流動誘起型液晶圧電デバイスに関する 基礎研究 - 高知工科大学

平成17年度
修士論文
流動誘起型液晶圧電デバイスに関する
基礎研究
高知工科大学大学院
工学研究科
基盤工学専攻
知能機械システム工学コース
知能流体力学研究室
前田昭廣
-1-
目次
第1章
緒言
1・1
1・2
1・3
1・4
1・5
1・6
第2章
本研究の概要
研究の目的および背景
液晶
ネマティック液晶
表面束縛(Surface Anchoring)
フレクソエレクトリック効果
タンブリング液晶を用いた計算
2・1
座標系及び基礎方程式
2・1・1
2・1・2
2・1・3
2・2 数値計算
2・2・1
2・2・2
2・2・3
2・2・4
第3章
流れ構造および座標系
構成方程式
無次元化と無次元数
差分法
ルンゲ・クッタ法
物性値
境界条件及び初期条件
計算結果及び考察
3・1
速度成分を v = (u,0,0) と仮定した場合
3・1・1 せん断下における液晶分子の挙動
3・1・2 分子配向への配向束縛強度の影響
3・1・2・1 上部平板面における x 軸からの角度 φ
3・1・2・2 上部平板面における z 軸からの角度 θ
3・1・3 速度への影響
3・1・4 分極値
3・2 速度成分を v = (u,0, w) と仮定した場合
3・2・1
3・2・2
せん断下における液晶分子の挙動
分子配向への配向束縛強度の影響
3・2・2・1 上部平板面における x 軸からの角度 φ
3・2・2・2 上部平板面における z 軸からの角度 θ
3・2・3 分子配向へのせん断速度の影響
-2-
3・2・4
速度への影響
3・2・4・1 x 方向速度
3・2・4・2 z 方向速度
3・2・5 分極値
第4章
結言
参考文献
謝辞
-3-
-4-
第1章
1・1
緒言
本研究の概要
本研究は液晶の圧電効果を利用した新しい圧電デバイスの開発を目的とし,その基礎研
究として液晶の圧電効果に深く関わる液晶分子の挙動,平行平板間せん断流れ下における
液晶分子の挙動を数値シミュレーションを用いて解析した.また,その配向の結果得られ
る分極値を明らかにすると共に,壁面での配向束縛強度及び上部平板のせん断速度が分極
に与える影響についても明らかにした.
本研究論文を読むにあたり,分極値に影響を与える液晶分子の挙動,境界条件(配向束縛
強度)及びせん断速度について特に注目して読んでいただきたい.
1・2
研究の目的および背景
これまでの液晶は液晶ディスプレイを筆頭に様々な工業製品に応用されてきた.これら
の液晶製品の核となっているのが液晶の工学的,力学的,電気的性質である.近年,液晶
の圧電効果が発見された.現在,固体材料における圧電効果は広い範囲で応用されており,
液晶材料の圧電効果も応用の可能性を秘めている.そこで,液晶の圧電効果に関して多岐
にわたる基礎研究が必要とされるが,従来の液晶の圧電効果に関する研究はその実験的な
検証に重みが置かれてきた.またその実測は,誘起された分極が不純物などにより妨げら
れるなどして容易ではない.そこで本研究では,Leslie-Ericksen理論[1][2]を用い,数値シミ
ュレーションによってせん断流中のネマティック液晶の分子の挙動を解析した.この研究
によって液晶の圧電効果における液晶分子の配向状態や液晶材料による分極値の違いが明
らかになるほかに,工学的に期待される結果として,液晶の流動性を活かした圧電デバイ
ス,流動を入力とし分子配向を動的に変化させ分極値を出力するようなデバイスや,結晶
の圧電効果を用いた圧電デバイスでは不可能だった大変形することが可能な圧電デバイス,
圧電材料が極少量で効果を発揮できる圧電デバイスなどの開発が可能になると考えられる.
-5-
1・3 液晶[3][4]
物質に三つの状態が存在することは広く知られることである.しかし,ある種の物質に
はこの三態の他に状態を持つものが存在する.その三態に次ぐ第四の状態が液晶状態であ
り,液体と固体(結晶)の中間に位置する状態である.一般に使われている「液晶」とい
う言葉は「液晶製品」そのものを指すが,正確には液晶状態を持つ物質の「液晶状態」を
指す言葉である.
では何故,液晶状態は発現するのか,またどのような物質でも液晶状態を持つのか.通
常,液晶状態を持つ物質の分子は棒状またはそれに近い形状である.このことが液晶状態
を発現させる要因となる.棒状であることからその配列には分子の重心の位置の“位置の秩
序”と分子の長軸が向く方向の“方向の秩序”が存在する.図1に球状分子と棒状分子の分子
配列を示した.固体状態では図1(a),(c)のように分子は規則正しく配列している.また液体
状態では図1(b),(e)のように無秩序に配列している.しかし,棒状分子においては“位置の
秩序”の他に“方向の秩序”が存在するため,固体状態から液体状態に移行する過程において
図 1(d) のように“位置の秩序”は崩れているが,“方向の秩序”は大体整っているという状態
が存在する.これが液晶状態であり,“方向の秩序”があるが為に“異方性”を有し,“位置の
秩序”が崩れているが為に“流動性”を持つのである.ゆえに液晶状態を持つ流体を異方性流
体と呼ぶことがある.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
Crystal
Liquid Crystal
Liquid
Fig.1-1 Molecular arrangements of sphere and columnar shape molecules.
さらに液晶状態は物質の温度や濃度の変化によって“位置の秩序”と“方向の秩序”の度合い
が変化し,いくつかの種類に分けられる.
-6-
1・4
ネマティック液晶[3][4]
液晶はその構成分子の配向状態により,ネマティック液晶(nematic phase),コレステリッ
ク液晶(cholesteric phase),スメクティック液晶(smectic phase) の3種類の相に大別される.
本研究において使用したネマティック液晶は,最も分子の対称性が高い液晶であり,分子
の“方向の秩序”は一様で,“位置の秩序”は全く無く液体と同じである.また,ネマティッ
ク液晶は温度を上げることによって等方相(液体状態)に,逆くに温度を下げることによ
って異方相(固体状態)に相転移する.このネマティック液晶は液晶ディスプレイの材料
として,工業的に最も用いられている液晶相である.液晶ディスプレイは,液体と固体の
側面を同時に併せ持つネマティック液晶の性質を上手く利用して,光の透過を制御してい
るものである.
