地域在住高齢者の抑うつの関連要因 - 日本看護研究学会

−研究報告−
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
− N 県 N 町の老人クラブの調査結果−
Depression and Related Factors Among Community-Dwelling Elderly People
Results of Survey Based on Members Belonging to a Seniors Club in N-town, N-prefecture
古 川 秀 敏 国 武 和 子
Hidetoshi Furukawa Kazuko Kunitake
キーワード:高齢者,抑うつ,ソーシャル・サポート,社会参加
Key Words :elderly, depression, social support, social participation
Ⅰ.はじめに
加が高齢者の心身ともに健康な生活に影響することが推測
わが国の,いわゆる少子高齢化の進行は他の先進諸国と
される。高齢者における社会参加については,知的能動性
比較しても著しく,財政問題とともに高齢者対策は国をあ
や精神的な充実15),抑うつや孤独感13)との関連が示唆され
げての急務といえる1)。このような現状において,高齢者
ている。このように,抑うつの度合いは高齢者の身体,心
が単に寿命を延ばすだけでなく,高齢期を心身ともに健康
理,社会的側面に複雑に関連していると考えられ,高齢者
に過ごすことは,生活の質の観点からも重要な課題と考え
の生活の質(Quality of Life; QOL)を測るインジケータに
なりうると思われる。
る。
高齢者における特徴的な精神障害の例として,認知症と
そこで,本研究は,高齢者の質の高い生活に資するため,
ともに抑うつがあげられる。抑うつの要因については様々
抑うつに関連する要因をソーシャル・サポートや社会参加
な観点からの調査が行なわれてきた。村岡
2)
は,うつ状
などの項目も加えて追試することを目的とする。
態と診断された群とされなかった群とを比較し,診断され
た群において,しびれや痛みがある者,脳卒中の既往のあ
Ⅱ.方 法
る者や ADL の各能力に介助を要する者の比率が有意に高
1.調査対象者
連要因について疫学的調査を実施し,脳卒中で過去1年以
の高齢者である。N 町の老人クラブに調査の協力を依頼し,
いことを報告している。また,井原
3)
は抑うつ状態の関
内に治療を経験した者,過去1年間に入院を経験した者,
聴力視力の低い者,日常生活動作能力が低い者に抑うつ状
態の者の割合が多いとしている。同様に長田
4)
も高次生
活活動能力の低下と抑うつ状態の関連について明らかにし
ている。加えて,高齢者自身の主観的な健康感との関連も
5)
示され ,さらに,身体機能と抑うつとの関連は,本邦だ
調査対象者は,N 県 N 市近郊の N 町に居住する65歳以上
参加者を募った。研究参加の同意が得られた298名のうち,
質問票に記入漏れのなかった290名(男性:142名,女性:
148名,平均年齢:74.9±5.2歳)を分析の対象とした。
2.調査期間
2001年8月から9月まで。
3.調査手続き
けでなく,海外においても報告されている 。
抑うつ,孤独感,ソーシャル・サポートに関する質問票
抑うつの関連要因については,身体機能だけでなく,
を用意した。また,併せて居住状況や社会活動への参加の
6)
主観的幸福感
7)
−9)
,ソーシャル・サポートや人間関係
など心理,社会的要因との関連についても報告されてお
り
5)
,10)
−11)
,さらには,孤独感や認知機能との関連も指摘
調査には看護師があたり,対象者に面接し,回答を得た。
4.分析項目および得点化
1)抑うつ
12)
−13)
されている
有無,主観的な健康状態などに関しても情報を収集した。
。
高齢社会対策大綱には,高齢者の主体的な地域社会への
参画を促進すること,相互扶助などの機能が活性化するよ
Geriatric Depression Scale(GDS)短縮版16)を用いた。15
項目の質問があり,「はい」「いいえ」で回答を求め,否
う条件整備を図ること,が盛り込まれており ,国策とし
定は1,肯定は0とした。 点数の範囲は0点から15点で,
ても高齢者の社会参加が推進されている。地域社会への参
高数値ほど抑うつも高いということを示すようにした。
14)
県立長崎シーボルト大学看護栄養学部看護学科 Department of Nursing, Siebold University of Nagasaki
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
61
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
