::0.78/4×1.55::0、126μm 理 蝋 驕 慰 λ/2 λ/4 〇 〇.{}5 0,1 0,15 0.2 0,25 ディスクピット深さ[μm] 図2−5 波長、ピット深さと変調振幅の関係 一11一 対物レンズ ∼O.7mmφ凸レンズ He−Neレーザー 図2−6 He−Neレーザー集光光学系 強度 半導体レーザー 一30 −20 −一10 0 10 20 出射角(°) 図2−7 半導体レーザー出射光の形状 12 30 円形光束 プリズム\ 楕円光束 半導体レ+\ \ 対物レンズ \コリメーターレンズ 図2−8 プリズムによるビーム整形方式集光光学系 円形光束 コリメーターレンズ楕円光束 半導体レ+陥凹レンズ円筒凸レンズ対物レンズ 図2−9 円筒レンズによるビーム整形方式集光光学系 一13一 (図2−9)6)が研究された。これらの方式は、レーザー光の使用効率が高く、特 に記録を伴う用途に適しているが次のような問題点がある。図2−8に示すプリズ ムを用いた方式は、プリズムに入射する平行光束の平行度に高精度が要求され、 製造時に高精度の調整が必要で、半導体レーザーとコリメーターレンズの間隔が 温度・経年変化等によって変化することまで検討する必要がある。また、プリズ ム入射面での入射角が大きく、この面での反射損失が大である。図2−9に示す2 枚の円筒レンズによる方法は、円筒レンズ間の間隔と光軸回りの位置合わせの両 方の調整が必要であり、集光系に要求される厳しい部品精度(約1/10λ)を満た す円筒レンズを多量に量産するのは現時点では難しい等の問題がある。 一方、これらの問題点がない方法として図2−10に示す楕円光束の短軸方向径と 対物レンズ有効径を合わせて集光する直接集光方式7’8)について検討する。本論 文で詳しく検討するが、楕円光スポットでも最適化された入射条件を選べば使用 可能である。この方法は調整が簡単であるのが長所であり、楕円光束の長軸方向 の光束を捨てるパワー損失があるが、実用上問題はなく、コンパクトディスク装 置1’9’1°)、ビデオディスク装置11)、ディスク盤面上のパワーが10mw以下の追記 形光ディスク装置12)、書換形光ディスク装置13’ i4)では用いることが出来る。 本論文では円形光スポットと楕円光スポットの比較を光束形状(光スポット形状) ・再生周波数特性・クロストーク・パワー特性の点から詳細に検討し、楕円光ス ポットの直接集光方式で高い性能の得られることを明らかにする。 2.4 集光光東の光軸方向位置ずれ検出 集光光束の光軸方向位置ずれ検出センサー(フォーカスセンサー)は、ディス ク情報面と最小光スポットとのずれ(焦点ずれ)量を検出するセンサーで、その 出力をフォーカシングアクチュエーターに印加し、対物レンズの光軸方向位置を 制御する。従来から種々のセンサー方式が検討されてきたが、重要な点は、適当 なリニアゾーン幅があり、組立時の調整が簡単で、光学系が簡素で光学部品の数 が少ないこと、信号読みだし光学系とできるだけ光学部品が共用出来ること等で ある。当初、読みだし光束以外に集光点位置検出用に別の細い平行光束を設ける 方式が用いられてきたが、光学部品数が多く、調整も複雑であり、簡単化のため 種々の方式が試みられてきた。 一14一 楕円光束 \一 / 半導体レザー \ コリメーターレンズ 図2−10直接集光方式集光光学系 一15一 対物レンズ 2分割光検知器 ディスク渤レンズ 補正器 一 乃一力ス 補正器 エラ悟号 (a)光学系 光束 2分割光検知器 巾 裏胆 I l →喫1「\ 「\H 近 50100 一100−50 遠 (μm) 焦点ずれ (b)検出特性 図2−11面密度法フォーカスセンサー 一16一 図2−11は・面密度法と呼称される方式で15)、信号検知と集光点位置検出を2 分割光検知器の出力を演算する事により同時に行う方式であり、図示の様なセン サー特性が得られる。信号読みだし光学系と共用できる構成の簡単な利点がある が、合焦点付近の直線性が悪く制御性能が十分得られなかったので実際の光ディ スク装置の製品には採用されていない。 図2−12は、半導体レーザーの自己結合効果を利用した方式で16・17)、ディスク からの反射光が再び半導体レーザーの発光面に再入射することにより図2−13のよ うに発振レーザー光の出力が変化することを用いている。レーザー光の出力変化 は、後方の出射光から光検知器により検知される。この光検知器の出力には、信 号出力のみならず、焦点ずれ、トラックずれ信号が含まれている。ディスクが合 焦点位置にきた時に、共役位置の発光点に再入射する光束が最も多くなる。対物 レンズはウォブラーと称する加振器で光軸方向に一定周期で高速(例えば30KHz) で微小に振られている。信号出力と発振器の出力を掛算すると図示のような焦点 ずれ検出特性が得られる。集光点位置検出センサーとして光学系の調整不要であ り、実際にデジタルオーディオ信号の再生用として試作されたが、レンズを加振 するのが大変なこととCDの信号が比較的低域まで信号帯域をもっており加振周 波数とオーバーラップし不都合が発生することから、ビデオディスク装置、コン パクトディスク装置の製品には採用されていない。しかし、光学系の余分な調整 が不要で経年変化にも強く、用途によっては再検討の余地があると思われる。 図2−14は非点収差法と呼ばれる方式で18)、現在再生専用のCD、VDに最も 広く採用されている方式である。対物レンズと光検知器の間に置かれた円筒レン ズにより、4分割光検知器上に非点収差を発生させる。光検知器は、ディスクが 合焦位置にある場合に光検知器上の光束が円形になる位置に置かれている。ディ スクが合焦位置よりずれると、光検知器上の光束形状が楕円となり、かつずれる 方向により楕円の長軸方向が90°異なる。従って対角の光検知器を共通として隣 接光検知器の差動出力を計算すると図示のような検出特性が得られる。この方式 は検出特性の上下左右対称性も良く、リニァゾーンと呼ばれる直線状の範囲も原 理上自由に設計出来るのが特長である。本論文では、楕円光束を楕円のまま集光 する直接集光方式における本方式の利点に着目し、製造時に問題となる光検知器 の位置ずれに対する特性変化について検出特性解析式を導き詳細に検討する。 一17一 ディスク 対物レンズ ウオプラー一一一 、de!ウオプラー(半径方向} 発振器 (光軸方向) コリメーターレンスs 半導体レーザー 光検知器 笹 バネ\ ∠ アクチュエーター / 発振器 掛算器 掛算器 信号処理回路へ 図2−12 自己結合効果によるフォーカスセンサー 出力 (b)フォーカスエラー儒号 図2−13 自己結合効果によるレーザー出力特性と焦点ずれ検出特性 一18一 円筒レンズ 集光レンズ/ \ ゆ 4分割光検知器 ディスク位置 光束形状 演算 ia+c)一(b+d) 遠い 合焦 近い a a oユd C a kラd C gBd C 負 0 正 (a)センサーの原理 FE=(al−c)一(b十d) フオーカスエラー信号 FE (遠い) (近い) \ 焦点ずれ 合焦 (b)検出特性 図2−14 非点収差法フォーカスセンサー 一19一 (近) ディスク対物レンズ/ ビーム分割 光検知器 プリズム 差動増幅器 (遠) (a)センサーの原理 FE=(S1十S4)一(S2十S3) フオーカスエラー信号(FE) 焦点 焦点ずれ (近) 0 (遠) (b)検出特性 図2−15 フーコー法フォーカスセンサー 一20一 図2−15はフーコー法と呼ばれる方式で19)、追記形光ディスク装置・書換形光 ディスク装置に広く採用されている。対物レンズと2組の2分割光検知器との間 に置かれた鈍角のプリズムで反射光束を2組の半光束に分け、それぞれの反射光 束集光点に2分割光検知器の分割線が位置するよう置かれる。この方式は、追記 形光ディスク・書換形光ディスクの情報トラックを横断する時のセンサーエラー が少ないのが特長であるが・光東径の小さい集光点に光検知器を置くので、リニ ァゾーン輻が狭くフォーカシング制御の動作の安定性が低くなる、調整が敏感で ある等の問題がある。本論文ではセンサーの基本特性解析式を導き、この方式の 欠点を改善するリニアゾーン幅拡大の方策について提案する。 2.5 集光光束の半径方向位置ずれ検出 集光光束の半径方向位置ずれ検出センサー(トラッキングセンサー)は、情報 トラック中心と光スポット中心との位置ずれ(トラックずれ)を検出するセンサー で、その出力をトラッキングアクチュエーターに印加し、対物レンズの半径方向 位置を制御する。重要なことは、組立時の調整が簡単なこと、光学系が簡単で光 学部品の数が少ないこと、ディスク傾きに対する検出誤差が少ないことである。 種々の方式が試みられてきたが現在光ディスク装置の製品に採用されているのは、 3ビーム法とプッシュプル法である。 図2−16は3ビーム法と呼ばれる方式で2°)、図2−2に示すように半導体レーザー一 と対物レンズの間に回折格子を配置し、ディスク上に0次光、±1次光の3個の ±1次光に対応する光検知器E、Fの差動出力は、トラックずれの方向に応じて 正負に変化する。0次光に対応する中央の光検知器からはディスク再生情報が得 られる。本方式は、回折格子が必要であるが、ディスクの傾き、トラッキングア クチュエーターの変位に対する検出誤差が小さいのが特長である。 図2−17はプッシュプル法と呼ばれる方式で2i)、反射光の集光点でない位置に 情報トラック方向に分割線を有する2分割光検知器を配置する。光スポットがト ラック中心から左右にずれると、情報トラックと直交する方向の光強度が回折に より変化する。この変化を2分割光検知器の差動出力によってとらえ、トラック 光スポットを情報ラクに対し微小角なすよう構成る。ディ上の ずれを検出する。光学系にセンサー用の追加部品が不要であるが、ディスク傾き、 一21一 情報トラック θ 十1次光 0次光 一1次光 ピット (a)ディスク上の光スポツト TE=E−F トラッキングエラー信号(TE) 0 トラックずれ ノ (b)光検知器上光束とトラックずれ検出特性 図2−16 3ビーム法トラッキングセンサー −22一 ディスク 反射光の強度分布 2分割光検知器 Si Si 一一 S2 S2 (a)センサーの原理 TE=・Sr−S2 トラッキングエラー信号(丁E) トラックず (b)検出特性 図2−17 プッシュプル法トラッキングセンサー −23一 トラッキングアクチュエーター変位による特性変化が大きい。 本論文では、この2方式に対し直接集光方式を用いた場合の検出特性解析の計 算式を導出し理論的検討を加え評価を行う。 2.6 光ディスクの種類 光ディスクは、CD、VD等の再生専用タイプ以外に追記形光ディスク・書換 形光ディスクがある。追記形は一度記録すると永久的な記録となる媒体であり・ 一般に現像プロセスのいらない記録材料を使用する。図2−18に示すように媒体面 に高出力の光スポットを照射して、穴をあけたり相変化させることにより記録が 行われる22)。書換形は、記録材料として光磁気材料等の消去可能な物質を用い る。図2−19に記録再生の原理を示す23)。記録面は磁性体で出来ておりあらかじ め一方向に垂直磁化されている。記録は高出力の光スポットを媒体面に照射し・ キュリー点以上に温度を上げ、同時に外部磁界を与えることにより記録面である 垂直磁化膜の磁化の方向を反転させて記録する。再生は、照射光として直線偏米 を用いると、磁化の向きに依存して、反射光の偏光面が互いに逆方向に回転する 現象(カー効果)を利用して行う。なお、これらの光ディスクを記録再生する光 ヘッドの具体例については付録で紹介する。 2.7 まとめ 本章ではCD、VDを例として光ヘッドの基本構成を述べると同時に光ヘッド の重要な光技術である集光、フォーカスセンサー、トラッキングセンサー、記録 再生について原理を説明し、He−Neレーザーから半導体レーザーに移行するにあ たっての研究課題について述べた。集光では、半導体レーザーの楕円形状の発散 出射光束を従来のHe咽eレーザー並の性能が得られるように集光する必要がある ことを述べ、具体的集光方式として、円筒レンズ・プリズムによるビーム整形方 式の複雑な点を解決する方策として、直接集光方式の利点を示した。さらにフォ ーカスセンサーとして現在まで検討された面密度法、自己結合効果による方法の 問題点を指摘し、同時に、現在用いられている非点収差法、フーコー法について 解決すべき点を示し、またトラッキングセンサーとして採用されている3ビーム 法、プッシュプル法について検討し、本論文において理論的取扱いから評価を行 一24一 レーザー光 弱い反射 (a)穴あけ (b)相変化 図2−18追記形光ディスク 一25一 レーザー 昂 壱lel↓;宙{壷1冬1い鱈萌覗い 磁化 (a)記録(消去)原理 (b)再生原理 図2−19 光磁気ディスクの記録、再生原理 一26一 うことを示した。最後に、追記形光ディスクと書換形光ディスクにつき構成と記 録再生原理を述べた。本章において光ディスク装置の原理と全体構成から、本論 文の研究の位置づけを明確にした。 第2章の参考文献 1)河野・木目・近藤、鹿間、橋本:三菱電機技報60(1986)P.177. 2)木目、近藤:特許No.1353403(1979). 3)後藤(監修:野田、大越):応用光エレクトロニクスハンドブック、(昭晃堂、1989)p.430. 4) Y.Takeda and T. Tsunoda: ApPl。 Opt. 17 (1978) 867. 5)米沢、杉山、尾島:特開昭54−74664. 6)張1替、吉田、中田、永島、佐藤:特開昭55 ・一 108612。 7)近藤、岡田、久保:第42回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1981)p.83. 8)近藤:特許No.1678206(1992). 9)近藤、木目、鹿間、河野、田村:三菱電機技報58(1984)p.742. 10) S.Shikama, E. Toide, M. Kondo and K.Kime: Proc. SPIE 695 (1986) 199. 11)上村、久保、平沢、近藤、木目:三菱電機技報S6(1982)p.341. 12)篠田、近藤:光学15(1986)p.326. 13) T.Fujita, M. Kondo, K.Kime and N. Tomikawa: Technical Digest, Optical Data Storage, Washington, 1985 (Optical Society of America, Washington, DC, 1985) Paper ThAA2−1. 14) T.Fujita, N. Takeshita, M.Karaki, M.Kondo and K.Kime: Proc. SPIE 695 (1986) 187. 15)木目、近藤、岡田、永井:第25回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 (1978) p.196. 16)近藤、岡田、木目、須崎:第25回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 (1978) p.197. 一27一 第3章 集光系の理論的解析 3.1 はじめに ディスクの記録・再生に用いるディスク上の集光光束(光スポット)の形状は 良好な記録・再生特性を得るうえで非常に重要である。また再生S/N、記録パワー の点からディスク上のレーザーパワー一 m度は重要である。本章では、これらの解 析に必要な計算式を導く。まず、回折理論を用いて、半導体レーザーから出射さ れる楕円光束を集光した場合のディスク上光スポット形状解析のための計算式を 導出する。さらに回折理論を用いて、ディスク上の光スポット形状より、ディス ク上の情報ピットを再生した場合の空間周波数特性・クロストーク特性解析の為 の計算式を導く。最後に、楕円ガウシアン光束を対物レンズに入射させた場合に 対物レンズを透過する有効パワーを計算する式を導出する。 3.2 光スポット形状 直接集光方式1’2)によりディスク上に集光された光スポットの強度分布を計算 する。図3−1に光ヘッドに用いられている直接集光方式の一例を示す。半導体レ ーザーの前方出射光は楕円形状の発散光束であり、コリメーターレンズにより平 行光束に変換される。その光束は断面が楕円のガウシアン光束である。その光束 は対物レンズにより集束光束になりディスクの透明層を透過して情報記録面上に 集光され、ディスク上の情報を読みとるよう構成されている。 ディスク上の情 報を含む反射光はビームスプリッターにより照射光路と分離され光検知器により 電気信号に変えられる。 図3−2は直接集光方式を用いた光ヘッドにおけるレーザー光束の波面(WF)を 示す。ここで、平行化された楕円ガウシアン光束は短軸方向径[光強度が中心最 大強度の1/e2(13.5%)になる径で定義]を対物レンズ有効径程度にして対物レン ズに入射させる。 簡素化のため、ディスクと対物レンズよりなる無収差系は、透明層のないディ スクと無収差の対物レンズにより構成される系に置き換える。半導体レーザーの 発光点Lからの出射楕円光束は等位相面が球面の発散光束である。コリメーター 一29一 コリメーターレンズ 対物レンズ ヒ9一ムスプリッター 半導体レーザー 円筒レンズ ディスク 信号出力 光検知器 図3−1直接集光方式による光ヘッド光学系 COしB1 AIWFA 、 AP AP OBJ T ISW 篭ユ_亀 L T F 一イ まN 一 、 乳 f 』_ m ノ 2a `2 》 B2 L:半導体レーザー発光点 2Wx iSW:積分球面 COL ::1リメーターレンスPt AP:アパ一チャー OBJ:対物レンズ WF:波面 F:焦点 (b)Ai−A2断面 (a)レーザー光束の集光系 (c)B1−B2断面 図3−2直接集光方式集光光学系のレーザー光束の波面 一30一 レンズ(COL)により平行化された光束は等位相面が平面になり、対物レンズ (OBJ)により集束光束にされる。対物レンズ系が無収差なら焦点に向かって進 む集束波の波面は焦点Fを中心とする球面になる。図3−3はレンズ面と焦点付近 の座標関係を示す図である。焦点付近の光束の振幅E、(X、,y、,Z、)は、次式で 表される3’4)。 E・(一・) aix・y) exp(ikr) ds (3−1) r C:effeCtlVe 互enS area ここでkは波数で光の波長をλとするとk=2π/Rであり、rは焦点からの距離 であり次式で表される。 r= (X−X、)2+(y−−y、)2+Z2 (3−2) 積分は焦点距離fを半径とする球面上(ISW)でなされ、積分範囲は対物レン ズの開口数で決まる。またF(x,y)は積分面上の光束の振幅分布を表わす。こ の式は集光一般に適用される式であり、F(x,y)のファクターに円形光束集光 と異なる楕円光束集光の要素を入れると楕円のガウシアン光束集光の式となる。 楕円ガウシアン光束の短軸方向・長軸方向の光束半径を中心最大強度の1/e2(13.5%) になる半径で定義してωx,WYとし、対物レンズ入射光束がレンズ中心からDx,DY ずれているとすると、光束の振幅F(x,y)は、 F(X・y)一・xp{一[((NSgfesx)):((Xit9’y))2]} (3−3) と表される5)。ISW上の点(x,y,z)とdsは、球座標を用いて以下のように 表される。 一31一 Ei(Xl,Y1,Zl) y2 X2 y1 φ1 X1 Z rl F(x,y) X E2(X2,Y2,Z2) E2( P lT y @ f θ1 iX,y,Z) φ r 、 F fθ F 1SW Dx,DY) f 1 SW f Z1 Z1 図3−3 対物レンズと焦点付近の座標 一32一 i)C==ノsinOCOSφ y=∫sinθsinφ X=・−fCOSθ一一Z、 ds=∫2sinOdθdφ ここでz、は焦点ずれを表す。座標変換を行い、式(3−1)を書き直すと 轣Fπ∫絢[(f・’nθ妾1・φmDx)‡ E・(一・)−A (fs’1utz$Y1−t22=−122sln¢Dy)2]} xexp(ihr)f・sinθdθdφ (3−4) r となる5)。ここで式(3−2)は r= (∫sinθcosφ一JC i)2十(∫SinθSinφ一y1)2十(∫cOS O十Z1)2 (3−5) となり、対物レンズの開口数NAを用いて、集光角θ。と対物レンズの有効半径 rEは次のように表される4)。 Oo=sin−1.Z>−A (3−6) rE=∫sinθ0 (3−7) また、楕円ガウシアン光束と対物レンズ有効半径との寸法関係を明確にするため にけられの係数kx, kY 6)を用いてωx,ωYを次のように定義する。 Wx=kx rE (3−8) WY=kYrE 一33一 焦点付近の光スポットの強度分布1、(x、,y、,Zi)は、振幅の絶対値の二乗にな るので ¥∫1π縮P{一[(∫s’nθ含lsφ )$(∫s 評蝉]} ・・(一・) 2 ×exp(ikr)f・sinθd。d.ip (3−9) r となる。また、均質波を集光する場合は、式(3−3)のF(x,y) は F(x,y)==1 (3−10) となり、焦点付近の振幅Em(X、,y、,X、)、強度Im(X、,y、,Z、)は ・ Em (xieYieg・)… ・一 ( x,,y・・z・ X1n∫8°exp9ゐr)f・s一φ(3−11) C∫!°exp(鯉∫・s−dφ2(3−12) と計算される4)。 