岡山大学環境理_ L学部研究報 告 第 2巻,第 1号 , pp. 1 3 ト1 3 5 ,1 9 9 7 年 1月 300℃ の高圧水蒸気 中における石英 ガラスの腐食挙動 小 田耕平* 、高田勝美* 、吉尾哲夫*辛 Corrosi onBehavi orofSi l i caGl assi nHi ghPr essur eW at erVaporat300℃ K.Oda' ,K Takat a+ ,T.Yoshi o" ( Re c e i v e dOc t o be r2 9.1 9 9 6) Cor r os i onbehavi orofsi l i cagl as swa si nve s t i ga t e di nhi ghpr e s s ur ewa t erva pora ndwat er i nearwe i ghtl ossi nwa t erva pora ndapar abol i cwe i ghtl ossi nwat erwe r e at300℃.A l .Thef r a ct ur e obs er ved.Thewei ghtl os sf ort hef or merwa sl ar gert ha nt ha tf ort hel at er s t r e ngt hoft hecor r o de dsi l i cagl as si nc r e a s e dwi t ht hec o nt e ntofmol e cul arwa t eri nt he gl a ss.Thes t r e ngt hr educ t i onwa sobs er vedf ort hec or r odedsi l i cagl assa f t erde hydr a t i on or1da y. at400℃ f I R,Fract ur es t r e ng t h,Hydr ot her ma lt r ea t n l e nt ,De hydr a t i on Ke ywor ds:Aut oc l ave.FT- 1.緒 言 構造用セラミ ックスは、優 れた熱的 ・機械 的性質を有するこ とか ら、 苛酷環境下 における金 属材料 に替わる省 エネルギー ・省資源 型の構造材 料 として期 待 されている。蒸気 タービン、地 熱発電、軽水型 原子炉の冷却器等 において耐 食 ・耐摩耗性が要 求 されるメカニカル シール、 ポ ンプや伝熱機器 な どへの適用 に際 して は、その基 本的環境で ある高温 高圧の水や水蒸気存在 下 での材料 の腐食が重要 な課題 となっている。我々 は、構造用 セラミックスの高温 高圧水下にお ける腐 食 と環境 強度に関する研究 を行 ってい る [1] 。非酸化 物 セラミ ックスであ る窒化 ケ イ 素は、高温高圧水 中での酸化反応 によりsi 02が生成 し液中に溶出する腐食 [2]が、酸化物セラ ミックスであるムライ トではsi 02 の溶出 とAI OOHが生成する腐食 [3]が進行 し、いずれ も腐食 による強度劣化 が認め られることが明 らか となって きている 一方、熱水 と共存す る水蒸気 中 におけ る構造用セ ラミックスの腐食 に関する研究例 は極 めて少 ないの が現状 であ る。わずか に 窒化 ケ イ素やム ライ トセ ラミックスの水蒸気 腐食 に関する研究 [4] はあるが、その腐食挙動 の詳細 については不明な点が多い。 これ らのセラミックスに共通する成 分 としてのSi 02の高温高 圧の水 蒸気中での腐食 に関 しては、石英 ガラスの飽和 水蒸気処 理 に関す る研究 [5]が友沢 ら によって行われて いるが、処理温度、 充填率 などの実験条件 が異 なるため直接の比較検討が 困 難である。そこで本研究では、窒化 ケイ素やムライ トの300℃の水蒸気 中で の腐食挙動 を検討す るための基礎 的知見を得るため、Si 02の単成分か らなる石英 ガラスの 300℃の水蒸 気 中における 腐食試験 を行い、腐食反応機構 の解明及び腐食 による環境強度の検討 を行 った。 。 *米子工業高等専 門学校物 質工学科 、683米子市彦名町 4448 **岡山大学環境理工学部環境物 質工学科 、700 岡山市津 島中 211 * De pa r t me n to fMa t e r i lsSc a i e n c e , Yo na g oNa t i o na lCo l l e g eo fTe c hn o l o g y,4448,Hi ko na c h o , Yo na g os hi683, ** De pa r t me n to fEn vi r o nme n t a lCh e is m t r ya ndMa t e r i a l s , Fa c ul t yo fEnvi r o nme n t a lS c i e n c ea ndTe c hno l o gy, Oka ya maUni ve r s i t y,211, Ts u s hi ma Na ka , Oka ya ma s hi700 1 3 1 岡山大学環境 理工学 部研 究報告 . 2 ( 1) 1 9 9 7 年 1 3 2 2.実験 方法 2. 1 試料 試料 としてJ I S I R1601に準拠 して 曲げ強度試験用 に鏡面研磨 された2×4×3 7mmの市販 の石英 ガラスを用いた。試料の特性値 を表 1に示す。 2. 2 腐 食試験 Tabl e1 Chara ct er i st i c soft hesampl e 試料 をアセ トン中で超音波洗浄 し乾燥放 冷後、精密天秤で重量 を精秤 した。腐食試 験 中、試料が常 に水蒸気 に接 して水 には接 しない ようにTi 製オー トクレーブ内のテフ ロン製支持台に試料 を設置 した。蒸留水の 体積 とオー トクレーブ内の空隙容積の比 ( 充填率)を10、50% として、300℃、110日間の水蒸気腐食試験 を行 った。 また、充填率 を50% とした300℃の高温高圧水 中での腐食 試験 も行 った。それぞれの実験 は各 3回ずつ行い、その平均値 を用いた 。 2. 3 評価 腐食試験後、試料 を乾燥後、デ シケーター 中で放冷 し重量 を測定 した。腐食前後 での試料 の 単位面積当 りの重 量変化 を腐食減量の実測値 △W /A。 b s( 以下、 △W 。 b S ) とした。腐食試験後の溶 液中のSi 濃 度をI CPAESによ り測定 し、次式 か ら腐食 減量の計 算値 △W/ Ant( 以 下、 △W n l )を 求めた。 △W/Ac。=M( Si O2) /M( Si ) ×CX 1 00/ 1000/A c :溶液中のSi 濃度( 〝g/ml ) 、 M( Si ):Si の原子量 M( Si O 2): S i 02の式量 、A :試料の幾何学的表面積 ( cm2) 腐食試験後、試料のXRD測定 と試料のFTI R測定 を行 った。オー トグラフを用いて各腐食条件 毎に試料 3本の室温での4点曲げ強度 をJI SR1 601に準拠 して測定 した。 3.結 果及 び考 察 5 t l 一 0 l uO l き qS! 2 l 腐食前後 での重量 変化 か ら求 めた重量 変化 b s と時間の関係 を図 1に示す。図 の実測値 △W 。 CP分析 による溶出液のS i 濃 度か ら求 1には、 I め た腐 食 減量の計算値 △ walも合 わせて示 し た。いずれ の試 料 も腐食 に より減量 を示 し、 水 蒸気 中で は腐 食減量 は時 間 と共 に直線 的に 増加 し、水 中では放物線的 に増 加す る傾 向 を 示 した。水蒸気 中で は充填 率が大 きい方 が腐 食 速度 が大 きくな り、充填 率が 同条 件で は水 蒸 気 中 の方 が水 中 よ りも腐 食 速 度 が大 き く なった。 △W 。 b s と△wn , がほぼ一致 してい るこ とか ら、腐 食減量 はsi 02の減量 に起因 している ことが分かった。 腐食 後の試料 表面のXRD回折の結果 か ら、 (N u3 /S J)SS 3. 1 重 量 変化 と時 間の 関係 01 2 3 4 5 6 7 8 91 011 Ti me ( da y) Fi g .1We i g htl o s sf o rt hes a mpl et r e a t e di n wa t e rva po ra ndwa t e ra saf unc t i o no ft i me 1 3 3 小 田 排1' ら /水蒸気 中 におけるf]笑ガラ スの腐 允挙動 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91 011 Si O2( S ) +H20( 1 )ご H2 Si O。 Ti me( da y) H2Si O3ご H++HSi O3 一 同 じ充填率の場合、水蒸気 は水 より分子運動 が盛 んなため水蒸気 中の方が水 中 よりも腐食速 度が大 きくなると考 え られる。 さらに、水蒸気 中で は生 成す る気 相の Si C OH) 4は速や かに拡散 し水 中に溶解 するのに対 し、水 中ではH20また O3の拡散が律速 となって くる。