1・5
表面束縛(Surface Anchoring)[4][5]
液晶ディスプレイを代表とする現代の液晶製品において,その核となっているのは液晶の
光学的,力学的,電気的性質である.その性質を生かす技術としてラビング処理という技
術がある.これは自由表面や適用に処理された固体基盤との界面において液晶分子を力学
的に束縛し一定の方向へ配向させる技術である.この液晶分子を一定の方向へ配向させる
ことを表面束縛(Surface Anchoring),あるいは単に束縛(Anchoring)ともいう.ネマティ
ック液晶の配向方向は自由エネルギーに無関係で配向ベクトルはどこを向くかは決まらな
い.したがって電界や磁界などの外場が存在しない場合には,液晶分子と固体基盤との界
面において,固体基盤面上の処理が液晶試料の配向ベクトルの配向方向を決め,一定の配
向を持ったセルが実現される.それゆえ固体基盤による液晶分子の配向の束縛は表示素子
への応用や実験用セルの作成上きわめて重要な効果である.またそのラビング処理を施し
た基盤表面上の液晶分子に外力を印加してもその配向状態が変化しない場合の束縛を強固
定配向(Strong Anchoring)といい,配向状態が変化する場合の束縛を弱固定配向(Weak
Anchoring)という.先にも触れたが液晶を利用した製品を開発しようとしたときとこの表
面束縛という条件を考慮する過程を避けて通ることは出来ない.液晶の圧電効果に関して
は以前の私達の研究で液晶の圧電効果によって得られる分極が液晶分子の挙動に依存して
いることを解明している.よって本研究では境界条件に表面束縛を加味した数値シミュレ
ーションを行って,表面束縛が液晶分子の挙動及び分極値にどのような影響を与えている
かを明確にしようとしているのである.
-7-
1・6
フレクソエレクトリック効果[6][7]
固体物質にひずみを加えることにより電圧が発生する場合がある.これを圧電効果
(Piezoelectric Effect)と呼ぶ.しかし物質が液体や気体の場合,たとえ個々の分子が永久
双極子モーメントを持っていたとしてもその自由な分子運動のためにその向きはランダム
となり,巨視的な分極は発生しないものとされてきた.しかしながら液晶は流動性を持っ
ているが,分子配向の秩序を持っていることから,分極が発生する.本研究で用いたネマ
ティック液晶は,個々の分子は永久双極子モーメントを持ち分極しているが,分子配列の
対称性から平衡状態では巨視的な分極を発生することは無い.しかし,分子の配向場にひ
ずみを加えることにより,分子配列の対称性が崩れて巨視的な分極が発生することがある.
これをフレクソエレクトリック効果(Flexoelectric Effect)と呼ぶ(以下フレクソ効果).フ
レクソ効果は,固体物質における圧電効果とは明確に区別されるべきものである.すなわ
ち,圧電効果はひずみの量により誘起されるものであるのに対して,フレクソ効果は,ひ
ずみの空間的変化,もしくは時間的変化により発現するものである.
以下に形状変形より発生するフレクソ効果の一例を示す.液晶分子が図3(a)のように楔
型をしている場合,楔形分子が対称的に配向しているためその極性は打ち消しあってしま
い巨視的な分極は発生しない.しかし図3(b)のように分子の配向場にひずみが生じ,楔形
分子が広がり変形した場合,その形状効果により配向の対称性は崩され巨視的な分極が発
生する.
(図の矢印は分子内の永久双極子モーメントの方向を表す)
P
(a)
Fig.1-2
(b)
Molecular model of Flexoelectric Effect for wedge-type.
これまでのフレクソ効果に関する研究は静的状態に限られており,流動によって引き起
こされるような動的なフレクソ効果の研究は行われていない.
-8-
1・7
液晶の流動[3]
液晶流での流れ挙動は,粘性係数の異方性のために,液晶の異方軸と速度ベクトルと速
度勾配の向きとの配置に関係して異なった性質を示す.よって,液晶の流動を知るために
は,液晶の配向方向とずり速度場の関係が大切になってくる.ネマティック相での粘性係
数は5つある.しかし,液晶流で問題となってくるのは図 3 に示したような3つの違いで
ある.この3つの粘性係数は Miesowicz の粘性係数と呼ばれており,粘性係数の異方性を
表す1つの表現方法である.
1
2
ηa = α 4
ηb =
1
(α 3 + α 4 + α 5 )
2
ηc =
1
(− α 2 + α 4 + α 5 )
2
ここで α i (i = 1L 6 ) はネマティック液晶の Leslie 粘性係数である.
このように液晶流での流れ挙動は流動中の液晶分子の配向状態と流れの状態が関係して
いるので液晶の特異な流動挙動を詳しく知るためには,粘度や応力などの入手可能な物性
値を手がかりに,微視的な液晶分子の配向状態を理論的に予測していく必要がある.
液晶流動を記述している理論の中に Leslie-Ericksen 理論がある.この理論は 1960 年代に
Frank の液晶弾性理論と Ericksen の Transversely Isotropic Fluid 理論を Leslie が組み合わせた
ことによって確立された.
Leslie-Ericksen 理論の特徴は,次の通りである.
① 液晶分子の局所的平均配向を表す単位ベクトルを用いて液晶の異方性を表している.
② 液晶分子の空間的相互作用を表す Frank の自由エネルギーを考慮に入れているため,平
衡状態における分子配向の空間的分布を記述できる.
③ 式中に 9 個の物性値を含んでおり,その測定は非常に困難ではあるが,液晶流動をかな
り定量的に表すことができる.
Fig1-3.
Liquid Crystal direction of three Miesowicz viscosity coefficients
-9-
第2章
数値計算
2・1 座標系および基礎方程式
2・1・1 流れ構造および座標系
本研究では流れ構造として一次元の平行平板間せん断流れ構造を用いた.2枚の平行平
板の間に液晶を封入し,上部平板を速度 U で x 軸方向に動かすことで液晶に流動を発生さ
せる.平行平板間せん断流れは流体力学における基本的な流れの1つである.
図 2 に本研究で用いた平行平板せん断流れ構造および座標系を示す.
y
U
H
φ
θ
n
z
Fig 2.
Flow geometry and coordinate systems
- 10 -
x
2・1・2
構成方程式
本研究で用いた基礎方程式を以下に示す.
非圧縮製の流体の基礎式である連続の式および運動方程式は以下のように表される.
∇ ⋅ v = 0 (1)
ρ
Dv
= −∇p + ∇ ⋅ τ (2)
Dt
式中の v は速度ベクトルを, ρ は流体密度を, Dv Dt は実質微分, p は圧力, τ は偏差応
力テンソルで,Leslie-Ericksen 理論を用いて以下のように表される.
τ = α 1nnn ⋅ D ⋅ n + α 2 nN + α 3 Nn + α 4 D + α 5nn ⋅ D + α 6 D ⋅ nn −
∂F
T
⋅ (∇n ) (3)
∂∇n
式中の n はディレクタと呼ばれる分子の局所平均配向を表す単位ベクトルである.以下,
本研究では分子配向とディレクタは同等として扱う. α i (i = 1L 6 ) はネマティック液晶の
Leslie 粘性係数, D は変形速度テンソル, N は流れとディレクタの相対角速度ベクトルで
それぞれ次のように表される.
{
}
D=
1
(∇v )T + ∇v (4)
2
N=
Dv
− ω ⋅ n (5)
Dt
ω は渦度テンソルで以下のように定義される.
ω=
{
}
1
(∇v )T − ∇v (6)
2
また, F は Frank の自由エネルギー密度で,以下のように表される.
2 F = K 11 (∇ ⋅ n ) + K 22 (n ⋅ ∇ × n ) + K 33 n × ∇ × n (7)
2
2
2
ここで K ii (i = 1,2,3) はネマティック液晶の Frank 弾性定数を表す.また壁面においては弱固
定配向の条件を考慮するため(7)式に以下のアンカリングエネルギーを加える.