3.3 再生空間周波数特性 集光された光スポットは、ディスク上のピットをトレースするとき、空間周波 数特性が信号対雑i音比(S/N)及び情報記録密度に大きく影響する。ここで、集 光された光スポットの空間的広がりに関係した周波数特性とピットとの関係を明 らかにする。 光スポットはCD、VD等のディスクで反射される際、情報ピットにより位相 一34一 変調され・集光レンズへ再入射する光束の分布は通常のミラーによる反射と異な る。情報面上のピット以外の領域をランドと呼称し、反射振輻を f(x・・y・) (3−i3) とすると4)光スポットの振輻はE・(X1,y1,91)なのでディスクにより反射回折 された光の焦点距離fを半径とする球面上での振輻は、図3−3の座標系で E・(一・)・… i−:亙:∫(x・・y・)E・(一・・z・)騨・・)一・ (3−14) となる。これは 轣 E・(x・・y・・z・)−A E1(x1,y1,Zl) L:tota1 丑and area eXp(ikアー1) dx,dYl r1 +A exp[ik(2n d・) ]∫∫ E,(X1,)ノ1,2:1) P:tota亙 pit area 一A 轣轤k契翻論) exp(iたri) dxldyl r1 exl)(ihr1) dxldy1 r1 +A 轣逞Z論諮) exp(ikrユ) −A 轣逞Z識諮) exp(ikr1) 一35一 dx,dy1 rユ dxldy1 r1 +A exp[i 剛∫∫P繍}濡)e轡r’)dx・dy・ −A亘:亘:E・(X1,)ノ1,Z1)・xp㌧1…)dx・dy・ +A{・xp[i h・(2n・dp>]一・}∫∫P互繍磁)exp緕 )dx・dy・ (3−15) と変形される。ここで r1=: (x2−x1)2+(y2−y1)2十z22 (3−16) である。さらに(κ2,y2,z2)を球座標で表すとz、を焦点ぼけとして ・ X2==∫sinθ1COSφ1 y2=∫sinθ1sinφ1 22=fCOSθ1十Z1 であるので、式(3−15),(3−16)は r:亙:E・(x・・y・・z・)exp(rl )d x・dy・ E・(e・・φ・)−A +A{・xp⊂ik(2n d・) ]一・} 轣轤o脇証ゴ(1詐r1)dx・dy・ (3−17) r1== (∫Sinθ1COSφ1−X1)2十(∫SinθiSinφ1−yi)2十(∫COSθ1十Zi)2 (3−18) −36一 となる。ここで球面ISW上での反射光束の強度分布は i:亙:E・(x・・一・)・xp㌧1たr・)dx・dy・ ・・(θ・・φ・)−A +A{…[i d・)]一・} 迴R1品1濡)exp(諮r・)dx・dン・ 2 (3−19) となる。ここで積分範囲を±・。ではなくx方向、y方向それぞれ±a、±bの矩 形範囲内とすると強度1,(0ユ,φ、)は a ・・(θ・・φ・) E、(X1,y1,91) −a exp(ikr1) dxldYl r1 +A{・xp[ik(2・ d・) ]−i}9J E1(X1,⊃ノ1,91) exp(iたr1) P:total pit area 2 dxldYl r1 within a rectangRe (3−20) となる5’7)。ここで積分範囲Pは、矩形範囲(±a、±b)内の全ピットについ てである。再び対物レンズを透過して光検知器に入射する光束SDは イ窟1(θ・・φ・)・in・・dθ・dφ・ (3−21) と計算される。ここで集光角θ。は式(3−6)で示される値である。光スポット中心 とピット中心が一致している場合、式(3−21)を用いて計算される光検知器入射光 束をS・とし、光スポット中心とランド中心が7致している場合の光検知器入射 光束をSLとすると、再生信号レベルSは 一37一 (3−22) S=SL−SP となる5・7)。 3.4 クロストーク特性 光スポットの空間的広がりにより、隣接情報トラックからの信号がメインの信 号に混入し、クロストークとなる。このクロストーク計算式を導出する5’7)。 情報トラックの光スポット中心からのずれをtとし、ピット輻をwとし・ピッ ト長Pは積分範囲2bより充分長いとする。 y方向の光スポット中心にy方向の ピット中心がある場合に式(3−20)は ・・(θ・・φ・・t)−A 閨F E1(X1,y1,之1) exp(ikr1) dx,dy1 rl b w/2÷t ∫∫E・(rc 1, IY 1, Z・) 十A{exp[ik(2ndp)]−1} exP ( i たr1) r1 −b 一厨/2+亡 2噛 dx,dyユ (3−23) となり、光検知器入射光束S。(t)は式(3−21)より 刀iθ・・φ・・老)・inθ・dθ・dφ・ (3−24) の一 となる。y方向の光スポット中心にy方向のランド中心PN“ある場合、式(3−20)は A亙:亙:E・(X1,y1,Z1) lL(θ1,φ1)== 2 exp(ikrエ) dx,dy1 r1 となり、光検知器入射光束S。は式(3−21)より 一38一 (3−25) イ∫≠(…φ・)・in・・dθ・dφ・ (3−26) となる。 クロストークC(t)をメイン信号(トラックずれ零の信号)との比で 表すと S。(の一一 S。 c(t)= Sp(0)一“ SL (3−27) と計算される5’7)。 3.5 対物レンズ透過率 図3−4に示すように光東中心よりDx,DYずれた半径rEの対物レンズに光束半径 ωx,ωYの楕円ガウシアン光束が入射すると、そのときの透過率は 一π意∫肱ll熱r卜κdy (3−28) となる5)。積分の前の係数は全光束を1に規格化するためである。ここで対物レ ンズは中心がDx,DYずれているので (x−1)x) 2十 (y−1)Y) 2=:rE2 (3−29) と表される。ここで X==ωXXl (3−30) ン= WYY1 とおくと 一39一 弓眺齢:1㍊乱醜油 (3−31) となる。ここ・で積分範囲は図3−5に示す楕円内の範囲となる。さらに X上==rcOSθ y1=:「sinθ (3−32) とおき極座標に変換すると イ[∫1・xp(−2r・) ・d r] d・ 一毒∫整[1−exp←2r・)]d・ (3−33’) となる。ここでrはθの関数である。式(3−30),(3−32)を式(3−29)に代入すると (ωxrcosO−Dx)2十(ωYrsinθ一DY>2==rE2 (3−34) となり、式(3−34)を解くとrは B+・》面 (3−35) r(o)= となる。ここでA、B、 Cは ノ1==ωx2COS2θ十ωY2sin2θ 一40一 Y 入射楕円がウシアン光束 入射楕 Dx ま 対物レンズ入射瞳の縁 ホ物レ 廷 6 0 Wx 図3−4入射楕円光束と対物レンズの座標 Yi 対物レンズ入射瞳の縁 図.3’s座願換後の謝欄光束と対物レンズの座標 一41一 B:=DxWxC◎Sθ十DYωYsinff (3−36) C ・Dx2+DY2−rE2 である。この式により、アパーチャー透過率を一回の積分で求めることが出来る。 3.6 まとめ 本章では、楕円光束を楕円形状の集光光束に集光する直接集光方式を用いた場 合の再生光学系の特性を理論的に解析する手法について述べ、第4章で具体例に ついて計算する基礎を与えた。具体的には、回折積分を用いて楕円ガウシアン光 束を対物レンズ等で集光した場合の光スポット形状計算式を導出するとともに、 ディスク上の光スポット形状より空間周波数特性、隣接情報トラックとのクロス トーク特性を解析的に求める計算式を導出した。さらに、対物レンズ透過光束を 求める計算式を導出した。 第3章の参考文献 1)近藤、岡田、久保:第42回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1981)p.83. 2)近藤:特許No.1678206(1992). 3) H。H. Hopkins: J. Opt. Soc. Am. 69 (1979) 4. 4) M.Kondo: Jpn. J. ApPl. Phys. 31 (1992) 2452. 5) M.Kondo: Jpn. J. ApP1。 P}lys. 32 (1993) 2702. 6)龍岡、杉浦:NHK技術研究27(1975)p.10. 7)近藤:レーザー研究Vol.21, No.6, June 1993, p.634. 一42一 第4章 集光光学系の計算と実験 4。1 はじめに 半導体レーザーの出射光束は楕円ガウシアン光束であり、楕円ガウシアン光束 を楕円のまま集光する直接集光方式による集光系の諸特性・再生特性等について 検討する。まず、直接集光方式により1・2)、等方ガウシアン光束のHe−Neガスレ ーザー集光時と同程度のクロストーク特性とHe−Neガスレーザー集光時以上の周 波数特性が得られること、および実用上充分な集光パワーが得られることを示す。 さらに・けられを変えると光スポット径・光スポット形状が変化しクロストーク ・空間周波数特性に影響を与えることを示す。またけられを変えた場合の対物レ ンズ透過率について検討する。最後に、対物レンズ入射光束が対物レンズ中心よ りずれた場合の光スポット形状と周波数特性・クロストーク特性について検討す る。なお、計算において対物レンズ入射楕円ガウシアン光束は、図3−3に示すよ うに短軸方向がx方向、長軸方向がy方向となるよう入射させるものとする。計 算において、半導体レーザーの波長は780nm、対物レンズの開口数NAは0.5、デ ィスク上のピット幅wは0.4μm、ピット深さdpは0.11μm、ディスクの屈折率n は1.5、情報トラック方向のピット長Pとランド長L(ピットとピットの間の長 さ)の比は1とする。ディスク上における積分は、周波数特性の場合x方向y方 向それぞれ±2μ田の矩形範囲内で、クロストーク特性の場合x方向y方向それぞ れ±3.5μmの矩形範囲内で行うものとする。 4.2 楕円光スポットの方向と再生特性3) 光スポットを半導体レーザーに適した楕円としたとき、光スポットの空間周波 数特性及び隣接情報トラックとのクロストーク等に与える影響が問題となる。こ れらを計算結果と実験結果を比較しながら検討を進める。 4・2.1 光スポット形状の計算値と実測値 直接集光光学系で集光された光スポット形状の実測値と計算値が充分に一致す ることを示す。 一一一 S3一 直接集光光学系による光スポット形状の実測結果と計算結果を比較したものを 図4−1に示す。実線は実測値で、破線は計算値である。実測に用いた半導体レー ザーは波長780nmのTJS(Transverse Junction Stripe)レーザーで4)、主として 光ディスク用に開発されたものである。入射光束の楕円比WY/Wxは3、けられの 係数は1.2である。計算値は、式(3−9)を用いて集光実験と同様の集光条件で焦点 での光束強度分布を計算したものである。図4−1(a)がx軸方向、図4−1(b)がy軸 方向に相当する。なお、光スポット形状の測定は図4−2に示す系で行った。顕微 鏡の対物レンズ(40倍、NA=0.65)を2段用いた1600倍の拡大系で光スポット を拡大し、拡大像を径80μmのピンホールでスキャンし、形状を測定した5)。光 スポット径は、光スポット形状ピーク値のexp(−2)(∼13.5%)になる径で定義 した。図4−1では、直線A、Bで切られた径に相当し、図4−1(a)では実測値1.46 μm、計算値1.40μ田、図4−1(b)では実測値1.24μm、計算値1.24μmとなる。なお、 顕微鏡対物レンズで測定に使用した開口数は、集光に用いた対物レンズの開口数 0.5の範囲であり、最大開口数0.65より小さい範囲である。周辺の収差の厳し1,・ 範囲を避けており、さらに測定系を含めた光スポット形状・光スポット径の実測 値は計算値と4%以内で一致しており、測定系の収差の影響は小さいと考えられ る。また、ディスク上の光スポット形状の計算にこの解析法が有効であることを 示している。 楕円光束を集光すると楕円光スポットになる。対物レンズ入射楕円光束の短軸 方向(κ方向)が、光スポットの長軸方向[図4−1(a)]、入射楕円光束の長軸方 向(y方向)が光スポットの短軸方向[図4−1(b)]になることがわかる。 4.2.2 光スポット形状と空間周波数特性 光スポット形状の実験結果と計算結果が良く一致することが分かったので、計 算により楕円ガウシアン光束集光と円形ガウシアン光束集光、均質波集光の光ス ポット形状を比較する。焦点における光束の強度をx軸y軸に添って計算したも のを図4−3に示す。図4−3(a)は焦点における光スポットの断面形状を光スポット の中心から2μmの範囲で式(3−9)を用いて計算したものである。図4−3(b)は半径 1∼2μmの範囲の光スポットの断面形状を計算したもので、縦軸を図4−3(a)の20 倍に拡大している。特に光スポットの中心光の外側に存在する一次の極大の形状 一44一 i.46μm ㈲ (b) 図4−i光スポットの形状。実線は実測値、破線は計算値(見やすく するために水平方向にずらせて図示している。) (a)半導体レーザーの接合面に平行(x軸方向) (b)半導体レーザーの接合面に直交(y軸方向) OH OM r−−−−Pt−“−−−の N−−−の−−−Aw’ @ } BS COLOB川IOBJ20BJ2 iLD i CL i DETl L_____蝋螺____樋。_______噛醐」 R OH:光ヘッド OBJ1,0BJ2:対物レンズ(NA・O。65、×40) OM:拡大光学系 DET1,DET2:光検知器 P:ピンホptル R:X−y レコーダ一 図4−2光スポット形状測定系 一45一 P DET2 ieO (a) (b) 一一一 a 憾 \ 潤 0。5 夜 \、 2 理 “ 径(μm) ‘(iijiiijii \ 0 0 2 i 半 径(μm) A:長軸方向形状(ωY/ωx・3) B:短軸方向形状(ωY/ωx・3) C:円形光スポット D:均質波の集光 図4−3 光スポットの形状、(a)全体形状、(b)高次の極大領域、 半径1∼2μmの範囲を縦軸20倍に拡大。 一46 を比較するために計算したものである。なお、均質波の形状は式(3−12)を用いて 計算した。計算に当たって・入射光束の楕円比ωY/ωxは1と3、けられの係数k、 は1とした。図4−3より楕円ガウシアン光束集光時の光スポット形状は、けられの 小さいx方向(カーブA)は円形ガウシアン光束集光時の光スポット形状(カー ブC)に近い。一方・けられの大きいy方向(カーブB)は均質波の光スポット 形状(カーブD)に近い。 図4−3と同様の計算条件で対物レンズ入射楕円ガウシアン光束の短軸方向のけ られの係数kxに対する焦点位置での光スポット径(光強度がピーク値の1/e2に なる径で定義)を式(3−9)により計算したものを図4−4に示す。パラメーターは、 入射光束の楕円比Wy/ωxである。図4−4より光スポットの短軸方向(カーブR2y、 R3y・R5y)の光スポット径は、円形光束集光(カーブR1)の光スポット径 より小さくなる。入射光束の短軸方向のけられの係数kx=1の場合、 w。/Wx=3 の楕円ガウシアン光束集光(カーブR3y)の光スポット径D3yは、円形ガウシ ァン光束集光(カーブR1)の光スポット径D1より13%小さい。したがっ.て、 楕円ガウシアン集光の場合、光スポットの短軸方向(y方向)を情報トラックの 方向とした場合、再生周波数特性が最も良好と考えられる。 x方向の光スポット径は均質波Hが最も小さく、円形ガウシアン(カーブR1)、 楕円ガウシァン(カーブR2x、 R3x、 R5x)の順である。ただし、円形ガウ シアンと楕円ガウシアンの差は小さい。例えば、入射光束の短軸方向のけられの 係数kx=1の場合、 WY/ωx=3の楕円ガウシァン光束集光の光スポット径D3x は円形ガウシアン光束集光の光スポット径D1より4%大である。さらに、楕円 率1∼2の範囲の光スポット径変化に対し、楕円率2∼5の範囲の光スポット径変化 は小さいことが図4−4より分かる。なお、けられを大にしていくと、均質波の光 スポット径を漸近線とし円形光スポットに限りなく近づいていき、定性的な予測 と一致する。また、けられを大にしていくと短軸方向の光スポット径は大きくな る。 図4−5は式(3−33)を用いて種々の楕円率ωY/ωxに対する対物レンズ透過率を計 算したものである。図4−4より、けられが大なるほど光スポットの長軸方向(x 方向)の径が小さくなるが、図4−5に示すように対物レンズ入射パワーは、けら れが大になるとともに小になるので、必要パワーが得られる範囲に適値が決めら 一47一 2。○ R1 :ωY/ωx=1’ R2x, R2y:ωY/ωx=2 R3x, R3y:ωY/ωx=3 R5x,R5y:ωY/ωx=5 R5× R3x R2x 〈 赴 V 騨 ム ら 讐 i。5 D3× 長軸(×〉 Di K 来 R2y D3y 短軸(y) R3y R5y i。0 i 0 けられの係数 図4−4けられの係数k、に対する光スポット径 一48一 2 れる。 半導体レーザーの楕円率が3∼5程度で、けられの係数kxをHe−Neレーザー等で 採用されている1に設定すると、対物レンズ透過率は円形ガウシアン光束の30∼ 50%になる。通常半導体レーザーのパワーはVD・CD用の低出力のものでも 3mw程度であり・30%の最小透過率でもO.9mwの円形光束を用いている場合に等し く・ほぼ従来の1mwのHe−Neレーザーを用いていた場合のパワーと同じである。 3伽w以上の高出力半導体レーザーを用いるとディスク上の光パワーは9mw以上 となる・ディスク上の光パワーが8∼10mwの低出力の追記形、書換形光ディスク 装置等においても・本集光方式が使用可能である6・7)。特に、高域の記録特性に 影響する情報トラック方向の光スポット径が円形ガウシアン集光時より小さくで きる長所がある。 次に、円形と楕円の入射ガウシアン光束に対する再生信号レベルの空間周波数 特性を計算と実験により検討する。図4−6は空間周波数に対し式(3−22)より再生 信号レベルを計算したものである。信号レベルは、ディスク全面をミラー面とし た時の光検知器入射光束で正規化した。なお、計算に際し、ディスク上のピット の両端の形状は、直径がピット輻と同じサイズの半円とした。 図4−6より、集光された光スポットの情報トラック方向の径が小さいAの場合 に高域の再生周波数特性が良好であることが分かる。すなわち、楕円ガウシァン 光束集光時の光スポットの短軸方向を情報トラック方向とすると円形ガウシァン 光束集光時(カーブC)の場合より周波数特性が良好になる。楕円ガウシアン光 束集光時の光スポットの長軸方向を情報トラック方向とするBの場合、逆に円形 ガウシアンより周波数特性が少し悪くなる。図4−7は空間周波数0.85(1/μm)の 情報トラックに対し光スポットの方向を変えて実際のディスクの情報を再生した 実験である。(a)は光スポットの短軸方向が情報トラック方向、(b)は光スポット の長軸が情報トラック方向である。(a)の場合が(b)の場合より約2倍再生信号レ ベルが高いことがわかる。これは図4−6のM点の計算結果と一致する。 4.2.3 クロストーク 光ディスク装置において信号レベルの空間周波数特性と同様、隣接情報トラッ クとのクロストーク特性も重要である。以下に、情報トラックに対する楕円光ス 一49一 ’e° Rl R1:ωY/ωx=1 R2:ωY/ωx=2 R3:ωY/ωx=3 R5:ωY/ωx=5 R2 ◎e8 樋トOe6 ◎e4 姻 o.2 ◎ i ◎ 2 けられの係数 図4−5 けられの係数kxに対する対物レンズ透過率 i。0 [光スポットの方向] A:短軸が情報トラックと平行 B:長軸が情報トラックと平行 C:円形光スポット ミ て ム O。5 恥 0 o Oes M i.0 空閻周波数(1/μm> 図4−6空間周波数特性 一50一 i。5 楕 光 ト イ レ ︷ 再 / ト ツ ト ︵ ツ Rヨ中胆 R昭噌胆 イ 剛 ・ ポットの回転方向とクロストーク特性について解析する。 図4−8は、式(3−27)を用いて充分長い情報ピットに対し、情報トラックからの トラックずれに対する信号出力を計算したものでクロストークを表す。もし、情 報トラック間隔が0∼1μm(領域E)ならば、クロストークレベルは、光スポッ トの短軸を情報トラックと直交する方向にした場合が最も低い。一方、情報トラ ック間隔が1∼2μm(領域F)ならば、クロストークレベルは・光スポットの長 軸を情報トラックと直交する方向にした場合の方が短軸を情報トラックと直交す る方向にした場合より低い。これは、図4−3(b)に示されているように光スポット の長軸方向の一次の極大の強度が短軸方向の一次の極大の強度より小さいからで ある。CD、VD等のディスクは情報トラック間隔が1.6∼1.7μmなので(領域 G)光スポットの短軸より長軸を情報トラックと直交する方向にする方が望まし い。光スポ’ットの長軸を情報トラックと直交する方向にする方が短軸をそうする より2.5dB低いクロストークレベルとなる。光スポットが円形の場合、クロスト ーク特性は点線のようになる。領域Gにおいて、光スポットが円形の場合(点線) と楕円の場合(実線)のクロストークレベル差は2.5dBしかなく、楕円光スポッ トでほぼ円形光スポット並のクロストーク特性が得られる。 4.3 けられと光スポット、再生特性8) けられを変えた場合の光スポット形状、楕円光スポットの短軸方向を情報トラ ックと平行にした場合のけられに対する空間周波数特性及び隣接情報トラックと のクロストーク特性について検討する。 4.3.1 一次の極大の強度 式(3−9)を用いてけられに対する一次の極大の強度のピーク値を焦点において 計算する。