宇宙線を用いたCsIの基礎研究 - SAGA-HEP - 佐賀大学

宇宙線を用いた
CsI結晶の基本研究
佐賀大学物理科学科4年
高エネルギー研究室所属
太田智之
1
2010年2月28日日曜日
研究の目的
本研究室では中性K中間子稀崩壊実験(J-PARC E14 KOTO
実験)における高レートγ線検出器(CC03)の開発に携わってお
り、そのシンチレータとしてCsI結晶を使用している。
今回の研究では宇宙線の基礎を学び、CsI結晶とそれに巻
く反射材の特性を宇宙線を用いて評価することを目的とす
る。
2
2010年2月28日日曜日
発表の流れ
宇宙線を用いたCsI結晶の基本研究
基礎
宇宙線
シンチレーション検出器
PMTの較正
PMTの較正(較正方法)
測定手順
CsI(Pure)
反射材
データの単位変換
PMTの較正(結果)
各反射材でのCsIの光量測定結果
各反射材での波形測定結果
まとめ
2010年2月28日日曜日
3
宇宙線
基礎
e± , γ(軟成分)
P
1次宇宙線
µ 粒子 (硬成分)
鉛
10cm
40km
2次宇宙線
•荷電レプトン
π- π0
π+
K±
γ
•スピン1/2
γ
10km
•平均寿命約2.2[us]
相対論的効果で
•質量105.7[Mev/c2]
地表で観測可能
•強い相互作用起こさない
νu
μ-
5km
μ+
νµ
μ
ν µ νe
e+
µ
ν e νu
e+
宇宙線の強度は
µ− →e− + ν e + νµ
µ+ →e+ + νe + ν µ
鉛直方向が一番強く
飛来頻度が高い
※確認済み
-3km
地表では 粒子は全体の約75%
2010年2月28日日曜日
3体崩壊
CsIの光量測定に使用
4
Cosmic Ray
シンチレーション検出器
シンチレータ
クーロン力
光電効果
運動エネルギー
荷電粒子
損失
励起
軌道電子
光陰極
制動放射
PMT(Photomultiplier)
陽極
e光電子
ダイノード
全反射
蛍光
印加電圧
透過
反射材
電荷積分
Analog
透過しない
Gate
(するものもある)
集光効率UP
2010年2月28日日曜日
5
CsI(Pure)
一般的にγ線検出に使われるNaI(TI)との比較
放射長
線阻止能
減衰時間
[cm]
[MeV/cm]
[ns]
NaI(TI)
2.59
4.8
230
100
410
CsI(Pure)
1.86
5.6
35
3.6
420
発光量
最大放出
波長[nm]
•放射長短い→相互作用しやすい→γ線の検出効率よい
立方晶
•減衰時間短い→高い計数率で測定ができる
(2.5×2.5×25[㎤])
CsI(Pure)は高性能なγ線検出を可能とする
ただし
•潮解性がある
•変形しやすい
6
2010年2月28日日曜日
反射材
•Aluminized Mylar(0.02mm):アルミ蒸着されたポリエステルフィルム
•Teflon(0.07mm):ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、もしくはフッ素樹脂
•WhitePET(0.15mm):波長変換シート
•Gore-Tex(0.2mm):ポリテトラフルオロエチレンのフィルムとポリウレタンを複合化したもの
WhitePET
ブラックライト
波長変換
Teflon
Aluminized Mylar
WhitePET
ランダムな折り目の繊維
Gore-Tex
検出への影響
光を乱反射させて戻すが透過の可能性有り
7
2010年2月28日日曜日
測定手順
1.CsIを研磨
2.CsIに各反射材を巻く
3.CsIの5点を宇宙線で測定(先端から2cm,7cm,12.5cm,15cm,23cm)
4.データ解析
乾燥環境下で測定
光もれを防ぐため暗箱の中で実験を行う。
測定点
2cm
7cm 12.5cm 15cm 23cm
CsI(2.5×2.5×25[㎤])
25cm
2010年2月28日日曜日
PMT
8
電荷積分値を光電子量に変換
h1
Entries
327
Mean
520.3
RMS
156.2
! 2 / ndf
31.8 / 36
Prob
0.6684
Constant
161 ± 13.7
MPV
446.9 ± 3.3
Sigma
25.97 ± 1.77
35
30
25
理論曲線
20
15
10
電荷積分値[ch]
Up_Trigger1
Intensity
Intencity
SampleB
測定データサンプル
Me
40
RM
35
30
このままでは光電子量として評
25
20
価できない。
15
10
単位を変換する必要がある。
5
5
200
400
600
800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
ADC1[ch]
宇宙線は大きなエネルギー損失
側に尾を引く分布をする。