- 11 -
{
}
2 F surface = A 1 − (n A ⋅ nW ) (8)
2
ここで, A は壁面ディレクタの配向束縛強度(Anchoring Strength), n A は平板面上での配
向処理による配向方向, n W は平板面上での実際の配向方向を示す.
通常等方性流体では,連続の式と運動方程式の保存則で流れ場は決定されるが,
Leslie-Ericsen 理論ではネマティック液晶は分子場と流れ場がお互いに影響しあうため,運
動方程式のほかに以下のディレクタの角運動方程式を導入する必要がある.
Γ v + Γ e = 0 (9)
この式において,Γ v は流体から受ける粘性トルク,Γ e はディレクタ場の歪みから生じる弾
性トルクで以下通りである.
Γ v = λ1 N + λ2 D ⋅ n (10)
Γe =
∂F
∂F
−∇⋅
(11)
∂n
∂∇n
λ1 , λ2 は Leslie 粘性係数と以下の関係にある粘性係数であり,流体の回転と歪みによって
誘起される影響の重みを表している.
λ1 = α 3 − α 2 (12)
λ2 = α 6 − α 5 (13)
また,式(9),式(10)
,式(11)より以下の式が導かれる
⎧ ∂F
⎫
⎛ ∂F ⎞
− ∇ ⋅⎜
0 = n×⎨
⎟ + (α 3 − α 2 )N + (α 6 − α 5 )D ⋅ n ⎬ (14)
⎝ ∂∇n ⎠
⎩ ∂n
⎭
得られた分子配向より以下の式からフレクソ分極値を算出する.
Pf = e11n(∇ ⋅ n ) + e33 (∇ × n ) × n
(15)
e11 , e33 はフレクソ係数[8]である.
- 12 -
2・1・3
無次元化と無次元数
先ほど述べた基礎方程式を図 2 の座標系で展開後,式中の物理量をそれぞれの代表物理
量で無次元化を行う.代表長さとして平板間隔 H ,代表速度として上部平板の移動速度 U ,
代表粘性係数に (α 3 − α 2 ) ,代表弾性係数には K = (K11 + K 22 + K 33 ) 3 を用いた.
各代表無次元量を用いて以下のように有次元量を無次元化する.
v* =
v
,
U
y* =
y
,
H
t* =
t
H U
,
μ* =
(α
μ
3
−α2 )
,
K* =
K
,
K
全ての物理量を無次元化すると以下の二つの無次元パラメータが現れる.
Re =
Er =
Ae =
ρLU
ρK
Er (16)
=
2
(
α3 − α2 α3 − α2 )
(α
3
− α 2 )HU
(17)
K
AH 2
(18)
K
Re はレイノズル数と呼ばれ慣性力と粘性力の比を表す流体力学の代表的な無次元数であ
る.
また Er はエリクセン数と呼ばれ粘性力と弾性力の比を表す液晶固有の無次元数である.
Ae は壁面におけるディレクタの束縛力と弾性力の比を表す無次元数である.本研究におい
て平行平板の間隔 H は一定,粘性定数は物質固有の物性値より一定なので Er を変化させる
ことは上部平板のせん断速度を変化させることにつながる.
- 13 -
2・2 数値計算
2・2・1 差分法
差分法は編微分方程式の数値解法の一つである.本研究では 2・1・3 で無次元化を行っ
た基礎式を空間方向において二次の中心差分法を用いて計算を行っている.
偏微分方程式はそのままでは取扱が困難であるため差分法によって方程式の数値解を個
別に求め,それを集めて与えられた問題を解決する.連続の式や運動方程式に登場する偏
導関数は一般に
∂f ( y ) ∂y , ∂ 2 f ( x ) ∂x 2 , ∂ 2 f ( y ) ∂y 2
である.ここで,関数 f に対する二次精度のテイラー展開を考えると以下のようになる.
f ( y + Δy ) = f ( y ) +
∂f ( y )
1 ∂2 f (y) 2
Δy + ⋅
Δy
∂y
2 ∂y 2
f ( y − Δy ) = f ( y ) −
∂f ( y )
1 ∂2 f (y) 2
Δy + ⋅
Δy
∂y
2 ∂y 2
上式より以下の2式が導き出される.
∂f ( y ) f ( y + Δy ) − f ( y − Δy )
=
∂y
2Δy
∂ 2 f ( y ) f ( y + Δy ) + f ( y − Δy ) − 2 f ( y )
=
∂y 2
Δy 2
- 14 -
2・2・2
ルンゲ・クッタ法
無次元化を行った基礎式を空間に中心差分法を用いて離散化を行った後,二次のルン
ゲ・クッタ法を用いて時間進行を行う.関数が時間においてもテイラー展開できるものと
して二次まで求めていくと,
f (t + Δt ) = f (t ) +
df (t )
1 d 2 f (t ) 2
Δt + ⋅
Δt
dt
2! dt 2
f (t − Δt ) = f (t ) −
df (t )
1 d 2 f (t ) 2
Δt + ⋅
Δt
dt
2! dt 2
となる.
上の二つの式を足し合わせることで
d 2 f (t )
を求めることが出来る.
dt 2
d 2 f (t ) f (t + Δt ) + f (t − Δt ) − 2 f (t )
=
dt 2
Δt 2
- 15 -
2・2・3
境界条件及び初期条件
本 研 究 に お い て 境 界 条 件 と し て 下 部 平 板 面 ( y ∗ = 0 ) で x 方 向 の 強 固 定 配 向 (Strong
Anchoring)を,上部平板面 ( y ∗ = H ) では x 方向の弱固定配向(Weak Anchoring)を仮定した.こ
れはフレクソエレクトリック効果によってもたらされる分極値が本研究の場合,上下平板
面の分子配向の角度差によってもたらされるため,境界条件が分極値に与える影響を見る
ためである.また初期条件として,空間的には平板間を横に 100 分割 (Δy = 0.01) し全領域に
わたってディレクタが x 方向を向いている状態を仮定し,時間的には時間ステップを
Δt = 10 −8 として計算を行った.
Weak Anchoring
Δy = 0.01
Strong Anchoring
Fig5. Boundary condition and initial condition
ここで一つ注意しておきたいことがある.それは数値計算を行う上で現存の PC の性能
では無限大という数値を扱うことは出来ないということである.本研究では配向束縛力を
決定する際,固定配向強度 A の値を入力するが,固定配向が A いくつから強固定配向にな
るかは分かっていない.故に下部平板面に仮定したようなディレクタが全く動かない状態
というのは式上では A の数値が無限大であると仮定することになってしまうのである.し
かし,先ほども述べたようにそれは不可能である.そこで本研究では下部平板面のディレ
クタを壁面とみなし,実際には A の数値を入れずに計算を行っている.それにより図で下
から二番目のディレクタは強固定配向のディレクタの影響を受けている状態となる.上下
平板面上のディレクタ共に強固定配向のように見える結果だが,実際には弱固定配向と強
固定配向を明確に分けて計算を行ったものであることを注記しておく.