2)孤独感
改訂版 UCLA 孤独感スケール17)を用いた。質問票には,
ポジティブおよびネガティブな内容が各10項目あり,各項
目は,「しばしば」から「全くない」までの4段階に分け,
各段階を1から4と点数化した。ポジティブな内容の項目
は点数を逆にし,点数が高いほど孤独を意識していること
を示す。したがって,このスケールの得点範囲は20点から
80点となる。
3)認知機能
Mini-Mental State Examination(MMSE)18)を用いた。記
憶,場所や時間などの見当識に関する質問と,書字,文章
構成能力,図画の模写などを含む11項目の課題への回答を
求めた。各問の正答を1点,誤答を0点としたので,得点
範囲は0から30である。点数が高いほど認知機能の障害が
図1 抑うつに関連する要因モデル
低いことを示し,得点が21以上では,認知障害が極めて軽
度か全くないことを表す。
Ⅲ.結 果
4)ソーシャル・サポートに対する満足と認識の度合い
1.調査対象者の面接調査結果
Duke 大学ソーシャル・サポート質問票を参考に作成さ
表1に示すように,相談相手がいたのは290名中287名で
れた11項目の質問票を用いた13)。肯定的な回答に3点,中
あった。また,喪失感を経験した人は男性で39名,女性で
間に2点,否定的な回答に1点を与えた。得点の範囲は11
34名の計73名であった。ボランティア活動を行なっている
点から33点であり,点数が高いほど,ソーシャル・サポー
人は102名であり,男性が67名(男性対象者の47.2%),女
トがよく認知されていること,満足していることを示すよ
うにした。
性が35名(女性対象者の23.6%)と有意な差が認められ
た(p <0.001)。また,余暇活動は209名が行っており,男
5)主観的健康感
「あなたは健康だと思いますか。」という質問に「はい」
「いいえ」での回答を求めた。「はい」を1,「いいえ」を
0とした。
性110名(男性対象者の77.5%),女性99名(女性対象者の
66.9%)であり,男性のほうが有意に多かった(p <0.05)。
独居者は男性で2名,女性で23名と有意差を認めた(p <
表1 調査対象者の概要
6)属 性
全体
男性
女性
(n =290) (n =142) (n =148)
上記の項目に加え,性,年齢,居住状況,社会参加につ
いても回答を求めた。居住状況においては「独居」を1,
「家族との同居」を0,社会参加については,ボランティ
ア活動,余暇活動のそれぞれについて回答を求め「活動し
ている」を1,「活動していない」を0とした。
5.分析方法
統計解析においては記述統計,Mann-Whitney の U 検定
を用いた。データの分析には SPSS for Windows 11.0J,検
定結果の値が0.05未満を統計的に有意とした。また,GDS
の得点を従属変数とするパス図を作成し(図1)
,AMOS
4.0J を用いて解析した。
6.倫理的配慮
対象者には研究者が口頭で調査の趣旨および内容,デー
タは厳重に管理すること,得られたデータは統計処理を施
し個人が特定されることはないこと,等を説明し同意を得
た。
%
n
%
n
%
相談相手
いる
いない
n
pa)
287
3
140
2
98.6
1.4
147
1
99.3
0.7
ns
喪失感の経験
あり
なし
99.0
1.0
73
217
39
103
27.5
72.5
34
114
23.0
77.0
ns
ボランティア活動
している
していない
25.2
74.8
102
188
67
75
47.2
52.8
35
113
23.6
76.4
***
余暇活動
している
していない
35.2
64.8
209
81
110
32
77.5
22.5
99
49
66.9
33.1
*
居住状況
独居
同居
72.1
27.9
25
265
2
140
1.4
98.6
23
125
15.5
84.5
***
主観的健康感
健康である
健康ではない
8.6
91.4
216
74
74.5
25.5
112
30
78.9
21.1
104
44
70.3
29.7
ns
a): 男女間のχ2検定結果
ns: not significant,* : p <0.05,***: p <0.001
62
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
0.001)。主観的に健康と感じている人は男性で112名,女
性で104名であり,有意な差はみられなかった。
2.各スケールの得点
各スケールの平均点を表2に示す。GDS では,全体で2.4
±2.3点(最小:0点,最大:10点),男性2.1±2.1点,女
性2.8±2.5点と男女間で有意な差が認められた(p <0.05)。
UCLA 孤独感スケールでは,全体で29.0±7.0点(最小:20
