鶴見 隆氏 - 日本知的財産協会

知財情報に基づく
三位一体の戦略展開
東京農工大学大学院
技術経営研究科
教授 鶴見 隆
(元旭化成(株)知的財産・技術情報センター長)
旭化成の企業進化
売上規模
2005年
15,000億円
ヘルスケア
1995年
12,000億円
繊維
多角化 15%
24%
ケミカル
29%
住建
1980年
6,000億円
多角化
8%
1965年
1,100億円
住建
15%
多角化
他
繊維
10%
エレクトロ 多角化
24%
住建
33%
32%
繊維
38%
ケミカル
39%
ケミカル
繊維
68%
1965年
1980年
1995年
2005年
ケミカル
33%
知的財産部門の歴史
∼1965
総務部特許課
1965
特許部(特許課、調査課)
1991
知的財産部に名称変更
1998
知的財産部に技術情報センター設置
2003
持株会社・分社体制への移行
特許管理の要諦
特許管理の要諦
発明
訴訟
特許承認
ライセンス
出願
特許情報
審査請求
無害化
技術情報調査体制の変遷
1960∼1970年代初期
<特許情報調査の全社一元管理体制>
海外からの技術導入に当り、三位一体での総合評価を実施
事業面・・・・・事業企画
技術面・・・・・開発部門
権利面・・・・・特許部(特許担当、調査担当)
1975年以降
<特許情報調査の分散管理体制>
技術導入案件の減少、間接部門効率化により、事業部、
支社へ分散
80年代後半∼90年代にかけて
<情報の急激な電子化の進展>
「紙情報を手めくりする時代から、
大量の情報を機械検索する時代へ」
社内の検索能力が対応しえなくなった(トラブルの発生)!
対策
1993年 情報調査に関する全社方針
「情報調査は研究者が自ら実施すべし!」
インフラの整備とトレーニングの実施
結果
研究者の負荷の上昇と調査漏れによるトラブルの多発
技術情報センターの設置
1.設置の経緯
98年
取締役会で知財部長から問題提起
99年
知財部内に技術情報センターを設置
2.設置の趣旨
旭化成グループにおける情報調査能力のレベルアップのため、
社内に分散している機能・組織を統合し、一元的な管理・運営を行
なう。
3.業務内容
1)情報検索業務(DBからの特許情報、技術情報、市場情報の検索)
2)研究者・技術者への技術情報調査に関する教育・訓練
技術情報センターの基本方針
・研究者はテーマ探索時の調査を独自に進める。
・テーマ決定時及びそれ以降の特許情報調査は研究者、
サーチャー、特許担当者が協力して進める。
「三位一体」の協力体制
研究者
研究開発テーマの発案
サーチャー
関連特許情報の調査
特許担当者
権利関係の判断
・特許担当者、サーチャーはミッションとして、LDB、SDB
の構築をサポートする。
事業化プロセスと特許情報調査
事業化決定
研究テーマ設定
テーマ探索 基礎研究
遡 及 調 査
継 続 調 査
特 許 情 報 調 査
国内出願 外国出願
先行技術
調
査
製造・販売
応 用 研 究
特許性
調 査
警告・訴訟
ライセンス
事業化
技術導入
障害となる
特許性
調 査 他社特許調査
特許性・侵害性
のための調査
LDB(ローカル・データ・ベース)の構築
日本特許
外国特許
開始
追記
追記
追記
追記
戦略データ・ベース(SDB)の構築
ローカル・データ・ベース
用語の統一、事業戦略上必要な付加情報の入力
戦略データ・ベース
活用
注:付加情報
・技術分類・・・・どの工程、機能、特性に
関連する特許か
・製品分類・・・・自社製品の何に関連す
る特許か
・他社特許への対応方針
<正確な特許情報に基づく事業・研究開発・知財活動の展開>
・技術、市場、他社動向の分析 → 自社戦略の見直し
