命題 1. X を位相空間,{Kj}n j=1 を X のコンパクト部分集合の - Biglobe

n
j=1
命題 1. X を位相空間,{Kj }n
j=1 を X のコンパクト部分集合の列とする.K :=
Kj はまた
コンパクト部分集合となる.
Proof. K の任意の開被覆をとると,それらは各 Kj の開被覆にもなっている.したがってそれぞ
れ有限部分被覆がとれて,それらの合併は Kj が高々n 個しかないことから有限な K の開被覆を
与える.
命題 2. X をハウスドルフ空間,K = X をコンパクト部分集合とする.このとき K と X\K の任意
の元 x は開集合によって分離される.すなわちある開集合 U, V があって,K ⊂ U, x ∈ V, U ∩ V = ∅
となる.
Proof. ハウスドルフ性より K の任意の点 y と x は互いに交わらない開集合 Uy
離される.y ∈ K を任意に動かすと
有限部分被覆
n
k=1
Uyk
y と Vy
x で分
Uy はコンパクト集合 K の開被覆を与える.したがって
⊃ K をもつ.ここで U = nk=1 Uyk , V = nk=1 Vyk とおけば,明らかに
y∈K
U ∩ V = ∅ であり,x ∈ V より題意が従う.
命題 3. ハウスドルフ空間 X のコンパクト部分集合 K は閉集合である.
Proof. 前の命題より X\K の任意の点 x は K と交わらない開近傍 Ux をもつことがわかる.した
がって X\K =
x∈X\K
Ux は開集合である.よって K は閉集合である.
命題 4. コンパクト空間 X の閉集合 A は常にコンパクトである.
Proof. A の任意の開被覆
λ∈Λ Gλ
に対して,(X\A) ∪
パクトゆえ,有限部分被覆 (X\A) ∪
き
m
j=1
m
j=1
λ∈Λ Gλ
は X の開被覆である.X はコン
Gj がある.ただし (X\A) は不要なこともある.このと
Gj は明らかに A の開被覆になっているので,A もコンパクトである.
命題 5. X をハウスドルフ空間,{Kλ }λ∈Λ を X のコンパクト部分集合からなる族とする.
∅ ならば {Kλ }λ∈Λ の有限個の族
{Kj }nj=1
で
n
j=1
Kj = ∅ となるものが存在する.
λ∈Λ
Kλ =
Proof. Vλ = Kλc とする.これらは前の命題よりすべて開集合.また K1 を 1 つとっておく.仮定
から K1 の元で残りすべての Kλ に属するようなものは存在しない.したがって K1 の任意の元は
ある Kλ の補集合 Vλ に含まれるので,
覆がとれて,
n
j=1
λ∈Λ Kλ は K1 の開被覆を与える.したがって有限部分被
n
Vj ⊃ K1 となる.これから K1 ∩ j=1 Kj = ∅ となるから題意が従う.
定義 1. 位相空間 X が局所コンパクトであるとは,X の各点が相対コンパクト (閉包がコンパク
トになる) な開近傍を持つことである.
命題 6. (X, O) を局所コンパクトハウスドルフ空間とする.コンパクト集合 K と開集合 O が K ⊂ O
を満たすとする.このとき X の相対コンパクトな開集合 U が存在して,K ⊂ U ⊂ U ⊂ O が成り
立つ.
Proof. K の任意の点 y は相対コンパクトな近傍 Vy をもつ. y∈K Vy は K の開被覆で,K のコン
n
n
パクト性より有限部分被覆 V := j=1 Vj が取れる.V = j=1 Vj はコンパクト集合の合併なので
コンパクト.O = X なら U = V とおけばよいから,以下 O = X とする.Oc = C とおくと命題
3 より任意の p ∈ C に対してある開集合 Wp , Up が存在して,K ⊂ Wp , p ∈ Up , Wp ∩ Up = ∅ とな
る.したがって Wp ⊂ Upc であり,Upc は閉集合であるから Wp ⊂ Upc も成り立つ.よって p ∈ Wp
である.さて C ∩ V ∩ Wp はコンパクト集合 V の閉部分集合であるから命題 5 よりコンパクト集
合.また p ∈ Wp であるから
p∈C (C
∩ V ∩ Wp ) = ∅ となる.これより命題 6 を用いて有限個の
1
{Wj }m
i=1 で
m
i=1 (C
∩ V ∩ Wi ) = ∅ となるものが取れる.ここで U = V ∩ W1 ∩ · · · ∩ Wm とおく
と,U = V ∩ W 1 ∩ · · · ∩ W m はコンパクト集合で C ∩ V = ∅ より V ⊂ O を満たす.