点,最大:58点)であり,男性29.6±7.8点,女性28.4±6.2
点と男女間に有意な差は認められなかった。ソーシャル・
サポート質問票では全体で29.5±2.8点(最小:18点,最
大:33点)であり,男性で30.0±2.6点,女性で29.0±3.0点
と有意な差が認められた(p <0.01)。認知機能では,全体
で29.5±2.8点(最小:16点,最大:30点),男性28.3±2.1
点,女性28.1±2.1点と男女間に有意差は認めなかった。
表2 各スケールの平均点
全体
(n =290)
男性
(n =142)
有意でないパスは削除した。
抑うつ,余暇活動,ボランティア活動の誤差項は省略した。
図2 男性における抑うつの要因モデル
女性
(n =148)
(Mean ± SD)(Mean ± SD)(Mean ± SD) pa)
*
GDS
2.4±2.3
2.1±2.1
2.8±2.5
UCLA 孤 独 感
29.0±7.0
29.6±7.8
28.4±6.2
ns
スケール
ソ ー シ ャ ル・
**
29.5±2.8
30.0±2.6
29.0±3.0
サポート
MMSE
29.5±2.8
28.3±2.1
28.1±2.1
ns
a): 男女間の Mann-Whitney の U 検定結果
ns: not significant,* : p <0.05,**: p <0.01,***: p <0.001
3.抑うつの関連要因について
男女間で GDS の平均点に有意な差が認められたため,
男女別にモデルの検証を行った。図2に男性モデルの結果
を示す。男性では,喪失感(パス係数=1.27)
,ソーシャル・
サポート(パス係数=−0.21)が抑うつに,直接,関連し
ていた。この時,男性モデルの適合度を示すχ2=1.883,p
=0.966,残差平方平均平方根(以下,RMR)=0.014,適
合度指標(以下,GFI)=0.997,修正適合度指標(以下,
有意でないパスは削除した。
抑うつ,余暇活動,ボランティア活動の誤差項は省略した。
図3 女性における抑うつの要因モデル
AGFI)=0.979)であった。
5点が11名,6点が10名,7点が5名,8点が7名,9点
会参加(パス係数=−2.30),ソーシャル・サポート(パ
またはうつ状態であったと考えられる。葛谷らの虚弱老
図3に女性モデルの結果を示す。女性のモデルでは,社
が1名,10点が7名であり,対象者の14.1%が抑うつ傾向
ス係数=−0.39),主観的健康感(パス係数=−1.13)の関
人の調査では,57.2%が6点以上であった20)。また,Wada
=0.019,GFI =0.993,AGFI =0.949であった。
査し,インドネシアで33.8%,ベトナムで17.2%,日本で
うつとの関連を認めなかった。
本調査集団があまり抑うつを意識していない集団であるこ
連が示された。このモデルのχ2=2.697,p =0.952,RMR
年齢,相談相手の有無,孤独感,認知機能は男女とも抑
らはインドネシア,ベトナム,日本の地域在住高齢者を調
30.3%が抑うつであったと報告している21)。これらから,
とを示していると考えられる。
Ⅳ.考 察
本調査における要因モデルの適合度指標は,男性にお
本調査対象者の抑うつの平均点は,男性で2.1±2.1点,
いて,χ2=1.883,p =0.966,RMR =0.014,GFI =0.997,
つ傾向,10点以上でうつ状態と評価される19)。本調査では,
p =0.952,RMR =0.019,GFI =0.993,AGFI =0.949であっ
女性で2.8±2.5点であった。GDS において,5∼9点がう
AGFI =0.979であった。また,女性においてもχ2=2.697,
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
63
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
た。p 値が男性モデルで0.966,女性モデルで0.952である
健康感(パス係数=−1.13)であった。社会参加を行なっ
できる。また,適合度指標 GFI は0.9以上が必要とされて
社会参加と知的能動性や精神的な充実15),抑うつや孤独
加えて,RMR は0に近いほどモデルとデータが適合して
性モデルにおいても,抑うつに直接関連していたソーシャ
で0.019であった。以上から,両モデルとも,採択する基
与がうかがわれた。本調査結果は,高齢者の抑うつに社会
ことから帰無仮説「構成されたモデルは正しい」を採択
おり22),男性モデルで0.997,女性モデルで0.993であった。
22)
ている人は,抑うつの度合いが低いという本調査結果は,
感13) との関連を示唆する結果と同様であった。また,男
いると判断されるが ,男性モデルで0.014,女性モデル
