その 2:架構実験 - 京都大学 建築学専攻 西山研究室

23412
日本建築学会大会学術講演梗概集
(九州) 2007年 8 月
波形鋼板ダンパーを組み込んだプレキャスト PC 門型架構の力学的性状
(その 2:架構実験)
プレキャスト部材
高エネルギー消費
アンボンド PC
プレストレス力
1. はじめに
その1における部材実験に基づき設計した波形鋼板ダ
○花房広哉*1
河野進*3
同 市岡有香子*2
同 渡邉史夫*4
同
同
笠直介*1
太田義弘*5
繰返し正負交番漸増載荷した後,プッシュオーバーを行
った。
ンパーを RC またはアンボンド PC 門型架構内に設置し,
表1 試験体種類
軸方向
試験体 部材
鉄筋
柱
4-D19
RC
梁
4-D22
柱 4-φ11.2
PC
梁
静的載荷実験をおこなった。
2. 実験目的
実験目的は,(1) 設定した変形角においてダンパー部
分が降伏することの確認,(2) 波形鋼板ダンパーの使用
により,残留変形を抑制したまま,エネルギー消費量が
せん断 導入PC力 柱軸力
軸力比
補強筋
(kN)
(KN) (PC力含む)
D10@70
900
0.20
D10@80
0
0
D10@70
434
900
0.30
D10@80
434
0
0.12
2- D22
D10@ 80
増大することの確認,(3)最大耐力経験後の耐力劣化及
300 300
び変形性能の確認,(4)終局状態に至るまでの損傷状況
850
2 - D19
D10@ 70
2- D22
4- D22
550
3. 実験概要
試験体種類を表1に,試験体詳細を図1~3に示す。
試験体は RC 造,アンボンド PC 造の 2 体で,40%スケー
ル 1 層 1 スパンの門型架構のスパン中央に波形鋼板ダン
D13 @ 100
2200
3900
550 300
パーを設置したものである。架構の外形及びせん断補強
800
端欠け防止
D10@ 70
アングル
目地 波形鋼板要素
モルタル
2 - D16
20mm
2- D16
耐圧板
30mm
異形PC鋼棒
φ 11. 2
850
程度である。波形鋼板ダンパー詳細は図2に示す。波形
300150
2 - D16 D10 @ 80
PC 量を定めた。PC 緊張力は柱で軸力比 0.10,梁で 0.12
板+平鋼板とした。降伏時の層間変形角(梁中央高さの
6- D22
300 550
(a)RC 試験体
筋は共通であり,曲げ耐力が同程度となるよう主筋及び
鋼板ダンパーの形状は,部材実験の結果に基づき波形鋼
2000
波形鋼板要素
の確認,である。
1850
波形鋼板
残留変形
正会員
同
4 - D22
550
水平変位を階高=1000mmで除したもの,以下 R と略記)
の予測値は 0.1%である。せん断降伏荷重予測値は 122kN
であり,架構の予測水平耐力(RC 試験体 407kN,PC 試
D13 @ 100 5 - D22
2200
3900
550 300
験体 348kN)の 1/3 程度とした。使用した材料の材料特
5 - D22
300 550
800
(b)PC 試験体
性を表2・3に示す。なお,鋼板の材料特性は部材実験
図1
試験体寸法・配筋詳細(単位:mm)
の材料とあわせてその1に示す。載荷装置を図4に示す。
80
左右鋼板
厚さ22
120
320
ダンパー部分
波形鋼板
厚さ2 . 3
剛体部分
ロゼットゲージ厚さ22
一軸ゲージ
300
818
30
850
左右鋼板
添板
厚さ16
図2
150
45454545
1000kNジャッキ
左右鋼板 85
厚さ22
スチフナー
厚さ22
左右鋼板
厚さ22
上下鋼板
厚さ16
500kNロードセル
かさ上げ
ブロック
3000
図3 波形鋼板ダンパー(単位:mm)
図4
Seismic Behavior of Precast Prestressed Portal Frames with
Corrugated Steel Plate Damper (Part2:Experiment on Frames )
―841―
214
300
D22
212
300
214
300
250
250
216
300
156
240
(a)RC 柱・梁断面
105
反力壁
160
340
80 80
剛体部分
厚さ22
340
160
150
80
D16
216
300
152
240
(b)PC 柱・梁断面
試験体種類(単位:mm)
1200kN
ジャッキ
1000kNジャッキ
500kNロードセル
反力床
反力ブロック
200
750
D19
かぶり厚20
119
R=0.1,0.2,0.4,0.6,1.0,2.0,3.0,4.0%で各2回ずつ
250
148
異 形PC φ11 . 2
シースφ 18 - 21
216
300
載荷履歴はひび割れ前に荷重制御で1回,その後は
190
250
かぶり厚20
250
143
水平力が左右同じ大きさの力となるように作用させた。
190
38
2280
250
143
載荷は柱の軸力を一定値 900kN(軸力比 0.20)に保ち,
3500
3500
載荷装置(単位:mm)
HANAFUSA Hiroya, ICHIOKA Yukako, RYU Naosuke,
KONO Susumu, WATANABE Fumio and OHTA Yoshihiro
4. 実験結果
4.1. 履歴復元力特性
