膀胱全摘・回腸導管造設時に心筋梗塞を起こし救命しえた 1 例

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
膀胱全摘・回腸導管造設時に心筋梗塞を起こし救命しえ
た1例
Author(s)
泉, 武寛; 大前, 博志; 原, 信二; 守殿, 貞夫; 森川, 定雄; 斎藤,
清治
Citation
Issue Date
URL
泌尿器科紀要 (1984), 30(7): 919-924
1984-07
http://hdl.handle.net/2433/118226
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
919
.泌尿 紀 要30巻7据
,1984年7月
膀胱 全摘 ・回腸 導管造 設時に心筋 梗塞 を
起 こ し 救 命 し え た1例
原泌尿器科病院
泉
武 寛 ・大 前
博 志 ・原
信二
神戸大学医学部泌尿器科学教室
守
殿
貞
夫
神戸大学医学部麻酔科学教室
森
川
定
雄
神戸労災病 院内科
斎
藤
A CASE OF MYOCARDIAL
清
治
INFARCTION
RELATED
TO TOTAL CYSTECTOMY
AND ILEAL CONDUIT
DIVERSION UNDER GENERAL ANAESTHESIA
Takehiro IZUMI,Hiroshi OHMAEand Shinji HARA
FromHara Urological
Hospital
Sadao KAMIDONO
FromtheDepartment
of Urology,KobeUniversity
Schoolof Modicine
Sadao MORIKAWA
FromtheDepartment
of Anaestheology,
KobeUniversity
Schoolof Medicine
Seiji SAITO
Fromthe Department
of InternalMedicine,
KobeRosaiHospital
Prognosis is extremely poor when an aged patient is attacked by myocardial infarction during or
after a major operation.
This paper reports that a 63-year-old male patient who had not been specifi-
cally diagnosed to have any coronary artery disease before operation recovered from a myocardial
infarction which occurred during total cystectomy and ileal conduit diversion under general anesthesia.
The continuous electrocardiogram
monitoring carried out during general anesthesia
discover and treat the disease early and save the patient's life.
enabled us to
References to the myocardial infarction
and the general anesthesia are also discussed.
Key words:
Anaesthesia,
Myocardial
infarction,
Total
cystectomy,
heal conduit
diversion
老 齢 老 の 術 中 ・術 後 に お げ る呼 吸 器 ・循 環 器 障 害 の
症
発症 は,し ば しば重 篤 な結 果 を 招 く.と くに心 筋 梗 塞
併発 時 の予 後 は きわ め て悪 い.わ れ わ れ は,最 近 膀 胱
症 例:63歳,男,会
全摘 ・回 腸 導 管 造 設 時に 偶 然 に も心 筋 梗 塞 を起 こ し,
主 訴=血 尿
救 命 しえた 症 例 を 経 験 した の で報 告 す る.
既 往歴:3∼4年
例
社員
前 よ り不 整 脈 が と き ど きあ った.
病 院 で 精査 を受 け る も特 別 な注 意 や 治 療 法 を受 け て い
920
泌尿 紀要30巻7号1984年
な か っ た.同
じ頃,糖
尿 も 指 摘 さ れ た が,こ
れ は食 事
家 族 歴=特
記 す べ き こ とな し
現 病 歴:1966年
院 を 受 診.精
査iの 結 果,
右 残 遺 尿 管 腫 揚 と 診 断 さ れ 右 残 遺 尿 管 摘 除 術 ・膀 胱 部
が,再
の 後2回
来 院 して検 査 を 受 け た
発 の 兆 候 は な か っ た.遠
な か っ た た め 以 後2年6ヵ
1982年12月14日
方 で あ り,自
覚症状 も
月 間 来 院 し て い な か っ た.