- 16 -
2・2・4
物性値
本研究では物性値にタンブリング液晶である 8CB(4’-n-Octyl-4-cyanobiphenyl)の値[10]を用
いた.Leslie 粘性係数と Flankの弾性定数を表 1(有次元)に示す.なおタンブリング液晶
とはせん断流れ中で液晶分子が回転挙動(タンブリング挙動)を示す液晶である.タンブ
リング挙動を示すか否かはその物質がもつ固有値による.
Table.1 Material constants
8CB(37 )
Viscosity coefficients
Pa・s
α1
3.82 × 10 −2
α2
5.87 × 10 −2
α3
0.30 × 10 −2
α4
5.20 × 10 −2
α5
4.72 × 10 −2
α6
0.84 × 10 −2
Elastic constants
N
K 11
1.15 × 10 −11
K 22
0.52 × 10 −11
K 33
1.13 × 10 −11
- 17 -
第3章
計算結果及び考察
大きさ γ& の単純せん断流中で,ディレクタが流れから受ける粘性トルク Γ は
Γ = γ& (α 3 cos 2 φ − α 2 sin 2 φ )
(19)
と表される(式(19)は有次元である).粘性トルクがゼロとなり,ディレクタが静止する
角度 φ L は,式(19)で Γ = 0 とすれば
φ L = tan −1
α3
α2
(20)
となる(式(20)は有次元). φ L は明らかに物質固有の角度で,この角度はLeslie角と呼ば
れている.式(20)で φ L が値を持つ条件は α 2 と α 3 が同符号となることである.通常 α 2 は
負であるので α 3 も負である.表より 8CBはこの条件を満たさず両者が異符号のためLeslie
角は存在せず,式(19)の粘性トルクがゼロになる角度は存在しない.従ってディレクタ
は回転し続けることになる.この現象をタンブリング挙動と呼ぶ.[8]
以上の議論は単純せん断流の場合であり,固体壁が存在する場合は壁面配向の束縛のた
めディレクタが回転し続けることはない.つまりディレクタの回転により空間ひずみ,す
なわち弾性トルクが式(19)の粘性トルクと釣り合うまで増加し,そこで静止する.
3・1 速度成分を v = (u,0,0) と仮定した場合
3・1・1
せん断下における液晶分子の挙動
始めに Er=500 Ae=100 ,速度成分を
v = (u ,0,0 ) と仮定したの場合のディレクタの挙動を示す.図の上部平板は常に x 方向に動い
ており,つねに x 方向のせん断が掛けられている状態である.図左の筒状のものがディレ
クタの配向を表し,図右の矢印がその場でのせん断速度を表している.なお,図のディレ
クタは平板間を 100 分割して計算した結果を 5 step ずつ抜き出して表示している.
2・1・1 節で説明したように上部平板を速度 U で x 方向に動かすことで初期配向として全
領域にわたって x 方向を向いているディレクタが回転挙動を始める.Fig.3-1 (c)に示すよう
にまず,初期配向の 0°からせん断を受け徐々に時計回りに回転していく.このとき,上下
平板近傍を除くほとんどの場所では同じ挙動を示しているが,弱固定配向(weak anchoring)
の影響により上部平板面近傍では少し遅れて回転し,強固定配向(strong anchoring)の影響で
下部平板面近傍では遅れ,下部平板面では全く回転していない.さらにせん断を受けてい
くと, Fig.3-1 (g) のように下部平板近傍で遅れて回転していたディレクタが x − y 平面内
(in-plane)から z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出る現象が起きる.これは下部平板面近傍におい
てディレクタが x 方向への強固定配向(strong anchoring)の影響を受けた為, x − y 平面内
(in-plane)で回転するエネルギーが多く必要となり, z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出るほうの
エネルギーが少なくてすむことから起きる現象である.その後,Fig.3-1 (n)にしめすように
再びせん断を受け回転を続けるが,一度 z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出るとそちら側の回転
を示しやすくなる. また,ディレクタが回転し配向方向が変化することにより速度にも影
響が現れた.本来,単純せん断流れにおいて速度分布は Fig.3-1 (a)のように直線になる.し
かし,Fig.3-1 (c)のようにディレクタが回転するに従い,その棒状の形状より流れに影響を
- 18 -
及ぼす配向になる場合も見られた.
(a) t* = 0.01
(b) t* = 5
(c) t* = 7.5
(d) t* = 9
(e) t* = 14
(f) t* = 20
Fig.3-1 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=100 (a)~(f)
- 19 -
(g) t* = 22
(h) t* = 24
(i) t* = 26
(j) t*= 30
(k) t* = 36
(l) t*= 38
Fig.3-1 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=100 (g)~(l)
- 20 -
(m) t* = 40
(n) t* = 46
(o) t* = 52
(p) t* = 53.5
(q) t*= 56
(r) t* = 60
Fig.3-1 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=100 (m)~(r)
- 21 -
次に上部平板面での配向束縛力を強めた Er=500 Ae=500,速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定し
た場合のディレクタの挙動を示す.図の詳細は先ほどと同じである.Ae=100 の場合と同様
にせん断を受けディレクタは時計回りに回転を始める.しかし,Fig.3-2 (d)に示すように上
部平板面のディレクタは僅かに傾きはするものの完全に回転するには至らない.また,上
部平板近傍のディレクタにおいて Ae=100 の場合の下部平板近傍と同様な x − y 平面内
(in-plane)から z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出る現象も見られた.これらは上部平板面での配
向束縛力が強くなったため下部平板面の強固定配向に近い境界条件になり平板面上やその
近傍のディレクタへの影響が強まったため起こったものと考えられる.その後せん断を受
け続けても上部平板面のディレクタは回転しなかった.また,時間がたつにつれて平板間
中央のディレクタも上下平板面の配向束縛力の影響を受け,.Fig.3-2 (p)のように z 軸方向
(out-of-plane)へ飛び出る現象を示した.速度分布においても Ae=100 の場合と同様にディレ
クタの配向が乱れたときに速度も乱れる現象が見られた.
(a) t* = 0.01
(b) t* = 5
(c) t*= 7.5
(d) t* = 10
Fig.3-2 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (a)~(d)
- 22 -
(e) t*= 15
(f) t* = 20
(g) t* = 22.5
(h) t*= 24
(i) t* = 26
(j) t*= 30
Fig.3-2 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (e)~(j)
- 23 -
(k) t* = 35
(l) t* = 38.5
(m) t* = 41
(n) t*= 46.5
(o) t*= 52
(p) t*= 55
Fig.3-2 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (k)~(p)
- 24 -
(q) t* = 57
(r) t* = 60
Fig.3-2 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (q)~(r)
次に Er=500 Ae=1000,
速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定した場合のディレクタの挙動を示す.
Ae が 1000 ほどになると上部平板面での配向束縛力が下部平板面の強固定配向に近い強さ
まで大きくなるため,Fig.3-3 (d)に示すように今までと同じ時間せん断を与え続けても上部
平板面でディレクタはほとんど回転することはなかった.また Fig.3-3 (c)では平板間中央の
ディレクタにおいてもせん断を受けた直後から z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出る回転を示
している.速度分布においてもディレクタが全領域にわたって終始回転挙動を示さなかっ
たため( x − y 平面内(in-plane)において),単純せん断流れと同様の一直線の速度分布とな
っている.