図4−9は、けられに対し一次の極大の強度を計算したものである。計 算にあたって、入射光束の楕円比Wy/ωxは3、5とした。κ方向の光スポット径 と一次の極大の強度は、クロストークに関係する。 図4−4よりx方向の光スポット径は、けられが大きくなるほど小さくなりクロ ストークが小になる。一方、図4−9よりκ方向の一次の極大は、けられの係数0.7 迄は無いがけられの係数O.7以上ではけられが大になるほど大になりクロストー 一52一 0 、.. 〈 口⊃ −io ℃ Vミ や ー20 \遵_、 心 −30 \→+G _∠叩 蘇一 E>,. 巨 K −40 口 へ 一一一 T0 0 i 情報トラック間隔(μm> 2 図4−8 情報トラック間隔に対するクロストーク特性 4 〈 R3x, R3y:ωY/ωx=3 訳 R5x, R5y:ωY/ωx=5 〉 埋 /{、\ R3Y/ [>N y一方向 猛 加 遡 潤 e K ×一方向 9 気 i 0 0 Zb けられの係数 図4−9 けられに対する一次の極大の強度 一53一 2 クが大きくなる。両者は相反する傾向にあるので、クロストークが最も小さくな るけられの係数が存在すると考えられる。次にこの点について検討する。 4.3.2 ク巨ストークと空間周波数特性 図4−10は、式(3−27)を用い、けられの係数をパラメーターとして充分長い情報 ピットに対し、情報トラック間隔に対するクロストークを計算したものである。 図4−11、図4−12は、それぞれ情報トラック間隔に対し、クロストーク最小となる. けられの係数とクロストークレベルを計算したものである。実線は、入射光束の 楕円比3、破線は入射光束の楕円比5である。例えば、VDの平均情報トラック間 隔は1.7μmであり、情報トラック間隔誤差0.1μmとトラッキング制御誤差0.2μm を仮定すると、最近接時は情報トラック間隔1.4μmと同様に考えればよく、クロ ストークが最も悪くなる情報トラック間隔1.4μmのクロストークレベル(A点) が重要となる。けられを大きくしていくと光スポット径が小さくなりけられの係 数0.7迄はクロストークも小さくなる傾向がある。しかし、けられの係数0.7以上 では一次の極大の強度が大きくなり光スポット径が小さくなるのにクロストーク が増大する。結果として、情報トラック間隔1.4μmではけられの係数0.7でクロ ストークが最小になり、最小クロストークレベルは、−38dBである。入射光束の 楕円比を変えてもクロストークはほぼ同様であり、レベル差1dB以内である。 図4−13は、式(3−22)を用いてけられに対する周波数特性を計算したものである。 けられの係数kxが0.7∼1での低域での信号レベル差は1dB(10%)以下で、高域 での変化は小さい。低域での信号レベルは大なので、この程度の信号レベルの低 下は再生信号のS/Nにほとんど影響を与えない。 図4−14は、式(3−33)を用いてけられの係数kxに対する対物レンズ透過率を計 算したものである。けられの係数を1から0.7にすると、対物レンズ透過率は楕円 率3の場合42%から62%に、楕円率5の場合26%から40%に増加するので、再生信 号S/Nへの影響はない。 CD・VD装置では再生特性からけられ等の設計パラメーターを決めることが 出来るが、追記形、書換形光ディスク装置の場合、記録密度を向上させるため出 来るだけ光スポットを小さくするのが望ましく、再生特性の点からだけでけられ の係数kxを選ぶことは適当ではない。 一54一 O Wy/Wx =3 −−iO ( 一一一一一一一 Wy/Wx=5 di て)−20 > …lii ”(−30 ) へ 1−40 ”− kx=a.0 0.9 r〈 O.B [コー−50 0・7 “ 0.6 0.5 −60 −70 0 i A 2 情報トラック閤隔(μm> 図4−10種々のけられの係数における情報トラック間隔に対するクロストーク特性 一55一 i。5 Wy/Wx ・・3 −一一一一一 癒 曝 vY/Wx=・5 i。o s 冥 ’」Ω b 0.5 o o i A 2 情報トラック間隔(μm> 図4−11情報トラック間隔に対するクロストークを最小にするけられの係数 o ム αb−io で 一一一 Q0 ・ミ e(−30 i へ一40 i 騨L− T0 K [コ ー60 へ 一70 0 i A 2 情報トラック閻隔(μm) 図4−12情報トラック間隔に対する最小クロストークレベル 一56一 i.0 ミ マ0。5 A ロゆ 鯉 0 0 云 ie5 ◎es i。0 空閤周波数〈1/μm> 図4−13 けられを変えた場合の空間周波数特性 i.o ◎.8 醤 ◎.6 卿 姻0.4 02 0 ◎ i けられの係数 図4−14 けられに対する対物レンズ透過率 一57一 2 4.4 入射光束の光東中心ずれと再生特性9) 光スポットの短軸方向を情報トラックと平行にした場合の対物レンズ入射楕円 光束の中心ずれに対する隣接情報トラックとのクロストーク特性、周波数特性に ついて検討する。特に注釈がない場合、対物レンズ入射光束の楕円率は3、けら れの係数kxは1である。 4.4.1 光スポット径と形状 式(3−9)を用いて対物レンズ入射楕円光束の短軸方向(κ方向)への中心ずれ Dxに対する光スポット径及び光スポット形状を計算する。図4−15は、対物レン ズ入射楕円光束の中心ずれに対する光スポット径(1/e2パワーポイントで定義) を計算したものである。図における光東中心ずれ率BDR(beam deviation ratio) は、対物レンズ半径に対する入射楕円光東中心の短軸方向(x方向)への中心ず れD、である。図4−16は、対物レンズ入射楕円光束の中心ずれに対する光スポッ ト形状を計算したものである。図4−16(a)、(b)は、対物レンズ入射楕円光束の中 心ずれが無い場合の光スポット形状を示す。図4−16(a)は合焦位置、図4−16(b)は ±1μm焦点ずれした位置での光スポット形状である。図4−16(c)、(d)、(e)は光 東中心ずれ率BDR=0.5の場合の光スポット形状を示す。図4−16(c)は合焦位置、 図4−16(d)は+1μm焦点ずれした位置、図4−16(e)は一1μm焦点ずれした位置で の光スポット形状である。合焦からのずれは、マイナス方向が対物レンズに近づ く方向、プラス方向が対物レンズから遠ざかる方向を表す。図4−15より、焦点ず れがない場合、光東中心ずれ率BDR瓢0.5に対し光スポット径の増大はx方向7%、 y方向2%であり、変化は小さい。一方、図4−16(b)より、対物レンズ入射楕円光 束の中心ずれが無い場合、焦点ずれに対し一次の極大の強度は大になる。図4−16 (c)、(d)、(e)より、対物レンズ入射楕円光束の中心ずれに対し、合焦位置では 光束形状の対称性はくずれない。しかし、焦点ずれに対し、一次の極大の強度は 非対称になる。また、対物レンズ入射楕円光束の中心ずれに対し、一次の極大の 強度は大になる。 図4−17は対物レンズ入射楕円光束の短軸方向への中心ずれに対する光スポット 形状の実測値で、比較のため計算値も併記してある。実線が実測値で破線が計算 値である。実験・計算条件として、半導体レーザーの波長は780nm、楕円率 一58一 2.0 〈 ∈i 譲 ) i。5 ム = K 来 i。0 0 0。2 0。4 0。6 0.8 i。0 光東中心ずれ率 図4−15 対物レンズ入射楕円光束の中心ずれに対する光スポット径 一59一 重.⑪ 樫 魑O。5 較 贈 o 一2 −i O i 2 半 径(μm> (a> 入射光東中心ずれ無し、焦点ずれ無し ま。0 ×軸 、 一一一y軸 認 魑0.5 鞍 轄 0 一2 −i O i 2 半 径(μm> (b> 入射光東中心ずれ無し、焦点ずれ±1μm 図4−16−1 楕円光束集光の光スポット形状 一60一 ieO 認 覇O。5 寝 畢 0 −2 −i ◎ i 2 半 径(μm> (c> 入射光東中心ずれ率0。5、焦点ずれ無し i。o 認 魑O。5 夜 聴 0 −2 ・−i o i 2 半 径(μm> (d) 入射光東中心ずれ率0.5、焦点ずれ+1μm 図4−16−2 楕円光束集光の光スポット形状 一61一 i。0 認 魑O.5 被 理 o −一“2 −i o i 2 半 径(μm> (e) 入射光東中心ずれ率0.5、焦点ずれ一1μm 図4−16−3 楕円光束集光の光スポット形状 一62−一・ ie◎ 実測値 計算値 越 輔 ◎。5 理 ◎ 一・2 一鼠 ◎ Pt (a> 焦点ずれ無し ×軸方向 半 径〈μm> 2 飢◎ 認 溺 0.5 寝 韓 0 −2 一重 O i 2 半 径(μm) (b> 焦点ずれ無し、y軸方向 図4−17−1対物レンズ入射楕円光東中心ずれ時の光スポット形状実測値と計算値 一63一 瓢◎ 実測値 x…計算値 駆 魑 ◎.5 鞍 鯉 ◎ −2 −i ◎ i 半 径〈μm> 2 (c) 焦点ずれ1μm、×軸方向 1. .◎ 一実測値 …計算値 爆 鵬 0.5 夜 理 ◎ 一・2 一ユ O i 2 半 径(μm) (d> 焦点ずれ1μm、y軸方向 図4−17−2 対物レンズ入射楕円光東中心ずれ時の光スポット形状実測値と計算値 一64一 ωY/ωxは2.67、BDRは1.04、けられの係数kxは1.13である。図4−17(a)、(b)は 焦点ずれが無い場合、図4−17(c)、(d)は焦点ずれ1μ組の場合である。κ軸に沿う 方向の光スポット形状は合焦点時対称であるが[図4−17(a)]、1μmの焦点ずれ がある場合、非対称となる[図4−17(c)]。すべての場合に、実測値は、計算値 と良く一致している。 次のセクションで一次の極大の増大と非対称性に起因するクロストーク特性に ついて検討する。 4.4.2 周波数特性・クロストーク特性 図4−18は、式(3−27)を用いて充分長い情報ピットに対し、対物レンズ入射光束 の中心ずれをパラメーターとして、情報トラックからのトラックずれに対するク vストークを計算したものである。図4−19は、式(3−27)を用いて対物レンズ入射 光束の光東中心ずれ率BDRに対するクロストークの増加を情報トラック間隔をパ ラメーターとして計算したものである。 図4−18(a)は、焦点ずれがない場合のクロストークを表す。ずれる方向による 特性の非対称性は小さいが、対物レンズ入射楕円光束の光東中心ずれに対し、ク ロストーク特性が劣化する。図4−18(b)は+1μm、図4−18(c)は一1μm焦点位置か らずれた場合のクロストーク特性を表す。左右の隣接トラックからのクロストー ク特性が異なる。いずれの場合も、対物レンズ入射光束位置ずれに対し、クロス トーク特性が劣化することが分かる。VDの平均情報トラック間隔1.7μmである が、情報トラック間隔誤差0.1μmとトラッキング制御誤差0.2μmと仮定すると、 最近接時は情報トラック間隔1.4μmと同様に考えればよく、クロストークが最も 悪くなる情報トラック間隔1.4μmのクロストークレベルが重要となる。図4−19よ り、対物レンズ入射楕円光東中心ずれに対するクロストークの劣化の許容値を3dB と仮定すると、入射光束の光東中心ずれ率の許容値は0.18となる。 図4−20は、対物レンズ入射楕円光束の光東中心ずれ率をパラメーターとして式 (3−22)より空間周波数特性を計算したものである。対物レンズ入射光束の光東中 心ずれ率をクロストーク劣化許容値3dBから決めた0.18とすると、周波数特性の 劣化は3%(0.3dB)以下であり再生特性に与える影響は小さい。 図4−21は、対物レンズ入射楕円光束の中心ずれに対する対物レンズ入射有効パ 一65一 ◎ ( ot で 一i◎ \ 〉 ミ ー2◎ ム \\ へ 豊 一30 訟 [光東中心ずれ率] ロ 25 K ー4◎ “ 一5◎ 一i O 層i −2 2 情報トラック間隔(μm> 〈a> 焦点ずれ無し ◎ ( crり \ ℃ 一ユ◎ 〉 ミ // ー20 ム KXx 妹 韮 一30 [光東中心ずれ率1 秘・\ 山 rく ロ ー40 臥 一50 d o i −−2 2 情報トラック間隔(μm) 〈b> 図4−18−1 焦点ずれ十1μm 種々の対物レンズ入射楕円光東中心ずれにおける情報トラック間隔に 対するクロストーク特性 一66一 1 0 N 隠\ ( an ℃ 〉 澄\ 堰 一一 \N\ ミ N N ム 、、 一2◎ \\\ 眠 \、\ 童 山 一30 / !1 @ 1 K S◎ a− [光東中心ずれ率] \’ 0 ! ノ 1 ! ! [コ 眠 よ\ 0。25 1 、、 0。5 ノ ’ 0。75 一50 一2 −i O i 2 情報トラック間隔(μm> 〈c> 焦点ずれ一1μm 図4−18−2 種々の対物レンズ入射楕円光東中心ずれにおける情報トラック間隔に 対するクロストーク特性 i2 島。 、 IEI →< 8 興 t>t 6 置 ぬ /勿 1/7 玖/ク K 4 口 辱・ 2 o O O.i o。2 0.3 0.4 0.5 光東中心ずれ率 図4−19 情報トラック間隔を変えた場合の対物レンズ入射楕円光東中心ずれに対 するクロストーク増大 一67一 i.o [光東中心ずれ率] 25 75 ミ ”(o。5 ム ざ ロゆ 蝉 0 0 0。5 i.o i。5 空間周波数〈1/μm> 図4−20 対物レンズ入射楕円光東中心ずれを変えた場合の空間周波数特性 Oti5 0。4’ 醤 0.3 姻O.2 0。i O O ◎.5 畿.O 光東中心ずれ率 図4−2丑 対物レンズ入射楕円光東中心ずれに対する対物レンズ透過率 一68 ワーを計算したものである。入射光束の光東中心ずれ率0.18(A点)に対し、有 効パワーの減少は3%以下であり、記録再生特性に与える影響は非常に小さい。 4.5 まとめ 直接集光方式において楕円光スポットの短軸方向を情報トラック方向とするこ とにより、従来の等方ガウシアン光束のHe−Neガスレーザー集光時と同程度のク ロストー一ク特性とHe−Neガスレーザー集光時以上の周波数特性が得られること、 および実用上充分な集光パワーが得られることがわかった。 楕円ガウシアン光をそのまま用いる直接集光方式は、3mw程度の低出力半導体 レーザーを用いるCD・VD等、およびディスク上の光パワーが8∼10mwあれば 充分な比較的低出力の追記形・書換形光ディスク装置等に適当である。特に、高 域の記録特性に影響する情報トラック方向の光スポット径が円形ガウシアン集光 時より小さくでき、さらに微調整の必要な円形光束変換光学系が不要な簡素な光 学系となる長所がある。 追記形、書換形光ディスク装置では半導体レーザーの出射角ばらつきにより対 物レンズによるけられ量が大になり、必要な集光効率が得られない場合も出てく るが、出射角に応じたコリメーターレンズ等を何種類か設けることにより効率向 上が達成できる。大量生産が要求される追記形、書換形光ディスク装置等には本 方式の簡単な光学系のものは特に有効である。 決められた情報トラック間隔に対し、クロストークを最小にするけられの係数 が異なることがわかった。けられの係数を変えたことによるクロストーク最適化 が、周波数特性・再生信号S/N等の再生信号に与える影響は小さく(1dB以下)、 光ディスク装置に要求される性能を充分満たす。 対物レンズ入射楕円光東中心ずれに対し、一次の極大の強度が大きくなり、ク ロストーク特性が悪くなることが分かった。対物レンズ入射楕円光東中心ずれに 対するクロストークの劣化の許容値を3dBと仮定すると、入射楕円光束の光東中 心ずれ率を0.18以下にする必要がある。そのとき、周波数特性・対物レンズ入射 パワーの減少は0.3dB以下であり、再生特性に与える影響は小さい。 一69一 第4章の参考文献 1)近藤、岡田、久保:第42回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1981)P.83. 2)近藤:特許No.1678206(1992). 3) M.Kondo: Jpn. J. ApPl. Phys. 3唱 (1992) 2452. 4) H。Namizaki, H. Kan, M. Ishii and A. Ito: J。 ApPl。 Phys. 45 (1974) 2785. 5)龍岡、杉浦:NHK技術研究27(1975)p.10. 6) T.Fujita, N. Takeshita, M. Karaki, M. Kondo and K.Kime: Proc. SPIE 695 (1986) 187. 7)篠田、近藤:光学朽(1986)p.326. 8)近藤:レーザー研究 Vo1.21, No.6, June 1993, p.634. 9) M.Kondo: Jpn. J. ApPl. Phys. 32 (1993) 2702. 一70一 第5章 集光点位置の検出 5.1 はじめに ディスク情報面と最小光スポット位置との光軸方向位置ずれを検出するフォー カスセンサーについて検討する。フォーカスセンサーに要求されるのは、±1μm の検出を正確に行えること、および適正なリニアゾーン輻が得られることである。 ここでは非点収差法およびフーコー法によるフォーカスセンサーについて検討す ’る。非点収差法については、センサーの検出特性解析と実測値との対応、光検知 器位置ずれ特性解析等について検討する。フーコー法については、センサー検出 特性解析と実測値との対応、情報トラック横断時のセンサーエラー、リニアゾー ン輻拡大策等について検討する。 5.2 非点収差法フォーカスセンサー1) 5.2.1 フォーカスセンサー検出特性の理論的解析 非点収差法フォーカスセンサー検出特性解析のための計算式を導く。図5−1に ディスクにより反射された光の進む光路を示す。ディスクで反射された反射光は 再び対物レンズに入射し集光レンズ、円筒レンズを経て4分割光検知器に入射す る。 従って、焦点ずれに対するセンサー特性を計算するには反射光が4分割光検知器 の各々の光検知器に入射する強度を求め、対角の光検知器を共通として隣接光検 知器との差出力を計算すればよい。実際には、対物レンズ再入射光束に対し光線 追跡を多数の光線に対して行い、光検知器位置での到達座標を計算すればよい。 そして、追跡光線のうち4分割の各々の光検知器に再入射する光線の総和を計算 すれば4分割光検知器入射光の強度が求められる。楕円ガウシアン光束のように 強度が均一で無い場合、各光線に対し強度の重み付けをおこなえばよい。なお、 平行光束を集束光束とする集光レンズは、コンパクトディスク装置・ビデオディ スク装置ではコリメーターレンズと共用されるが、追記形光ディスク装置・書換 形光ディスク装置ではコリメーターレンズと共用ではなく別途設けられる。 まず、ディスクから円筒レンズにいたる光路の光線追跡計算式を導く。ディス 一71一 クの焦点ずれをz、、対物レンズの焦点距離を∫。、対物レンズ∼集光レンズ問を Z2、集光レンズの焦点距離をfc。、集光レンズ∼拡大レンズ間をg3、拡大レン ズの焦点距離をfM、拡大レンズ∼円筒レンズ間をz4、円筒レンズの焦点距離を f。、円筒レンズ∼4分割光検知器間をz5とし、集光点から進む光線の方位角を φ、、傾きをq,とすると、円筒レンズ入射直前位置の光線の傾きq3と半径方向 位置r3は光線マトリクスを用いて r3 q3 1z4 1 0 1z3 0 1 −1/fM 1 0 1 1 0 −1/fc。1 1型 1 0 1f。+2z、 −1/fo 1 0 1 8,] (5−1) となる。次に円筒レンズから光検知器にいたる光路の光線追跡計算式を導く。ま ず円筒レンズによる光線の変化を計算する。図5−2に示すように円筒レンズが置 かれている回転角φ。,方向の座標軸をα3、β3とすると、円筒レンズ入射直前位 置の座標と傾きはこの座標系で α,=r3COS(φ、一φ。3) (5−2) q。3瓢q,C・S(φ、 一一一 ¢ Ct・) (5−3) b3=r3sin(φ1一φ僅3) (5−4) (夏β3==q3sin(φ1一φ躍3) (5−5) となる。次に円筒レンズを経て光検知器位置に達した光線の位置と傾きは座標 cr・4、β4系で lL]一 1z5 1コ (5−6) 0 1 わ4 1z5 qP4 0 1 ∴1] わ3 (5−7) qβ3 となる。光線の到達位置をα一β座標から光検知器分割線のκ一y座標系にもど すと図5−3で 一72一 対物レンズ y2 凾P yl 円筒レンズ 集光レンズ 拡大レンズ X2 fco P φ1 fo y4 4分割 α3 光検知 β3 @ X3 fc / ×4 fM ` 、 、 ε B 口 Z θ D C fo十2z1 Z2 Z3 Z4 Z5 図5−−1非点収差法フォーカスセンサー光学系と座標 y3 (r3,q3) β3 α3 、 試 ゆ’ 写 ’ % 買モ1 φ躍3 X3 0 図5−2円筒レンズ位置の座標 一73一 (5−8) X4::=α4COSφα4一わ4sinφα4 (5−9) y4=α4sinφ傷4十わ4COSφぼ4 となる。 次に多数の光線追跡を行うに際して、光東の分割と光線の重み付けを行う。光 束は直接集光方式を想定して楕円ガウシアン光束とする。対物レンズで平行にさ れた光束について図5−4のような極座標による分割を考え、その光線に対する重 み係数を求める。対物レンズの開口数をNAとすると、平行光束の半径rc。。は (5−10) rcOL=foNA となる。平行光束を方位角方向(φ方向)にnΦ分割、半径方向(r方向)にnR 分割すれば、分割された小片に対し、 2π △φ=− nΦ (5−11) rCOL △r= (5−12) nR となる。よってそのときr、φ位置にある光線の面積△sは、平行光束全面の面 積πrc。L2で規格化して r△φ△r △s= (5−13) πrCOL2 となる。