に 強 度 の 血 尿 が あ り,近
を 受 け 一 時 的 に 血 尿 は 消 失 し た.そ
24日 に 精 査 の た め 来 院,膀
医 に て処 置
の 後,1983年1月
養 状 態 良 好,胸
見 に 異 常 を 認 め ず.左
腹 部 理学 的 所
腎 は 触 知 せ ず 。 外 性 器,前
立腺
入 院 時 検 査 成 績:
術 中 経 過 をFig.1に
mgミ
示 す.麻
オ ブ ロ ッ ク8mgに
酔 は ラボ ナー ル250
て 導入 され,気
般 血 液 所 見;赤
血 球498×10`/mm3,白
血球
小 板22・6
不 整脈)が
出現 した が,と
ン60mgを
静 注 し,と
くに 治療 せ ず 消 失 した.麻
素2L/min.に
い て術 中 の脈 拍 は 正 常 で あ っ た.血 圧 は か な り変 動 し
た が,フ
ローセ ン,輸 血 お よび アル フ ォ ナ ー ドな ど で
液 は約1,000mlで
あ った.
17時 に 手術 を終 了 した が,覚 醒 が悪 く呼 吸 も充 分 で
清 蛋 白7.49/dl,総
ビ リル
与 し,
続 け た.術 後 約10分 を経 過 した 頃 よ り2段 脈 と心 房 細
ビ ンo.8mg/dl,GoTIIKu/L,GPT15Ku/L,
動 が交 互 に 出 始 め,SickSinusSyndromeあ
Ch-EI.OdPh,A1-p5.6KAU,LAP148G-R,
心 筋 梗 塞 が 疑 われ た.は
LDH2841u/L,ア
ミ ラ ー ゼ4031u/L,HDLコ
ス テ ロ ー ル42mg/dl,ALsoI25単
レ
位,cRP(一),
Hbs-Ag(一),FBS86mg/dl,PSP試
験15分
値28%,
る いは
っ き りと したQ波
やST変
化 を認 め な か った の で ア ダ ラ ー ト2capの
入,ア
Ccr77.3ml/min.
スパ ラK10mEqの
を見 て い た.約2時
口腔 内注
点 摘 内 注 入 に よ って経 過
間30分 後 に は 不整 脈 は消 失 した.
しか し,意 識 状 態 お よび呼 吸 状 態 は 改 善 され ず,人 工
所 見;蛋
白(一),尿
糖(一),赤
血 球(柵),
白 血 球(一)。
呼 吸を 続 け た.
そ の後 の経 過 をFig.2に
泄 性 腎 孟 造 影;左
腎 の 排 泄 良 好,腎
孟 ・腎 杯
お よ び 尿 管 に 異 常 は 認 め な か っ た.
胱 造 影;膀
に手術室 よ り
病 室に 移 送 し,こ こ で レス ピ レータ ーで人 工 呼 吸 を続
ュー ブ よ りピ ン ク色,泡 沫 状 の 液 が 噴 出 し肺 水 腫 が 発
生 した.そ
胱 鏡 所 見;内
示 す.20時
け よ うと した と ころ,チ ア ノーゼ が 出 現 し,気 管 内 チ
胱 部 右 側 に 小指 頭 大 の 陰 影欠 損 を
認 め た.
6)膀
フ ローセ ンを
気 管 内 チ ュー ブ を挿 入 した ま ま酸素 のみ で人 工 呼 吸 を
液 生 化 学 所 見;血
5)膀
ペ ンタ ジ
き ど き0.5%の
なか った の で 筋 弛 緩 剤 パ ンク ロ ニ ウム12mg投
×104/mm3.
4)排
管内挿管
が お こな われ た.導 入 中 に 約10分 間,心 勢 細 動(絶 対
輸 血 は800・nl,輸
6,400/mm3,Hb15.49/dl,Ht46.3%,血
3)尿
あ った.
コ ン トロール され た.
に も 異 常 は 認 め られ な か っ た.