(Landau分布)
00
ch
50
100
150
200
250
300
350
p.e./14MeV
400
240
Ent
220
Me
200
RM
CsI(厚み2.5cm)を通過した宇宙線
180
160
がどのくらい光電子をだすか
140
120
100
2010年2月28日日曜日
450
Up_Trigger2
Intensity
00
Ent
45
80
9
PMTの較正
目的:1つの光電子(1[p.e.])に対応するADC量(x[ch])を求める
方法
1. LEDの光をAttenuatorで減衰
2. 1の光をPMTに当てる
LED
光ファイバー
3. オシロスコープでPMTの信号をみる
4. 1[p.e.]程度の信号を確認
5. データ収集、解析
光ファイバー
オシロスコープでの画像
2010年2月28日日曜日
10
PMTの較正(解析方法)
ポアソン分布
理論曲線
ガウス分布
n
x−(P3 )n−P4
�
1
e−P1 (P1 )n
− 2n(P
2
2)
√
×
e
]
f (x) = (P0 )×
[
n!
(P2 ) 2nπ
n=1
Sample
Width45ns_4db
Intensity
600
Pedestal
500
h1
Entries
Mean
273.1
RMS
11.68
!2 / ndf
Prob
400
10000
15.69 / 23
0.8681
p0
1.098e+04 ± 426
p1
1.761 ± 0.236
p2
5.823 ± 0.610
p3
8.247 ± 0.741
p4
260.1 ± 0.6
P0:全体のnormalization
P1:光電子の平均個数
P2:PMT増幅による広がり
P3:1[p.e.]に対応するADCのch数
P4:Pedestal
300
実際の測定ではポアソン分布に、PMTの
200
分解能のせいでそれぞれ広がりを持ち、
100
ポアソン分布とガウス分布を重ね合わせ
0
250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350
ADC1(ch)
2 3
1
2010年2月28日日曜日
たような形になる。
11
PMTの較正(結果)
1[p.e.]ピーク
Intencity
Width50ns_Atte4db
300
250
h1
ATTE:0db
200
150
100
50
0
200
220
240
260
280
300
320
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
360
Intensity
Width49ns_Atte4db
350
300
h2
ATTE:1db
250
200
150
100
50
0200
220
240
260
280
300
320
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
360
Intensity
400
350
ATTE:2db
300
250
200
150
100
50
0
200
220
240
260
280
300
320
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
360
Intensity
Width45ns_Atte4db
600
500
ATTE:3db
300
200
100
Intensity
Width40ns_Atte4db
900
800
220
240
260
280
300
320
ATTE:4db
600
500
400
300
200
100
220
240
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
360
260
280
300
320
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
Intensity
1200
1000
10000
273.1
11.71
15.69 / 23
0.8681
1.098e+04 ± 426
1.761 ± 0.236
5.823 ± 0.610
8.247 ± 0.741
400
ADC1(ch)260.1 ± 0.6
380
10000
269.1
9.505
39.91 / 15
0.0004672
2.721e+04 ± 5893
0.4147 ± 0.1369
8.916 ± 0.853
28.93 ± 12.51
400
239.3
± 12.7
ADC1(ch)
h6
ATTE:5db
800
600
400
200
0
200
380
360
Width30ns_Atte4db
1400
220
2010年2月28日日曜日
240
P3の推定値=9.52±0.36[ch]
Ampが10倍