一方、平行光束の強度分布は、全パワーで規格化すると ・_(r,φ)謡ω。exp{−2[(「c羨sφ)卑(「s話ヂφ)2]} (5−14) となる。ここでWx、Wyは楕円光束の半径(ピーク強度の1/e2になる半径)で 一74一 Y4 (r4,q4) β4 薩4 盆 轡’ % ’ 写 φ姻 X4 0 図5−3 4分割光検知器位置の座標 y2 r△φ ム 劣. X2 図5−4球座標上での分割 一75一 ある。したがって、光線の重み係数Kc。Lは強度と面積をかけて (5−15) K。。。== 1。。。(r,φ)△S と求められる。実際に、4分割光検知器A、B、 C、 Dに入射する光束の強度を 計算するとき、追跡した光線が光検知器に入射する場合のみ係数K。。。を加算す ればよい。 次に光検知器の分離帯幅の影響について考える。図5−5に示すように4分割光 検知器がA、B、 C、 D面と分離帯幅ωDをもっているとする。図5−6に光検知器 の分離帯にまたがる感度の測定例を示す。測定例から分離帯における光検知感度 は隣接の検知領域で零になるようリニアに下がっていくと近似する。従って、分 離帯幅を4領域DAB、 DBC、 DCD、 DDAに分割し、分離帯に入射した光束は・隣… 接の2領域に入射すると考える。例えば、図5−5のX−X’の線に沿って検知感 度を考える。Cの光検知器は検知感度がScで、 Dの光検知器は検知感度がSpと すると (5−16) Sc十SD =1 となる。光検知器A、B、 C、 Dに対し、分離帯以外のそれぞれの光検知器で受 光される光束をSA、、S。.、S㏄、SnDとする。また、分離帯DABで受光される 光束に対し、SABを分離帯DABに入射する光束のうちAの光検知器で受光される 光束、S。、を分離帯DABに入射する光束のうちBの光検知器で受光される光束と する。以下、DBC、 DCD、 DDAの分離帯も同様に考えるとする。このとき分離帯 からの受光を含む4つの光検知器A、B、 C、 Dで受光される光束SA、SB、 Sc、SDは、 SA=SAA十SAB十SAD (5−17) SB=SBB+SBC+SBA (5−18) ScニScc+SCD+SCB (5−19) SD=SDD+SDA+SDC (5−20) ・一一 V6一 y4 B領域 A8 A領域 D8c DDA C領域 X X4 XX D領域 DCD ! { ll S分割光検知器ll @ ㍑Cの光検知器感度ll 検知感度 @ Dの光検知器感度 I ll ll il Sc SD X1 X (b)光検知器感度 図5−5 4分割光検知器分離帯の感度特性 測定波長:820n 禔@ 光検知器雷口感度L位置 〉> テ\<鉦;、O 一 100μm 図5−6 4分割光検知器分離帯の感度特性測定例 一77一 となる。センサー変位出力は、全光東で規格化して (S。+Sc)一(S。+S。) (5−21) s= ΣKc。L と計算される。 5.2.2 フォーカスセンサー検出特性の計算と実験 図5−7にCD用光ヘッドの設計例(MLP−2型)を示す。また、実際の光学距離で 表したものを図5−8に示す。この光学系におけるフォーカスセンサーの検出特性 を図5−9に示す。横軸は焦点ずれを、縦軸はフォーカスエラー信号を表す。実線 が実測値で、破線が式(5−21)を用いて計算した曲線である。検出特性の形状、リ ニアゾーン等で計算値と実測値がよく一致しており、本計算法がよい近似である ことが分かる。 次に光検知器の位置ずれに対する特性を検討する。図5−IOに光検知器の光軸方 向および光検知器面内の位置ずれに対する検出特性計算例を示す。計算にあたっ て半導体レーザー出射光の縦横比は3、対物レンズ入射光束のけられの係数は1と した。図5−10より①光検知器の光軸方向ずれに対しては検出特性を表す曲線の形 状は変わらないが、検出誤差(零クロス点と最小光スポット位置とのずれ)を生 じる。②光検知器の分割線と平行な方向へのずれに対しては上下対称性がくずれ ず検出誤差も生じないが感度が低下する。③分割線の45°方向へのずれに対して は、検出特性を表す曲線の形状の上下対称性がくずれ、感度が低下し、検出誤差 が生じる。 図5−11は光検知器の光軸方向ずれに対する検出誤差を、図5−12は光検知器の分 割線の45。方向への光検知器面内の位置ずれにに対する検出誤差を計算したもの である。再生信号特性の点で合焦点位置からのずれ許容は±1.5μm程度しかなく、 実際の製品では電気的に検出誤差を補正するが、光ヘッド単体としては±0.5μm 以下にしている。その際、光検知器の位置ずれ許容は、光軸方向と面内方向のず れに対しそれぞれ±0.25μmの検出誤差を割り振るとすると、図5−11より光軸方 向に対し±35μ憩以下、図5−12より光検知器面内方向に対しIO.5μm以下となる。 一78−一 :]リメーターレンスs 2,1 回折格子 (肋=22・5) 3 半導体レーザー ピームスプリッター @ \ @ 〆 3 4.5 5 9.ワ 1.8 2,21,5 単位lmm (a)照射光路 円筒レンズ(fc=−25) 拡大レンズ(fM=−17)対物レンズ(fo二4・光検知器 集光レンズ (コリメーターレンズと共用) 5.9 3 5 9.7 75 0,75 2.9 (b)反射光路 図5−7 CD用光ヘツド設計例(MLP−2型) 79 13 半導体レーザー :]リメーターレンス9 対物レンズ / 22。5 単位lmm (a)照射光路 集光レンズ 円筒レンズ (]リメーターレンズと共用) 饗\/拡大レンズ \ 0。275 5.7 17。2 (b)反射光路 図5−8 CD用光ヘッド光路(肌P−2型) 一80一 i 〆、 m 、 ノ 、 o即 一一… 実測値 胆1 v算値 lh @ 臥 @ 、 、、 @、 、 H K 只 、 、 、 、 、 i 、 、 杓 、 、、 、 、 、 、 、 、 、 へ @ 、 、 、 、 0 io ナ点ずれ(μm) 、 、 、、 、 、、、 、 、 、 、 ’ @ ! @ノ @ノ 一i 図5−9 非点収差法フォーカスセンサーの検出特性 ロ}ir・ 設計位置 物一一一光軸方向ずれ い I 、 1 P 、 、! 、 H ェ割線に平行ずれ rく │一一 ェ割線の45°方向ずれ 彊 c・・… @ 置 ! 、 @ ! 、 @1 、 @ 賢 @ 昏 @ ’馬で・ 、弓 軸隔、 噸 .・ ■ ’ │2δ・・、 一工◎ ql @o 怐D・° io 2◎° 焦点ずれ(μm) ’・、\_ノ//..! \’・. !・’ ノ 。 、 °. ・ ! ・ 、 .. ! ’ 、 ㌔ !’・送./ 一i 図5”10光検知器位置ずれ時の非点収差法フォー.カスセンサー検出特性 一81一 2 1.o ( ε 蔑 ) 根 離 田 鰹 一 一 一 一 鱒 o.25 { 位置ずれ(μm) 00 0 一100 一〇。25 脚 一 一 一 一 一1。⑭ 図5−11光検知器光軸方向位置ずれとセンサー検出誤差 1。5 1。o ”’ q 5欄 肇o.5 鰹 0。25 0 位置ずれ(μm) 図5−12 光検知器面内位置ずれとセンサー検出誤差 一82一 5。3 フーコー法フォーカスセンサー2) 5.3.1 フォーカスセンサー検出特性の理論的解析 フーコー法フォーカスセンサー特性解析のための計算式を導く。図2−15に示すよ うに、ディスクで反射された反射光は再び対物レンズに入射し、集光レンズを経 て頂角が鈍角のウエッジプリズムにて2光束に分離され、それぞれの光束が2分 割光検知器に入射する。各々の光検知器に入射する光束の動作は上下対称であり、 一方の検出特性に対する解析法を他方に適用すればよい。2分割された各々の光 路は図5−13に示すように集光レンズを出たところで光束の半分が遮蔽されている と考えればよい。図5−13は反射光束の図を単純化したもので、ディスクで反射さ れた光束は、図3−2と逆の光路を通ることになる。すなわち、対物レンズの焦点 を中心とする等位相面が球面の球面波となり、無収差の対物レンズにより平行光 束にされ、等位相面が平面の平面波となる。この平行光束は集光レンズにより集 束光束にされ、等位相面が球面の集光レンズの集光点に向かう集束光となる。こ の集光レンズの主面のところで光束が半分遮蔽されていると考えればよい。この. 条件で、集光レンズの集光点付近の光束形状を解析する式を導く。図5−14は集光 レンズ主面(π3−一 Y3面)と集光点付近(κ4−y4面)の座標関係を示す図である。 第3章で述べたディスク上の集光光束を計算する式が適用できる。第3章と同様 に球面座標で考えると、式(3−4)がほとんど適用できる。集光点位置の振幅を E4(x4,y4,z4)とすると 阮ウ[(Z4sinθCOSφ一Dx ωx)4(Z・S’nθ認nφ一明} exP(ikr) X z42sinθdθdφ r (5−22) となる。ここでrは r= (Z4SinOCOsφ一X4)2十(Z4sinOsinφ一y4)2十(Z4coSO十fco−Z4.)2 (5−23) 一83一 集光レンズ 対物レンズ / iSW /\ スク ディスク ____。______」 @ ! 、 ’ へ、 、\、\、 光検知器1 、、 、 ㍉り @ ! 、 ’ @ノ 、 ’ @’ 、 ∫ S2…ξS1(N 、 、1 、、 1}1 ’ ’ 1 ! 1 P ノノ P ノ ?@ ,ノ @ 〆 〆 、ノ1 f 〆1’ f 〆’’ 、 ! Q_ き_乙 ___ 1 @ 2rE @ 2W× 図5−13 フーコー法フォーカスセンサーにおける反射光路の波面 E4(x4,y4,z4) X4 y4 y3 F (×,y) ×3 ( X、y,Z) r φ z4θ F 、 Dx,DY) 1 SWZ4 fco 図5−14 集光レンズと反射光束集光点付近の座標関係 一84一 Z となり、集光レンズの有効半径を対物レンズの有効半径r.と同一とすると、集 光レンズの開口数NAc。、集光角θ。。は次のように表される。 NAco:==「E/z4 (5−24) θco=sin’m1NAco (5−m25) また、楕円ガウシアン光束の光束径Wx,ω。は対物レンズ有効半径r。と、けられ ⑱係数飯,叙を用いて式(3−8)で表される。なお、積分は集光レンズ∼集光点間 の間隔z4を半径とする球面上(ISW)でなされる。集光点付近の光スポット の強度分布14(x4,Y4,z4)は、振幅の絶対値の二乗になるので 唐g(Z4sinOCOSφ一Dx ωx)#(X・S’五讐聡φ…月} ・一一A 2 ×exp(ikr)z.・,in。d。dφ (5−26) r となる。各々の光検知器に入射する全光束S、(g4)、S、(z4)はそれぞれ光検 知器の分離帯幅を2Lwとして、分割線の感度が図5−5のようであるとすると s1(z・) o試・・(一・)dx・dy・ ∬1渉(y−Lw) ・4(一)d x・d y・(5−27) 一85一 轤P:∫ Lx 14(x4,y4,z4)dx4dy4 s・(z・)一 一Lx +∫iL∫i渉(y十Lw) 14 ( x 4,y4,2ζ4)… (5−28) となる。ここで2Lx,Lyはそれぞれx,y方向の光検知器サイズを表す。下半分の 2分割光検知器の出力S3(z4),S4(z4) も同様に考え、センサー出力を集光レ ンズの焦点に集光点がきた場合の全光束で規格化すると s(z・)噸需i鳶i多ll)]辛窺鵠i旱暮1器] (5−29) と計算される。 5.3.2 フォーカスセンサー検出特性の計算と実験 図5−15は、式(5−26)により光検知器上の光束形状をディスクの焦点ずれに対し て計算したものである。焦点ずれに対し光束が分離帯と直交するy軸方向に動く ことが分かる。図5−16は、フーコー法フォーカスセンサーの検出特性である。横 軸は焦点ずれを、縦軸はフォーカスエラー信号を示す。実線は実測値で、破線は 式(5−29)により計算した検出特性である。なお計算にあたって、対物レンズの開 ロ数は0.5、光学系の倍率は10倍、光検知器の分離帯幅は10μmとした。検出特性 の形状、リニアゾーン等で計算と実測値がよく一致しており、本計算法がよい近 似であることがわかる。 追記形光ディスク、書換形光ディスクでは案内溝がついており、この案内溝横 断時に案内溝で変調された再生信号波形がフォーカスエラー信号に重畳され検出 (a)焦点ずれ一2μm w ’ y y ’ 艦 X 合焦点位置 w ’ y ’ y X (c)焦 X 図5−15 フーコー法フォーカスセンサーにお1才る光検知器上光束形状 一87一 i 、 、、、!!’ ノ ’ ’ ’ ,’ ,” 脚胆⋮いHKRー恕昏 値値測算実計 m伊れず点焦 i ︶o ー,ーー 沼⊥0 , , ー ー ’ ” 一 ’ ノ ! ! ! ’ 一 セ ス ゆ鯉ーいHK宍ーヤト 値 測 4 図 れている4個の光検知器S1∼S4の和出力S、+S2+S・+S4で、案内溝横断時 の再生特性を表し、出力最大が合焦点位置を表す。フォーカスエラー信号に重畳 される検出誤差となる再生信号が合焦点位置で非常に小さく、追記形光ディスク、 書換形光ディスクに望ましい特性であることがわかる。 5.3.3 フーコー法フォーカスセンサーのリニアゾーン幅拡大 フーコー法フォーカスセンサー特性の問題点として、リニアゾーン幅が2μm程 廉しかなく、狭すぎることがあげられる。これらの解決法について述べる。 この解決法として、まず光検知器の分離帯幅を拡大する方法について述べる3)。 図5−18は、式(5−29)により光検知器の分離帯幅10μmと30μmについて焦点ずれに 対するフォーカスエラー信号を計算した図である。分離帯幅が大なる程センサー のリニアな範囲の傾斜が小さくなり、リニアゾーン輻が拡大されることがわかる。 さらに、図5−19は、光検知器の分離帯幅とリニアゾーン幅ついて計算と実験結果 を示したものである。計算値と実測値がよく一致していることが分かる。なお計、 算と実験において対物レンズの開口数は0.5、集光レンズの開口数は0.053と仮定 した。 次に、集光レンズ側の開口数を小さくすることによる解決策について述べる。 集光レンズの開口数は、対物レンズの開口数・焦点距離と集光レンズの焦点距離 が確定すると自動的に決まってしまう。そこで、図5−20に示すように集光レンズ の開口数をアパーチャーにより制限する。図5−21は、集光レンズ側の開口数を半 分に制限した場合における、式(5−29)により計算したフォーカスセンサー検出特 性を表す。図示のように開口数が小さい程リニアゾーン幅が拡大されることが分 かる。図5−22は、集光レンズ側の開口数とフォーカスセンサーリニアゾーン幅の 関係を式(5−29)により計算したものである。横軸の開口数比は集光レンズ側の元 の開口数に対する開口数を表す。 次に、集光レンズ側の開口数を実質的に小さくする別の方法について検討する。 図5−23のように集光レンズ位置で半光束ではなくしゃへい板等により扇形に光束 を制限する。図5−24は、式(5−29)により、半光束と中心角45°の場合についてセ ンサー検出特性を計算した図である。図示のように中心角が小になる程リニアゾ ーン幅が拡大されることがわかる。図5−25は式(5−29)によりしゃへい板の中心角 一89一 [分離帯欄一一10μm 巾胆 ilh 30μm −一一 , 一 一 ノ @! @! 浸翫5 R ! ! i 1 層 卜 ! 1 2 3 4 一4 −3 −2 −1 7 焦点ずれ(,um) ! ! ! ! ノ ー0.5 ! @ ’ Q 一 一 一 一■ ’ 図5−18 光検知器分離帯幅とフーコー法フォーカスセンサー検出特性 19 ( ∈ 蔑 ) 理 ♪\5 1 日 _TX 0 0 10 20 30 40 50 60 分離帯幅(μm) 図5−19 フーコー法フォーカスセンサーの光検知器分離帯幅とリニアゾーン幅 一90一 対物レンズ 集光レンズ アパーチャー 光検知器 S4 S3 S2 S1 図5−20 フーコー法フォーカスセンサー光学系(アパーチャー挿入) ゆユ 一一一 mA=0.05 鯉 璽 一 一 、 齣ヒ■ 欄齢 、 1 、 NA=0.025 / 1卜 / H / \ \ 、 rく / 寂 ! 星 1 暫 1 h io 0 焦点ずれ(μ m) ! 1 / \ / \ \ / \ / 、 , 一 、 _ 一 1 一i 図5−21 開口数制限とフーコー法フォーカスセンサー検出特性 一91一 io 10 ( ∈ 蔑 v理ハ i 5 、 隊 ll ⊃ O O.4 0.6 0.8 1,0 開口数比 図5−22集光レンズ“側の開口数とフーコー法フォーカスセンサーリニアゾーン幅 対物レンズ 集光レンズ しやへい板 しやへい板 光検知器 光束 図5−23 しゃへい板を光路中に挿入したフーコー法フォーカスセンサー光学系 一92一 θS 恥i 一一一 シ光束 聖 一 岬 、 一 、 旦 I ’ 、 θ=45° / \ li\ / H \ 、 / K / “ / 量 / 賢 1 昏 0 一io 0 焦点ずれ(μm) ノ ! / \ ! \ / \ \ / \ 1 、 ψ一酵 一Pt 一i 図5−24反射光束しゃへいとフーコー法フォーカスセンサーの検出特性 10 ( E 戦 ) 理 λ 5 1 1.x 医 ll :_:x 0 0 90 180 中心角(°) 図5−25反射光東中心角とフーコー法フォーカスセンサーリニアゾーン幅 一93一 i io とフォーカスセンサーのリニアゾーン幅を計算したものである。中心角90∼180° の範囲ではほとんどリニアゾーン幅が変化しないが、中心角90°以下で急にリニ ァゾーン幅が拡大されることが分かる。なお、この方式の場合も、集束点の光束 径が大になるので、調整が楽になる長所がある。 5.4 まとめ 非点収差法フォーカスセンサーについて解析式が導出された。計算結果と実験 結果が比較され、解析手法の精度が充分であることが示された。解析結果より、 ①光検知器の光軸方向位置ずれに対しては検出特性を表す曲線の形状は変わらな いが、検出誤差(零クロス点の合焦位置からのずれ)を生じる。②光検知器の分 割線と平行な方向への位置ずれに対しては検出特性を表す曲線の上下対称性がく ずれず検出誤差も変化しないが感度が低下する。③分割線の45°方向への位置ず れに対しては、検出特性を表す曲線の形状の上下対称性がくずれ、感度が低下し、 検出誤差が発生する等が分かった。また、光検知器の位置ずれ許容値を明らかに した。検出誤差を光ヘッド単体として±0.5μm以下とし、光軸方向と面内方向の 位置ずれに対しそれぞれ均等に検出誤差を±0.25μm割り振ると、光検知器の位 置ずれ許容は、光軸方向に対し±35μm以下、光検知器面内方向に対し10.5μm以 下となる。 フーコー法フォーカスセンサーについて解析式が導出され、計算結果と実験結 果が比較され、解析手法の精度が充分であることが示された。さらに、案内溝横 断時に発生する検出誤差が小さいことを実験的に示した。また、リニアゾーン幅 拡大策を提案した。光検知器の分離帯幅拡大の方式については、理論的にも実験 的にもリニアゾーン幅が広がることを確認した。さらに、リニアゾーン幅拡大策 として、集光レンズ系の開口数を小さくする方法、及び集光レンズによる集束光 束をアパー・・一一チャー等により扇形に制限する方法を提案し、効果のあることを計算 により示した。 一94一 第5章の参考文献 1) C.Bricot, J。C. Lehureau, C. Puech and F. Le Carvennec: IEEE Trans. Cons. Electron. CE−22 (1976) 304. 2) G.Bouwhuis and J.J.M. Bratt: ApP1. Opt. 17 (1978) 1999. 3) M.Irie, T. Fujita, M.Shinoda and M.Kondo: Jpn, J。 ApP1. Phys. 26 (1987) 183. o 一95一 第6章 情報トラック位置の検出 6.1 はじめに ディスク上の情報トラック中心と光スポットのずれを検出するトラッキングセ ンサーについて検討する。 トラッキングセンサーに要求されるのは、±0.2μmの 検出を正確に行えること、およびディスク傾角に対する検出誤差が少ないことで ある。ここでは、広く用いられている3ビーム法と、プッシュプル法について検 討する。3ビーム法については、センサー一一 tw出特性の解析と実測値との対応、回 折格子の溝深さと回折光強度、回折格子の回転に伴うセンサー検出特性等につい て検討する。プッシュプル法については、センサー検出特性の解析と実測値との 対応について検討する。さらに、3ビーム法とプッシュプル法のトラッキングセ ンサーについて、ディスク傾きに対する検出誤差を実験的に比較検討する。 6.2 3ビーム法トラッキングセンサー1) 6.2.1 3ビーム法トラッキングセンサーの理論的解析 3ビーム法トラッキングセンサーのトラックずれに対するトラッキングエラー 信号を解析するための計算式を導く。図6−1は信号読み取り用の中心光スポット と、トラッキングセンサー用の両側光スポットの情報トラックに対する位置関係 を示す。信号読み取り用の光スポットのトラックずれに対する信号出力は 式(3−24)のS。(t)になる。一方、両側の光スポットは、それぞれ△t左右にず れているとすると、中心光スポットのトラックずれに対する特性式を用いて Sp(t+△t)、Sp(t−一△t)によって表される。その時トラッキングセンサー の出力ST(t)は両側光スポットの信号出力の差動出力になり、 ST(の=Sp(t+△の一S。(塗一△t) (6−1) と表される。 次に、回折格子により回折された0次回折光、±1次回折光、±2次回折光の 強度計算式を≡導く。