2)血
血 量 は1,145mlで
麻 酔 経 過:
追 加 した.麻 酔 時 間 は3時 間35分 で あ り,導 入時 を除
格 中 等 度,栄
1)一
手 術 時 間 は3時 間30分,出
酔 維 持 は 笑気3L/min.,酸
胱 鏡検 査 に て腫 瘍 が認 め ら
れ 入 院 し た.
現 症=体
周 囲 の リ ンパ 節 に は,転 移 を 思わ せ る所 見 は 認 め なか
った,
に 血 尿 が あ り,本
分 切 除 術 を 受 け た.そ
づ い て 回腸 導 管 造 設 術
膀 胱 周 囲,左 右 の 内 ・外 腸 骨動 脈 お よび 総 腸 骨 動脈
に 鹿 児 島 の某 病 院 に て 右 腎孟 腫 瘍 で
右 腎 尿 管 摘 除 術 を 受 け た.
1977年1月
慎 重 に 剥離 し膀 胱 全 摘 除術,つ
を施 行 した.
療 法 の み で コ ン ト ロ ー ル 可 能 で あ っ た,
尿 道 口 よ り膀 胱 三 角 部,さ
らに
こで陽 圧 呼 吸 を お こな い ラシ ッ クスお よび
ジ ギ ラ ノ ゲ ンCを 投 与 した.心 電 図 ではST降
下 が見
膀 胱 右 側 壁 ・後 壁 に か け 大 小 多 数 のpapillaryturnor
られ あ き らか な心 筋 梗 塞 の所 見 を呈 した の で,ウ ロキ
が 広 範 囲 に 認 め られ た,
ナ ーゼ,一
7)CT所
見;膀
を 認 め た.左
胱 前 壁,後
側 壁 お よび 内尿 道 口に 近 い部 分 に は 壁 の
に コ ン トロー ル され て きたが 脈 拍(洞 調 律)数 が しだ い
瘍 の 漫 潤に よ る もの か
の 手 術 の 影 響 か は 不 明 で あ っ た.
しか し,脈 拍 が 増 加す る のみ で血 圧 は 上 昇 しなか った.
心 筋 梗 塞 後 の 肺 水 腫,さ
手 術 経 過:
の 影 響 に よ る強 い 癒 着 が 膀 胱 周 囲 に み ら れ た.膀
なってき
ブ トレ"Jク ス,ド ーパ ミンの持 続 点 滴 を お こな った .
胱 全 摘 ・回 腸 導 管 造 設 術 を 施 行 し た.
下 腹 部 正 中 切 開 に て 骨 盤 腔 に 達 し た.前2回
に 増 加 し,血 圧 も下 降 して60∼70mmHgと
た の で ソル コ ー テ フ,ジ キ ラ ノー ゲ ンCを 追 加 し,ド
以 上 の 検 査 成 績 よ り膀 胱 腫 瘍 と 診 断 し,1983年2月
5日,膀
らに は ニ トロ グ
リセ リン軟 膏 の塗 布 な どを追 加 した,肺 水 腫 は しだ い
肥 厚 と不 整 が 認 め ら れ た が,腫
前2回
トログ リセ リンの点 滴,さ
壁 お よび 左側 壁 に 腫 瘤
の手 術
胱 を
らに シ ・ ノ ク状 態 で なす す
べ もな い と思 わ れ た が,最 後 の試 み に 輸 液 を早 め 約30
分 間 に 約500ml注
入 した と ころ,血 圧 は しだ いに 上
921
泉 ・ほか:手 術 ・心 筋梗 塞
1983.2.5
一
13:訓)14'oo
,5:00
Is=oo
17=oo
心房細動
H
18:00
19=oo
一
20=00
2段 脈一心房細動の繰返 し
H
脈拍正常
術中脈拾正常(不整療なし)
1
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160
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手足
応 動か
強 くな
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レスピ レー ター
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32
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フロー セ ン
一 一 一 一 一+一 一一一 一一2∼4珍
O.5%offandon
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曾
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輸血
Fig.1.術
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ア ダラー ト2A(口 腔 内)
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一1。 「
中経 過
2/6
0;00
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2璽:00
曾
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ソ リタT4500曜
◎ソ
馴 駕
輸液
曾
勢 最辮
1=00
2:co
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500
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頻脈,低 血圧
S■nusrhythm
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VV
o
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AAAAAAA
AAハ
AAA
AAAハ
ハA
AA
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LSt*M
ECGは
し 反
応強
気管
内 く,vitalSlgn内
チ ュー ブ抜 管
,チ アノ ー ゼ
心筋梗塞パターン
20
o
學
一 ・・
一 一
レス ピ レー タ ーO,2-・42Xn■nw》-M十
ラn7aラ
40㎎
輸液
シ・
ンクス2α㎎
シギラノゲンC
ラシックス40㎎
ウロ キナ ー セ1200U
O.2㎎
ソル コ ーテ フ500㎎
ウ ロキ ナ ーセ1200U
シキラノケンCO.4㎎
ソ リタ丁4号
ト 急速に輪液(ソリタT5号)
トトソ リタT4号200ne十
二 トログリセリン1A-一
一.
