海洋国としての日本造船の可能性

「日本全体で協力して世界をリードする
ような情報発信をしていくことがこれ
からの日本の海事産業に求められること
ではないでしょうか」
民の充実した設備があり、一般の使用に供されて
います。欧州はそうしたシステムを収入につなげ
海洋国としての日本造船の可能性
ています。
――海洋資源開発も将来性のある造船の応用分野
日本は品質や燃費のよい船を造って競争力を保
でしょうか。
とうとしていますが、中国、韓国と同じ土俵で戦
中島■ 海洋事業で韓国に遅れを取っていると言
うだけでなく、ルールやシステム作りに取り組む
われていますが、
べきでしょう。
ます。日本は四方を海に囲まれ、領海と排他的経
――知識産業を育てるには人材が必要ですね。
済水域の広さは世界 6 位です。その点、韓国は海
中島■ ハンブルク等の海事展に行きますと、欧
洋国とはいえず、海洋構造物というハードを作る
州は昔より造船業の規模が縮小したにもかかわら
技術はありますが、そのマーケットは国内にあり
ず、出展企業は多く、若い人が多く参加し、活況
ません。
を呈しています。若い人がどんどん入ってくる産
民間だけで周辺海域の資源開発はできませんか
業でないと発展性はありません。
ら、国が探査船等技術に投資して可能性を拡大す
欧州には EU 全体で研究開発をするなど、知識
べきでしょう。建造の経験を通して技術を修得で
産業を育てる体制があります。造船業が衰退して
きます。もちろん、ブラジルでの海洋資源開発に
しまったような英国でもニューキャッスル大学な
取り組むことも意味はありますが、そこで採算が
どに造船工学科があり、世界中から学生を集めて
取れなくても止めずに、日本の海洋資源開発の技
います。日本も大学の造船科を残して、これから
術修得のために継続できるような支援が必要で
造船業を担う東南アジアの学生を集めてもよいの
しょう。
ではないでしょうか。そういう観点がないと造船
――造船所の海外生産、船会社の船舶管理拠点の
を支えてきた体制も縮小する一方です。
海外移転等により日本の海事クラスターが弱体化
――日本では環境等他の分野の中に造船工学科を
することへの懸念はありますか。
吸収してしまっていますね。
中島■ グローバルな市場でビジネスを展開する
中島■ 例えば造船学科で未来の船という夢のあ
ため、海事産業も海外に出て行くのは当然のこと
る研究に取り組めば、若い人は魅力を感じるので
でしょう。船会社はシンガポールで船の運航管理
はないでしょうか。従来の造船のイメージだけで
をしていますし、日本で外国人船員を雇用できま
はアピールしないでしょう。
せんから、
海外で船員を雇用管理するわけですね。
回できないことはないと思い
2013.7 KAIUN