Digital Detector搭載心血管撮影装置のシステム評価透視における被曝

Key Word
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Digital Detector搭載心血管撮影
装置のシステム評価
−透視における被曝低減を中心に−
名古屋第二赤十字病院 放射線科部
西條 貴哉
FPDによる心血管透視撮影装置の概要
ズの視野選択があり,線量設定は透視ではLowとNormal
当院の心臓カテーテル検査室における心血管透視撮影
とHLC modeの 3 種類で30f/s,15f/s.CARDIAC撮影で
装置はGE横河メディカルシステム株式会社製のディジタ
はA,B,C,Dの 4 種類で30f/s,15f/sである.マトリッ
ルディテクタ搭載型のINNOVA 2000(以下:INNOVA)
クスサイズは512 × 512である.(ただし,INNOVAの
とI.I.システムのAdvantx-E LCLP(以下:LCLP)
の2機
Normal modeとLCLPのHLC modeはともに高線量率透視
種である
(図 1,2)
.
とみなす.)
装置の概要を簡単に述べると,INNOVAはディテクタ
INNOVAの画像は従来のI.I.システムであるLCLPに比
寸法が20.5 × 20.5cm(ピクセルサイズ:200Ȑm)
のディジ
べ椎体や肺野のコントラストを抑え,血管およびカテー
タルディテクタを搭載した動画対応の心血管透視撮影装
テルやガイドワイヤー等のデバイスを鮮明に描出する
置である.変換方式には間接変換方式を採用している.
(Dynamic Range Management:DRM)
ことができ,臨床
そのディテクタユニットはX線変換部としてヨウ化セシ
上有用な画像である.しかし,DSAやLV volume解析,
ウム
(CsI)
,検出部としてアモルファスシリコン・フォト
自動注入器との連動が不可能
(当院ではACIST インジェ
ダイオードアレー
(a-Si)
で構成されており,入射X線フォ
クションシステムを採用しており,接続の必要はない)
な
トンはCsIによって光に変換され,さらにa-Siによって画
どの制約がある.しかし,自動注入器連動は次ソフト
像信号電荷として検出される.視野サイズは20,17.3,
(M4b-1)
にて可能となる.だが,依然としてINNOVA本
14.7,12.2cmの 4 サイズで,線量設定は,透視・撮影と
体でのDSA,LV volume解析は不可能である.今回,
もにLowとNormal modeの 2 種類.透視はパルス透視で
INNOVAの導入により完全ディジタル化
(シネレス化)
が
30f/s,15f/s.撮影のフレームレートは30f/s,15f/s,7.5f/
実現し,ネットワークシステムはGOODMAN社製の
s.マトリックスサイズは1000 × 1000である.
Goodnetが導入されている
(図 3)
.
一方,I.I.システムのLCLPは9,6,4.5インチの 3 サイ
2 台の装置から配信された画像データ
(DICOM規格準
図 1 ディジタルディテクタ
(FPD)
搭載シ
ステムのINNOVA 2000
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図 2 ディジタルディテクタ
(FPD)
搭載システムのINNOVA 2000
図 3 ネットワークシステム Goodnet
拠)
は画像サーバ
(G-SERVER)
にて登録,保存される.
較とした.
そしてRAIDシステムである 1 次記憶装置(G-RAID)
と
②最大透視線量率の測定を行った.測定方法は日本画
DVDジュークボックスである 2 次記憶装置
(G-STOR)
に
像医療システム工業会
(JIRA)
の医用X線高電圧装置の患
も保存される.
者入射線量測定方法に基づいた.
画像管理ソフトにはG-NAVI,そして心機能解析ソフ
③視覚評価を行った.チャートによる解像度と,20cm
トにはQCA-CMS(オランダ Medis社製)
を用いており,
アクリルを散乱体としたときのバーガーファントムによ
それによってQCAだけでなくQLVAも可能である.ま
るC-Dダイアグラムを行った.