- 25 -
(a) t*= 0.01
(b) t* = 6
(c) t* = 9
(d) t* = 10.5
(e) t* = 16
(f) t* = 21
Fig.3-3 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (a)~(f)
- 26 -
(g) t* = 24
(h) t* = 26
(i) t* = 30
(j) t* = 35
(k) t*= 38.5
(l) t*= 40
Fig.3-3 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (g)~(l)
- 27 -
(m) t* = 44
(n) t* = 49
(o) t* = 53
(p) t* = 55.5
(q) t* =60
Fig.3-3 Transient behaviors of director without v3 for Er=500 and Ae=500 (h)~(q)
- 28 -
3・1・2
分子配向への配向束縛強度の影響
3・1・2・1
上部平板面における x 軸からの配向角 φ
図 3-4 に速度成分を v = (u ,0,0 ) と
仮定したときの Er=500 の場合における上部平板面のディレクタの配向角 φ の時間変化を示
す.縦軸は x 軸からの配向角 φ ,横軸は無次元時間 t ∗ の変化を示している.初期配向の 0°
からせん断を受け時計回りに回転を始め,Ae=500, 400 のとき φ =0°,Ae=300 のとき φ =-180°,
Ae=250 のとき φ =-360°,Ae=200 のとき φ =-540°で上部平板面のディレクタの配向角度はそ
れぞれ定常に至っている.また Ae=100 の場合は回転挙動を示し続けているが壁面の影響
があるためやがて同様に定常に至ると予測される.
いずれの Ae においても上部平板面のディレクタの x 軸からの配向角 φ は約 180°ずつ階段
状に減少し, π の整数倍の角度で定常に至っている,これは上部平板面の境界条件が弱固
定配向であること,またその配向方向が x 方向であること,そしてディレクタが x 軸と平行
になるときにディレクタに働くトルクが最小になることが原因である.なお定常に至った
ディレクタの x 軸からの配向角 φ は時間が経過しても定常角度から変化することは無く定
常状態を保つ.また,せん断流れを受け回転挙動を示していたディレクタが,上下平板面
近傍で x − y 平面内(in-plane) から z 軸方向(out-of-plane) へと飛び出る現象は Ae が大きいほ
ど顕著に現れた.
90
0
-90
φdeg
-180
-540
Ae=500
Ae=400
Ae=300
Ae=250
Ae=200
-630
Ae=100
-270
-360
-450
-720
0
10
20
30
t
*
40
50
Fig.3-4 Transient behaviors of director angle φ at upper plate
without z-velocity component for Er= 500
- 29 -
60
3・1・2・2
上部平板面における z 軸からの配向角 θ
図 3-5 は Er=500 の場合における
上部平板面のディレクタの z 軸からの角 θ の時間変化を示す.縦軸はディレクタの z 軸から
の角度 θ ,横軸は無次元時間 t ∗ ,である.図より,Ae が高いほどディレクタがせん断平面
の x − y 平面内(in-plane)から逃れ z 軸方向(out-of-plane)へと傾くのに要する時間が減少する
ことがわかる.
180
150
Ae=500
θdeg
120
Ae=400
90
60
Ae=300
30
Ae=200
0
Ae=100
0
10
20
30
40
50
t*
Fig.3-5 Transient behaviors of director angle θ at upper plate
without z-velocity component for Er= 500
- 30 -
60
3・1・3
速度への影響 図 3-6 に Er=500,Ae=100, 500, 1000 の場合での無次元時間 t ∗
における x 方向速度の空間変化を示す.縦軸は平板間での位置を表し, y ∗ = 0 で下部平板
面, y ∗ = H = 1 で上部平板面を表している.また,横軸は x 方向速度の空間勾配を表し,
y ∗ = 0 に下部平板面を固定させ,上部平板を x 方向に動かすことによって液晶に流動を発
生させているので,下部平板( y ∗ = 0 ) における x 方向速度が u = 0 ,上部平板面( y ∗ = 1) に
おける x 方向速度が u = 1 となっている.図 3-6(a)において x 方向速度の空間勾配は無次元
時間 t ∗ の経過と共に変化し,ディレクタの x 軸からの配向角 φ が定常に至ると共にほぼ一定
の値に収束する.図 3-6(b)においても同様の現象が確認され,図 3-6(c)では終始ほぼ直線
の速度勾配となった. Ae が大きくなるにつれて速度勾配の変位も小さくなった.これら
のことから x 方向速度の空間変化はディレクタの x 軸からの配向角 φ の変化に依存してい
ることが分かる.
1
0.8
0.6
u
t*=10
0.4
t*=25
0.2
t*=42
t*=55
t*=60
0
0
0.2
0.4
0.6
y*
(a) Er=500 Ae=100
- 31 -
0.8
1
1
0.8
0.6
u
t*=10
0.4
t*=25
t*=40
0.2
t*=55
0
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
y*
(b) Er=500 Ae=500
1
0.8
t*=10
u
0.6
t*=25
0.4
t*=40
t*=55
0.2
0
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
y*
(c) Er=500 Ae=1000
Fig.3-6 Velocity gradient of x-direction
- 32 -
0.8
1
3・1・4
分極値 上のディレクタの配向の結果より平行平板間におけるフレクソ分極
を算出した.なお分極値は式()を用いて計算するが,本研究で用いた 8CB はフレクソ係
数が現在までに測定されておらずその値が存在しないため e11 ,e33 共に 1 と仮定して計算を
行った.また注意して式()を見ていただくと分かるが,式()中には広がり変形 ∇ ⋅ n と,曲が
り変形 n × (∇ × n ) は含まれているがねじれ変形 (n ⋅ ∇ × n ) は含まれていない.これは,極性を
持つ変形は広がり変形と,曲がり変形であり,液晶分子の配向場にねじれ変形が生じても
分極が発生しないということである.つまり本研究においてディレクタが x − y 平面内
(in-plane)で回転しているうちは広がり変形や曲がり変形が起きていることになり分極は生
じるが,z 軸方向(out-of-plane)へ傾いて回転し始めるとそれはねじれ変形が生じていること
になり,いくらディレクタが回転しようとも分極値が増大することは無い.
図 3-7 に Er=500 の場合の結果を示す.横軸は無次元時間 t ∗ を,縦軸は y 軸方向の分極値
を表す.Ae=100 の場合,無次元時間 t ∗ = 60 までの間にディレクタの回転挙動が常に x − y 平
面内(in-plane)だった為ディレクタの回転数に応じたパルス状の分極が生じ,そのパルスの
ピークもほぼ一定の値となった.次に上部平板面の壁面配向強度を強めた Ae=300 の場合
は始めは Ae=100 の場合と同様な大きさの分極を生じたが,ディレクタの回転挙動が徐々
に x − y 平面内(in-plane)から逃れ z 軸方向(out-of-plane)へと傾いていくため下部平板面と上
部平板面の配向角の差が付きにくくなり,それに伴い分極値も小さくなった.Ae=500 の場
合ではその壁面配向強度の分極値への影響はより明白で,ディレクタが始めの回転から z
軸方向 (out-of-plane) へ傾いて回転しているため分極値も小さく,その後は常に z 軸方向
(out-of-plane)に傾いて回転していたためほとんど分極は発生していない.
