(2時間用) [seq-noteh2.pdf]

シーケンス制御
(2時間用講義ノート) 2008.07.09 熊谷
教科書:「シーケンス制御の基礎」熊谷和志
『熊谷研究室』授業資料内http://www.sendai-ct.ac.jp/~ckuma/tech-doc/seq/sequence.pdf
参考書:「PCシーケンス制御 入門から活用へ」吉本久泰(東京電機大学出版局)
「プログラマブルコントローラの活かし方」佐久間清(オーム社)
「ゼロからはじめるシーケンス制御」熊谷英樹(日刊工業新聞)など
序.はじめに
序.1
講義の目標
シーケンス制御の概要を理解し,説明できるようになる.プログラマブルロジックコントローラ(PLC)の動
作を理解する.簡単なシーケンスプログラムが組めるようになる.
序.2
講義概要
自動生産ラインの制御に最も広く使われている技術がシーケンス制御技術である.本講義では,図面の
見方からPLCなどについて基礎を学ぶと共に,最新のシーケンス制御技術についても触れる.
1.シーケンス制御の種類
シーケンス制御はリレーシーケンスと無接点シーケンスに分類される.
2.リレーシーケンスの概略
シーケンス図の見方,書き方を知ることにより,シーケンス制御を理解し,制御系の設計,運転保守
などをすることができる.PLCはリレーシーケンスをベースにしている.
3.PLCのしくみ
PLCはマイクロコンピュータを中心としたコントローラである.ハードの構成はパソコンなどとあまり変
わらないが,ソフトではシーケンス図から直接回路を読み込めるシステムプログラムが内蔵されてお
り,リレーやタイマ,カウンタの集合体として扱うことができる.
4.プログラミングの実際
PLCでは,回路図をラダーシンボルに置き換えて図式化するラダー方式が一番多く使用されている.
5.演習
真理値表とタイムチャートの見方,応用課題,SFC形式でのプログラミングなどを通してPLCの理解
を深める.
序.3
キーワード
シーケンス制御,リレーシーケンス,論理回路,ハードロジック,ソフトロジック,PLC,マイクロコンピュー
タ,ラダー図,真理値表,タイムチャート,SFC
序.4
講義の進め方
時間が少ないので,PLCを中心に,論理の考え方,論理回路を交える.
最後の30分は演習に当て,理解を深める.
この資料は講義用に作成したものであり,無断転用等を禁じます.
参考とする場合は出典を明記するなど,文献の取り扱い方法に準じて下さい.
ご意見・ご要望は熊谷:ckuma◎sendai-nct.ac.jp まで.(◎は@)
- 1 -
1.シーケンス制御の種類
1.1
シーケンス制御とは(p.1)
(1)定義
「あらかじめ定められた順序に従って,制御の各段階を逐次進めていく制御」(JIS C 0401)
ON/OFF制御がほとんど
(2)身の回りの応用例
自動販売機,エレベータ,エスカレータなど,スイッチや押しボタンで操作するものは,ほぼすべて
がシーケンス制御の応用例である.
また,家電品も,エアコンの温度制御などを除いて,ほとんどがシーケンス制御の応用例である.
1.2
シーケンス制御の種類(p.1)
(1)リレーシーケンス
電磁リレーを使って制御するもの.工場で使われる.
・長所:100Vや200Vを直接ON/OFFできる
・短所:動作が遅い,接点が消耗する,配線で制御回路を組み立てる
PLCはリレーシーケンスがベースになっている.
(2)無接点シーケンス
無接点リレー(ダイオード,トランジスタ,ICなど)を使って制御するもの.論理回路.