ル・サポートを介し,直接的ではないにしろ抑うつへの関
準を十分満たしているといえる。
参加は直接的または間接的に関連していることを示してお
図2,3が示すように,男女とも,ソーシャル・サポー
り,高齢者の質の高い生活を可能にするためには,高齢者
トが抑うつに直接関連していた(パス係数:男性−0.21,
が社会参加を促す環境づくりや支援体制が必要と思われ
女性−0.39)。これは,ソーシャル・サポートに対する意
る。
識や満足が高いほど抑うつの度合いが低いことを示してい
主観的健康感は,男性モデルではソーシャル・サポー
る。本調査結果は,抑うつとソーシャル・サポートの関連
トを介した抑うつへの関連が認められた。すなわち,社
13)
を報告した古川らや ,ソーシャル・サポートに関する低
会参加と同様に主観的健康感もまた,直接的または間接
い認識が抑うつに関連していることを明らかにした Hybels
的に抑うつに関連していることがうかがわれる。主観的健
らの調査結果と同様であり ,また都市部の高齢者の調査
康感と抑うつとの関連は様々な調査によって指摘されてお
においてもうつ状態の地域介入にソーシャル・サポート
り2),7),13),高齢者における身体的側面と心理的側面のつ
の確保が重要とする小泉らの結果を支持するものと考え
ながりは強いものと考えられる。また,星中は高齢者の心
る11)。すなわち,地域あるいは都市部といった地域を問わ
身相関の重要性を述べている25)。このように,主観的に健
ず,地域社会で生活する高齢者の抑うつにはその地域社会
康でないと感じている高齢者には,身体面のケアだけでな
からソーシャル・サポートを享受できる環境とそれを支え
く,心も含めた心身両面からの援助も必要と考える。
る援助が重要といえる。
本調査において,GDS の得点に男女間で有意な差が認
6)
男性における,ソーシャル・サポート以外の抑うつの要
因は喪失感であった(パス係数=1.27)。これは,喪失感
められた(男性:2.1±2.1点,女性:2.8±2.5点)。抑うつ
には,女性であることが要因とする7),26) 一方で,抑うつ
を感じた者ほど抑うつの度合いを強くしていることを示し
の出現率には性差がないとする調査結果もあり3),一定の
ている。一般に,高齢期には,健康,経済,家族や社会と
見解は得られていない。本調査では,抑うつの要因モデル
23)
の人間関係の3つの喪失を経験するといわれている 。平
は男性と女性において同一ではないことが示された。この
成18年度高齢社会白書によると,家族・親族の中におい
結果は,1地域に限定した調査のため一般化は困難である
て60歳以上の高齢者の役割は,女性で71.4%が家事を担っ
が,抑うつの関連要因は男女間で異なり,さらには,抑う
ていると回答している24)。このように女性の場合,高齢に
つに対する介入方法が男性と女性では異なる可能性を示し
なったとしても,家事など家庭内になんらかの役割を担う
ている。抑うつの性差およびその援助については調査地域
ことがありうると考えられる。一方,同白書によると,男
および対象者を増やし調査項目の再考を行い精査する必要
性は役割について,41.2%が家計の支え手,38.9%が家族
があると考える。同時に,抑うつの度合いの強い対象者へ
や親族関係の中の長としての役割を担っていると回答して
24)
の有効な介入の方法についても調査が必要であると考え
おり ,男性の半数以上は何らかの役割を担っていないと
る。
いえる。このように,男性では定年退職や家長としての役
少子高齢化の進行は家族の機能を縮小させ,独居高齢者
割の喪失など役割の変化が女性と比較して生じやすいと考
および高齢者夫婦の世帯を増加させる24)。本調査結果は,
えられ,女性とは異なり,喪失感が関連因子となったと考
そのような高齢者をとりまく環境,とりわけ,地域社会か
える。さらに,喪失の体験と身体疾患との関連もいわれて
らの援助や参加が高齢者の抑うつの軽減に関与しているこ
25)
おり ,喪失経験があった場合,喪失感への対応がうまく
とを示唆している。わが国の高齢者対策は,地域社会での
いかなければ,身体疾患の発症も考えられる。喪失感の緩
密接な交流やそれを可能にする環境の整備の視点からも講
和や解消は,抑うつなど心理面だけでなく,身体的側面へ
じられる必要がある。
の影響も考えられることから,男性においては,喪失に対
する地域社会からの細やかな支援策が重要と考える。
Ⅴ.結 論
女性における抑うつの関連因子は,ソーシャル・サポー
本調査において,抑うつの平均点は,男性で2.1±2.1点,
トのほかに,社会参加(パス係数=−2.30)および主観的
64
女性で2.8±2.5点であり,本調査集団があまり抑うつを意
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
識していない集団であることを示していた。また,男女と