定義 2. 位相空間 X 上の実数値 (または複素数値) 連続関数 f の台 supp(f ) とは {x ∈ X; f (x) = 0}
のことである.X 上の実数値 (または複素数値) 連続関数で台がコンパクトなもの全体を Cc (X) と
かく.
定義 3. 位相空間 X 上の実数値関数 f が上半連続であるとは,任意の実数 α に対して,{x ∈
X; f (x) < α} が開集合になることである.また f が下半連続であるとは,任意の実数 α に対して,
{x ∈ X; f (x) > α} が開集合になることである.
命題 7. X を位相空間とする.以下が成り立つ.
(1) {fλ }λ∈Λ を X 上の実数値関数の族とする.fλ がすべて上半連続であれば,inf λ∈Λ fr も上半連
続である.また fλ がすべて下半連続であれば,supλ∈Λ fr も下半連続である.
(2) f を X 上の実数値関数で,上半連続でも下半連続でもあるとする.このとき f は X 上の実数
値連続関数である.
Proof. (1) fλ をすべて上半連続とする.f (x) = inf λ∈Λ fλ (x) とおく.このとき任意の実数 α に
対して {x; f (x) < α} =
λ∈Λ {x; fλ (x)
< α} となることが言えれば,右辺の合併でそれぞれが
開集合であることから左辺も開集合になる.x ∈ λ∈Λ {x; fλ (x) < α} とするとある λ について
f (x) ≤ fλ (x) < α となる.逆に x ∈ {x; f (x) < α} とすると f は fλ たちの inf だから,ある
λ があって x ∈ {x; fλ (x) < α} である.よってこれらの集合は等しいことがわかり,f は上半連
続である.fλ がすべて下半連続のときは,f (x) = supλ∈Λ fλ (x) とおくと,まったく同様にして
{x; f (x) > α} =
λ∈Λ {x; fλ (x)
> α} が任意の実数 α で成り立つ.よってこのとき f は下半連続
となる.
(2) f (x) の任意の近傍 U をとる.このとき U の中に x を含む開区間を取ることが出来る.それを
V := (α, β) x とおく.このとき f −1 (V ) = {x; f (x) > α} ∩ {x; f (x) < β} だからこれは開集合.
よって f −1 (U ) ⊃ f −1 (V ) は x の近傍である.従って f は連続.
命題 8 (Urysohn の補題). (X, O) を局所コンパクトハウスドルフ空間とする.X のコンパクト
集合 K と開集合 O が K ⊂ O を満たすとする.このときある f ∈ Cc (X) が存在して,f (x) =
1 (∀x ∈ K), supp(f ) ⊂ O が成り立つ.
Proof. r0 = 0, r1 = 1, ri (i ≥ 2) を区間 (0, 1) の有理数の列とし,D = {ri }∞
i=0 とおく.このとき X
の開集合系 {G(ri ) : ri ∈ D}∞
i=0 を次のように構成する.まず X のコンパクト集合 F と開集合 G
で F ⊂ G となるものの組を (F, G) と書き,このような組 (F, G) の全体からなる集合を Λ とする.