図6−2に示すように屈折率nの透明な板に溝が形成された回 一96一 情報トラック中心 △t ピツト ト 光スポツト 1 lt 1 薩 1 1 1 1 裏 t 1 1 1 1 置 蓑 1 △t 1 図6−1 3ビーム法トラッキングセンサーのディスク上光スポット y 観測面 一 → TG → 2 → LG = LG → − TG → 2 → d6 一 図6−2 回折格子回折光強度計算の座標系 一97一 折格子を想定し、格子の周期をTG、ランドの幅をL,G、溝の深さをdG、ランド と溝の光路差をρ[=(n−1)dG]とする。そのとき、1周期[−TG/2≦x≦TG/2] 格子による遠視野での振輻は E(・)−A 轤P;ご(y)・xp[ih(・一・inθ)]dy (6−2) f(y)一{謡三膿≦一.L./2 , L./2SyST./2)(6−3) となり、 E(θ)−A’ 窒ヌ(y)・xp←ihysin・)dy . [A,=Aexp(ikr)] −A’∫1:翁P(−i inθ)dy +A’・xp(iρ)∫1霧P(−iky・in・)dy +A’・xp(iρ)∫1:1…←iky・in・)dy ==A・[exp(−iklysin,θ 一iksinθ)]12e2 +A’exp(iρ)[ex曝鵠nθ)]:1:彦 +A・exp(iρ)[ex曝1醤鍛θ)]1諺 (6−4) −98一 と変形され、 E(θ)一 マ1θ{[eXP(iρ)一・]sin(たL寄inθ)一一・exp(iρ)sin(lg−ltk;2n−eGsgne)}(6−5) となる。格子が両側にN個つつ計2N+1あるとすると、そのときの回折光の振 輻EG(θ)は、 EG(0)=E(0){1十exp[ik(±TGsinO)]十…十exp[ik(±N TGsin 0)]} (6−6) となり、 sin(2等+! k: T・sine) E。(θ)=E(θ) (6−7) sin(S k T・sin・) となる。 0次回折光、 1次回折光、 2次回折光は、 それぞれ TGslnθ ==O,±λ,±2λを満たす0の方向になり、そのときの振幅をそれぞれ E。,E±、,E±2とすると E・一一A・(2N刊丁イ釜[exp(iρ)一・]一一・exp(iρ)} (6−8) E・・−1A’(2N+・)丁接sin堵[eXP(iρ)一・]} (6−9) E・・ ・1 At(2N+・)丁結sin2砦G[exp(iρ)一・]} (6−10) となる。ρ ・Oのときの零次光の回折光強度を1とすると、0次回折光、1次回折 一99一 光、2次回折光の回折光強度は ・・十含[e即(iρ)一・]−exp(iρ)12 …− (6−11) P÷s亘n薯[・xp(iρ)一・]2−÷s亘n静si引2 …量sin讐G[exp(iρ〉一・]2十sin21Ztl:}g.LGs亘n号 (6−12) 12 (6−13) となる。 6.2.2 センサー検出特性の計算 図6−3に式(6−1)を用いて計算した3ビーム法トラッキングセンサーの検出特・ 性を示す。図6−3において、横軸はトラックずれで、縦軸はトラッキングエラー 信号、パラメーターは両側光スポットの中心光スポットに対する半径方向のずれ △tである。縦軸は両側光スポットの光出力で規格化している。図より両側光ス ポットの半径方向のずれに対し、検出特性の曲線形状は変化しないがセンサー検 出感度が変わることが分かる。図6−4に式(6−1)を用いて計算した3ビーム法ト ラッキングセンサーのセンサー検出感度を示す。図6−4において、横軸は両側光 スポットの中心光スポットに対する半径方向のずれ△tで、縦軸はトラッキング センサーの検出感度である。両側光スポットの半径方向のずれ△tが0.4μmのと き最もトラッキングセンサーの検出感度が高いことがわかる。なお、計算にあた って半導体レーザーの波長を780nm、縦横比を3、けられの係数を1とした。図6−5 は、3ビーム法トラッキングセンサーの検出特性の実験結果である。図中の再生 信号は3ビームの中心の信号再生用光スポットが情報トラックを横断するときの 再生特性を示し、情報トラック位置の中心に光スポットが照射されている場合に 回折により反射光が最小となり、その位置でセンサー出力が零になる。計算と実 験で検出特性の形状が良く一致しており、本計算法が良い近似であることがわか 一100一 iい 0.5 H( △t=0。 鮎埋1 λ夜 十野 》) ir、恥 △t=0.2μm ⊥鯉 .0 0 一1,0 1。 1。o トラックずれ(μ 一〇.5 図6−3 3ビーム法トラッキングセンサーの検出特性(計算値) 1,0 輝尋 O,5 0 0 0。5 1。0 半径方向ずれ(μm) 図6−4 3ビーム法における両側光スポットの半径方向ずれとトラッキングセンサー感度 101 る。 なお、光ヘッドは情報トラック位置に応じて内周から外周へ移動する。その際、 図6−6に示すように、ディスクの中心を通る線上より情報トラック方向にずれた 線上を光ヘッドが移動する場合に、トラッキングセンサー一の検出感度が最高にな る回転方向位置が外周と内周で異なる。光ヘッドを実装した状態では、回転方向 位置が一定であり、外周と内周でセンサー感度が異なる結果となるので、出来る だけ情報トラック方向への位置ずれを小さく抑える必要がある。図6−7は、セン サー出力の感度変化許容を一3dBとした場合の3ビーム間隔と情報トラック方向へ の位置ずれ許容をコンパクトディスクについて計算したものである。通常3ビー ムの間隔は20μm前後に選ばれるので、情報トラック方向への位置ずれ許容は 1.7mm以下となる。 図6−8に式(6−11)、(6−12)により回折格子の溝深さに対し、0次回折光に対す る±1次回折光の強度比を計算したものを示す。通常、溝深さは±1次回折光が 0次回折光の1/3∼1/5になるよう設定される。従って溝深さは、半導体レーザr の波長が780nm、屈折率1.5のガラスの場合0.3∼0.37μmとなる。さらに回折格子 のランドと溝の幅が等しいとき、すなわちLG/TG ・0.5のとき、式(6−13)より3ビ ーム法トラッキングセンサーに不要な2次回折光が零になることが分かる。 6.3 プッシュプル法トラッキングセンサー一 2) 6.3.1 プッシュプル法トラッキングセンサーの理論的解析 プッシュプル法トラッキングセンサーのトラックずれに対するセンサー検出特 性解析の為の計算式を導く。ディスクによって反射された光束は対物レンズと集 光レンズによって再び集束光束にされる。プッシュプル法トラッキングセンサー は、反射光束の集光点でない位置に2分割光検知器が配置される。この位置は、 図3−3に示す球面ISW面と強度分布が同じである。図6−9に示すように反射光束 のISW上にy軸方向に分割線をもつ球面状の2分割光検知器(DETI・DET2)が あると考えればよい。従って、それぞれの光検知器に入射する光束Sp、(t)、 SP2(のは、式(3−21)を修正して 一102一 ク ヒ イ ン 号 変 詑 卜 R 韻 − 図 3。O A E 2。0 ∈ v 埋 吉愉。0 0 15 20 25 30 35 光スポット間隔(μm) 図6−7 3ビ ム法における光スポット間隔と情報トラック方向の位置ずれ許容値 !。o 翼 襲 醤 誉 趣o・5 蘂 醤 さ 0 0 0.5πrad πrad (O.39μm) (0.78μm) 位相差(溝深さ) 図6−8 回折格子の位相差(溝深さ)と0次回折光に対する1次回折光の割合 104一 DET1 X2 y2 E2 y1 E1 (Xby1,Z1 P lT 、 Z r1 f 81 F( x,y) DET2 X ( X,y,Z) F r φ X2, φ1 X1 y ( ) iSW f θ F 、 f Dx,DY) Z1 lSW Z1 f 図6−9集光系とプッシュプル法トラッキングセンサーの座標 一105一 ?ハ12∫詐1θ・・φ・)・in ・・d ・・dφ・ S・・(の一 (6−14) 一∫勢:2銘1θ・・φ・)・in ・・d ・・dφ・ (6−15) と計算される。 トラッキングセンサーの出力ST(t)は、それぞれの光検知器の差 動出力となり S。(の=S。、(の一S。、(の (6−16) となる。 6.3.2 センサー検出特性の計算 図6−10に式(6−16)を用いて計算したプッシュプル法トラッキングセンサーの検 出特性を示す。横軸はトラックずれを、縦軸はトラッキングエラー信号を表す。 なお、縦軸は2分割光検知器で受光される全出力(和出力)で規格化している。 また、図6−11はプッシュプル法トラッキングセンサーの検出特性実測値である。 横軸はトラックずれを、縦軸はトラッキングエラー信号を表す。図6−10、図6−11 における再生信号は2分割光検知器のそれぞれの光検知器の和出力で、光スポッ トが情報トラックを横断するときの再生特性を示し、情報トラックの中心に光ス ポットが照射されている場合に回折により反射光が最小となる。図6−11で、再生 信号の極小値とトラッキングエラー信号の零点がほぼ一致しており、望ましい特 性が得られている。また、計算値と実測値で、検出特性の形状が良く一致してお り、本計算法が有用なことがわかる。 図6−12は・ピット深さに対するプッシュプル法トラッキングセンサーの検出感 度を式(6−16)により計算したものである。この図より、情報トラックのピット深 さからセンサー検出感度を算出できる。また、ピット深さλ/4のとき検出出力が 零で、ピット深さλ/8のとき最も検出感度が大になっている。これは、情報トラ 一106一 A 四 一1・0 −0・5 0 0.5 100 トラックずれ(μm) (a)再生信号 il「へ H( ウ埋 ハ夜 0.5 十1葎 》) 1「、巾 ⊥靱 .o 一1.o 一〇.5 0 0.5 1, トラックずれ 一〇。5 (b)トラッキングエラー信号 図6−10 プッシュプル法トラッキングセンサーの検出特性(計算値) 一107一 再生信号 / 1。7μm トラッキングエラー信号 / 零レベル トラックずれ 情報トラック中心 図6−11プッシュプル法トラッキングセンサーの検出特性(実測値) 1.⑰ 要隔 0 0 λ/総 λ/4 ピット深さ 図6−12 ピット深さに対するプッシュプル法トラッキングセンサーの感度特性 一108一 ック中心から光スポットがずれても、ピット深さR/4のとき2分割光検知器上で 分割線と直交する方向の強度分布の対称性がくずれないが、ピット深さλ/8のと き2分割光検知器上で分割線と直交する方向の強度分布の非対称性が最も大にな ることに起因する。 6.4 トラッキングセンサーのディスク傾きに対する検出誤差 図6−13にディスク傾きに対する3ビーム法とプッシュプル法のトラッキングセ ンサーのセンサー検出誤差の測定値を示す3)。図より3ビーム法の検出誤差は、 プッシュプル法の1/4以下であることがわかる。このため、コンパクトディスク 装置、ビデオディスク装置等では、3ビーム法がよく用いられる。光磁気ディス ク装置で3ビーム法を用いる場合は、記録時に信号の記録再生光スポットより前 方の光スポットも後方の光スポットもカー効果による信号検知に用いる検光子を 通さないでトラッキングエラー信号が得られるよう装置を構成すれば使用可能で あるの。追記形光ディスク装置で3ビーム法を用いる場合、信号の記録再生光ス ポットより前方の光スポットは情報が記録されていない情報トラックをトレース するので変調を受けないが、後方の光スポットは情報が記録された情報トラック をトレースするので変調を受ける。したがって、トラッキングエラー信号に情報 再生信号が大きく重畳されることになり、一般にプッシュプル法が用いられる。 なお、プッシュプル法トラッキングセンサーのディスク傾きに対する検出誤差低 減は今後の研究課題としたい。 6.5 まとめ 3ビーム法トラッキングセンサー検出特性解析の為の計算式を導出し、特性計 算値が実測値と良く一致する事を確認した。さらに、両側光スポットの中心光ス ポットに対する半径方向へのずれが0.4XL mのときセンサー検出感度が最大になる ことを示した。また、光ヘッドが情報トラック方向にずれるとディスクの内周と 外周で感度差が生じることを示し、光スポットの間隔が20μmのとき情報トラッ ク方向へのずれ許容を1.7mm以下にすべきことを算出した。さらに、3ビームの 中心光束と両側光束の強度比を設計値に決めるため、回折格子の溝深さと3ビー ムの強度比を決める計算式を導出した。 一109一 0.2 ( ∈ 一プツシュ 蔑 ) 網 路 o.1 ヨヨ 鱗 ,5 一1。5 罵\ Rビ 0 0. 5 1. 0 1. 5 一LO ディスク傾き(°) 一〇.1 一〇.2 図6−13 3ビーム法とプッシュプル法におけるディスク傾きとセンサー検出誤差 110一 プッシュプル法トラッキングセンサー一検出特性解析の為の計算式を導出し、計 算と実験が良く一致することを確認した。また、溝深さとセンサー感度の関係を 求め、情報トラックのピット深さからセンサー検出感度が算出できる様になった。 ディスク傾きに対し、3ビーム法とプッシュプル法のトラッキングセンサーの 検出誤差を実験的に求めた。3ビーム法の検出誤差は、プッシュプル法の1/4以 下であることがわかった。 第6章の参考文献 1) C.H. F.Velzel: Appl. Opt. 17 (1978) 2032. 2) G.W.Hrbek: J. SMPTE 83 (1974) 580. 3) K。Okada, M. Kondo , K. Kilne and S. Takamiya: ICCE’83, June, (1983) 184・ 4) T.Fujita, M.Kondo, K. Kime and N. Tomikawa: Technical Digest, Optical Data Storage, Washington, 1985 (Optical Society of America, Washington, DC, 1985) Paper ThAA2−L 一111一 第7章 レンズのプラスチック化 7.1 はじめに 昭和57年にCDプレーヤーが市場に投入されて以来、各メーカーのコストダ ウンの追求と量産体制の確立に伴って、急激な低価格化が進行してきた。また、 低価格化によってプレーヤーの需要も急激に伸びている。CDの応用分野も開発 当初のHi−Fiオーディオの枠を越えて、ゼネラルオーディオ、コンピューター外 部記憶装置(CD−ROM等)へ広がりつつある。 このような流れの中で、CDのキーデバイスである光ヘッドも、より量産性を 高めるために光学系の簡素化が進められてきた。プラスチック部品の開発と採用 は、そのような技術開発の中核を担っているといえる。しかしながら、従来の CD用光ヘッドでは、組み合わせガラスレンズによるコリメーターレンズと、無 限共役形のプラスチック対物レンズとの組み合わせから構成された集光系が主流 であった。また、センサー系は温度による特性変化の少ないガラスレンズからな る光学系が用いられていた。そこで、集光系とセンサー系を各一個のプラスチッ クレンズで実現した。本章では、特にプラスチックレンズに関する光学的問題と、 それを解決する手法について述べる。 7.2 集光とセンサー光学系 図7−1に有限共役形対物レンズを用いた直接集光方式光学系を示す。対物レン ズとして両面非球面の有限共役形プラスチックレンズを採用している。 従来、センサー光学系として図2−2に示すように拡大レンズと円筒レンズの2 枚のガラスレンズを使用していたが、これを一枚のプラスチックレンズとした場 合について検討する。以上のように、光学系を構成するレンズは2枚のプラスチ ックレンズだけであり、きわめて簡素化される。 7.3 プラスチック対物レンズ1’2) 1984年にCD用光ヘッドの対物レンズとして、非球面プラスチックレンズが実 用化された3)。しかし、このレンズは無限共役形であり、光ヘッドで使用する際 一112一 にはコリメーターレンズを必要とした。本章で述べる有限共役形は、コリメータ ーレンズを省略しているが、無限共役形に比べてより収差的に厳しい。有限共役 形プラスチック対物レンズを使用する際に発生する収差を表7−1に示す。表中、 フォーカシング制御とトラッキング制御に伴う収差発生は、有限共役形固有の問 題である。本節では、これらの各収差の問題点に関し検討した結果について述べ る。 7.3.1 収差成分が混在した場合のジッター値予測 光ヘッドの集光系は、良好な再生特性を達成するために、無収差に近い性能が 要求される。このための収差許容値としては、0.05λrms以下が必要とされてい る。また、読みだし信号の質は、一般に再生信号のジッター値σ3T(3T信号の 長さの標準偏差)で表される。良好な再生には、σ3Tが30ns以下であることが必 要とされている。 光ヘッドの集光系で問題となる収差は、球面、非点、コマの3収差であるが、 各収差のジッター値に対する寄与は異なることが報告されている4)。しかしなが ら、これらの3収差が混合した場合のジッターの発生については、明きらかでは なかった。そこで、収差的に条件の厳しいプラスチックレンズを使いこなすにあ たり、各収差が混在した場合のジッター値を予測する方法について、実験的に検 討した。 まず球面、コマ、非点の各収差が単独で存在した場合のジッターに与える影響 について調べる。コマ収差については半径方向の光ヘッド傾きに起因するラジァ ルコマと情報トラック方向の光ヘッド傾きに起因するタンジェンシャルコマに分 けて検討する。図7−2に、球面(SA)、ラジアルコマ(CR)、タンジェンシャルコマ (CT)、非点(AS)の各収差を独立に発生させた場合における、各収差に対するジッ ター値の測定結果を示す。図7−2の結果から各収差Wに対するジッター値σを多 項式で近似したのが、次の式(7−1)∼(7−4)である。ただし、W、σの添え字で収 差の種類を表している。 σSA=α2W臼SA2十α1 WSA十α0 (7−1) 一113一 プラスチック対物レンズ 図7−1有限共役形対物レンズを用いた直接集光方式光学系 表7−1 有限共役形プラスチック対物レンズの主要な収差 原 因 収 差 有限共役系に起因 集光点位置制御 球面(SA) キる収差 情報トラック位置制御 非点(ASTIG) プラスチックモールド 成型誤差 種々の収差 激塔Yに起因する収差 湿度 球面(SA) 温度 球面(SA) 一114一 60 ( 4e の ど 点 ζ20 0 0 0.04 0.02 0.06 0.08 (a)球面収差 WSA (λrms) 60 ( 40 の ε 点 家20 0 0 0.04 0.02 0.06 O.08 (b)ラジアルコマ WCR (λrms) 図7−2−1 球面、ラジアルコマ、タンジェンシャルコマ、非点の各収差に対する ジッター、白丸は実測値 一115一 60 ( 40 00 ご 点 家20 0 0 0,⑪2 O. 04 0.06 o.08 (G)タンジエンシャルコマWCT(λrms) 60 ( 19 QO ど 点 須20 o o 0.02 0.04 0.06 0.08 (d)非点収差 WAS(λrms) 図7−2−2 球面、ラジアルコマ、タンジェンシャルコマ、非点の各収差に対する ジッター、白丸は実測値 一116一 aCR=β2 WCR2+β0 (7−2) び・。=γ、W。。2+γ。 (7−3) dAS= S、WAS+δ0 (7−4) 次に各収差が混在した場合のジッター値について検討する。まず、各収差成分 によって生じるジッターが統計的に独立に起こると仮定して、測定される全ジッ ター値a3。が式(7−5)で与えられると考える。 o、。=σ、A2+a。R2+σCT2+σ。、2−3K、2 (7−5) ただしK・=aoであり、ラジアルコマ、タンジェンシャルコマ、非点の各収差が 無いときの残留ジッター値β。、γO、δ。が、全ジッター値を合成するときに与 える影響を補正している。図7−3に球面収差とコマ収差が混在した場合のジッター 値を示す。黒丸は、球面収差一定の条件で、コマ収差を変えて実際に測定したジ ッター値である。図7−4に非点収差とコマ収差が混在した場合のジッター値を示 す。黒丸は、非点収差一定の条件で、コマ収差を変えて実際に測定したジッター 値である。図7−3と図7−4において、実線は、式(7−1)∼式(7−4)を用いて各収差に 起因するジッター値を計算し、各収差によるジッター値から式(7−5)により収差 が混在する場合の全ジッター値を算出したものである。いずれの場合においても、 ジッター値は、直接の測定値と収差から式(7−5)により算出した値とが良く一致 しており、式(7−5)の有効性が確認できた。以上の方法により各収差が混在した 場合のジッター値が精度良く、しかも簡便に予測できる。 7・3・2 フォーカシぞグ制御・トラッキング制御と再生特性 有効視野内でほぼ正弦条件を満たすように設計された有限共役形プラスチック 対物レンズでは、フォーカシング制御時の対物レンズの光軸方向移動に伴う球面 収差と、トラッキング制御時の対物レンズの半径方向移動に伴う非点収差が問題 一117一 球画収差 WSA=0・054 (λrms) 50 − 40 2 ¥ u 30 易 加 20 一〇.〔}5 0 0.05 (a)ラジアルコマ WCR (λrms) 球面収差 WSA=0・054 (λrms) 50 ( 40 Qr I ⊂ 1 賂 30 》 塾 20 一一〇.05 0 0eO5 (b)タンジエンシャルコマ WCT (λrms) 図7−3球面収差とコマ収差が混在した場合のジッター、黒丸は実測値で実線は計算値 一118一 非点収差 WAS”0・038 (λrms) 50 ( 40 2 ¥ 々∼30 》 銚 20 −0.05 0 0.05 (a)ラジアルコマ WCR (λrms) 非点収差 WAS・”0・038 (λrms) 50 ( 40 2 Y 姑 30 募 銚 20 −0,05 0 0●05 (b)タンヅェンシャルコマ WCT (λrms) 図7−4 非点収差とコマ収差が混在した場合のジッター、黒丸は実測値で実線は計算値 一119一 となる。