1 p.e.=9.52/10≒0.95[ch]
h5
700
0200
380
10000
274.5
12.74
22.71 / 23
0.4776
1.085e+04 ± 345
1.804 ± 0.122
5.032 ± 0.474
9.74 ± 0.42
400
258.9 ± 0.4
ADC1(ch)
h4
400
0
200
380
10000
277.4
13.46
26.26 / 23
0.2887
1.344e+04 ± 1980
1.445 ± 0.427
7.796 ± 1.088
12.62 ± 3.80
400
258.3 ± 2.9
ADC1(ch)
h3
Width48ns_Atte4db
450
380
10000
281.5
14.97
29.58 / 23
0.1619
1.316e+04 ± 543
2.239 ± 0.476
7.218 ± 1.039
11.04 ± 1.75
400
ADC1(ch)260.1 ± 1.0
260
280
300
320
Entries
Mean
RMS
! 2 / ndf
Prob
p0
p1
p2
p3
p4340
360
380
10000
264
5.781
72.64 / 10
1.37e-11
3.458e+05 ± 274410
2.275 ± 0.546
20.48 ± 2.60
-15.36 ± 5.07
400
ADC1(ch)243.2 ± 5.1
14[MeV]当りの光電子数
として評価できる。
12
各反射材でのCsIの光量測定結果
sampleC_measure_by_cosmic_ray
各反射材での光量,位置依存性比較
p.e./14MeV
600
Uniformity
Entries
0
Alminized_plot
Mean
x
0Mylar
Aluminized
Mean y
0
WhitePET_plot
RMS
x
0
WhitePET
RMS y
0
SampleC
one_teflon
Teflon(1巻き)
two_Teflon
Teflon(2巻き)
Gore_Tex
Gore-Tex
反射材なし
nothing
p[0]=6.268145,p[1]=-0.022085
L(x)=L ×exp(A×x)
p[0]=6.271083,p[1]=-0.007470
0
p[0]=6.153129,p[1]=-0.016391
定数
減衰係数
p[0]=6.117134,p[1]=-0.014992
100 0
PMT
p[0]=6.204220,p[1]=-0.018075
5
10
15
20
25
distance from the PMT (cm)
CsI(2.5×2.5×25[㎤])
p[0]=5.489044,p[1]=-0.020867
13
2010年2月28日日曜日
考察
反射材
減衰係数
なし
0.021
WhitePET
0.0075
Aluminized
Mylar
0.022
Teflon1巻き
0.016
Teflon2巻き
0.015
GoreTex
0.018
減衰係数が高いと...
同じエネルギー
の粒子
CsI(2.5×2.5×25[㎤])
PMT
測定光量が違うため
エネルギーの違う粒子として誤認
減衰係数が高いと測定精度低くなる!
•WhitePETは減衰係数低く、光量が高い
測定精度が高い可能性
•Teflon1巻き2巻きでは光量も減衰係数も大差ない
透過はほぼない
2010年2月28日日曜日
波形を確認
14
各反射材での波形測定
→[nsec]
10%
先の結果で Aluminized MylarとWhitePET が
顕著に減衰係数と光量に差がみられたので
オシロスコープで波形測定(先端から2cm)
測定領域
10%
128回波形測定平均
反射材無し
立ち上がり時間
Aluminized Mylar
立ち下がり時間
WhitePET
波高
目的の信号
2010年2月28日日曜日
確認用の信号
15
考察
反射材
波形の幅[ns]
波高
なし
19.10
200
WhitePET
27.53
292
Aluminized
Mylar
27.55
296
Aluminized MylarとWhitePETの波形に顕著な差は見られなかった 。
オシロスコープでの波形測定では、波高の10%(根元部分)を測定してい
ないので、その部分がADCでの測定(電荷積分値)では光量の差として
効いてきたのではないか。
16
2010年2月28日日曜日
まとめ
•WhitePETが波形が他の反射材とほぼ同じにも関わらず、
光量が高く減衰係数が低いのは、γ線検出器(CsI(Pure))の反射
材としては好ましい。
•オシロスコープの測定能力では厳密な波形評価とは言いが
たい。他の方法でも波形測定する必要性あり。
17
2010年2月28日日曜日
終了
18
2010年2月28日日曜日