平成20年度弁理士試験論文式筆記試験問題 [商 標] 【問題】 甲市の新しい市長は、甲市内の港と島とを結ぶ連絡船を近く開業するA汽船会社(甲 市が100%の株式を保有する株式会社)の船の名称を公募して、その名称を船名として使 用するとともに公募名称やその一部を多くの企業に商標として使用して貰うことによっ て、甲市の経済活性化を図りたいと考えた。公募の結果、甲市ゆかりの伝説の武将「ぱて 丸」にあやかって「パテ丸」が採用され、甲市の意向を受けてA 汽船会社は 、「客船によ る輸送」を指定役務として、商標「パテ丸ライン」の商標登録出願を行った。一方、甲市 所在の多くの企業が様々な製品やサービスに商標「パテ丸」を使用することになり 、「客 船による輸送」以外の商品又は役務については、一部の商品又は役務についてA汽船会社 単独で、その他の商品又は役務についてA汽船会社と各企業が共同で商標「パテ丸」の商 標登録出願を行った。 この場合において次の(1)から(7)の設問について、結論及びその理由を説明せよ。 ただし 、「パテ丸」及び「パテ丸ライン」と同一又は類似の登録商標や商標登録出願は 存在しないものとする。また、解答に際して、特に文中に示した場合を除き、マドリッド 協定の議定書に基づく特例は、考慮しなくてよい。 (1) A汽船会社が、弁理士業務である「工業所有権に関する手続の代理」を指定役務と して単独で商標登録出願を行った場合には、特許庁における審査において、どのよう に扱われるか。 (2) A汽船会社は、B社と共同で商標登録出願をした願書においてB社の住所の表示を 「甲市中央区○○町」と記載すべきところ 、「甲市○○町」と誤記していることに気 付いたので、B社に伝えずに、A汽船会社だけの名義で誤記を訂正するための手続補 正書を提出した。この場合、その補正はどう扱われるか。 (3) A汽船会社が単独で商標登録出願をした願書において、誤記があったので、誤記を 訂正するための手続補正書を提出した。以下のそれぞれの場合、その補正はどう扱わ れるか。 (イ) 商標登録を受けようとする商標として誤って記載した「パテまる」を「パテ丸」 と訂正する補正 (ロ) 指定商品として誤って記載した「電気通信機会器具」を「電気通信機械器具」と 訂正する補正 (次頁へ続く) - 1 - (4) 甲市の広報誌で公募結果を知った甲市の隣接市に所在するC汽船会社が、A汽船会 社の商標登録出願の前日に 、「客船による輸送」を指定役務として商標「パテ丸ライ ン」を商標登録出願し、その商標登録がなされたことが判明した。A汽船会社は、こ の商標登録について登録異議の申立てを行うこととした。A汽船会社の代理人として、 どのような理由を主張すべきか。 (5) A汽船会社とD社が共同で、指定商品「食器類」とする商標登録出願をし、商標「パ テ丸」が登録された。他方、A汽船会社から「飲食物の提供」を指定役務とする商標 「パテ丸」の商標権について使用許諾を受けてレストラン「パテ丸」を経営するE社 が、包装箱に「ぱて丸」と表示し、甲市に古くから伝わる「ぱて丸」の肖像画を付し た「マグカップ」を、来店者に記念品として配った。当該E社の行為が商標権侵害に 該当しない立場から説明せよ。 (6) 甲市から約1,000km離れた瀬戸内の港町である乙町で渡し船を経営しているF社は、 A汽船会社が「客船による輸送」を指定役務として商標「パテ丸ライン」の商標登録 出願を行った直後から、乙町の港と沖合の小島を結ぶ小規模な渡し船に「パテ丸ライ ン」という名称を付けて運航していた。商標登録出願後、商標権の設定登録前のF社 の行為に対してA汽船会社がとり得る措置について説明せよ。 (7) A汽船会社とG社が共同で、指定商品「おもちゃ」について、商標「パテ丸」の商 標登録出願を行った。A汽船会社が、その出願を基礎としてマドリッド協定の議定書 加盟国である丙国を指定してマドリッド協定議定書に基づく国際登録を単独で受ける ために必要な手続について説明せよ。 【100点】 - 2 -
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