図5に水平荷重-層間変形角関係を示す。ダンパー降
5. まとめ
まとめはその3に示す。
異形鉄筋及び異形 PC 鋼棒の材料特性
呼び名 降伏強度 引張強度 弾性係数
(MPa)
(MPa)
(GPa)
D10
360
499
184
D13
327
470
172
D16
349
527
184
D19
389
585
196
D22
381
587
189
φ11.2mm
1410*
1500
200
表2
伏時変形角は両試験体とも 0.1%弱と精度よく予測できた。
最大荷重時の変形角は RC と PC で異なるが,ピーク後の
耐力劣化はいずれも緩やかで,プッシュオーバー時にも
最大耐力時の 7~8 割の耐力を保持して靱性に富む挙動を
示した。履歴ループの形状は PC 試験体で期待したほど残
留変形が抑制されなかったため,試験体間に大きな違い
は見られなかった。
*0.2%オフセット時の値
4.2. 鋼板負担水平力
剛体部分平鋼板に貼付したロゼットゲージの計測値か
表3
ら鋼板負担水平力を算出した。図5に試験体全体の水平
圧縮強度
(MPa)
52.7
45.4
45.7
81.2
49.2
52.6
42.4
使用箇所
コンク
リート
荷重と重ねて,波形鋼板ダンパーの負担水平力を示す。
ダンパーは全体の耐力の 1/3 程度を負担し,架構のみの
耐力の 1/3 程度(全体の 1/4 程度)とした設計時の見積も
モルタル
りよりも大きな水平力を負担していた。これは,設計時
に鋼板の耐力上昇を考慮していなかったためである。
4.3. 等価粘性減衰定数
図6に等価粘性減衰定数 heq を示す。PC 試験体は heq が
1000
1000
750
750
Lateral Load (kN)
≦1%で効果が大きく,波形鋼板ダンパーにより両試験体
ともにエネルギー消費性能が改善されたことがわかった。
4.4. 残留変形角率
図7に残留変形角率(rd)-層間変形角関係を示す。RC
試験体では経験変位の増大に伴い残留変形も増加し,
RC
PC柱・梁
PC基礎
RC鋼板
PC鋼板
PC梁目地
PC柱目地
割裂引張
強度(MPa)
2.9
3.4
5.8
2.2
3.6
3.2
500
250
0
Total
Damper Yielding
Beam Yielding
Column Yielding
Damper
-250
-500
-750
-1000
-5
0
5
250
0
-250
-500
Total
Damper Yielding
Damper
-750
0
Equivalent Damping Factor heq (%)
4.5. ひび割れ及び損傷状況
図8に R=2.0%時の損傷状況を示す。RC 試験体は梁
端・柱脚部に生じた多数の曲げひび割れが R=0.2%サイク
ル以降は曲げせん断ひび割れとなって進展し,R=2.0%時
に柱脚部のコンクリートが圧壊により剥落したのに対し,
PC 試験体は梁端・柱脚部ともに曲げひび割れは生じたが,
(b) PC 試験体
水平荷重-層間変形角関係
10
8
6
4
2
0
目地部のひび割れが貫通した R=0.6%以降はひび割れが進
RC
PC
0
0.5
1
1.5
Drift Angle R (%)
2
(a)全体
行せず,R=2.0%まで損傷は非常に軽微であったといえる。
図6
Equivalent Damping Factor heq (%)
図5
を抑制することができた。
5
Drift Angle R (%)
(a) RC 試験体
に rd=20%程度であり,RC 試験体の 1/2 程度に残留変形
弾性係数
(GPa)
26.8
25.7
25.6
27.7
16.7
23.4
29.6
500
-1000
-5
10
Drift Angle R (%)
R=2.0%時には rd=40%に達したのに対し,PC 試験体は常
Lateral Load (kN)
3%程度増加した。RC 試験体でも 1~3%増加し,特に R
Residual Deformation Ratio rd (%)
コンクリート及びモルタルの材料特性
8
6
4
2
0
RC
PC
0
0.5
1
1.5
Drift Angle R (%)
2
(b)フレームのみ
等価粘性減衰定数
50
40
30
20
10
0
RC
PC
0
1
Drift Angle R (%)
2
(a)RC 試験体
図7 残留変形角率
*1 京都大学大学院 修士課程
*2 京都大学大学院 日本学術振興会特別研究員 DC
*3 京都大学工学研究科建築学専攻 准教授・工博
*4 京都大学工学研究科建築学専攻 教授・工博
*5 (株)竹中工務店 技術研究所
(b)PC 試験体
図8
ひび割れ損傷状況
*1 Graduate School, Kyoto Univ
*2 Ph. D. candidate, Kyoto Univ., JSPS Research Fellow DC
*3 Associate Professor, Dept. of Architecture, Kyoto Univ., Ph.D.
*4 Professor, Dept. of Architecture, Kyoto Univ., Dr. Eng.
*5 Takenaka Research & Development Institute, Takenaka Corp
―842―
10