CDのセットメーカーが要求するフォーカシング制御、 トラッキング制 御の範囲に対して、ジッター値が30ns以下に収まるようにレンズの仕様を決定し た。その際、レンズの収差計算値から予想されるジッター値を式(7−5)により求 めた。図7−5に、トラッキング制御に伴う対物レンズの半径方向移動による非点 収差の変化を示す。測定は、フィゾー干渉計(ZYGO社)を用いておこなった。 計算値が2次曲線状に変化するのに対し、実測値は鍋底状の曲線になっている。 追従量が±400μmを越える領域では、両者がよく一致していることがわかる。追 従量が±400μ囮以内の領域では、レンズ成型時の残留収差が支配的になるために、 実測値は計算値よりも大きな値となっている。ただし、残留収差がジッター値の 劣化に最も影響を与えるタンジェンシャルコマ[図7−2(c)]だとしても、収差値 は0.01λrms以下でありジッターの劣化は小さく、±400μm以内の追従範囲にお いて良好で変化の小さいジッター値になると予測され、性能劣化の小さい再生特 性が期待できる。 7.3.3 残留収差 有限共役形プラスチック対物レンズの収差を分析した結果、成型誤差による残 留球面収差のロット間ばらつきがあることがわかった。表7−1に示したように、 有限共役形プラスチック対物レンズの収差要因には球面収差に関係するものが多 いため、残留球面収差はできるだけ小さいことが望まれる。そこで、残留球面収 差を補償する手法を開発した。この補償法は図7−6のように、光源からディスク に至る共役距離Uを変えると、集光系の球面収差が変化する性質を利用している。 実際、対物レンズもしくは半導体レーザーを光軸方向に移動させることにより共 役距離を変えることが出来る。図7−7に共役距離の変化(△U)に対する、球面 収差変化の計算値を示す。図7−7では球面収差の正負を明示するために、便宜上 RMS値に符号をつけてプロットしている。±1mmの範囲で△Uを変化させることに より、約±0.02λrmsの球面収差を補償できることがわかる。 7.3.4 温湿度特性 プラスチックレンズは、温度および湿度の変化に伴って屈折率と形状が変化し、 その結果、焦点距離および収差特性が変化する。光ヘッドでは集光点位置の自動 一120一 O、 05 一:測値 ( 窪 0.04 一一 v算値 芝 ) 0.03 の く ≧ 0、02 網 竪 ・L[]妻 0.01 株 0 一600 −400 −200 0 200 400 600 半径方向移動量(μm) 図7−5 対物レンズの半径方向移動に伴う非点収差 ディスク 対物レンズ 半導体レーザー 図7喝球面収差補償の基本概念 一121一 0。02 つ 讐 0.01 c−’・t ) < の 6 ≧ 欄 屡 ・・0,01 醤 補償量△U(mm) 図7−7補償量に対する球面収差変化の計算値(便宜上rms値に符号を付けている。) 100 ( ) 80 60 40 挨 20 0 0,03 ( 窪 一 0,02 ぺ ) 竪 飴 0。el O。00 0 10 20 30 0 10 日 数 図7−8湿度と球面収差の経年変化 一122一 20 30 制御を行っているので、焦点距離変化は問題にならないが、収差特性の変化につ いては、その量を明確に把握しておく必要がある。有限共役形プラスチック対物 レンズの形状は、光軸に対する対称性があるので、温度および湿度の変化によっ て発生する収差は球面収差だけである。レンズ単体で温度特性を測定した結果、 25℃あたりの球面収差変化は、0.016λrmsであった。先に述べた球面収差補償を 併用した場合・25℃の温度変化に対するジッター劣化量は、2ns以下と見積もら れるので、実用上問題ないと考えられる。 次に湿度特性について述べる。通常の製品の耐湿試験では、極端な高温高湿環 境に試料を投入する方法が用いられる。しかし、このような試験方法は、通常の 家庭環境で使用される有限共役形プラスチック対物レンズの性能を評価するには、 磁しすぎると考えられる。そこで、球面収差を湿度と共に、冬期および夏期に各 1カ月間連続測定した。結果を図7−8に示す。なお、レンズは、特別な湿度制御 を行っていない通常の環境に放置した。この測定により、冬期、夏期に湿度が 15∼50%、60∼90%の間で穏やかに変化した場合の球面収差変化量は、高、々 0.Olλrms、0.02λrms程度であることがわかる。また、両シーズンを通じての球 面収差変化量は0.02λrms以下であると推定される。先に温度特性に関連して述 べたように、この程度の球面収差変化のジッター値への影響は小さく、無視でき る。したがって、通常の家庭環境でCDプレーヤーが使用される場合には、この 有限共役形プラスチック対物レンズは収差的に充分安定であると考えられる。 7.4 プラスチックセンサーレンズL2・5) センサー系のレンズとして円筒レンズと拡大レンズを一体化したプラスチック レンズについて検討する。以後、このレンズをセンザーレンズと呼称する。 図7−9にセンサーレンズ系の概念図を示す。一枚のレンズの片側が凹面、他面が 円筒面となっている。凹面で光検知器上の3ビームの間隔を拡大し、円筒面でフ ォーカスセンサー系に非点収差を発生させる、という2つの機能を兼ね備えてい る。 元来、プラスチックはガラスに比べて屈折率の温度係数が2桁大きい。このた め・センサーレンズをプラスチック化した場合、フォーカスセンサーの合焦点検 出特性の検出誤差(零クロス点と最小スポット位置とのずれ)が、温度によって 一123一 大きく変化することが懸念される。計算の結果、検出誤差の温度係数は、レンズ 材料にPMMAを用いた場合、1.1×10“2 ,a m/℃であり・光学ガラス(BK−7)を 用いた場合の値2.6×10}5μm/℃に比べて、約400倍になることがわかった。しか し、25℃の温度変化に対する検出誤差は、わずか0.27μmにすぎず、ディスク集 束光の焦点深度±1.5μmに比べて十分小さな値であることがわかった。図7−10は、 検出誤差の温度依存性の測定結果を計算値とともにプロットしたものである。検 出誤差の発生量は、センサーレンズの鏡筒と接着剤によって変化するが、図のよ うに黄銅鏡筒に紫外線硬化型接着剤でセンサーレンズを張りつけた場合、検出誤 差が計算値以下(5.8×10}3μm/℃)に収まることを確認した。また、この場合 の5∼60℃の範囲における合焦点検出感度変化は、20℃の場合に比較して±1.5dB 以下であった。以上のように実用上問題ない温度特性が得られることを確認した。 7.5 光ヘッドの評価1’2) 有限共役形対物レンズを搭載したCD用光ヘッドの再生特性について検討する。 対物レンズとコリメーターレンズ及び拡大レンズと円筒レンズをプラスチック化 により一体化している。 完成した光ヘッドの対物レンズから出射する光の波面を、縞走査型のラジアル シャリング干渉計ωを用いて測定した。結果の一例を図㍗11に示す。球面収差 (SA3)は先に述べた補償法により極めて小さい値に抑圧されていることがわか る。また、全波面収差は0.035λrmsであり、仕様値の0.05λrmsに入っており、 良好な集光性能が得られている。次に、CDの情報トラックをトラッキングアク チュエーターで追従させた時の、ジッター特性の測定例を図7−12に示す。なお、 これはディスク高さを基準状態に設定し、フォーカス制御量を零付近としたとき のデータである。目標仕様である30nsよりも10ns程度良好な値が、±400μ田以上 の追従範囲にわたって安定に得られている。これらは、先に図7−5に示した非点 収差の測定結果から予測した結果ともよく一致している。さらに、ディスクを基 準の高さから±0.7mmの範囲で上下させ、フォーカス追従を加えてジッター特性 を測定した結果、図7−12とほとんど同じ特性が得られ、所望の性能が達成されて いることを確認した。 一124−NR 一体化レンズ 円筒レンズ 凹レンズ /一 (a)従来のレンズ (b)一体化レンズ 図7−9 フォーカスセンサーのセンサーレンズ光学系 ( 紫外線硬化型接着材 黄銅鏡筒 こ 鰐 翠1 センサーレンズ 義 翁o sp Pt,騨凶画凶Pt O o 巽 喪一i Pt 0 10 20 30 40 50 温度 (℃) 図7−10 フォーカスセンサー検出誤差の温度依存性 一125一 60 RMS WFE=:0。035(λrms) SA3 =Oe O4 (λrms) AST。 :0。 24 (λrmS) COMA=0 (λrans) 劃 図7−11 光ヘッド出射光の波面収差 _30 Cl) ⊂ −20 1 家10 一400 −200 0 200 4〔}0 半径方向移動量(μm) 図7−12 対物レンズの半径方向移動に対するジッター特性 一126一 7。6 まとめ 収差成分が混在した場合の、再生信号のジッター値を予測する簡便な手法を考 案し、レンズ収差仕様の決定に応用した。また、プラスチック対物レンズでは、 フォーカシング駆動・成形誤差、温度変化に伴う球面収差の問題が重要であった。 そこで・成形誤差による残留球面収差を補償するために、光源からディスクに至 る共役距離を変化させる方法を開発した。そして、本補償法を併用した場合、他 の要因によって発生する球面収差が、実用上問題ない範囲に収まることを確認し た・さらに・一体化プラスチックセンサーレンズでは、フォーカスセンサーの温 度特性が問題であったが、固定法を最適化することにより、実用化に支障がない 程度の特性変化に抑えることができることを確認した。最後に、プラスチック対 物レンズとプラスチックセンサーレンズを組み込んだ光ヘッドで、再生時に仕様 値30nsを満たす良好なジッター性能が得られることを確認した。 第7章の参考文献 1) S・Shikama, E. Toide, M.Kondo and K.Kime: Proc. SPIE 695 (1986) 199. 2)鹿間、都出、近藤、橋本、木目:光メモリシンポジウム’86論文集(1986) p.105. 3) T・Kiriki・ N・Izuiniya, K. Sakurai and T。 Kojima: CLEO Conference Digest WB3, 7 (1984) 80. 4)宮岡、久保田:光学技術コンタクト23(1985)p.449. 5)鹿間、都出、近藤:第33回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1986) p.113. 6) B・E・Truax: Optical Testing and Meteorogy SPIE Proceedings (1986) 661. 一127・一一 第8章 光ディスク装置のレー一ザーノイ ズ低減 8.1 はじめに 半導体レーザーは、He−Ne等のガスレーザーとくらべて小形軽量、長寿命であ り、また駆動回路も簡易にでき、光ディスク装置等の光源として適当である。し かし、従来から縦シングルモード半導体レーザーにわずかに光が帰還されると、 半導体レーザーの雑音(光出力のゆらぎ)が増加することが知られている。この ため通常光ヘッドでは、1/4波長位相板と偏光ビームスプリッターを組み合わせ、 ディスクからの反射光が半導体レーザーに戻らないよう構成されている。ところ が実際にはディスクの材質が複屈折をもつため、反射光は完全に半導体レーザー 出射光と分離されず、わずかに半導体レーザーに戻ってしまう。このため、縦シ ングルモード半導体レーザーを使用した光ヘッドでディスクを再生すると、半導 体レーザーの雑音増加が起こり、S/N(signal to noise ratio)が低下して再生 信号の品質が劣化するという問題が生じる。この問題は、光ヘッドの開発におい て、通常の半導体レーザーが縦シングルモード発振であるという事実により一層 顕在化し、縦シングルモード半導体レーザーのS/N改善は光ヘッド開発の重要課 題であった。これらの対策として、半導体レーザー素子自体の改良が行われると 同時に、各種ノイズ低減策もとられてきた。低減策として光帰還法L2)、負帰還 法3’4’5)、高周波重畳法6)が検討された。光帰還法は、半導体レーザーに過剰に 戻り光を帰還させ、発振縦モードをマルチモード化して、ノイズを軽減させる方 法である。筆者が提案した負帰還法は、半導体レーザーの出射光を光検知器によ り光電変換し、直流成分を除くノイズ成分の反転信号で半導体レーザーを変調す ることにより、半導体レーザー出射光のノイズ成分を低減させる方法である。高 周波重畳法は、半導体レーザーを600湘z以上の高周波で変調することにより発振 縦モードをマルチモード化し、系のノイズ増大を軽減する方法である。ここでは、 これらについて検討し、利害特質を述べる。 一128一 8.2 光帰還法 1981年Milesらにより、一定以上の光を縦シングルモード半導体レーザーに帰 還すると、低域でのS/Nが改善されるという報告があった1)。この観点からS/N改 善を試みることにし、光ヘッド系をシミュレートした図8−1の光学系において光 帰還率とS/駅縦モードの関係をTJS(Transverse Junction Stripe)レーザー7) について調べた。TJSレーザーは、主として光ディスク用に開発されたもので、 通常縦シングルモードで発振するように設計されている。図8−2は、光帰還率と S/N、縦モードに関する実測データーである。図8−2(a)は光帰還率と縦モードの 関係を示す発振スペクトルの実測データーで、横軸は波長、縦軸は光強度である。 図8−2(b)は光帰還率とS/Nの関係を示す実測データーで、横軸は半導体レーザー の光出力に対する光帰還率(%表示)、縦軸は半導体レーザーの光出力に対する ノイズレベル(dB表示)である。なお、光帰還率を増加させるには、偏光ビーム スプリッターと組み合わせて用いる位相板の波長をλ/4よりずらせたり、偏光 ビームスプリッターの代わりにハーフミラー面をもっビームスプリッター等を用 いたりする。 図のように、2KHz以下のフォーカシング・トラッキング制御の周波数帯域で 0.002∼0.4%の光帰還により、信号の周波数帯域で0.01∼0.4%の光帰還により 顕著なS/Nの低下がみられる。一方、フォーカシング・トラッキング制御の周波 数帯域と信号の周波数帯域のS/Nは、共に0.5%以上の光帰還で大きく改善され、 戻り光が全く無い状態程度まで改善される。また、それぞれの光帰還率に対する 発振縦モードは図8−2(a)に示すように、光帰還率が0.001%付近で縦シングルモ ードであるが、0.1%付近ではモード競合の状態になり、S/Nが最も低下した状態 と対応している。更に光帰還量を増やして2%程度にすると、安定なマルチモー ドになりS/Nが改善された状態と対応している。 このようにTJSレーザーでは、戻り光が全く無い状態からわずかに戻り光があ る状態(0.1%程度)に変移すると急激にS/Nが低下する。これに対して、最初か ら2%以上の戻り光がある状態であると、戻り光がわずかに増減してもS/Nはほと んど変わらない。すなわち光ヘッドの光学系を光帰還率2%以上に設計すると、 アィスクの複屈折に起因する光帰還率の変動によるS/Nの劣化は起こらない。 図8−3に光ヘッドで光帰還率を変えた場合の再生アイパターンを示す。図8−3(a) 一129一 ズー レ∩砺 物熊 対創 ザ ス ラ ク ィ ズ府 イ ぺ り N 演 ス 性 Dク定 イト ラ光 学 フ ィ 一ナ デ タア 7︿ー ソノー レ晃 一nU 々ノ= , こ 8 10 性 幅似庶 田20 懲 ヱ ズイ 3 ノ ω コ ル ︶ トク % ぺ ︵ ヘ ス ω率熱 の . 還 ロ ー 光 光 一 ・ たM 検 ザ 刃ー 光 剰 一 ー レ 還 帰 0、 体 導 一 光 −ー守 半 ザ と ー 4 率 レ一W 還 01 帰 半ー 7ー ー ー ーー ﹄ ロ コ 蝋漿︵。。℃︶ム∼々こ葺 囲 13 タ 図 島 光 リ リ 再 1 ミでム即腿 ム∼ム巾胆 は光帰還率をほぼ0%とした場合、図8−3(b)は光帰還率を2%以上にした場合であ る。光帰還率が2%以上の場合、半導体レーザーのノイズが低減されアイパターン が良好になる。 8.3 負帰還法 ここでは、筆i者の提案した負帰還法について検討する。半導体レーザーの出射 光を光検知器により光電変換し、光電変換された電気信号からコンデンサーで直 流成分を除きノイズ成分を取り出す。そのノイズ成分の反転増幅信号で半導体 レーザーを変調することにより半導体レーザー出射光のノイズ成分を低減させる のが負帰還法である。この負帰還法について検討した結果を述べる3’5)。この方 法は、He−Neレーザー等のガスレーザーのノイズ成分除去法として、外部変調器を 併用して行われてきた8)。半導体レー一ザーは、レーザー自体変調可能であるので、 ガスレーザーより負帰還法によるノイズ低減が容易にできる長所がある。ここで は、この負帰還法によるノイズ低減法に対し、理論的、実験的な結果を述べるp 8.3.1 理論 負帰還法によるノイズ低減系を組み込んだ光ヘッドの一例を図8−4に示す。半 導体レーザーの前方出射光は対物レンズによりディスク上に集光され、ディスク 上の情報を読み取るよう構成されている。ディスク上の情報を含む反射光は偏光 ビームスプリッターにより照射光路と分離され光検知器2により電気信号に変え られる。 負帰還法による半導体レーザーノイズ低減系について説明する。半導体レーザー 前方出射光の一部をビームスプリッターにより分離し、光検知器1にて電気信号 に変換し、増幅器にて増輻し、増輻器出力のDC成分をコンデンサーを通すこと により除去し半導体レーザーに印加する。その際、半導体レーザー出射光のゆら ぎを低減させるように半導体レーザー、ビームスプリッター、光検知器1、増幅 器より構成される閉ループ系は負帰還系となっている。従来の光ヘッドではビー ムスプリッター、凸レンズ2、光検知器1、増幅器より構成されるノイズ低減系 がない。 なお、半導体レーザーの後方出射光は、従来の光ヘッドに用いられているよう 一132一 に・ALPC回路(自動レーザーパワー制御回路)と組み合わせて前方出射光の 光出力を制御する方法として有効である。しかしながら、前方出射光と後方出射 光のノイズ相関が完全ではなく4)、後方出射光を用いてはノイズが低減されない ので、前方出射光のノイズ低減には適さない。 図8−4のノイズ低減系をモデル化したものを図8−5に示す。N、(」ω) は半導体 レーザーのノイズ振幅を駆動入力電流換算で表したものである。 G、(∫ω)∼G7(」ω)は周波数伝達関数で、 G、(」ω) は半導体レーザーの駆動 電流に対する出射光の光出力を、G2(」ω)は半導体レーザーからビームスプリ ッターまでの光伝達率を・G3(jω)はビームスプリッターの反射率を、 G、(jω) はビームスプリッターから光検知器1までの光伝達率を、G5(1ω)は光検知器1 の光電変換効率を・G6(jω)は増幅器の特性を、 G7(1ω)はビームスプリッ ターの透過率を表している。N。(」ω)、1>R(」ω)はビームスプリッター透過 光のノイズ振幅で、N。(」ω)はノイズ低減無し、 NR(」ω)はノイズ低減有り を表している。帰還制御系の理論によると、前向き伝達関数をGF(重ω)、フィ. 一ドバック伝達関数をG。(1ω) とすると閉ループ系の伝達関数G。(jω) は G.(1ω) Gc(1ω)= 1+G。(」ω)G。(1ω) (8−1) となる9)。ここで GF(jω) :G、(jω)G,(jω) (8−2) G・(jω)=G・(」ω)G、(」ω)G,(jω)G,(」ω) (8−3) である。よってノイズ低減有りの場合のビームスプリッターを透過した光のノイ ズは N.(jω)・=G,(jω)Gc(」ω)NL(jω) 一133一 (8−4) ディスク 対物レンズ 欝)回動ミラー 信号 λ/4板 偏光k・ ・・Akプリ独一 ミフー 光検知器2 円筒レンズ 凸レンズ2 光検知器1 ヒ9一ムスプリツター 凸レンズ1 C 半導体y−y“一碧増幅器 直流電源 図8−4 負帰還法によるノイズ低減系を組み込んだ光ヘッド光学系 GF r欄欄脚制一一属哺一庸囎一榊轍哨一欄「 L_________________」 図8−5 負帰還法によるノイズ低減系のブロックダイヤグラム 134一 となる・またノイズ低減無しの場合のビームスプリッターを透過した光のノイズは N・(」ω):G・(」ω)G。qω)N。(」ω) (8−5) と表される。従ってノイズ低減された振幅は元の半導体レーザーのノイズ振輻 N。(」ω)を用いて次式の通り求められる。 繭ω)==、i)ltG(壽ω)(jω) (8−6) ここでG(∫ω)は一巡伝達関数で G(」ω)=:G。(」ω)G。(」ω) =G・(jω)G・(」ω)G・(1ω)G。(」ω)G,(」ω)G,(」ω)(8−7) である。 8.3.2 実験、結果 (1)半導体レーザーのノイズ低減 図8−4に示す系で、ビームスプリッター透過光のノイズを調べた。半導体レー ザ”はTJSレーザー(780nm)で、凸レンズ1として対物レンズ(NA・0.5)を用 いた。 図8−6は元のレーザーノイズと負帰還法を行った場合のレーザーノイズを示し ている・5MHz以下の低域では約14dBノイズが低減されている。