0.5
Ae=100
Ae=300
Ae=500
0.4
Pfy*
0.3
0.2
0.1
0
0
10
20
30
40
50
t*
Fig3-7. Transition of flexoelectric polarization for Er=500
- 33 -
60
3・2 速度成分を v = (u ,0, w) と仮定した場合
3・2・1 せん断下における液晶分子の挙動
速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定した場合
のディレクタの挙動から, z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出る回転が起きたときに,同時に z
方向への流れが生じていると考えられる.そこで速度成分を v = (u ,0, w ) と仮定した場合の
計算を行った.図 3-8 に Er=500 Ae=100 の場合に z 軸方向への流れを考慮した計算結果を示
す.図の詳細は速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定した場合と同じである.
ディレクタは速度成分が v = (u ,0,0 ) の場合と同じくせん断を受けて回転を始める.Fig3-8
(h)では始めは v = (u ,0,0 ) の場合と何ら変わらぬ挙動を示していたが,上部平板面上のディ
レクタが徐々に z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出して回転し始めた.これは Er=500 Ae=100
v = (u,0,0 ) の場合では下部平板近傍でしか確認されなかった現象である.そのことから,
Fig.3-8 (r)のように上部平板面のディレクタの x − y 平面内(in-plane)での回転回数が減少し
た.また Fig.3-8 (e) のように下部平板面近傍の z 軸方向 (out-of-plane) へ飛び出す現象も
v = (u,0,0 ) の場合よりも早い段階で確認された.その後平板間全領域に渡って z 軸方向
(out-of-plane)へ飛び出す現象が確認された.なお速度ついては v = (u,0,0 ) の場合と同様の影
響が見られた.
(a) t* = 0.01
(b) t* = 6
Fig.3-8 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (a),(b)
- 34 -
(c) t* = 7.5
(d) t* = 9
(e) t* = 15
(f) t* = 21
(g) t* = 22.5
(h) t* = 24.5
Fig.3-8 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (c)~(h)
- 35 -
(i) t* = 30
(j) t* = 36
(k) t* = 37.5
(l) t* = 39
(m) t* = 42
(n) t* = 46
Fig.3-8 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (i)~(n)
- 36 -
(o) t* = 51
(p) t* = 53
(q) t*= 55
(r) t* = 60
Fig.3-8 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (o)~(r)
- 37 -
次に上部平板のせん断速度がディレクタの挙動にどう影響を与えているかを見るために
Er=300 Ae=100 の条件で計算を行った.図 3-9 にその結果を表示する.なお 2・1・3 節で
説明したように本研究において Er を変化させることは上部平板の移動速度を変化させるこ
とに繋がる.なお速度成分は v = (u ,0, w ) とする.
平板間のディレクタの挙動は Er=500 Ae=100 の場合比べてより z 軸方向(out-of-plane)へ
飛び出しやすくなっており,上部平板面のディレクタにおいては,一度 180°回転した後は
いくらせん断がかかっても僅かに傾くだけで x − y 平面内 (in-plane)で完全に回転すること
は無かった.
これらは Er が低くなったことで相対的に Ae の影響が強く出たと考えられる.
なお速度ついてはこれまでの場合と同様の影響が見られた.
(a) t* = 0.01
(b) t* = 6
(c) t*= 7.5
(d) t* = 9
Fig.3-9 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (a)~(d)
- 38 -
(e) t* = 11
(f) t* = 16
(f) t* = 21
(g) t* = 24
(h) t*= 26
(i) t* = 32
Fig.3-9 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (e)~(i)
- 39 -
(j) t*=37
(k) t* = 39
(l) t* = 42
(m) t* = 47
(n) t* = 52
(o) t* = 54
Fig.3-9 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (j)~(o)
- 40 -
(p) t* = 55.5
(q) t* = 60
Fig.3-9 Transient behaviors of director with v3 for Er=500 and Ae=100 (p),(q)
- 41 -
3・2・2
分子配向への配向束縛強度の影響
3・2・2・1 上部平板面における x 軸からの角度 φ
Er=500 v = (u ,0, w ) として各 Ae につ
て計算を行った.図 3-10 (a) に上部平板面におけるディレクタの x 軸からの配向角 φ の時間変
化を示す.横軸は無次元時間 t ∗ ,縦軸は x 軸からの配向角 φ を表している.ディレクタの挙動
自体は速度成分を v = (u ,0,0 ) とした場合と同じ回転挙動を示し, π の整数倍の角度でそれぞれ
定常に至った.しかし,v = (u ,0,0 ) の場合が Ae=500, 400 のとき φ =0°,Ae=300 のとき φ =-180°,
Ae=250 のとき φ =-360°,Ae=200 のとき φ =-540°でそれぞれ定常に至ったのに対し,v = (u ,0, w )
では Ae=300 のとき φ =0°,Ae=250, 200 のとき φ =-180°,Ae=125 のとき φ =-360°,Ae=100 のと
き φ =-540°で上部平板面のディレクタはそれぞれ定常に至った.これは z 軸方向への流れが発生
することで x 軸方向の流れが弱まり,ディレクタの x − y 平面内(in-plane)での回転が弱まったこ
とで壁面配向束縛力の影響が強く出たものと考えられる.
次に,Er=400 v = (u ,0, w ) として各 Ae につて計算を行った結果を図 3-10 (b) に示す.
上部平板面におけるディレクタの挙動は Er=500 の場合と同様に回転挙動を示し,x 軸から
の配向角 φ はそれぞれの Ae に応じて定常に至った.Fig.3-10 (c),(d)に示すように Er=300
v = (u ,0, w ) ,Er=200 v = (u ,0, w ) についても同様の結果になった.
以上の結果から,上部平板面の壁面配向強度を変化させることで上部壁面上のディレク
タの配向角度を任意の角度に操作することが可能であると考えられる.
- 42 -
90
0
-90
φdeg
-180
Ae=300
Ae=250
Ae=200
Ae=125
Ae=100
Ae=50
-270
-360
-450
-540
-630
-720
0
10
20
30
t
40
50
60
40
50
60
*
(a) Er= 500
90
0
-90
φdeg
-180
Ae=300
-270
Ae=200
Ae=150
-360
-450
Ae=125
Ae=100
Ae=50
-540
-630
-720
0
10
20
30
t
*
(b) Er=400
- 43 -
90
0
-90
φdeg
-180
Ae=300
Ae=200
-270
-360
Ae=150
Ae=125
Ae=100
Ae=50
-450
-540
-630
-720
0
10
20
30
40
50
60
40
50
60
t*
(c) Er=300
90
0
-90
φ deg
-180
Ae=300
-270
Ae=250
-360
Ae=200
-450
Ae=150
-540
Ae=100
Ae=50
-630
-720
0
10
20
30
t*
(d) Er=200
Fig.3-10
Transient behaviors of director angle φ at upper plate
- 44 -
3・ 2・ 2・ 2
上部平板面における z 軸からの角度 θ
次に Er=500 v = (u ,0, w ) として各
Ae について計算を行った場合の上部平板面におけるディレクタの z 軸からの配向角 θ の時
間変化を以下に示す.