Ⅵ.謝 辞
もに抑うつの関連要因はソーシャル・サポートに対する意
本調査にご協力いただきました研究参加者の皆様に深く
識や満足の度合いであること,加えて,男性では喪失感が,
感謝申し上げます。
女性では主観的健康感,社会参加が直接関連していること
が示唆された。
要 旨
高齢者の抑うつの関連要因を明らかにすることを目的に,N 県 N 町の老人クラブの高齢者290名(男性:142名,
女性:148名,平均年齢:74.9±5.2歳)を調査した。Geriatric Depression Scale 短縮版(以下,GDS)の得点は,2.4
±2.3点(15点満点)であり,有意に女性の方が高い値であった(男性2.1±2.1点,女性2.8±2.5点)。GDS 得点
を従属変数とし男女別にパス図を検討した結果,男性では喪失感,ソーシャル・サポートの関連が,女性では,
社会参加,ソーシャル・サポート,主観的健康感の関連が示された。本調査結果は,抑うつの緩和にはソーシャ
ル・サポートが有効であることを示唆しており,高齢者が質の高い生活を送るためには地域社会からの細やかな
援助が重要であると考えられる。
Abstract
The purpose of this study was to examine the correlation between depression, social supports, and subjective health
and so on. Subjects were 290 elderly person(men: 142, woman: 148, average age: 74.9±5.2 years old), who belonged
to a seniors club. The face-to-face interviews were conducted by using the revised UCLA loneliness scale, Mini-Mental
state Examination, Duke social support inventory, and the Geriatric Depression Scale. Age, residence situation, volunteer
activities, and the leisure activity and subjective health and so on were also collected. The path analyses were conducted. The
score of GDS was 2.4±2.3(max: 15), and the woman was significantly higher than men(men: 2.1±2.1 vs. women: 2.8
±2.5). The relation between the feeling of loss and the social support was admitted in man’
s model(chi square =1.883,
p =0.966, RMR =0.014, GFI =0.997, and AGFI =0.979). The relation among social participation, social supports, and
subjective health was shown in woman’
s model(chi square =2.697, p =0.952, RMR =0.019, GFI =0.993, and AGFI =
0.949). Results showed that the social supports were significantly correlated to depression. It suggested that close helps from
community was important for the quality of life on the elderly.
文 献
1)内閣府:高齢社会白書(平成17年版), 13-14, ぎょうせい , 東
京 , 2005.
2)村岡義明 , 井原一成 , 他:うつ状態を呈する地域在宅高齢者の
身体状況について , 精神医学 , 39(3), 285-290, 1997.
3)井原一成:地域高齢者の抑うつ状態とその関連要因に関する
疫学的研究 , 日本公衆衛生雑誌 , 40(2), 85-94, 1993.
4)長田久雄,柴田 博,他:後期高齢者の抑うつ状態と関連す
る身体機能および生活活動能力 , 日本公衆衛生雑誌 , 42(10),
897-909, 1995.
5)池野多美子 , 長田久雄:高齢者のダム建設に伴う転居後の適
応−抑うつに関する要因について− , 老年社会科学 , 25(4),
440-449, 2004.
