§3.2 プラズマプロセスの基礎

§3.2 プラズマプロセスの基礎
本節の内容
•プロセスに用いられるプラズマ
•電子と中性粒子の衝突
•プラズマ物理の基礎
今回の参考書
•「プラズマプロセシングの基礎」 Brian N. Chapman著 ; 岡本幸雄訳
(電気書院,1985)
•「機械・材料系のためのマイクロ・ナノ加工の原理」近藤英一 (共立出版)
「電子材料プロセス」講義資料 1
プラズマ
マグネトロンスパッタ装置におけるプラズマ
「電子材料プロセス」講義資料 2
プロセスプラズマの特徴
非平衡プラズマ
Te>>Tg
・電子のエネルギー
・中性粒子のエネルギー
kBTe
kBTg
注:
単にTと書いてkBTを意味することが多い。
練習: 室温のガス温度は何eVか?
「電子材料プロセス」講義資料 3
なぜプラズマプロセスか
• 高エネルギー電子
– 原料ガスの分解・反応活性種の生成
(プラズマエッチング,プラズマCVD)
• 高エネルギーイオンを表面に入射
– スパッタリング・イオンエッチング
蒸気圧の低い元素を真空中に放出させる
– 異方性エッチング
電界による入射方向の制御,基板への垂直入射が可能
練習:1eVは代表温度で何Kか?
→約11000K
「電子材料プロセス」講義資料 4
電子と分子の衝突
「電子材料プロセス」講義資料 5
衝突断面積のエネルギー依存性
「電子材料プロセス」講義資料 7
直流グロー放電
「電子材料プロセス」講義資料 8
プラズマの空間電位
+-+-++ - + - + - J+
+-+-++ - + - + - J+
+-+-+-
• プラズマ中に絶縁された基板を挿入
1
ni vi
4
1
J -  ne ve
4
イオン電流 J + 
電子電流
ni=ne=109 cm-3
vi=520 m s-1 (Ti=0.04 eV)
ve=9.5x105 m s-1 (Ti=2 eV)
J+=1.3x1017 m2 s-1 (2.1 mA cm-2)
J-=2.4x1020 m2 s-1 (3.8 mA cm-2)
J+<<J-基板が負に帯電
イオン:影響を受けない(影響を無視できる)
電子: 基板の電位により,基板付近の濃度低下
 平衡状態J+=J-に落ち着く
シース電位
φs=Vp-Vf
「電子材料プロセス」講義資料 9
シース電位の大きさ
• 熱平衡状態で考える
-ポテンシャルにより濃度減尐
 - eV f - V p  
*

ne  ne exp  kT


ni v i
ne v e
ne*
-電子温度不変=速度不変
-イオンは影響を受けない
J+  J - eV f - V p  
1
1
v e
ni v i  ne exp  4
4
kT


-中性領域では,ne=ni
s  V p - V f 
kT v e
ln
e
vi
s  V p - V f 
kT miTe
ln
2e meTi
v
8kT
m
より正確なモデルによれば
s  V p - V f 
mi
kT
ln
2e 2.3me
シース電位
「電子材料プロセス」講義資料 10
シースの幅
Poisson方程式
V
2
dV
e
ni - ne x 

2
dx
0
x→∞(中性領域)では
Vp
V  Vp
ne x   ni
 - eV - V p  
平衡状態を仮定して ne x   ni exp  
kT


 eV - V p   
d 2V eni 

 - 1

exp 
これらから
2

dx
 0   kT  
s
0 
d
x
かく乱源からd離れれば
電気的中性,電位は一定
expの中身を展開して近似
d 2V e 2 ni
V - Vp 

2
dx
 0 kT
境界条件から
 x 

V - V p  s exp  
 D
D 
 0 kT
e 2 ni
Debye長
「電子材料プロセス」講義資料 11
プラズマの緩和時間
• 電子が全体としてx変位したとき,電界が
生じてもとに戻ろうとする。
– 電界の大きさ
– 電子の運動方程式
– これは振動数ωpeの単振動を表す
プラズマ振動数
電子が追随できる外部振動の最大周波数
ちなみに…
ve
電子の振幅はおよそd
1
 pe
 D
「電子材料プロセス」講義資料 12
高周波プラズマ
粒子の運動方程式
mv  eE
eE
v

m
ステージ
mi  me  vi  ve
電界の変化に電子は追随でき
るが,イオンは追随できなくなる
プラズマ中のAC電極の挙動
~
定常状態
~
~
印加電圧
イオン
電子
~
~
フラックス
Je=Ji :回路電流ゼロ
~
~
表面電位
VDC
回路電流がゼロになるように電極が負に帯電自己バイアスVDCの出現
「電子材料プロセス」講義資料 13
高周波プラズマを用いた典型的な装置
イオン
(VP+VDCで加速されて垂直入射)
表面原子の脱離を促進
RIE (Reactive Ion Etching)
反応性ガス
VDC VP
中性分子・ラジカル
(ランダムな方向で
入射)
表面反応
ウエハ
排気
~
0
V
通常13.56 MHz
プラズマグロー
シース
ガス分子と電子の反応
•イオンを加速
反応活性種の生成
基板に垂直に方向制御
•電子の生成
生成した電子は,
加速されてプラズマグローへ
問:スパッタリング装置の構成を記せ
「電子材料プロセス」講義資料 14
VDCと電極面積
D2
仮定
D1
A1
A2
-Q2
Q1
V1
~
シース
V2
1. イオン電流密度(空間電荷制限電流)
kV 3 2
j
mD2
2. 両電極でのイオン電流密度は等しい
(シース端でのイオン密度・速度は等しいので)
3. シースはコンデンサであるとみなす
Q  CV
C
A
D
4. Q1=Q2
32
A1V1 A2V2

D1
D2
 A1 V 1  A2 V 2
2
12
2
12
32
kV1
kV2

2
2
mD1
mD2
4


V2
A1





V 1  A2 
VDCは電極面積が小さいほうが著しく大きくなる
「電子材料プロセス」講義資料 15
各種プラズマ源
「電子材料プロセス」講義資料 16
各種プラズマ源
• 容量結合プラズマ(CCP)
– 電極に現れる電位により,電子・イオンを加速してプラズマを生成
– 平行平板RIE装置,スパッタリング装置など幅広く用いられる。
• 誘導結合プラズマ(ICP)
– 誘電体を通してプラズマ中に高周波を導入,電磁誘導によりプラズマを生成
– 単純な装置で高密度プラズマを生成可能
• 電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ
– 磁場存在下でマイクロ波をプラズマに導入。ECRにより電子を加速。
• 高密度プラズマ
–
–
–
–
ECR, ヘリコン, ICP
低いVDCと高いイオンフラックスを両立
基板に別途高周波を印加し,VDCを所望の値に制御可能
高電子密度により,ガスの反応を促進
「電子材料プロセス」講義資料 17