・長所:動作が速い,小形軽量,低消費電力
・短所:100Vや200Vを直接ON/OFFできない,配線で制御回路を組み立てる
→どちらも配線で制御回路を組まなければいけない
- 2 -
:大きな短所
2.リレーシーケンスの概略
2.1
2.2
シーケンス図の見方,書き方 ※省略
基本回路(p.5)
※後の4.2 PLCの命令説明時に参照
2.3
コンピュータ技術の導入(p.7)
(1)ハードロジックからソフトロジックへ
リレーシーケンスと無接点シーケンスのどちらも配線で制御回路を組む ←ハードロジック
→配線作業が大変で,修正や手直しも大変
→コンピュータ技術を導入すれば,配線作業が大幅に簡略化できる ←ソフトロジック
PLCの導入
○コンピュータの発展
1992年以前
NEC PC98一式:50∼70万円
PLC:10∼40万円
1992年:Windows3.1の登場,DOS/V機へ移行開始
PC一式:30∼60万円
PLC:10∼40万円
1995年:Windows95の登場,パソコン普及元年
PC一式:10万円∼
PLC:3万円∼
コンピュータの発展と共に,PLCも小形軽量・安価・高機能に発展.
昔:PC(プログラマブルコントローラ)
今:PLC(プログラマブルロジックコントローラ) ←PCはパソコンの代名詞になった
3.PLCのしくみ
3.1
全体構成と動作(p.8)
(1)定義
「入出力部を介して各種の装置を制御するもので,プログラマブルな命令を記憶するためのメモリを
内蔵した電子装置」
↑パソコンの定義とさほど変わらない.
→PLCは専用機,PCは汎用機
(2)構成
ハード:専用機
ソフト:シーケンス図から直接回路を読み込めるシステムプログラムが内蔵
→リレーやタイマ,カウンタの集合体として扱える
3.2
3.3
内部出力とメモリ
入出力部
※省略
※省略
- 3 -
4.プログラミングの実際
4.1
いろいろなプログラム方式(p.11)
(1)プログラミング方法の分類
a)回路図方式
①ラダー方式
最も多く使用されている
②論理方式
論理回路記号方式と論理式方式がある
安価なPLCの一部は命令語をキー入力する必要がある
③命令語方式
b)動作図方式
①フローチャート方式
②順序方式(タイムチャート方式)
タイミングが重要な制御では必須
(2)ラダー方式とは
ラダーとは縄ばしごのこと.PLCで最も多く使用されている.
回路図をラダーシンボルに置き換えて図式化.
入力:┤
├(a接点),┤
├(b接点)
出力:−○−,−( )−
回路図をラダーシンボルに変換するだけ
→命令語への変換
容易
シーケンスの流れや動きの確認
(3)ラダー図
・Y200への通電
X100とX102が同時にON :ANDの関係
X100とY201はどちらか一方がONでよい
:ORの関係
→ Y200=(X100+Y201)・X102
- 4 -
4.2
PLCの命令
(1)PLCの命令と要素
PLC:多数のリレーやタイマ,カウンタの集合体
→プログラミングは配線作業のイメージ
接続方法には一定の決まりがある :命令,命令体系
要素:リレー,タイマ,カウンタなどのこと
→識別番号付与 (リレー番号,要素番号)
要素記号を頭に付ける
①入力リレー(X)
②出力リレー(Y)
③タイマ(T)
④カウンタ(C)
⑤補助リレー(M)
入力信号,読み込み専用
出力信号
指定時間後にON
指定回数入力後にON
プログラム作成の補助として用意
(2)命令の種類
①LD(ロード)
指定番地の内容を読み込む(a接点)
②LDI(ロードインバース),LDNOT(ロードノット)
指定番地の内容を反転して読み込む(b接点)
③AND(アンド)
論理積
④ANI(アンドインバース),ANDNOT(アンドノット)
論理積否定
⑤OR(オア)
論理和
⑥ORI(オアインバース),ORNOT(オアノット)
論理和否定
⑦OUT(アウト)
出力
⑧TIM(タイマ)
指定時間後にON
⑨NOTTIM(ノットタイマ)
指定時間後にOFF