・競合、代替技術の発見と対策
・障害特許の把握と対策の立案
戦略データ・ベースに基づく特許情報解析
分析手法(マップ)の種類
時系列マップ
ポートフォリオマップ
ランキングマップ
マトリクスマップ
構成部位マップ
権利判断に係る
分析
権利関係解析
ミクロ分析
クレームマップ(数値表示マップ)
構成要件対比表
障害他社特許戦略
技術進展図
特許網構築戦略
書誌事項と付加
情報による分析
技術内容分析
セミマクロ分析
事業戦略 研究開発戦略
主に書誌事項
に基づく分析
動向分析
戦略データベース︵
SDB︶
マクロ分析
活用場面
三位一体の場
事業責任者
部レベルの組織
特許戦略会議
課・係レベルの組織
特許戦略会議
知的財産部門
経営、開発、知財の三位一体
戦略の策定と推進
重要事項の判断と決定
特許検討会議
特許担当者
情報担当者
開発、知財、情報の三位一体
SDBの構築と情報解析
特許出願計画の策定と推進
障害他社特許対策の策定と推進
競争力分析シートの作成
戦略データ・ベース
特定市場における競合他社の抽出
競争力分析シート
注:マーケットにおけるシェア上
位企業に関する特許を抽出
活用
<シェアトップを目指した知財戦略の展開>
① 他社との競争力分析
② シェアトップを目指した特許網構築作戦の展開
・特許出願戦略の立案と遂行
・障害他社特許対策の立案と推進
競争力分析シート
(日本、米国、欧州、中国等、主要マーケット毎に)
自
技術要素
分
類
技術要素
名
称
プロセス
原料
プロセス
重合
プロセス
添加剤
プロセス
加工糸
プロセス
織編物
機
能
弾性回復
機
能
耐薬品性
機
能
耐熱性
登録
特許
公開
特許
社
出願
特許
ノウ
ハウ
他社(1)
シェア1位
他社(2)
シェア2位
他社(3)
シェア3位
登録
特許
登録
特許
登録
特許
特許出願戦略の立案と推進
公開
特許
公開
特許
公開
特許
障害他社特許対策
障害他社
特
許
パテント・ポートフォリオ・シートの作成
競争力分析シート
自社特許の評価情報の入力
パテント・ポートフォリオ・シート
活用
事業戦略、研究開発戦略、知財戦略の展開
特許価値評価
出願以降、継続的に出願発明の価値評価を行う。
1.権利の評価
① 権利化状況
② 権利の強さ
③ 回避の難易度
④ 権利の残存期間
2.移転の適格性評価
① 代替技術との技術優位性
② ライセンスの有無
③ 今後のライセンス(又はクロスライセンス)の可能性
3.事業性評価
① 本発明の実施状況
② 本発明の貢献度
パテント・ポートフォリオ・シート
発明の実施状況
現在実施中
発明の貢献度
権利の残存期間
技術要素
分
類
技術要素
名
称
プロセス
原料
プロセス
重合
プロセス
加工糸
プロセス
織編物
機
能
弾性回復
機
能
耐薬品性
機
能
耐熱性
合
大
長
中
実施予定
小
短
長
中
大
短
長
中
防衛
小
短
長
中
短
計
注:評価項目を選択することによって色々な角度からの検討を実施する。
技術者・研究者の知財レベル
レベル1
自分の技術を作ることにのみ関心を持っている 段階
・自分しかやっていないと思っており、調査への関心が薄い。
・技術が出来上がったら、開発の成果として特許出願を行う。
レベル2
自分の作った技術は守らなければ、という認識に進んだ段階
・自分の技術に関連のある領域については調査を行う。
・出願への関心は高い、ただし、自分の技術に関連する領域のみ。
レベル3
事業として成功させることに関心を払っている段階
・競合技術、代替技術についても幅広く調査を行う。
・自分の技術領域は勿論、競合・代替技術領域を含めて、計画的
に出願を行い、特許網を構築する。
これを支えるのが三位一体の活動