図 3-11 は Er=500 の場合における上部平板面のディレクタの z 軸からの配向角 θ の時間変
化を示す.横軸は無次元時間 t ∗ ,縦軸はディレクタ n の z 軸からの角度 θ である.図 3-11(a)
より, Ae が高いほどディレクタがせん断平面の x − y 平面内 (in-plane) から逃れ z 軸方向
(out-of-plane)へと傾くのに要する時間が早くなることが分かる.また, z 軸からの配向角 θ
の負のピークは x 軸からの配向角 φ における急変化が生じる時間と一致する.他の Er にお
いても同様の現象が確認された.
なお節でも説明したがフレクソ分極はディレクタの z 軸方向 (out-of-plane)へと飛び出し
て回転する挙動には依存しない.よって今節で示している z 軸からの角度 θ のデータはあ
くまでせん断を受けたときの上部平板面上のディレクタの挙動を説明するものであり,そ
の挙動が如何に大きい変化をしていても,結果得られる分極の値が増幅することは無い.
180
Ae=300
150
Ae=250
Ae=200
Ae=125
θdeg
120
90
60
30
0
Ae=100
Ae=50
0
10
20
30
t
*
(a) Er= 500
- 45 -
40
50
60
180
Ae=300
Ae=200
Ae=150
Ae=100
150
θ deg
120
90
60
30
Ae=50
0
0
10
20
30
40
50
60
40
50
60
t*
(b) Er= 400
θ deg
180
150
Ae=300
120
Ae=200
Ae=150
90
60
Ae=100
30
0
Ae=50
0
10
20
30
t*
(c) Er =300
- 46 -
180
150
Ae=300
Ae=200
θ deg
120
Ae=150
90
60
Ae=100
30
Ae=50
0
0
10
20
30
40
50
t*
(d) Er= 200
Fig.3-11 Transient behaviors of director angle θ at upper plate
- 47 -
60
3・2・3
分子配向へのせん断速度の影響
次に上部平板のせん断速度を変化させた場合のディレクタの挙動への影響を見る.以下
図 3-12 に Ae を固定した場合の各せん断速度における上部平板面のディレクタの x 軸から
の配向角 φ の時間変化を示す.横軸は無次元時間 t ∗ ,縦軸はディレクタの x 軸からの配向角
φ を表す.
始めに図 3-12 (a)に Ae=100 の場合における上部平板面のディレクタの x 軸からの配向
角 φ の時間変化を示す.Er を変化させた場合も Ae を変化させたときと同様に上部平板面
のディレクタは時計回りに回転し,x 軸からの配向角 φ は約 180°ずつ階段状に減少し,π の
整数倍の角度で定常に至った.同じ壁面配向束縛強度でもせん断速度が異なることで定常
角が違ってくることから,せん断速度が変化すると相対的に壁面配向束縛力の影響も変化
することがわかる.この現象は Ae の値を変えた計算でも確認された.
以上の結果から,上部平板のせん断速度を変化させることでも上部平板面上のディレク
タの配向角度を任意の角度に操作することが可能であると考えられる.
90
0
-90
φ deg
-180
-270
-360
Er=200
-450
Er=300
-540
Er=400
-630
Er=500
-720
0
10
20
30
t*
(a) Ae=100
- 48 -
40
50
60
90
0
-90
φdeg
-180
-270
-360
Er=200
-450
Er=300
-540
Er=400
Er=500
-630
-720
0
10
20
30
40
50
60
t*
(b) Ae=200
90
0
-90
φdeg
-180
-270
Er=200
-360
Er=300
-450
Er=400
-540
Er=500
-630
-720
0
10
20
30
40
50
t*
(c) Ae=300
Fig.3-12 Transient behaviors of director angle φ at upper plate
- 49 -
60
3・2・4
速度への影響
3・2・4・1 x 方向速度 図 3-13 に Er=500,Ae=100, 200, 300 の場合での無次元時間 t ∗
における x 方向速度の空間変化を示す.図の詳細は速度成分 v = (u ,0,0 ) で計算した場合と同
様に,縦軸は平板間での位置を表し, y ∗ = 0 で下部平板面, y ∗ = 1 で上部平板面を表してい
る.また,横軸は x 方向速度の空間勾配を表している.図 3-13 (a) は Er=500 Ae=100 の場
合において x 方向速度の空間勾配は無次元時間 t ∗ の経過と共に変化し,ディレクタの x 軸か
らの配向角 φ が定常に至ると共にほぼ一定の値に収束する.図 3-13 (b) ,(c) においても同
様の現象が確認された.これらのことから速度成分 v = (u ,0, w ) として計算した場合におい
ても x 方向速度の空間変化はディレクタの x 軸からの配向角 φ の変化に依存していること
が分かる.
1
0.8
0.6
u
t*=10
t*=25
0.4
t*=42
t*=55
0.2
0
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
y*
(a) Er=500 Ae=100
- 50 -
0.8
1
1
0.8
0.6
u
t*=12
t*=25
0.4
t*=40
t*=55
0.2
0
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
y*
(b) Er=500 Ae=200
1
0.8
t*=12
u
0.6
t*=25
0.4
t*=40
t*=55
0.2
0
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
0.8
y*
(c) Er=500 Ae=300
Fig.3-13
Velocity gradient of x-direction
- 51 -
1
3・2・4・2
z 方向速度 前でも説明したようにディレクタが z 軸方向(out-of-plane)へ飛
び出す挙動を示すとき, z 軸方向への流れが生じていると考えられる.
そう仮定すると速度成分を v = (u ,0, w ) として計算した場合,z 軸方向速度がディレクタの z
軸方向 (out-of-plane) へ飛び出す挙動に依存することは容易に想像できる.そこで以下に
Er=500 Ae=100,200,300 の場合の無次元時間 t ∗ における z 方向速度の空間変化を示す.
図 3-14 (a) は Er=500 Ae=100 の場合の z 方向速度の空間変化である.縦軸は平板間での位
置を表し, y ∗ = 0 で下部平板面, y ∗ = 1 で上部平板面を表している.また,横軸は z 軸方向
速度の空間勾配を表している. z 方向速度を考慮しなかった場合,すなわち速度成分を
v = (u,0,0 ) で計算した場合は当然 z 軸方向への速度は w = 0 だが, v = (u ,0, w ) として計算し
た場合は図 3-7 のディレクタの変化に合わせて z 軸方向への速度が生じている.また,図
3-14 (b) は Er=500 Ae=200 の場合の z 軸方向速度の空間変化を表している.Er=500 Ae=100
の場合と比べ, z 軸方向への速度が大きく,より多く生じていることが見て取れる.これ
は Ae=100 の場合と比べ Ae=200 の場合のディレクタがより z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出
す挙動を示していることに起因する.図 3-14 (c) は Er=500 Ae=300 の場合の z 軸方向速度
の空間変化を表している.この場合も同様に z 軸方向への速度が多く観測された.
