2013年度 フィードバック制御 第6回資料 第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 6.1 フィードバック系の内部安定性 フィードバック制御 キーワード : 内部安定性,特性多項式 2013年度 後学期 担当教員: 藤田政之 教授 (S3-1016) 6.2 ナイキストの安定判別法 キーワード : ナイキストの安定判別法 第6回講義 11月14日(木) 9:45~12:15, S632 学習目標 :フィードバック制御系の内部安定性について 理解する.ナイキストの安定判別法を理解し, フィードバック制御系の安定性を判定できる 2 ようになる. y(s) 1 = u (s) s − 1 ⇒ ( s − 1) y ( s) = u ( s) 分母の次数が分子の次数より大きい d u K (s ) + − K (s ) :プロパー( | K (∞) |< ∞ ) + P(s) y s −1 1 1 = 1− , K (s) = s −1 s s P( s) K (s) = 安定? 3 外部から加わる信号 {r ( s), d ( s )} から各要素の 出力 {u ( s), y ( s )} への 4 つの伝達関数がすべて安定 G yr だけでは不十分 − P ( s) K ( s) 1 + P( s) K ( s) P( s) 1 + P( s) K (s) 初期値 y0 = 0 4 不安定 N K ( s) DK ( s) 既約 DP ( s ) N K ( s ) φ (s) Gud = − N P ( s) N K (s) φ (s) N P ( s) N K ( s) φ (s) G yd = N P ( s ) DK ( s ) φ (s) P( s) = N P ( s) , DP ( s ) Gur = G yr = K (s) = φ ( s) := DP ( s) DK (s) + N P (s) N K ( s) K (s) 1 + P( s) K ( s) 特性多項式 d r + − K ( s) u + + P( s ) [ 定理 ] (内部安定性の必要十分条件) y 特性多項式 P( s) K (s) G yr ( s) = 1 + P( s) K ( s) G yd ( s ) = 0 .5 y (s) = 内部安定性 Gud ( s ) = 初期値 y0 を考慮 1 1 s −1 1 ⋅ (r ( s ) − y ( s)) + y0 s −1 s s −1 s ( s + 1) y ( s) = r ( s) + y0 s −1 1 s y ( s) = r ( s) + y0 s +1 ( s + 1)( s − 1) 1 s −1 1 ⋅ = s −1 s s d = 0 のとき 1 1 P( s) K ( s) ⋅ r ( s) y(s) = ⋅ r ( s ) = s ⋅ r (s) = 1 s +1 1 + P( s) K ( s) 1+ s Gur ( s) = y& (t ) − y (t ) = u (t ) 初期値 y0 = 0.01 ( sy ( s) − y0 ) − y ( s) = u ( s ) 0 0 3 4 5 6 1 2 1 1 t y (s) = u ( s) + y0 s −1 s −1 図 6.2 ステップ応答例 s −1 u ( s ) = K ( s )(r ( s ) − y ( s )), K ( s ) = より s 図 6.1 フィードバック制御系 [ 例 6.1 ] 不安定な極零相殺 P(s) = r + 1.5 y (t ) 6.1 フィードバック系の内部安定性 P(s) :厳密にプロパー( P(∞) = 0 ) 2 P( s) = φ ( s ) := DP ( s ) DK ( s) + N P ( s) N K ( s ) = 0 のすべての根の実部が負 5 6 1 2013年度 フィードバック制御 第6回資料 [ 例 6.1 ] P(s) = N P ( s) DP ( s ) K ( s) = N K ( s) DK ( s ) [ 結果 1 ] P(s) と K(s) の間に不安定な極零相殺が存在するとき, フィードバック制御系は内部安定ではない. φ ( s) := DP ( s) DK ( s ) + N P ( s ) N K ( s ) P(s) = 1 s −1 K (s) = s −1 s [ 結果 2 ] φ (s ) = ( s − 1) ⋅ s + 1 ⋅ ( s − 1) = ( s − 1)( s + 1) = 0 P(s) と K(s) の間に不安定な極零相殺が存在しないとき, 以下の三つは等価である 不安定 G yr ( s ) = P(s) K (s) s −1 = 1 + P ( s ) K ( s ) ( s − 1)( s + 1) (a) フィードバック制御系が内部安定 (b) G yr (s ) が安定 不安定な極零相殺が生じている G yr ( s ) = P( s) K (s) 1 + P(s) K ( s) (c) 1 + P ( s ) K ( s ) の零点がすべて安定 7 [ 結果 2 ] (b) ⇔ (c) の証明* [ 結果 1 ] の証明 P(s) = 8 N P ( s) DP ( s ) K ( s) = Im N K ( s) DK ( s ) S (s) = s0 φ ( s) := DP ( s) DK ( s ) + N P ( s ) N K ( s ) O Re 1 とおくと 1 + P( s) K ( s) S ( s ) + G yr ( s ) = s = s0 (Re[ s0 ] ≥ 0) で K(s) の極と P(s) の零点が相殺したとする. 