水蒸気 中 はHSi では腐 食反応が直線別 に従 っていることか ら、 反応速度定数 を直線 の傾 きより求めた。反応速 30mg/c m2 ・d、 50% 度定数 は充填率 10% では0. 0 。 5 Z! T t ! 放物線 的 な減量 傾向 を示 す水 中での腐食 反応 は、石 英 と水の 反応 [7]と同様 に試料 と水 の反 応 に より生成 す る ケイ酸 イオ ン ( HSi O。 ) が 溶出 する以下 の反 応 で進行 してい ると考 え られる 1 5 o 二鳥 !aLILpa ul ON Si O2 ( S ) +H20( g)ご Si ( OH) 4 ( g) ( N uU \ 叫u) ss 非 晶質特有 のブ ロー ドな回折 を示 した こ とか ら試料 表面 に結 晶性 の物 質 は生 成 しない こと が分 かった。直線 的 な減量 傾向 を示 す水 蒸気 中での腐食 反応 は、 反応生 成物 の化 学種 の分 析 を行 って い ない た め 明 らか で は ない が 、 ch e喝 らの 高圧 下 で の石 英 と水蒸 気 の 反 応 [ 6]にお いて気相 生成 物で あるsi( OH) 4 由) が生 成 する ことか ら、本 実験 の高温 高圧 水蒸 気下 におい て も、以 下 に示す 反 応で進行 して い る と考 え られる。 Fi g.2 No r ma li z e dwe i ll g tl o s sf o rSi 3 N4C e r a ic m s , Si O2g l a s s ,a ndmul l i t ec e r a mi c st r e a t e di n wa t e rva po ra ndwa t e ra saf unc t i o noft i me (. n' t I )音 では1. 45m, g/c m2 ・dとな り、充填 率 に よる反応 速度- の影響 が認め られた。Che喝 らは石 英 と 水蒸気 の反応 において水蒸気分圧が影響 する と 報告 している [ 6]が、本実験 ではオー トク レ ーブ内 の圧 力が測定 で きなか ったた め水 蒸気 分圧 の影響 について言及 はで きない。 また、空 気の水への溶解 など共存 す る空気 の影響 も考 え られ る た め、今 後 さ らに検 討 す る必 要 が あ る 図 2にすでに報告 [4]した窒化 ケイ素、 ム ライ ト (3A1 203 ・2Si O2) の 300℃ の水 蒸 気 中及 び水 中での腐食減量 と時間の関係 を示す。腐食 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91 011 減量の億 はSi O。 の重量 分率で割 り規格化 した。 Ti me ( da y) 窒化 ケイ素やムライ トも石英 ガラス と同様 に腐 食 により減量 を示 し、水蒸気 中では重量変化が g.3Thei nt e ns i t yf o ra bs o r ba nc epe a kofH20f or 直線別 に従 い、水 中では放 物線 別 に従 ってい Fi S i O 2 g l a s s t r e a t e di nw a t e r v a p o r る。 また、充填率が同条件 では水蒸気 中の方が S U a )U I 。 1 3 4 岡 山大学環境 理工学 部研 究報告 . 2( 1 ) 1 9 9 7年 0 n U つ J 水中 よりも腐 食速度が大 きくなっている。腐食 生成物 などの二時的な影響が少 ない腐食初期段 階 にお いて、腐 食減量がいずれ の結 果 もほぼ i 02の腐 食反 同 じであ ることか ら、腐食速度 はs 応速度により決定 されるが分かった。 3. 2 腐 食 後 の試料 のFTI R測 定 I Rを用 いて 試料 中-の水の侵入 についてFT検討 を行 った。未処理 の試料 には3670cmー1付 S i OH) 基に よるOHの吸収のみ 近にシラノール ( 0の存 在 は認め られなか った。 しか し、腐 でH2 2 0の吸収が認 食後の試料 には3400cm 1付近 にH め られた。 この結果 は、友沢 らの 250℃の飽和 水蒸気処 理 した石英 ガ ラス試料 にH。 0が存在 し ている とす る報告 [5] と同 じであ った。各 腐食条件においてFTI Rスペク トルの3400c m1 付 近の水の吸収 ピー クの面積強度 を とり、面 0 1 2 3 4 5 6 7 8 91 011 積 強度 と腐 食時 間の 関係 を調べ た結 果 を図 3 に示す。