た,Goodnetへの画像転送もLCLP(512マトリックスの
8Bit画像転送)
はスムーズに行われるものの,INNOVA
3.結 果
(元画像は1024の14Bitだが,1024 or 512マトリックスの
①表面線量率の被写体厚特性は,各視野サイズとも
8Bitに変換して画像転送)
は転送時に透視,撮影を行うこ
に,INNOVA はLCLPに対し被写体厚25cmあたりまで低
とでFail状態になり,現状ではスムーズさに欠ける.端
減がみられたが,30cmになると逆転し高い値を示した.
末は特別なビューワを必要とせず通常のPC(officeアプリ
入射線量率の被写体厚特性は,各視野サイズともに,
ケーションで動作)
を用い,心カテ室,CCU,循環器病
INNOVA はLCLPに対し被写体厚20cmまでは低い値を示
棟,外来,OP室などに設置され常時アクセス可能となっ
したが,25cmで同等な値となり,それ以降は高い値を示
ている.そしてメンテナンスはISDN回線によるリモート
した.
メンテナンスにより状況監視を行っている.
②最大透視線量率については,INNOVAのLow mode
では42.5mGy/min,Normal modeでは84.8mGy/minであ
研究の紹介
った.LCLPのLow mode・Normal modeでは34.0mGy/
1.目 的
min,HLC modeでは93.7mGy/minであった.
ディジタルディテクタ
(FPD)
搭載システムのINNOVA
③チャートによる解像度については,両視野サイズと
と従来型 I.I.システムのAdvantx-E LCLPの比較を透視に
もにINNOVAの方が優った.バーガーファントムによる
おける被曝を中心に検討した.
C-Dダイアグラムについては,INNOVAの方が若干劣っ
た.
2.方 法
①被写体としてMix-DPを 5∼30cmまで 5cm間隔で変
4.考 察
化させたときの表面線量率と,ディテクタ入射線量率の
①表面線量率についてのINNOVAの被曝低減効果は,
測定を行った.測定に使用した線量設定は,INNOVAが
固定付加フィルタ
(0.5mmAl + 0.05mmCu + 0.5mmAl)
と
LowとNormal mode,LCLPがLowとNormalとHLC
被写体厚に応じたBeam filter(0.1mm or 0.2mmCu)
の依
mode.視野サイズは,20cmと 9inch,15cmと 6inchの比
存によるところが大きいと思われる.フィルタ以外での
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INNOVA
画像 1 撮影画像例
LCLP
INNOVA
画像 2 撮影画像例
LCLP
低減効果としてはコンパクトなハウジングによるディテ
ment
(DRM)
により対象となる心血管とデバイスをいかな
クタとハウジング間の距離の短縮があり,これにより10
る背景上においても鮮明に描出することができるといわ
%程度の線量低減が可能である.また,30cmでのLCLP
れている.今回のC-Dダイアグラムではバーガーファン
に対するINNOVAの線量増加は最大透視線量率の違いが
トムがその背景の領域,つまり階調を抑えた心筋レベル
影響したと思われる.入射線量率については,INNOVA
として描出されたのではないかと思われる.
はLCLPでのLow modeとほぼ同等であり,Normal mode
に比べると50∼70%の低線量率で画像を形成していると
5.結 語
いえる.しかし,30cmでのLCLPの入射線量率の低下は
FPDを搭載したINNOVA 2000は従来のI.I.システムに
最大透視線量率が上限値となり,Mix-DPでの減衰が原因
比べ,基本的には被曝低減ではあるが,実際のIVRでは
であると思われる.
今回の実験でのMix-DP厚25cm以上の透視条件を使用す
②最大透視線量率については,医療法施行規則による
ることが多く,低減効果のメリットを受けにくいと思わ
規制範囲内であった.
れる.
③解像力チャートでは,マトリックスがINNOVAでは
しかし,臨床画像ではバーガーファントムの評価とは
1000 × 1000.それに対しLCLPは512 × 512であるため,
異なり,カテーテル,ガイドワイヤーなどのデバイスが
その差が影響したと思われる.C-Dダイアグラムの結果
鮮明に描出されるため,その画質の高さからの透視時間
についてであるが,INNOVAはDynamic Range Manage-
短縮による被曝低減が期待できると思われる.
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