なお
速度の大きさ,発生,共にディレクタの挙動に依存しているが,それはつまり壁面での配
向束縛強度に依存しているのと同じことである.ちなみに速度の発生は,図 3-10(a) の
Er=500 Ae=300 の場合のように相対的に壁面配向束縛力の影響が大きいときほど早い段階
でディレクタが z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出す挙動を示すので,その後もディレクタが頻
繁に z 軸方向(out-of-plane)へ飛び出し z 軸方向への速度も多く生じる.速度の大きさについ
ても,壁面配向束縛力の影響が大きいときほどディレクタがより大きく z 軸方向
(out-of-plane)へ傾くので大きな速度が発生する.しかし, z 軸方向(out-of-plane)へ傾く挙動
も x − y 平面(in-plane)に対して 90°が限界なので一定以上の大きさの速度にはならないと考
えられる.
- 52 -
0.1
t*=10
t*=25
w
0.05
t*=42
0
t*=55
t*=60
-0.05
-0.1
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
y*
(a) Er=500 Ae=100
0.1
t*=12
t*=25
w
0.05
t*=40
0
t*=55
-0.05
-0.1
t*=60
0
0.2
0.4
0.6
y*
(b) Er=500 Ae=200
- 53 -
0.8
1
0.1
t*=12
t*=25
w
0.05
0
t*=40
t*=55
-0.05
t*=60
-0.1
0
0.2
0.4
0.6
y*
(b) Er=500 Ae=300
Fig.3-14
Velocity gradient of z-direction
- 54 -
0.8
1
3・2・5
分極値
上のディレクタの配向の結果より平行平板間におけるフレクソ分極を算出した.ちなみ
に 8CB のフレクソ係数 e11 ,e33 の値が現在存在しないこと,及びフレクソ分極の算出式(式
(15))にねじれ変形 (n ⋅ ∇ × n ) の項が含まれないことは速度成分を v = (u,0,0 ) と仮定した場合
と同様である.
図 3-15 に Er=500 と固定し Ae を変化させた場合の結果を示す.横軸は無次元時間 t ∗ を,
縦軸は y 軸方向の分極値を表す.Ae=100 の場合,回転挙動に応じたパルス状の分極値が得
られた.しかし,速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定した場合と違い,壁面配向強度の影響がより
強く出ているためディレクタは徐々に x − y 平面内(in-plane)から逃れ z 軸方向(out-of-plane)
へと傾いていくため分極値も徐々に減少する結果となった.Ae=200 の場合もほぼ同様の結
果となり,Ae=300 の場合はほとんど分極値は生じなかった.速度成分を v = (u ,0,0 ) と仮定
した場合に比べると低い Ae で分極値に影響が出る結果となった.
0.5
Ae=100
Ae=200
0.4
Ae=300
Pfy*
0.3
0.2
0.1
0
0
10
20
30
40
50
t*
Fig3-15. Transition of flexoelectric polarization for Er=500
- 55 -
60
次に図 3-16 に Ae=100 と固定し Er を変化させた場合の結果を示す.横軸は無次元時間 t ∗
を,縦軸は y 軸方向の分極値を表す.Ae を変化させたときと同様に,せん断速度が小さく
なると分極値は減少した.これもまた上部壁面のせん断速度が小さくなることにより壁面
配向束縛強度の影響が大きくなり,ディレクタが徐々に x − y 平面内(in-plane)から逃れ z 軸
方向(out-of-plane)へと傾いていくためだと考えられる.
以上二つの結果より壁面配向束縛強度及び上部平板のせん断速度はディレクタの挙動に
影響を与える,つまりそのことを通じて平行平板間せん断流れにおけるフレクソ分極値の
発生に影響を与えるということが明確となった.
0.5
Er=200
Er=300
Er=400
Er=500
0.4
Pfy*
0.3
0.2
0.1
0
0
10
20
30
40
50
t*
Fig3-16. Transition of flexoelectric polarization for Ae=100
- 56 -
60
結言
本研究では液晶の圧電効果を利用した新しい圧電デバイスを開発することを目的とし,
その基礎研究として数値シミュレーションを用い,壁面配向強度及び上部平板のせん断速
度がディレクタの挙動と平板間の速度に与える影響,及びその計算結果よりもたらされる
フレクソエレクトリック分極値について明らかにした.得られた結果を以下に示す.
(1)
速度成分が x − y 平面内(in-plane)成分のみの場合,平行平板間のディレクタは x − y
平面内(in-plane)で回転挙動(タンブリング挙動)を示し,十分に時間が経過した後,壁面配向
強度に応じた定常角に達した.また,ディレクタに対して壁面配向強度が強く影響を及ぼ
した場合, ディレクタが x − y 平面内(in-plane)から z 軸方向(out-of-plane)へ傾く挙動を示し
た.
(2)
速度成分が z 軸方向(out-of-plane)成分を含む場合,(1)の場合と同様に平行平板間の
ディレクタは x − y 平面内(in-plane)で回転挙動(タンブリング挙動)を示し,十分に時間が経
過した後,壁面配向強度に応じた定常角に達した.また,せん断速度に対してもその大き
さに応じた定常角に達した.また, x 方向, z 方向速度についても壁面配向強度が影響を及
ぼすことを明確にした.
●
数値シミュレーションより得られたディレクタの配向より,各条件に応じたパルス状
の分極が確認された.また(1),(2)の結果より,壁面配向強度,及び上部壁面のせん断速度を
変化させることで,上部平板のディレクタを任意の配向角度に配向させることが可能であ
ることが明らかとなった.すなわちこれは,壁面配向強度,及び上部壁面のせん断速度を
変化させることで,任意の分極を得られる,電圧の調整が出来るということにつながる.
以上のことから液晶の圧電効果を用いた圧電デバイスの開発が可能であると考えられる.
- 57 -
参考文献
[1]F.M.Leslie,Arch.Ration.Mech.Anal.,28(1968),265.
[2]P.G.de Gennes: The physics of Liquid Crystals, Clarrendon, Oxford(1974).
[3]折原宏,液晶の物理,(2004),4,内田老鶴圃.
[4]液晶便覧編集委員会,液晶便覧,(2000),60,丸善株式会社.
[5]例えば,岡野ら,液晶辞典,(1989),培風館.
[6]R.B.Meyer,Phys.Rev.,22(1969),918.
[7]尾崎雅則,吉野勝美,フレクソエレクトリック効果,液晶,22(2002),31.
[8]T.Takahasi,et al.Jpn.J.Appl.Phys.37,(1998),1865.
[9]寺田敦史,ネマティック液晶の同心回転円板間流れの数値シミュレーション,
日本機械学会論文集,B編,69,681,(2003),1037-1038.
[10]H.Kneppe,F.Schneider, and N. K. Sharma. A Comparative Study of the Viscosity Coefficients of
Some Nematic Liquid Crystals 784.
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謝辞
本研究を遂行するにあたり,終始,多大なるご指導を賜りました高知工科大学知能機械
システム工学科蝶野成臣教授,ならびに辻知宏助教授に対し,深く感謝いたします.また
高知工科大学知能機械システム工学科知能流体力学研究室の皆様方にはご援助,ご協力を
賜りましたことを深く感謝いたします.
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