周波数fB(・22MHz) 迄はノイズが低減されるが、fB以上の周波数では逆にノイズが増大している。こ のことをさらに詳細に検討するために、この系のオープンループ特性を測定した のが図8−7である。位相は、ほぼ直線的に遅れ特性を示しており、15MHz以上で は低減の効果は少ない。この特性より式(8−6)を用いて予測されるノイズ低減量 を計算したものを図8−8に示す。比較のために、図8−8には図8−6の実測値も同時 に記入している。周波数fB,fB’以下の低域ではノイズが低減されるが、周波数 一135一 周 ﹀;\。自≡雛 5 H F 還 帰 7 。︵・︶駆週。− − ミτムNヤ0\ 絡 3 3一 1 M オ 6 fB,fB!以上ではノイズが増大する点で制御理論による計算値と実測値はよく一 致している。これらのことは・増輻器における制御理論がほぼ理論通りに成立す ることを示している。より安定で、しかも帰還量の大きいフィードバック系を実 現するためには出来るだけ開ループ系の高域における位相遅れを小さくする必要 がある。なお、実際の応用の際には、高域のノイズ増大部分は、その装置の使用 周波数領域より高域にもっていく必要がある。 図8−9は、戻り光無しの場合と戻り光によりノイズを約14dB増大させた場合の それぞれについて、負帰還法によるノイズ低減を行った実験結果である。戻り光 によりノイズが増大した場合も同様にノイズ低減効果のあることが確認された。 (2)再生実験 図8−10は図8−4の光ヘッド系を用いて測定した再生結果である。本方法により C/N(carrier to noise ratio)は56dBから59dBに改善されている。キャリアレ ベルは変化しないが、Bの周波数域(8∼10MHz)のノイズレベルが約3dB低減さ れていることが分かる。Aの周波数域のノイズ、すなわち周波数が高くなるほど 直線的傾斜状に下がってくるノイズは、光ディスク再生面の粗さ等により再生時 に生ずるディスクノイズと思われる。再生系のS/Nを如何に改善してもこのディ スクノイズレベル以下にはならない。図8−10(b)では約9MHz迄ディスクノイズの 直線的傾斜状の特性が現れており、このノイズレベルで再生のC/Nが制限されて いる。実際の半導体レーザーのノイズ低減効果は3dB以上あると予想されるが、 ディスクノイズに埋もれて分からない。さらにC/Nが良好でディスクノイズの小 さいディスクが出てきたときには、ノイズ低減効果がより顕著になると予想され る。 8・3.3 負帰還法に対する考察 本実験結果から負帰還法は、レーザー光の光出力の微小変化を必要な周波数帯 域内で抑える雑音抑制方式であり、制御理論に従ってノイズが低減されていると 結論出来る。戻り光の有無にかかわらずある周波数以上では逆にノイズが増大し ていることからして、戻り光によって発生する縦モード競合を抑止する効果、す なわち縦モードを安定化する効果はない。従って、単一モードの光ファイバーを 一137一 20 E610 9 饗o 薯 / こ一10 −20 O lO 20 fB fガ 30 40 周波数(MHz) 図8−8ノイズ低減量周波数特性 一138一 50 数 波 周 無 り −願 0り 5 ﹀;\ロロニF >;\ロニr 下⊥。 50 1 ︵oDU︶ミτムNヤ\ ︵ooU︶ミてム旅ヤ\ ﹀;\ロ自ニド ﹀;\自自℃O[ 1 B 周 の o o 皿Z 国波換 b 周ー 号 信 生 再 邸 ヨm ミでム硬靱 ミτム㎝靱 用いる光通信等への適用は難しい。しかし、光ディスク装置への応用では、必要 帯域内の光出力の変化雑音を抑えればよく、実際ビデオディスクでは12MHz迄ノ イズ低減されていればよいので、本方法によるノイズ低減法は有効である。 半導体レーザーの変調特性は200MHz以上あるので、光検知器、増幅器の周波数 特性改善により数倍程度のノイズ低減と帯域幅拡大は可能と思われる。その際、 半導体レーザー・ビームスプリッター、光検知器、増幅器より構成されるル_プ 系の長さは位相遅れとなるので、できるだけこの系の距離を小さくする必要があ り、半導体レーザーのパッケージ内にこれらの系を組み込めば特性上有利となる。 ALPC回路とレーザーノイズ低減回路を同一の増幅器を用いて構成できれば 非常に装置系が簡略化される。しかし、DCから高周波まで良好なS/Nで増幅で きる適当な増幅素子がなく・今回はノイズ低減のみとした。今後検討に値する。 8.4 高周波重畳法 図8−11は、高周波重畳によるノイズ低減法の説明図である。半導体レーザーに. 600MHz以上の高周波電流を重畳させ、変調電流極小時にしきい値電流以下になる ように系を構成する。このように高周波を重畳させると半導体レーザーの発振縦 モードがシングルモードからマルチモードになり、戻り光によるレーザーノイズ 増大(反射雑音)を抑える効果がある6)。 図8−12は、高出力半導体レーザーの一種であるクランク型半導体レーザー1°) に対し、高周波重畳によるノイズ低減効果を測定したものである。クランク型半 導体レーザーは、TJSレーザー7)の一種である。両端にL字形の導波路を形成し、 両端面での光吸収がない構造にして端面劣化による耐性を向上させ、高出力化を 達成している。図において、横軸は半導体レーザーの光出力に対する光帰還率 (%表示)、縦軸は半導体レーザーの光出力に対するノイズレベル(dB表示)で ある。図示の様に・光帰還率0.01%以上でノイズが増大するが、高周波重畳によ りノイズ増大が抑えられることを光帰還率10%迄確認した。一方、高周波重畳無 しの場合、光帰還率0.01∼10%の範囲でノイズ低減効果は無く、光帰還法はこの 半導体レーザーに対し効果が無い。 一141一 電流一光出力特牲 一 一 嫡 脚 R ヨヨ 来 ; {鳳コ胴一胴一一一㈲ 一禰 一轍’ i 電流暫陣畳電濾形 しきし’値i @ i I 図8−11 高周波重畳によるノイズ低減法の駆動条件 一60 重畳周波数:680MHz ( an ℃−70 −一一一一一・ n?g重豊 OFF 高周波重畳 ON ) ミ ムーlo 碑岬一襲_一“む’ \ 夜一go 0。001 0,01 0,1 1 10 光帰還率(%) 図8−12 高周波重畳ON, OFF時の光帰還率と半≡導体レーザーノイズ特性 142 8.5 ノイズ低減法比較 いずれの方法によっても半導体レーザー出射光のノイズが低減出来ることを確 認できた。ここで・各々の利害特質と、実際に用いる際の適当な用途について検 討する。 光帰還法は、コンパクトディスク装置・ビデオディスク装置用光ヘッドに用い られている。ビームスプリッターによる透過光の減少によりディスク上のレーザー の光出力が小さくなる欠点があるが、信号検知用光検知器上に必要S/Nが得られ る範囲で半導体レーザーの光出力を小さくしてよく、特に問題は発生しない。光 帰還率を増加させるために、偏光ビームスプリッターと組み合わせて用いる位相 板の波長をλ/4よりずらせたり、偏光ビームスプリッターの代わりにビームス プリッター等を用いたりする。したがって、特に余分な部品を必要としないため、 再生だけのコンパクトディスク装置・ビデオディスク装置に適当である。 光帰還法と高周波重畳法は、レーザー発振の縦モードをマルチモード化する方 法であり、レーザー自身のノイズは多少増大するが戻り光に対するノイズ増大を 大輻に抑える効果があり、有効な方法である。一方、コンピューター端末の追記 形光ディスク装置・書換形光ディスク装置等では、さらにS/Nの向上が必要にな ってくる。これらの用途には、レー一ザー自体のS/N向上に有効な負帰還法が有利 である。 高出力半導体レーザーで、光帰還法によるノイズ低減効果が期待出来ない場合 にも、高周波重畳は効果が期待できる。ただし、高周波重畳による方法は、半導 体レーザーの駆動電流を変調する600MHz∼1GHzの高周波信号源を必要とし、その 信号源の不要輻射を許容値以下に抑える必要がある。この不要輻射を抑えるのは 大変であり、出来れば負帰還法を使用する方がよい。 8.6 まとめ ノイズ低減法として、光帰還法と負帰還法、高周波重畳法について検討し、い ずれの方法によってもノイズが低減されることを確認した。 半導体レーザー出射光を再び半導体レーザーに帰還する光帰還法では、最初か らレーザー出射光の2%以上の戻り光がある状態であると、戻り光がわずかに増 減してもノイズレベルはほとんど変わらず再生信号の劣化がないことを実験的に 一143一 明らかにした。 半導体レーザー出射光の揺らぎ成分(ノイズ成分)を電気信号に変換し、ノイ ズ成分の反転信号で半導体レーザーを変調する負帰還法では、自動制御理論に従 ってノイズが低減されることがわかった.実験の範囲では・低域でのノイズ{域減 量が14dBであること、22MHz迄ノイズが低減されることを確認できた。 600MHz以上の高周波で半導体レーザーを変調する高周波重畳法によるノイズ低 減を試みた.高出力の半導体レーザーを680MHzで変調し・戻り光によるノイズ増 加を抑えられることを実験的に確認した。 第8章の参考文献 1)R.e.・Mi・les, A.Dandridge, A.B. Tveten, T・G・Giall・renzi and H・F・Taylρ「: Appl. Phys. Lett. 38 (1981) 848. 2)近藤、木目、鹿間、河野、田村:三菱電機技報58(1984)p.742. 3)近藤、伊藤、上村:第28回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1981) P.215. 4)伊藤、近藤、上村:第28回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1981) p.216. 5)近藤、伊藤、木目:レーザー研究Vo1.18, No.5, May 1990, p.348. 6) M.Ojima, A.Arimoto, N.Chinone, T. Gotoh and K・Aiki: ApP1・ Opt・ 25 (1986) 1404. 7) H.Namizaki, H. Kan, M. Ishii and A. Ito: J・ ApP1。 Phys・ 45 (1974) 2785・ 8) G.Forgo and M. J.0. Strutt: Electron. Lett・ 3 (1967) No・12・ 547・ 9)近藤文治、西原宏、岩井壮介:電子制御工学(電子通信学会大学講座、 第25巻、コロナ社) p。24. 10) H.Kumabe, T. Tanaka, S. Nita, Y.Seiwa, T. Sogo and S・Takamiya: Jpn・ J・ Appl. Phys. 21 (1982) 347. 一144一 第9章 結論と展望 9.1 結論 光ディスク装置が真の意味で実用化されたのは半導体レーザーが使用可能とな った以降である。半導体レーザーを用いることに対する問題点とそれを解決する 光学系の開発に関し、理論的及び実験的に検討を加え設計法を示した。本研究に より半導体レーザーを用い、直接集光方式を採用した光ヘッドの光学技術が確立 された。具体的には、楕円発散形状の光束を出射する半導体レーザーに適した集 光方式として直接集光方式を提案し、この集光方式を用いた場合の記録再生特性、 フォーカスセンサー、トラッキングセンサーの諸特性を解析し最適化を検討した。 さらに、フォーカスセンサー、半導体レーザーに関する問題点を明確にし、解決 策を提案し、理論的及び実験的検討を行った。ここで確立された本光学技術によ り、光学部品数の少ない小形で簡単な光学系の設計が可能となり、具体的にビデ オディスク装置用、コンパクトディスク装置用、追記形光ディスク装置用、書換 形光ディスク装置用の各光ヘッドを実現した。以上のように、本研究により、光 ヘッドの光源をHe−Neレーザー一から半導体レーザーに置き換える本研究の主な目 的が達成できた。 理論的な根拠を与えるために第3章において、半導体レーザーから出射される 楕円光束を集光した場合のディスク上光スポット解析のための計算式、ディスク 上の光スポット形状よりディスク上の情報ピットを再生した場合の空間周波数特 性・クロストーク特性解析のための計算式、楕円ガウシアン光束が対物レンズを 透過する有効光出力の計算式を導出した。 第4章において、半導体レーザーから出射される楕円光束の短軸方向を対物レ ンズ有効径に合わせて集光する直接集光方式による集光系の諸特性、再生特性等 について・第3章で導いた計算式を用いて検討した。楕円光束を集光すると光ス ポットも楕円になり、その形状が実験と計算でよく一致し、回折理論による解析 式が充分妥当であることがわかった。また種々の楕円率の光束につき、けられに 対する光スポット径が解析により示された。さらに楕円光スポットの短軸方向を 情報トラック方向にすることにより、He−Neレーザーのような等方ガウシアン光 一145一 束を集光した場合と同程度のクロストーク特性とそれ以上の周波数特性が得られ ること。さらに、情報トラック間隔によりクロストークを最小にするけられが存 在すること。例えば情報トラック間隔が最近接時1・4μmになるとするとけられの 係数0。7のときクロストークが最小になることが示された。対物レンズ入射楕円 光束が対物レンズ中心よりずれても合焦位置での光スポットの対称性はくずれな いが、合焦位置より正負にずれた位置で一次の極大の強度に非対称が発生し、ク ロストーク特性が悪化する事が見いだされ、同時に入射光東中心ずれ許容値を示 すことが出来た。 光ヘッドとして重要な集光点位置を検出制御するための構成について、第5章 で取りあつかった。ここでは、非点収差法とフーコー法フォーカスセンサーにつ いて実験・計算の両面から検討した。 非点収差法について、焦点ずれに対する検出出力解析のための計算式を導き、 実測値との比較を行い、光検知器の位置ずれに対する特性変化を検討した。セン サー特性は、計算と実験で良く一致する事を確認した。また、光検知器位置ずれ 許容は、光軸方向±35μm以下、面内方向10.5μm以下である。 フーコー法について、回折理論を用いてセンサー特性解析の計算式を導出した。 計算と実験でセンサー特性が良く一致することが確認でき、解析手法の妥当性が 明確になった。また、この方式の欠点であるリニアゾーン幅の拡大策として光検 知器分離帯輻の拡大を提案し、解析と実験により効果のあることを確認した。さ らに、光検知器入射半光束の開ロ数を小さくしたり、光検知器入射光束の形状を 中心角90°以下の扇形とする方法を提案し、リニアゾーン輻が拡大できることを 解析的に示した。 両方式ともフォーカスセンサーとして有用な方式であるが、出来る限り非点収 差法の採用を検討すべきである。集光点でない光束径の大なる位置に光検知器を 配置するので、調整の精度許容が大きくとれる点で優れている。ディスクの案内 溝横断時の検出誤差が問題になる用途では、フーコー法の採用を検討すべきであ る。 光ヘッドが記録トラックを正確にトレースするために、第6章では3ビーム法 とプッシュプル法トラッキングセンサーについて実験・計算の両面から検討した。 3ビーム法については、センサー出力特性解析式を導出し、特性計算値が実測 一146一 値と一致する事を確認した。さらに、両側光スポットの中心光スポットに対する 半径方向ずれが0.4μmのとき感度最大になる。また、3つの光スポットの問隔と 光ヘッドの情報トラック方向へのずれ許容との関係を確認した。例えば、3つの 光スポットの間隔が20μmのとき情報トラック方向への位置ずれ許容は1.7mmにな る。さらに、3ビームの中心光束と両側光束の強度比を設計値に決めるため、回 折格子の溝深さと3ビームの強度比を決める計算式を導出した。例えば、波長 780nmの半導体レーザーと回折格子の基板屈折率が1.5のガラスの場合、溝深さは 0.3∼0.37μmに選べば良いことがわかった。 プッシュプル法については、センサー出力特性解析式を導出し、ピット深さと センサー感度の関係を求め、設計時のセンサー検出感度が見積もれるようになっ た。 両方式ともトラッキングセンサーとして有用な方式であるが、出来る限り3ビ ーム法の採用を検討すべきである。3ビーム法は、ディスク傾きに対するセンサ_ の検出誤差がプッシュプル法の1/4以下である点で優れている。追記形光ディス ク装置で・3ビーム法の先行する光スポットがあると問題を生じる用途では、プ ッシュプル法の採用を検討すべきである。 直接集光方式光学系簡素化のために、第7章では対物レンズプラスチック化の 究極の姿として有限共役形を提案・検討した。集光点位置制御に伴う光軸方向移 動、情報トラック追従に伴う半径方向位置ずれに対しても収差が仕様内に収まる よう成型誤差による残留収差を補償する方法を検討し、従来の平行光束を入射さ せる無限共役形対物レンズと同等の収差性能が得られることを確認した。また、 この研究の過程で球面、ラジアルコマ、タンジェンシャルコマ、非点の各収差が 混在している場合のジッター値を予測する式を導出した。これを用いて検討を行 い、一枚の有限共役形対物レンズで、従来のコリメーターレンズと無限共役形対 物レンズの組み合わせ時と同等の再生性能及び半径方向追従特性が得られること を実験的に明らかにした。 ディスクからの戻り光により生じるレーザーノイズ増加を低減させるために、 第8章では、光帰還法と負帰還法、高周波重畳法について検討した。 半導体レーザー出射光を再び半導体レーザーに帰還する光帰還法では、最初か らレーザー出射光出力の2%以上の戻り光がある状態であると、戻り光がわずか 一147一 に増減してもノイズレベルはほとんど変わらず再生信号の劣化がないことを実験 的に明らかにした。 半導体レーザー出射光の揺らぎ成分(ノイズ成分)を電気信号に変換し、ノイ ズ成分の反転信号で半導体レーザーを変調する負帰還法では、自動制御理論に従 ってノイズが低減されることがわかった。実験の範囲では・低域で14dBノイズが 低減されること、及び周波数的には20MHz迄ノイズ低減の効果があることが確認 できた。 600MHz以上の高周波で半導体レーザーを変調する高周波重畳法によるノイズ低 減を試みた。高出力の半導体レーザーで、戻り光によるノイズ増加のないことを 実験的に確認した。 レーザーノイズ低減法で最初に採用を検討すべきは、新たに光学部品・電気部 品を必要としない光帰還法である。光帰還法で効果が無い高出力の半導体レーザー を用いる場合は、負帰還法と高周波重畳法を検討することになるが、低雑音増幅 器が採用出来れば負帰還法の採用を検討すべきである。最後に、高周波重畳珠の 採用を検討することになるが、不要輻射を許容値以下にする為の検討が必要とな る。 9。2 今後の展望 本研究で述べた直接集光方式は光スポットの形状が楕円になるが、集光光学系 が非常に簡単にでき、かつ楕円光スポットの情報トラック方向の光スポット径が 円形光スポットの場合より小さくできる長所がある。しかし、4章で示したよう に対物レンズ入射光束の楕円度2以上の範囲で楕円光スポット径の大きさの変化 は小さく、透過パワー効率を考えると直接集光方式における対物レンズ入射光束 の楕円率は2に近いほど望ましい。例えば、30mwの高出力半導体レーザーをけら れの係数0.8で用いた場合の有効レーザーパワーは、入射光束の楕円率2の場合が 22mwで、入射光束の楕円率5の場合の10.4mwより2倍以上大である。従って、記録 を伴う装置では記録速度向上の観点から、入射光束の楕円率を軽減する光学系の 研究、及び出射光の楕円率の小さい高出力の半導体レーザーの研究が望まれる。 ただし、入射光束の楕円率軽減に2章で紹介したプリズムや円筒レンズによるビ ーム整形方式ではなく、調整が簡単で光学部品数の少ない光学系が望まれる。 ・・− P48一 光ディスク装置の光学技術をより嘱充実させるには、さらに次の項目を検討 する必要がある・まず・フーコー法フォーカスセンサーのリニアゾーン幅拡大策 として提案した方式、すなわち光検知器入射半光束の開口数を小さくしたり、光 検知器入射光束の形状を中心角go°以下の扇形とする方式を実験的に確認する。 さらに・プッシュプル法トラッキングセンサーのディスク傾きに対する誤差低減 策を検討する必要がある。 光ディスク装置の発展のためには、ディスク径を小さくするためのディスク記 録密度の向上と光ヘッドの小形化が今後の重要課題となるだろう.ここでは記録 密度の向上による小径化の可能’ltii・eこつき、コンパクトディスクを例として、現状 の光学系での半径方向・接線方向の記録密度向上、レーザーの短波長化、信号系 での情報の圧縮等の点から検討する。 まず半径方向・接線方向の記録密度向上による小径化の可能性について検討す る。直接集光方式を用いた場合、情報トラック方向の光スポット径が円形光スポ ットの場合より10%以上小さい。隣接情報トラックとのクロストークは、デジタ・ ル情報の場合まだ余裕がある。もし、クmストークの許容値を一30dBと仮定する と、トラック間隔誤差0.1μmとトラッキング制御誤差0.2μmと仮定しても、4章 のクロストークの検討結果を用いると、トラック間隔を1.6μmから1.3μm程度ま で狭めることが出来ると予想される。これは、20%程度トラック間隔を狭めるの に相当する。情報トラック方向と情報トラック間隔の高密度化をディスク径に振 り向けると、CDのディスク径を現状の85%程度(情報トラック方向の短縮90% と半径方向の短縮80%の平方根)にできるので、直径が120mmφから102mmφに小 径化できる。 