6)Celia F. Hybels, Dan G. Blazer 他 : Toward a Threshold for
Subthreshold Depression: An Analysis of Correlates of Depression
by Severity of Symptoms Using Data From an Elderly Community
Sample, The Gerontologist, 41(3), 357-365, 2001.
7)川本龍一 , 土井貴明 , 他:山間地域に在住する高齢者の抑
うつの状態と背景因子に関する研究 , 日本老年医学会雑誌 ,
36(10), 703-710, 1999.
8)山下一也 , 小林祥泰 , 他:老年期独居生活の抑うつ症状と主観
的幸福感について , 日本老年医学会雑誌 , 29(3), 179-184, 1992.
9)福田寿生 , 木田和幸,他:地方都市における65歳以上住民
の主観的幸福感と抑うつ状態について , 日本公衆衛生雑誌 ,
49(2), 97-105, 2002.
10)増地あゆみ , 岸 玲子:高齢者の抑うつとその関連要因につ
いての文献的考察 , 日本公衆衛生雑誌 , 48(6), 435-448, 2001.
11)小泉弥生 , 栗田主一 , 他:菟絲在住の高齢者におけるソーシャ
ルサポートと抑うつ症状の関連 , 41(4), 426-433, 2004.
12)青木邦男:在宅高齢者の孤独感とそれに関連する要因;地方
都市の調査研究から , 社会福祉学 , 42(1), 125-136, 2001.
13)古川秀敏 , 国武和子 , 野口房子:高齢者の抑うつ・孤独感の緩
和と地域社会との交流 , 老年社会科学 , 26(1), 85-91, 2004.
14)内閣府:高齢社会白書(平成17年版).171-184, ぎょうせい ,
東京 , 2005.
15)芳賀 博 , 島貫秀樹:沖縄の高齢者のライフスタイルと健康 ,
崎原盛造 , 芳賀 博(編)健康長寿の条件 元気な沖縄の高
齢者たち , 109-116, ワールドプランニング , 東京 , 2002.
16)古門義弘 , 稲永和豊 , 他:GDS 短縮版の妥当性について−一
般成人を対象として− , 筑水会神経情報研究所年報 , 11, 35-40,
1992.
17)工藤 力,西川正之:孤独感に関する研究(Ⅰ)−孤独感尺
度の信頼性・妥当性の検討−.実践社会心理学研究 , 22(2):
99-108(1983).
18)大塚俊男 , 本間 昭:高齢者のための知的機能検査の手引き ,
35-38, ワールドプランニング , 東京 , 2001.
19)髙橋龍太郎:精神機能評価法 うつ病のスクリーニング , 小
沢利男 , 江藤文雄 , 他(編)高齢者の生活機能評価ガイド ,
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
65
地域在住高齢者の抑うつの関連要因
43-50, 医歯薬出版 , 東京 , 1999.
20)葛谷雅文 , 益田雄一郎 , 他:在宅要介護高齢者の「うつ」発
症頻度ならびにその関連因子 , 日本老年医学会雑誌 , 43(4),
512-517, 2006.
21)Taizo Wada, Masayuki Ishine, 他 : Depression, activities of daily
living, and quality of life of community-dwelling elderly in three
Asian countries: Indonesia, Vietnam, and Japan, Archives of
Gerontology and Geriatrics, 41(3), 271-80, 2005.
22)豊田秀樹:共分散構造分析[入門編]−構造方程式モデリン
グ− , 170-188, 朝倉書店 , 東京 , 2004.
23)芝 敬一 , 市川隆一郎:行動異常を伴う老人への心理・社会
的対応 , 市川隆一郎 , 藤野信行(編)老年心理学 , 129-137, 診
66
断と治療社 , 東京 , 1997.
24)内閣府:高齢社会白書(平成18年版).23, ぎょうせい , 東京 ,
2005.
25)竹中星郎:高齢者の孤独と豊かさ , 69-70, 日本放送出版協会 ,
東京 , 2003.
26)出村慎一 , 松沢甚三郎 , 多田信彦他:地方都市在住の在宅高
齢者における抑うつと生活要因の関連 , 日本生理人類学会誌 ,
8(2), 45-49, 2003.
日本看護研究学会雑誌 Vol. 30 No. 4 2007
平成19年3月22日受 付
平成19年5月15日採用決定