⑩CNT(カウンタ)
指定回数入力後にON
⑪IL(インターロック),MC(マスターコントロール)
ILEND,MCR命令までのシーケンスを一括して制御
第2,第3の母線を作る
⑫ORB(オアブロック),ORLD(オアロード)
直列回路ブロックの並列接続命令
├─┤
├─┤
├─┬─
│
│
├─┤
├─┤
├─┘
⑬ANB(アンドブロック),ANDLD(アンドロード)
並列回路ブロックの直列接続命令
├─┤
├─┬─┤
├─┬─
│
│
│
├─┤
├─┴─┤
├─┘
⑭その他
SET,RST(RESET)など
- 5 -
(3)論理回路と命令の対応(p.5,2.2基本回路も参照)
①NOT
入力X100がOFFになると出力Y200がON
Y200=X100
Y200 │
│ X100
├─┤
├───────○─┤
│
│
②AND
入力X100とX101が共にONのときY200がON
Y200=X100・X101
Y200 │
│ X100 X101
├─┤
├──┤
├────○─┤
│
│
③OR
入力X100とX101のどちらかONでY200がON
Y200=X100+X101
Y200 │
│ X100
├─┤
├─┬─────○─┤
│ X101 │
│
├─┤
├─┘
│
│
│
④NAND
ANDの出力をNOT (NOT+AND=NAND)
そのままでは負論理出力なので,正論理に変換
Y200=X100・X101 → Y200=X100+X101
(ド・モルガンの定理)
Y200 │
│ X100
├─┤
├─┬─────○─┤
│ X101 │
│
├─┤
├─┘
│
│
│
⑤NOR
ORの出力をNOT (NOT+OR=NOR)
そのままでは負論理出力なので,正論理に変換
Y200=X100+X101 → Y200=X100・X101
Y200 │
│ X100 X101
├─┤
├──┤
├────○─┤
│
│
⑥EXOR(排他的論理和)
入力X100とX101の状態が異なるときにY200がON
Y200=X100・X101+X100・X101
Y200 │
│ X100 X101
├─┤
├──┤
├─┬──○─┤
│ X100 X101 │
│
├─┤
├──┤
├─┘
│
│
│
- 6 -
(ド・モルガンの定理)
4.3
PLC用シーケンスの考え方
4.4
主な機能の使用例(p.17)
※省略
(1)タイマ(TIM)
入力X100でタイマTIM0を起動
例では設定時間1.0秒
タイマの時間単位は0.1秒が一般的
NOTTIMの出力に注意!
→K10
TIM0 K10 │
│ X100
├─┤
├───────○─┤
Y200 │
│ TIM0
├─┤
├───────○─┤
Y201 │
│ TIM0
├─┤
├───────○─┤
│
│
(2)カウンタ(CNT)
カウント入力X100がONになる回数が指定回数
に達したときにカウンタCNT0がON
X101はリセット入力
│ X100
┌───┐│
├─┤
├────┤CP
││
│
│
││
│
│CNT0 ├┤
K3││
│ X101
│
├─┤
├────┤R
││
│
└───┘│
Y200 │
│ CNT0
├─┤
├───────○─┤
│
│
4.5
応用プログラミング(p.19)
(1)自己保持回路
セット入力X100とリセット入力X101で構成
出力を入力に戻すのがポイント
現在はSET命令,RESET命令があるので
ほとんど使われない
X101
Y200 │
│ X100
├─┤
├─┬─┤
├───○─┤
│ Y200 │
│
├─┤
├─┘
│
│
│
4.6
外部故障発見のテクニック
※省略
- 7 -
5.演習
5.1
練習問題1
制御条件
①出力論理条件を補助リレーM300に出力する.
②補助リレーM300がONしている間,5秒間だけ出力リレーY200をONする.
③入力リレーX100でマスターコントロールを構成すること.
(1)真理値表の見方
正論理出力のみ考える.