X は局所コンパクトハウスドルフ空間なので,命題 8 より相対コンパクトな開集合 U が存在して,
F ⊂ U ⊂ U ⊂ G となる.従って任意の (F, G) ∈ Λ に対して,O(F,G) = {O ∈ O : F ⊂ O, O ⊂
G, O はコンパクト } は空ではない.従って選択公理を仮定すれば,集合系 {O(F,G) : (F, G) ∈ Λ}
に対する選択関数が少なくともひとつは存在するので,それを Φ : Λ → O とおこう.すなわち
(F, G) ∈ Λ を任意にとるとき,O = Φ((F, G)) は F ⊂ O ⊂ O ⊂ G を満たす相対コンパクトな
開集合である.これを用いて G(r0 ) = Φ((K, O)), G(r1 ) = Φ(K, G(r0 )) と定義する.以下帰納的
に n ≥ 1 として 0 ≤ i ≤ n を満たす i について G(ri ) が定まっているとき,rn+1 より小さい最大
の元を rs , rn+1 より大きい最小の元を rt として(r0 = 0, r1 = 1 だからこれらは必ず存在する)
G(rn+1 ) = Φ((G(rt ), G(rs )) と定義する.作り方から特に ri < rj ならば G(rj ) ⊂ G(ri ) が成り立
2
つ.さて s, r ∈ D に対して X 上の実数値関数 fr , gs を次で定義する.
fr (x) =
r
(x ∈ G(r))
,
0 (x ∈ G(r))
gs (x) =
1 (x ∈ G(s))
s
(x ∈ G(s))
さらに
f (x) = sup fr ,
g(x) = inf gs
s∈D
r∈D
とおく.いま α ≥ r とすると {x ∈ X; fr (x) > α} = ∅ である.また r > α ≥ 0 なら {x ∈ X; fr (x) >
α} = Vr , α > 0 なら {x ∈ X; fr (x) > α} = X となりこれらはすべて開集合.よって fr はすべ
て下半連続で,命題 9(1) より f も下半連続.同様に α > 1 とすると {x ∈ X; gs (x) < α} = X,
c
1 ≥ α > s なら {x ∈ X; gs (x) < α} = Vs , s ≥ α なら {x ∈ X; gs (x) < α} = ∅ だからこ
れらもすべて開集合.よって gs はいずれも上半連続で,命題 9(1) より g も上半連続.さらに実
は f = g となることを示そう.そのために fr (x) > gs (x) とおいてみる.このとき fr , gs の定義
から x ∈ G(r), x ∈ G(s), r > s でなくてはならない.ところが G(r) の定義から r > s ならば
G(r) ⊂ G(r) ⊂ G(s) ⊂ G(s) である.よって fr (x) > gs (x) を満たすような x は存在しないことが
わかる.従って fr (x) ≤ gs (x) が任意の r, s ∈ D で成立する.両辺に supr∈D と inf s∈D を順次とっ
て f (x) ≤ g(x) を得る.ここで f (x) < g(x) をみたす x が存在したと仮定しよう.このときある
r ∈ D が存在して f (x) < r < s < g(x) となる(有理数の稠密性)ことがわかる.もし x ∈ Vr とす
れば r = fr (x) ≤ f (x) なのだからこれは矛盾である.よって x ∈ G(r) となる.同様に x ∈ G(s)
を仮定すると s = gs (x) ≥ g(x) となりやはり矛盾するので x ∈ G(s) である.ところが r < s のと
きは G(s) ⊂ G(r) であったから,このような x は存在しなかったことになる.よって任意の x ∈ X
で f (x) = g(x) である.これから f は上半連続かつ下半連続で,命題 9(2) より特に連続.定義から
0 ≤ f (x) ≤ 1 は明らか.さらに K ⊂ G(r1 ) = G(1) だから f (x) = 1 (∀x ∈ K) であり,G ⊂ G(0)
より supp(f ) ⊂ O である.supp(f ) はコンパクト集合 G(0) の閉集合なので特にコンパクトである.
したがって f が題意の条件を満たす X 上の連続関数であることがわかった.
命題 9 (Tietze の拡張定理). X を正規空間とし,A を X の閉集合とすれば,A 上の任意の実連
続関数は X 上の実連続関数に拡張できる.
注.Heinrich Franz Friedrich Tietze (1880-1964) ティーツェ.