さらに半導体レーザーの短波長化を行った場合の記録密度向上に伴う小径化に ついて検討する。半導体レーザーの波長を670nmとした場合、現状より35%(780nm と670nmの比の自乗)記録密度向上がはかれる。これを先ほどよりさらにディス ク径を小さくするのに振り向けると、CDのディスク径が102mmφから88mmφに なる。また・2次高調波発生法によって波長を現行の半分の390nmにするとディ スク径は51mmφになる。 さらに・信号系で情報の圧縮による記録密度向上を行った場合の小径化につき 検討する。最近製品化されたミニディスク(MD)のように信号系で5倍の高密 一149一 度化を行うと仮定すると、CDのディスク径を51mmφから23mmφにすることが可 能となる。 以上のディスクの小径化に応じて光ヘッドを小さくする必要がある。まず、デ ィスクの保護層は、ディスク小径化に対応して0.24mm程度の保護層でよい。ディ スクをカートリッジに入れれば保護層を薄くしてもゴミの影響を減らすことが出 来る.次に、小径化に応じて対物レンズの焦点距離と有効径を小さくす報ま・光 ヘッドのサイズを現在の1/5程度に小形化する事が可能となる。 このような光ヘッドで光ディスク装置を構成すれば、コンパクトディスク装置 はヘッドホンに直接組み込めるサイズになる。また、以上のような記録密度向上 策をビデオディスク装置に適用し、かつ記録も可能なディスク形態にすると、 20cm以下のディスク径で8時間の記録・再生時間を達成することが可能となる。 検索の容易さと使いやすさ等で現行のVTRをしのぐ画像の記録・再生装置も夢 ではなくなる。 一150一 付録 光ヘッドへの適用 付.1 はじめに 本章では、本研究の成果を実際の光ディスク装置の光ヘッドに適用した試作例 について述べる。 光ヘッドの光源をHe−Neレーザーから半導体レーザーに置き換えるのが本研究 の目的であり・直接集光方式を用いることによりHe−Neレーザーの場合より簡単 な光学系で・小形・軽量な光ヘッドが達成出来ることを示した。本章では、集光 方式として直接集光方式を用いた具体例を、再生専用のコンパクトディスク装置 にっいてだけではなく・比較的低出力の追記形光ディスク装置、書換形光ディス ク装置(光磁気ディスク装置)についても示す。フォーカスセンサーとして非点 収差法を、トラッキングセンサーとして3ビーム法を採用した光ヘッドの試作例 については・コンパクトディスク、光磁気ディスク評価装置用光ヘッドに適用し た例について述べる。フォーカスセンサーとしてフーコー法を、 トラッキングゼ ンサーとしてプッシュプル法を採用した光ヘッドの試作例については、光磁気デ ィスク・追記形光ディスク装置用光ヘッドに適用した例について述べる。 付.2 再生専用光ヘッド 付2・1 コンパクトディスク装置用光ヘッド(肌P−2型) 付図1はコンパクトディスク装置用光ヘッドの一例であり、付図2は光学系構成 を示す1)。付表1に主要な仕様を示す。集光方式は直接集光方式、フォーカスセ ンサーは非点収差法、トラッキングセンサーは3ビーム法である。光帰還法によ りノイズ低減を行っている。半導体レーザー出射光はコリメーターレンズにより 平行光にされ・対物レンズによりディスク上に集光されディスク上の情報を読み 取る。ディスク上の情報を含む反射光は、ビームスプリッターによって照射光路 と分離され、拡大レンズを経て集光点位置検出の非点収差を発生させる円筒レン ズを透過し、光検知器上に集光される。また、ビームスプリッターと半導体レー ザーの間に置かれた回折格子によりディスク上に情報トラック位置検出のための 3つの光スポットが形成される。また光スポットの光軸方向、半径方向への駆動 一151−・一 − メ ρ ド ク 一 置用 へ ワヨ しレ 2 イ ズ イ ・ 2. ・ ー5 は付図3に示す2次元アクチュエーターによって行われる.固定軸の周りを回動 するとともに・この固定軸にそって鋤するコイノレホルダーの一端に対物レンズ が固定されている・回動することによりトラッキング制御を行い、摺動すること によりフォーカシング制御を行う・付図4は・CD再生時のジッター性能を示す。 情報トラック追従量が±400μmの範囲でジッター値が22ns以下であり、ほとんど 変化しないことがわかる・なお・一般にジッター値は30ns以下であれば信号系の 安定な動作が期待できる。 付2・2 コンパクトディスク装置用光ヘッド(MLP−−4型) 付図5は付図1より光学系が簡略化されたCD用光ヘッドの例であり、光学系構 成を付図6に示す2’ 3’・付表2に主要な仕様を示す.第7章で検討したように、対 物レンズとコリメ糊ターレンズ及び拡大レンズと円筒レンズをプラスチック化に より一体化している・なお・CDの情報トラックをトラッキングアクチュエー. s _ で追従させた時の・ジッター特性の測定例1ま、図7−12に示されている。 付・3 追記形光ディスク装置用光ヘッド 付図7は・追記形光ディスク装置用光ヘッドの例であり、付図8は光学系の構成 を示す4)。付表3に主要諸元を示す。集光方式として直接集光方式を、フォーカ スセンサーとしてフーコー一法を・トラッキングセンサーとしてプッシュプル法を 用いている。半導体レーザーの光出力は20∼30mw級が使用され、盤i面上の光出力 として8mwを得ており・回転数1800rpmの丑30mmφのディスクに対し充分な記録光 出力である。記録時は、記録したい情報信号で半導体レーザーの印加電流を高速 変調する。再生時は、記録情報に影響を与えない数mw以下の光パワーで再生され る。なお、光学系の損失を少なくするため偏光ビームスプリッターとλ/4板が 用いられている。さらに、ノイズ低減のため高周波重畳回路が組み込まれ、800MHz で半導体レーザーが変調されている。 付図9は、完成した光ヘッドの対物レンズから出射する光の波面収差を縞走査 型のラジアルシャリング干渉計5)を用いて測定した結果の一例である。波面収差 のRMS値は0・024λrmsであり・一般的な光ディスク装置光学系に許容される限界 値0.05λrmsと比較して充分小さく抑えられている。 一153一 付表1 コンパクトディスク装置用光ヘッド(MLP−2型) 三菱電機 班L4402 型名 半導体レーザー 780nm 波長 無限共役型 方式 0.45 開口数 対物レンズ 作動距離 アクチュエーター 方式 2.0孤m以上 2軸一体リニアスライド フォーカス 可動量 ±1mm以上 ラジアル 可動量 ±0.8mm以上 自動レーザーパワー制御回路 付属回路 569 重 量 61.3(曜)×28.3(D)×26.5(H) 外形寸法(mm) 対物レンズ トラッキング制御 SN トラッキングコイル コイルホルダー フオーカシングコイル 付図3 2次元アクチュエーター(MLP−2型) 一154一 十 00 5 ㏄ 4 ロ ロ ロ 型 4 α しP ン 5 図 コ 0 レ ノ nU 4 ㏄ ゐ 付図6 コンパクトディスク装置用光ヘッド光学系(肌P−4型) 付表2 コンパクトディスク装置用光ヘッド(肌P−4型) 半導体レーザー 三菱電機 翫4432 型名 780難孤 波長 有限共役型 方式 対物レンズ 0.45 開口数 1.85mm以上 作動距離 アクチュエーター 方式 2軸一体リニアスライド 光軸方向 可動量 ±1mm以上 半径方向 可動量 ±0.8膿田以上 付属回路 自動レーザーパワー制御回路 339 重 量 52(の×30(D)×27(H) 外形寸法(mm) 一156一 ド 、ツ へ 光 用 翻置 装 ’、 、 7 X 5 、 デ 、、光 撒形 、追 闇 コ] ニ ロ 図 寸 \対物レンズ λ/4板 コリメーターレンズ 〆偏光ピームスプリッター”一 ウエッジプリズムー 拡大レンズ 0 ピームスプリッター フオー一力ス1ラー 信5 ラジアルエラー信号 付図8 追記形光ディスク装置用光ヘッド光学系 一一 P58一 付表3 追記形光ディスク装置用光ヘッド主要諸元 半導体レーザー 集光光学系 出 力 30mw 波 長 780nm 高周波重畳駆動 800顛Hz 透 過 率 26%以上 コリメーターレンズ開口数 0. 134 対物レンズ開口数 0.5 重 量 569 重量、寸法 外形寸法 32(w)×40(D)×47(H) PV :0.197R RMS:0。024R i l− ‘_喘轍脚鱒 付図9 光ヘッド出射光の波面収差 一159一 付。4 書換形光ディスク装置用光ヘッド 付4.1 光磁気ディスク評価装置用光ヘッド 付図10は、光磁気ディスTク評価装置用光ヘッドであり・付図11は光学系の構成 を示す6)。付表4に主要諸元を示す。コンパクトディスク装置用光ヘッドと同じ く集光方式として直接集光方式を、フォーカスセンサーとして非点収差法を、ト ラッキングセンサーとして3ビーム法を用し・ている・また・光磁気ディスクの情 報信号再生方式として差動検知方式を用いている。 付図12は1MHzの再生信号波形であり、付図13は再生信号のC/睦示す・周波数 1MHzで50dBのC/Nが得られており、記録・再生機能の動作を確認している。 付4.2 光磁気ディスク装置用小形光ヘッド 付図14は、光磁気ディスク装置用小形光ヘッドであり、付図15は光学系の構成 を示す7)。付表5に主要諸元を示す。付図7に示す追記形光ディスク装置用光ヘッ ドと同様に集光方式として直接集光方式を、フォーカスセンサーとしてフーコr 法を、トラッキングセンサーとしてプッシュプル法を用いている。さらに、ノイ ズ低減のため高周波重畳回路が組み込まれている。 付図16は、完成した光ヘッドの対物レンズから出射する光の波面収差を測定し た結果の一例である。波面収差のRMS値は0.028λrmsであり、一般的な光ディス ク装置光学系に許容される限界値0.05λrmsと比較して充分小さく抑えられてい る。付図17はIMHzの再生信号波形であり、付図18は再生信号のC/Nを示す。周波 数 IMHzで52dBのC/Nが得られており、記録再生機能の動作を確認している。 一160一 麟 ↑、誇 、、、 、 ハ イ ’鍵・節曽’ 灘欝灘総”襲 ・㌧帯、 ’・溢’擁 ’轍 光 付 一 軽電磁石 ディスク _ __ 聯噂一 __騨瞬葡顯鱒囎騨嚇一繍脚一■一 一一繍頗一一糟 脚一蝉一陰一 X 一 一 一 一 闘 胴噂P 榊 廟扁」 酬P,D,偏光子 対物レンズ 折格子/高出力半導体レ子 \検光子 @ミラー コリメーターレンズ /ヒLムスプ1ツタ輌 sームスプ1ツター qしムスプ1ッター / PlNP。D、 @円筒レンズ 沍 子 o園P,D, @ PINP。D。 付図11光磁気ディスク評価装置用光ヘッド光学系 付表4 光磁気ディスク評価装置用光ヘッド主要諸元 半導体レーザー 出 力 30mw 波 長 830nm 最大記録 集光光学系 出力 連 続 パルス コリメーターレンズ開口数 対物レンズ開口数 6mw 8mw 0.16 0.53 125(W)×135(D)×47(H) 外 形 寸 法 162一 ミτム㎝胆 帯 ﹀;\自自Oヨ ﹄ 助 ㎝ 幅 ミでム巾胆 再 13 図 付 ス イ 一 /卿ザ ン 凶 レ ズ 当 レ メ 体 ー 出 @ 難 難 14 図 付 嫁\ ﹁ノ一 ーハ一フ \\ ヒー\〆 刃 導 物 対 半 . 用 一 置 64 装 ー ク ス イ 好 糀 齢 一 付表5 光磁気ディスク装置用小形光ヘッド主要諸元 項 目 仕 様 780nm 波 長 半導体レーザー 光 出 力 30孤w コリメ汐一レンズ開口数 0. 12 対物レンズ開口数 0.5 集光光学系 最大記録光出力(連続) 8mw PV O.205え RMS:0.028え 付図16 光ヘッド出射光の波面収差 一165一 4 1 肱 淵 周 ミてム囎粗︸生 付録の参考文献 1)近藤、木目、鹿間、河野、田村:三菱電機技報58(1984)p.742. 2)S・Shikama・E・T・ide・M・K・nd・and K.Kime・Pr・c. SPIE 695(1986)199. 3)鹿間、都出、近藤、橋本、木目:光メモリシンポジウム’86論文集(1986) p.105. 4)篠田、近藤:光学15(1986)p.326. 5♪B・E・Truax・Optical Testing and Mete・r・gy SPIE Pr。ceedings(1986)661. 6)T・Fujita・顛・K・nd・・K・Kime, N. T・mikawa・Technica1 Digest, Optical Data Storage・ Washington, 1985 (Optical Society of America, Washington, DC, 1985) Paper ThAA2−1. 7)T・Fujita・N・Takeshita, M・Karaki, M.K・nd・and K.Ki,e, Pr。c. SPIE 695 (1986) 187. 167一 本研究に関する関連発表論文 1 .論文 1)S..Shikama, E.T・ide, M.K・nd・and K・Kime・”Optical pickup f・r CD using n。 glass lens,・Pr・c. Optica1 Mass Data St・rage K・San Dieg°・ California, 1986, eds. Robert P. Freese, Maarten DeHaan and Albert A.Jamberdino (SPIE, Washington, 1986) Vo1・ 695・ PP・199−205。 2) T.Fujita, N. Takeshita, M.Karaki, M・Kondo and K・Kime: ”Compact−size 。ptical h,ad f・r magnet・一・ptical disk drive・”Pr・c・Optical Mass Data St。rage ll e San Dieg・, Calif・rnia,1986・eds・R・bert P・Freese・ Maarten DeHaan and Albert A. Ja田berdino (SPIE, Washington・ 1986) Vol. 695, PP.187−193. 3) M.Irie, T.Fujita, M. Shinoda and M・Kondo: ”Focus Sensing Characteristics of Pupi1 0bscuration Method for Continuously ・ Grooved Disks,・・ Jpn. J. ApPl。 Phys. 26 (1987) PP・183−186。 4)近藤、伊藤、木目:”負帰還法による光ディスクシステムのレーザーノイズ 低減/レーザー研究・Vol.18, No.5, May 1990, pp. 348−354. 5)M.K。nd。、・F。cusing・f Elliptical Gaussian Beams f・r OP・tical Head” Jpn. J. Appl. Phys. 31 (1992) pp.2452−2458. 6)近藤:”Truncation Coefficient Optimization for Elliptical Laser Gaussian Beams on Optical Head,”レーザー研究, Vol・2L No・6・June 1993, pp.634−640. 7)M.K。nd。、・Deviati・n Characteristics・f Elliptica1 Laser Gaussian Beams of Optical Head,” Jpn. J. ApP1. Phys・ 32 (1993) PP・2702−2708・ 2.口頭発表 2−1.国際学会での発表(Proceeding) 1)K.Okada, W.Sllzaki, M.K・nd・, K.Kime, K・、Hirasawa・T・・Miyazawa and T.Sato: ttA COMPACT PCM AUDIO DISC PICKUP EMPLOYING SEMICONDUCTOR LASER,,, AES preprint 1409 (D−4), 61th Convention (1978)・ −168一 2)K・Okada・M・K・nd・・K・Kime and S. Takamiya・・THE THREE−BEAM OPTICAL PICKUP FOR CD PLAYERS,” ICCE’83, June, (1983) pp.184−185。 3)T・F・jita・M・K・nd・, K.Kime and N. T・mikawa,・Optica1 Head f。r Magnet・一・ptical Disk Evaluati・n,・”Technical Digest, Optlcal Data St・rage・ Washingt・n・1985(Optical S・ciety・f America, Washingt。n, DC, 1985) Paper ThAA2−1∼2−4. 4)鹿間・都出・近藤・橋本・木目:”オールプラスチックレンズ化CD用光ピ ックアップt” 光メモリシンポジウム’86論文集,(1986)pp.105−112. 2・−2.国内学会 1)岡田、近藤、木目:”位相溝の光学的追跡” 第38回応用物理学会学術講 演会講演予稿集(1977)p.91. 2)近藤、木目、岡田、内海:”高密度記録信号トラックの光学的追尾” 第38回応用物理学会学術講演会講演予稿集(1977)p.91。 3)木目、近藤、岡田、永井:”光学的変位検出の一方法” 第25回応用物理 学関係連合講演会講演予稿集(1978)p.196. 4)近藤、岡田、木目、須騎:”半導体レーザの自己カップリング効果による 焦点位置検出法” 第25回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1978) P.197。 5)岡田、近藤、木目:”位相ピットによるレーザ光の回折一ll” 第25回応 用物理学関係連合講演会講演予稿集(1978)p.171. 6)平沢、近藤、岡田、中田:”位相溝からの反射出力の測定(ll)” 第25回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1978)p.172。 7)近藤、伊藤、上村:”ネガティブフィードバック法による半導体レーザの ノイズ低減法(1)” 第28回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1981) p.215。 8)伊藤、近藤、上村:”ネガティブフィードバック法による半導体レーザの ノイズ低減法(II)” 第28回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1981) P.216. 一169一 9)近藤、岡田、久保,・半導体レーザ集光特性の評価”劉2回応用物理学 会学術講演会講演予稿集(1981)p.83. 10)篠田、近藤:”小型ライトワンス用光ヘッド” @光学15(1986)p.326. 3.参考論文 1)上村、久保、平沢、近藤、木目:”半導体レーザを用いたビデオディスク プレーヤー一” 三菱電機技報 56(1982)pp.341−344. 2)近藤、木目、鹿間、河野、田村:”コンパクトディスクプレーヤー用MLP−2形 光ピックアップ” 三菱電機技報 58(1984)pp.742−745. 3)河野、木目、近藤、鹿間、橋本二”コンパクトディスク用光ピックアップ” 三菱電機技報 60(1986)pp.177−179. 一170一 謝 辞 本論文をまとめるにあたり終始親切なご指導をたまわりました静岡大学電子工 学研究所 畑中義式教授に深く感謝致します。またご指導ならびに本論文の静岡 大学への提出に当たり種々のご尽力をいただきました 萩野實教授に深く感謝致 します。また本研究に際し終始有意義なご助言、ご指導を賜り一方ならぬご鞭燵 をいただきました静岡大学工学部精密工学科 久保高啓教授に深く感謝致します。 またご審査の労をとっていただき種々の有益なご討論をいただきました静岡大学 電子工学研究所 山口十六夫教授、静岡大学工学部光電機械工学科 大坪順次教 授に感謝申し上げます。 本論文は、三菱電機株式会社電子商品開発研究所(現、映像システム開発研究 所)において、光ディスク装置の光学系の研究開発にたずさわる過程で、その研 究成果をまとめたものです。本研究の遂行にあたり終始親切なご指導とこ鞭捷を いただきました取締役同所所長 大西良一博士、同所 糸賀正巳前所長、同所 国井郷志前部長、同所 河野慶三参事、永年研究を共に遂行した同所グループマ ネージャー 木目健治朗博士、同所 鹿間信介主事に深く感謝の意を表します。 また、貴重なご教示をいただきました同社伊丹製作所 岡田和夫博士、論文作 成にあたりご配慮をいただきました同社映像システム開発研究所 高田豊副所長、 同所 中島義充部長、同所 渡辺尚友部長に厚くお礼申し上げます。 さらに本研究の遂行及び討議、実験にご協力下さいました同社鎌倉製作所 伊 藤修主幹・同社生活システム開発研究所 江頭信正主幹、同社映像システム開発 研究所主幹 藤田輝雄博士、同所 篠田昌久主事、同所 吉原徹主事、同所 都 出英一主事、同所 入江満技師、同所 唐木盛裕技師、同所第三部第5グループ の各位、同所第四部第2グループの各位、同社産業システム研究所の各位、同社 群馬製作所の各位、同社伊丹製作所の各位をはじめとする関係各位に厚くお礼申 し上げます。 1993年9月 近藤光重 一171一
© Copyright 2024 ExpyDoc