1 P(s) K (s) + = 1 が成り立つ. 1 + P( s) K ( s) 1 + P( s) K ( s) (b) ⇒ (c) 不安定 φ (s) 6章演習問題 [3] DK ( s 0 ) = N P ( s 0 ) = 0 G yr (s ) が安定 φ ( s0 ) = 0 (Re[ s0 ] ≥ 0) S ( s ) = 1 − G yr ( s) が安定 の根の一つであるである S0 の実部は負ではない 1 + P ( s ) K ( s ) の零点がすべて安定 9 [ 結果 2 ] (a) ⇔ (b) の証明* 6章演習問題 [3] (a) ⇒ (b) は明らか (b) ⇒ (a) 背理法 P(s) と K(s) の間に不安定な極零相殺が存在しないとき, N (s) N K (s) G yr ( s ) = P が安定で,内部安定ではない,と仮定 φ (s) P124 P( s) = s , K ( s ) = −1 s +1 d r + − u K ( s) + + y P( s ) 図 6.1 フィードバック制御系 Gur ( s ) = − s − 1, Gud ( s ) = −G yr ( s ) = G yd ( s ) = s プロパーではない Re[ s0 ] ≥ 0 に対して φ (s ) は ( s − s0 ) を因子に持つ Well-posed Gur ( s ), Gud ( s ), G yr ( s ), G yd ( s ) がすべて適切に定義され, かつプロパーになるとき,フィードバック系は well-posed である といわれる. G yr (s ) の分子も ( s − s0 ) でわり切れる DP ( s0 ) DK ( s0 ) = 0 N P ( s0 ) = 0 の場合 DP ( s0 ) ≠ 0 かつ,不安定な極零相殺がない DK ( s0 ) ≠ 0 DP ( s0 ) DK ( s0 ) = 0 に矛盾 N K ( s0 ) = 0 の場合も同様 10 Well-posed (ウェルポーズド) 内部安定ではない N P ( s0 ) N K ( s0 ) = 0 (c) ⇒(b) S (s ) の極がすべて安定 フィードバック制御系が内部安定ではない K(s) の零点と P(s) の極が相殺したときも同様. 逆も成立するので 必要十分条件 11 1 + P (∞ ) K (∞ ) ≠ 0 12 2 2013年度 フィードバック制御 第6回資料 ナイキストの安定判別法 6.2 ナイキストの安定判別法 [1] 目的 { p1 , p2 , L, pn }:開ループ系 P ( s ) K ( s ) の極 フィードバック系の内部安定性 {r1 , r2 , L, rn } :閉ループ系(制御系)の極 ⇔ 特性多項式 φ ( s) = 0 の根を求める 1 + P(s) K (s) = 1 + 因数分解などにより,直接計算する 実際的でない 還送差 = ラウス=フルビッツの安定判別法を適用する 高次系では手間がかかる D ( s ) DK ( s ) + N P ( s) N K ( s ) N P (s) N K (s) ⋅ = P DP ( s ) DK ( s ) DP ( s ) DK ( s) (閉ループ系の極) ( s − r1 )( s − r2 ) L ( s − rn ) = (開ループ系の極) ( s − p1 )( s − p2 ) L ( s − pn ) Π = ( { p1 , p2 ,L, pn } の中で)開ループ系の不安定極の数 開ループ伝達関数の周波数応答に 基づき図的に判別する 知っている Z = ( {r1 , r2 ,L , rn } の中で)閉ループ系の不安定極の数 知りたい 13 [2] 方法 複素数 s を決めると,対応 する複素数 w が定まる. 