→Y200の値が1の場合のみ抜き出す(赤下線行)
→入力の値が1のときはそのまま,0のときは否定
Y200=X100・X101・X102+X100・X101・X102
=X100・(X101・X102+X101・X102)
→X100に,X101とX102のEXORをかければよい
:出力論理条件
X101 X102
M300 │
│ X100
├─┤
├─┬─┤
├──┤
├─┬──○─┤
│
│ X101 X102 │
│
│
└─┤
├──┤
├─┘
│
│
│
※課題の動作を真理値表で表現できれば,論理回路が組める.
(2)制御条件
①,③は上のラダー図で満足
→ ②を追加 :回答
X101 X102
M300 │
│ X100
├─┤
├─┬─┤
├──┤
├─┬──○─┤
│
│ X101 X102 │
│
│
├─┤
├──┤
├─┘
│
TIM0 K50│
│
│ M300
│
├─┤
├───────○─┤
Y200 │
│
│ M300 TIM0
│
└─┤
├──┤
├────○─┤
│
│
- 8 -
※M300・TIM0としないと正しく動作しない
(3)タイムチャートの見方
信号の変化のタイミングを確認する.
5.2
SFC
(1)SFCの動作ルール
①動作は工程(ステート)別に管理
②動作は常に一つのステートのみ(同時に二つ以上はONしない)
③ステートの移行はSET命令で
(2)SFCプログラム例
追加資料:学生実験で使用しているもの(空き缶つぶし機)
a)空き缶つぶし機の動作
①ホッパに入っている空き缶を,取出器の上昇によって取り出す
②取り出した空き缶はベルトコンベアに載せられる
③ベルトコンベアは空き缶1個分(1ピッチ)ずつ進む
④ベルトコンベア先端から空き缶が圧縮部に投入される
⑤空缶検知センサが反応したら,圧縮部を動作させ,空き缶をつぶす
b)プログラムの解説
丸かっこ:通常出力
角かっこ:SET命令,RST命令
M8000:RUNモニタ(RUNスイッチが入るとON)
M8002:イニシャルパルス(最初の1スキャンだけON)
S0:油圧供給弁ON,取出シリンダと圧縮シリンダの原点復帰 →S1(非常停止X000がON時)
S1:取出シリンダ上昇(位置センサX003がONするまで) →S2
S2:取出シリンダ下降(1秒後,3.5秒間) →S3
S3:ベルトコンベア回転(コンベアセンサX002がONするまで) →S1/S4(X001がON時):後優先
S4:圧縮部動作(6秒間) →S5
S5:圧縮部戻り(6.2秒間) →S3
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5.3
練習問題3
(※練習問題2は省略)
(1)∼(2)くらいまで演習(15∼20分間)
→その後解説
(1)熱処理の自動運転
TIM0 KT1│
│ X100
├─┤
├─┬─────○─┤
TIM1 KT0│
│
│
│
└─────○─┤
Y200 │
│ TIM0 TIM1
├─┤
├──┤
├────○─┤
│
│
※T0=T1+T2
X100
T1
TIM0
T0
TIM1
T2
Y200
(2)材料の寸法選別1
M300 │
│ LS1 LS2 LS3
├─┤
├──┤
├──┤
├─┬───○─┤
│ LS1 LS2 LS3 │
│
├─┤
├──┤
├──┤
├─┤
│
│ M300
│
│
├─┤
├───────┘
│
TIM0 K10│
│ M300
├─┤
├───────────○─┤
S1 │
│ M300 TIM0
├─┤
├──┤
├────────○─┤
│
│
※入力の組合せは4通りのみ
ON:無し,LS1のみ,LS1&2,全て
※自己保持回路
(SET命令でも可)
※M300・TIM0としないと正しく動作しない
M300
1.0S
TIM0
S1
(シリンダS1は伸長したまま)
※上記以外の回答はWebサイトに掲載
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