試料中の水 の量 はいず れの腐食 条件 Ti me ( da y) で も腐食 時間 と共 に増 加 し、そ の後飽和 する 傾向 を示 した。 F i 苦l4 Fl e xur a ls t r e n g t hf ort h es a mpl et r e a t e di n 3. 3 腐 食 に よる強度変化 wa t e rva po ra ndwa t e ra saf unc t i o no ft i me 腐食後の試料の 4点曲げ強度測定の結果 を図 4に示す。 腐食後の強度はいずれ も腐食 の進 行 に伴 い上昇 し、 その後飽和 する傾 向を示 し I Rで のガ た( )各腐食条件 において、前述のFTラス中の水の量 と強度上昇の傾向 とよく対応 し ていることか ら、試料中-の水の侵入 によりガ ラスの粘性が低下するため試料表面の亀裂の鈍 化 あ る い は微細 な組 織 での塑 性 変 形 が起 こ り、破壊靭性が向上 した もの と考 えられる 強度変化について さらに検討するため、 300 ℃、 4 日間水蒸 気処 理 した試料 を、400℃ 、 1 日間熱処理 して試料 中の水 を脱水 し強度 を測定 した結 果 を図 5に示 す。 また、 脱水前後 での FTI Rスペ ク トルを図 6に示 す。脱水 後の強度 は、脱水前の強度上昇 に比べ約半分程度 となっ I Rスペ ク トルか ら、脱水 た。脱水前後でのFT後の試料 中の水 は、かな り減少 しているが、未 処理の試料 と比較すると幾分水の吸収が認め ら 01 2 3 4 5 6 7 8 9 loll れた。一 方、友沢 らは250℃で水蒸気処 理 した Ti me( da y) 試料 をさらに250℃で 5時間脱水 して、その強 度 を測定 してお り、強度の低下が認め られない ことを報告 している ガラス中の水 は、加熱 に Fi g.5 Fl e xur ls a t r e n g t hf o rt hes a mpl et r e a t e di n より600℃ くらいまで脱水が続 くといわれてい wa t e rva po ra ndt he nhe a t e d400℃ f or24hr 0 0 2 0 5 日H H H 0 0 ︻= ( t Z d∑)qT 的u3 1 7 ST 。 J n X a l d 。 0 5 つ ⊥ a T t ! J nXa T J (t ! d∑ ) qt仙u J t S 。 1 3 5 ( t t L t ) ! 3 3 u t ! q 1 0 S ・ qV 40 00 Wa ve numbe r ( c m1 ) Fi g. 6 FTt I Rs p e c t r af o rt hes a mpl et r e a t e di nwa t e rva po ra ndt he nhe a t e d400℃ f or24hr ることか ら、幾分 かの水 の残存 してい るため強度 が低下 しないのであ ろう。本実験 での脱水 前 後での試料の重量変化率 は約 8%で、かな りの水が ガラス中に存在 していた こ とか らも、強度 上昇 には水 が関与 していると考 え られる 。 4.. 結論 石英 ガラスを用いて300℃の水蒸気 中及 び水 中における腐食試験 を行い、以下の結論 を得た。 1)石英 ガラスの腐食 反応 は水 蒸気 中で は表面化 学反 応律 速で、水 中で は拡散律 速で進行 し た。 2) 同 じ充填率の場合、水蒸気腐食の方が水熱腐食 よりも腐食速度が大 きくなった。 3)腐 食後の試料 の強度の上昇 は、試 料 中への水 の拡散 によるガラス の粘性の低 下が原因で あ ると考 えられた。 5.参考文 献 [1 ]吉尾哲夫, 「 金属」 臨時増刊号 ,塁, 3954( 1993) [2]T.Yoshi oa nd冗. Oda ," Ce r a mi cTr a n s a c t i o ns ' ' , 旦 9, 367386( 1990) [3]吉尾,小田,末益,河野,日本セラミックス協会学術論文誌、1 99,668674 ( 1992) [4]末益猛、岡山大学工学研究科修士学位論文( 1991) [5]H.LiandM.Tomozawa, J .NonCr ys t .Sol i ds, _ 1 3 & 287292( 1994) [6]M.ChengandI.Cut l er , J .Ar n.Cer am.So c. ._ 6 1 593596( 1979)
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