Proof. 【Step1】任意の連続関数 f : A → [−1, 1] が連続関数 h : X → [−1, 1] に拡張可能な
ことを示す.まず整数 m を任意に与える.任意の連続関数 A → [−m, m] に対して,連続関数
m
v : X → [− m
3, 3]で
2m
(a ∈ A)
3
を満たすものが存在する.まずこのことを証明しよう.
|u(a) − v(a)| ≤
E = {a ∈ A|u(a) ≥
m
},
3
F = {a ∈ A|u(a) ≤ −
m
}
3
とおけば E ∩ F = ∅ であり,E, F はともに X の閉集合である.よって Uryzohn の補題より連続
m
関数 v : X → [− m
3 , 3 ] で v(E) =
このような v に対して常に
m
3
かつ v(F ) = − m
となるものが存在することがわかり,
3
|u(a) − v(a)| ≤
3
2m
3
(a ∈ A)
が成り立つ.さらに連続関数 f : A → [−1, 1] を考えよう.先ほど示したことにより,連続関数
g1 : X → [− 31 , 13 ] で
|f (a) − g1 (a)| ≤
2
3
(a ∈ A)
となるものが存在する.そのような g1 を一つ選んで,連続関数 f1 : A → [− 23 , 23 ] で
f1 (a) = f (a) − g1 (a)
(a ∈ A)
によって定義する.次に連続関数 f1 に対して先ほど示したことを再び用いて,連続関数 g2 : X →
[− 29 , 29 ] で
|f1 (a) − g2 (a)| ≤
4
9
(a ∈ A)
となるものが一つ選べる.さらに連続関数 f2 : A → [− 49 , 49 ] で
f2 (a) = f1 (a) − g2 (a)
(a ∈ A)
で定義する.以下帰納法 (もしくは加算選択公理) を用いて連続関数の列
gn : X → [−
2n−1 2n−1
2n−1 2n−1
,
],
f
:
X
→
[−
, n ] (n = 1, 2, 3, · · ·)
n
3n
3n
3n
3
で
fn+1 (a) = fn (a) − gn+1 (a)
(a ∈ A)
を満たすものが存在する.なお各 n についてそのような関数が存在することには選択公理は必要
ないが,すべての自然数 n に対して上記の fn , gn を一斉に定めるためには選択公理が必要.さて,
各自然数 n に対して X 上の実連続関数 ϕn を
ϕn = g1 + g2 + · · · + gn
によって定義する.X の各点 x と自然数 n, m(n ≤ m) に対して
|ϕn (x)| ≤ 1 −
2
3
n
,
|ϕn (x) − ϕm (x)| ≤
2
3
n
が成り立つ.よって関数列 {ϕn }∞
n=1 は一様 Cauchy 列である.したがってその極限関数 h が存在
する.h は X から閉区間 [−1, 1] への連続関数であり,A の各点 a に対して
f (a) − h(a) = f (a) − lim ϕn (a) = lim (f (a) − ϕn (a)) = lim fn (a) = 0
n→∞
n→∞
n→∞
が成り立つので,連続関数 h : X → [−1, 1] は最初に与えられた連続関数 f : A → [−1, 1] の拡張で
ある.
【Step2】写像 ψ : R → (−1, 1) を
ψ(t) =
t
1 + |t|
(t ∈ R)
で定義する.ψ は R から (−1, 1) への同窓写像である.任意に与えられた実連続関数 f : A → R に
対して,合成写像 ψ ◦ f を考えよう.この連続関数 ψ ◦ f に対して Step1 で示したように,連続関
数 h : X → [−1, 1] で
h(a) = ψ(f (a))
4
(a ∈ A)
を満たすものが存在する.ここで
B = {x ∈ X : |h(x) = 1}
とおけば,B は X の閉集合であり A と交わらない.よって Uryzohn の補題から,連続関数 k :
X → [0, 1] で k(A) = {1} かつ k(B) = {0} となるものが存在する.そこで
h1 (x) = h(x) · k(x) (x ∈ X)
とおけば,h1 (x) は X から開区間 (−1, 1) への連続関数であり,
h1 (a) = ψ(h(a))
(a ∈ A)
を満足することがわかる.さらに g = ψ −1 ◦ f1 とおけば,g は X 上の実連続関数であり,A の各
点 a に対して
g(a) = ψ −1 (h1 (a)) = f (a)
となる.すなわち,g は A 上の実連続関数 f の X への拡張である.
参考文献:内田伏一,集合と位相,裳華房,1986
5