写像 w = 1 + P ( s ) K ( s ) 閉曲線 C (このなかにすべての不安定な極がある) s :(閉曲線 C に沿って) O → a → b → c → O と時計方向に 1 回転 Π = 閉曲線 C の内部にある開ループ系の極の数 このとき,対応する w が描く軌跡: Γ1 Z = 閉曲線 C の内部にある閉ループ系の極の数 a 14 N = Γ1 が原点を時計方向にまわる回転数 Im C Im Im 半径 R → ∞ b Re Γ1 : [1 + P ( s ) K ( s )]s =C C a O b Re Re O O c c 図 6.3(a) 右半平面全体を囲む閉曲線 C Z =N+Π Π :閉曲線 C の内部にある 開ループ系の極の数 Π :既知 N :図的に調べる Z :閉曲線 C の内部にある [3] 証明 w = 1 + P( s) K ( s) = n Z = 0 ならば安定 Im Im C b i =1 O Z ≠ 0 ならば不安定 i =1 o が C の内部にあるとき: 正味 1 回転 (−360 ) ri Γ1 (a) Re Re ( s − r1 )( s − r2 ) L ( s − rn ) ( s − p1 )( s − p2 ) L ( s − pn ) n r ri ベクトル ai まわる回転数 a 16 ∠w = ∑ ∠( s − ri ) − ∑ ∠( s − pi ) 閉ループ系の極の数 N : Γ1 が原点を時計方向に Z :知ることができる 図 6.3 閉曲線 C とその 1 + P( s ) K ( s ) による像 Γ1 15 Im r s ai が C の外部にあるとき: 正味の回転数は 0 Im (b) ∠( s − ri ) O O c 17 r ai C ri Re ∠( s − ri ) ri 図 6.4 ( s − ri )の偏角の変化 s O C Re 18 3 2013年度 フィードバック制御 第6回資料 n n i =1 i =1 [4] ベクトル軌跡の利用 ∠w = ∑ ∠( s − ri ) − ∑ ∠( s − pi ) v = P( s ) K ( s ) n ∑ ∠(s − r ) i =1 Γ1 Γ が点 (−1,0) を n ∑ ∠(s − p ) i i =1 の総変化量 = −360o × Π ∠w の総変化量 = −360 × ( Z − Π ) o Z =N+Π 20 [ステップ 3 ] 開ループ伝達関数 P( s ) K ( s ) の極の中で実部が正で あるものの個数を調べ,これを Π とする. Im Γ : [ P ( s ) K ( s )]s =C O O [ステップ 2 ] ナイキスト軌跡 Γ が点 (−1,0) のまわりを時計方向に まわる回数を調べ,これを N とする. 実軸に関して対称 半径 R → ∞ b Re Re [ステップ 1 ] 開ループ伝達関数のベクトル軌跡 P( jω ) K ( jω ) を, 角周波数 ω = 0 ~ +∞ の範囲で描く.さらにこれを実軸 に関して上下対称に描き,ナイキスト軌跡 Γ を得る. • C 上を c → O と動くとき,ベクトル軌跡と a Re ナイキストの安定判別法 の円周上を動くとき P (∞) K (∞) = 0 C Γ1 : [1 + P( s ) K ( s )]s =C 19 P( jω ) K ( jω ) (ω = 0 ~ +∞) に一致する Im Im O s : • C 上を O → a と動くとき,ベクトル軌跡 ∞ N 回まわる Γ : [ P( s ) K ( s )]s =C −1 ∴ N =Z−Π • 半径 Γ1 が原点を N 回まわる Im よって w = 1 + P( s) K ( s) Γ :ナイキスト軌跡 の総変化量 = −360o × Z i 右に 1 だけ移動 −1 [ステップ 4 ] 閉ループ系の不安定な極の数は Z = N + Π となる. したがって, Z = 0 ならばフィードバック制御系は安定, Z ≠ 0 ならば系は不安定である. Re O c 21 安定 ⇔ Z =0 ⇔ −N =Π 第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 ナイキスト軌跡が点 (−1,0) のまわりを反時計方向に 6.1 フィードバック系の内部安定性 まわる回数が, 開ループ伝達関数の不安定極の個数 キーワード : 内部安定性,特性多項式 に等しいならば,制御系は安定である. 6.2 ナイキストの安定判別法 ナイキストの安定判別法の利点 キーワード : ナイキストの安定判別法 • ループを閉じる前の開ループ伝達関数の周波数応答によって, 図的に制御系(閉ループ系)の安定性を判別できる • 計算の必要がなく,次数の高い系やむだ時間系にも容易に 適用できる • 実測データに基づいて判定できる • 直感的に分かりやすく,さらに安定余裕も調べられる 22 23 学習目標 :フィードバック制御系の内部安定性について 理解する.ナイキストの安定判別法を理解し, フィードバック制御系の安定性を判定できる 24 ようになる. 4 2013年度 フィードバック制御 第6回資料 第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 次回 6.2 ナイキストの安定判別法(予習:P110~) キーワード : 簡単化されたナイキストの安定判別法 6.3 ゲイン余裕,位相余裕(予習:P120~) キーワード : 位相交差周波数,ゲイン交差周波数, 位相余裕,ゲイン余裕 学習目標 : 簡単化されたナイキストの安定判別法に ついて理解する.安定性の程度を評価する. ゲイン余裕や位相余裕について理解する. 25 5
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