一山直美 インターネットセキュリティの基礎学習教材の開発 - 長崎大学

インターネットセキュリティの基礎学習教材の開発
101304 一山直美
1.はじめに
現在、パソコン・インターネットが広く普及
し、専門知識を持っていなくても、簡単にイ
ンターネットを利用することができる。平成
15 年の世帯でのパソコン普及率は 78.2%、イ
ンターネット普及率は 88.1%[1]であった。
しかし、インターネットセキュリティに関
する対策を何も行っていない利用者が、平成
15 年で 26.5%[1]を占める。また、平成 12
年に不正アクセス禁止法が施行されて以来、
不正アクセス禁止法違反事件の検挙件数の増
加が見られる[2]。
これらのことから、インターネットの利用
者が、インターネットセキュリティに関する
知識不足のために、インターネットに潜む危
険にさらされていると考えられる。
そこで、本研究では、初心者が安全にイン
ターネットを利用するために必要な、インタ
ーネットセキュリティの基礎を学ぶことので
きる Web コンテンツの開発を行った。
2.研究方法
2.1.コンテンツの開発目標
Web コンテンツを開発するに当たって、目
標としたのは以下の点である。
1. 段階的に知識を増やすことができる
2. インターネットセキュリティの必要性
を考えることができる
3. 図解を用い、初心者でも理解しやすい
2.2.コンテンツの内容
インターネットセキュリティに関する知識
を段階的に学ぶことができるように、コンテ
ンツの概要は、以下のように設定した。
1. インターネット上で起こりうる危険性
を学ぶ
2. 危険が生じる原因について学ぶ
3. 危険性に対する対策方法を学ぶ
これらを踏まえた上で、コンテンツの項目と
内容を設定し、コンテンツを開発した。
2.3.評価方法
Web コンテンツについてアンケート評価を
行った。対象は、長崎大学教育学部生 20 名(教
員養成課程 7 名、情報文化教育課程 13 名)で
あった。
アンケートは、Web コンテンツを見ながら
評価を記入するという形式をとった。アンケ
ートは、「内容のわかりやすさ」「文章の読み
やすさ」
「情報の量」
「図の有用性」
「実践でき
るか」
「コンテンツの有用性」に関する質問を
コンテンツの内容ごとに行い、計 82 問と、パ
ソコン・インターネットの使用頻度および使
用目的についての質問を計 6 問の、合計 88 問
行った。
自由記述以外の質問項目については、
「そう
思う」「だいたいそう思う」「あまりそう思わ
ない」
「そう思わない」の 4 件法で評価させた。
また、パソコン・インターネットの使用頻度
および使用目的についての質問は、あらかじ
め用意した回答からひとつ、もしくは複数選
択させた。
3.結果・考察
3.1.アンケートの結果
コンテンツの評価結果を図1に示す。コン
テンツの内容およびインターフェイスに関す
る評価は、評価基準の中央の値である 2.5 よ
りも高い評価を得ることができた。
コンテンツの有用性の評価結果を図2に示
す。コンテンツの有用性についても、評価基
準の中央の値である 2.5 よりも高い評価を得
ることができた。
また、被験者を教員養成課程と情報文化教
育課程とに分け、結果を比較した。その結果
を図3,4に示す。コンテンツ開発の目標で
ある「初心者が安全にインターンネットセキ
ュリティの基礎を学ぶことができる Web コン
テンツ」の開発を実現できているかという観
点から、質問項目のうち「実際に実践できる
と思った」という質問項目に対する回答結果
の比較を行った。また、
「内容のわかりやすさ」
についても比較を行い、内容が難しく、理解
できないから実践できないのか、内容が理解
できても、実践力の不足で実践できないと感
じているのか、という実践力と理解力との関
係を考察した。
その結果から、教員養成課程の被験者は、
3.6
情報量は適切だった
3.6
文章の読みやす さ
3.5
実際に実践できる
1
2
3
4
評価点
図1:コンテンツの評価結果
今後に役立つ 内容だった
3.9
このコンテンツを また利用したい
3.5
このコンテンツを人に勧めたい
3.6
1
2
3
4
評価点
図2:コンテンツの有用性
4
3.8
3.8
3.8 3. 73.6 3.3.9
9
3.3
評
価
点
3.5
3.3
3.2
0 2.9
3.3.0
2.7
3
2.7
2
無 線
無 線
無 線
の セ キ ュリ
テ ィ
N
A
L
の 導 入
教員養成課程
個 人 情 報
バ ック ア ッ プ
添 付 フ ァイ ル
セ キ ュリ テ ィ 対 策 ソ フ
ト ウ ェア
ソ フ ト ウ ェア の 更 新
1
4.まとめ
本研究では、インターネットセキュリティ
の初心者が、インターネットセキュリティに
ついて学ぶことのできる Web コンテンツを開
発し、できあがった Web コンテンツのインタ
ーフェイス評価を行った。その結果、コンテ
ンツ開発のうえでの目標と、4 件法の評価と
で高い評価を得ることができた。
今後の課題は、コンテンツを用いて学習す
ることにより、可能となる実践力の測定であ
る。
3.6
図の有用性
N
A
L
3.2.コンテンツの修正・改善
アンケート中の自由記述の評価結果から、
コンテンツの修正および改善を行った。
コンテンツの内容には、
「注釈の表示方法の
改善と注釈をつける単語の追加」
「太字・色つ
き文字を使用し文章にメリハリを持たせる」
「行間を広く取る」
「段落間にスペースを空け
る」
「図解に用いた図の改善と追加」を行った。
また、コンテンツ中の文章は短く簡潔にまと
めた。短く出来ない文章に関しては、読みや
すい表記方法へと改めた。
また、トップページにコンテンツの説明文
を追加し、目次項目の表記を追加・改善した。
3.7
内容のわかりやす さ
N
A
L
内容は理解できても、それを実践に移すこと
ができないと考えている、または実践するこ
とを苦手にしているのだと考えられる。また、
情報文化教育課程の被験者も、単純な作業で
あれば理解し実行することはできるが、複雑
な工程があると、理解し実行する必要性を感
じていながらも、実行に移したくないと考え
ているのではないかと考えられる。
情報文化教育課程
図3:教員養成課程と情報文化教育課程の
「実践できると思う」の結果比較
4
3.3.9
9
4.3.9
0
3.7 3.7
3.6
3.6
3.5
3.4
3.9
3. 6
3.6
3.0
3.3.0
0
3
評
価
点
2
無 線
の セキ ュ
リ テ ィ
N
A
L
の導 入
N
A
L
無 線
無 線
N
A
L
教員養成課程
個 人 情 報
バ ック ア ッ プ
添 付 フ ァイ ル
セ キ ュリ テ ィ 対 策 ソ
フ ト ウ ェア
参考文献
[1]総務省 情報通信政策局
「通信利用動向調査報告書 世帯編」
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/joho_
tsusin.html
[2]国家公安委員会
http://www.npsc.go.jp/
ソ フ ト ウ ェア の 更 新
1
情報文化教育課程
図4:教員養成課程と情報文化教育課程の
「内容のわかりやすさ」の結果比較