ト1三 惚
クス鵬
Fig.2.術
点・開始一
後経過
一一一マ ス クに て0殺 与
定
922
泌尿 紀 要30巻7号1984年
昇 し脈 拍 も減 少 して きた.こ の 間 レス ピ レー タ ーに よ
に 近 い 波形 が 得 られ てい た.術 中に は,麻 酔 導 入 時 に
る換 気,ウ
約10分 間2段 脈 と心 房 細 動 が あ った ほか は,と
ロキ ナ ーゼ の時 間 ご との投 与,ラ
シ ッ クス
の投 与 な どを お こな った.尿 の流 出 が認 め られ た の は
この 頃か ら であ った.
くに 波
形 に 変 化 は見 られ な か った.
c)手 術 終 了直 後 の心 電 図所 見
午 前3時 頃 に は意 識 は 明瞭 とな り,呼 吸 も充 分 で人
手 術 終 了時 よ り2段 脈 と 心 房 細 動 が 交 互 に 出 現 し
工 呼 吸,気 管 内 チ ュー ブを い や が り,バ イ タル サ イ ン
た.こ れ らの不 整 脈 が 消 失 し,脈 拍 が70分 後 に 安 定 し
も安 定 して きた の で抜 管 し マ ス クで 酸素 を 投 与 した.
た 時 点 で はQRS幅
が や や延 長 し,陰 性T波
して きた.異 常Q波
は な く,ま たST部
午 前8時 頃 に は顔 色 も改 善 し,呼 吸,脈 拍,血 圧,
体 温 の いず れ も安定 した.心 電 図 ではSTの
変 化 が認
め られ た が 不整 脈 は見 られ な か った,
を 認め なか った が,心 筋 梗 塞 をふ くめ な ん らか の心 の
虚 血 性 変 化 を 示 唆す る所 見 と考 え られ た.
術 後 か ら 翌 朝9時 ま で の 輸 液 は約2,200ml,尿
は1,800mlで
が出現
分 に も変 化
量
あ った.
d)肺 水 腫 発 生 時 の心 電 図所 見
不 整 脈 が 消 失 した た め,病 室 へ 移 送 した とこ ろ,急
そ の後 の経 過 は非 常 に 順 調 で,創 部 も一 次 的に 治癒
した.
性 肺 水 腫 が発 生 した.こ の 時 の心 電 図(Fig.4)で
心 拍 数80∼90の
心 電 図経 過:
の延 長 が 認 め られ る.V2-V4にQS波
a)手 術 前 心 電 図 所 見
上 昇が,Vs・V6,aVLに
術 前 の心 電 図所 見 は,Fig。3に
内 と考 え られ る.皿,aVFに
示 す ご と く正 常範 囲
お いてP波 がm型
を呈
は
心 房 細 動,軸 の左 偏 位 化 とQRS幅
型 とSTの
はsmallq波
が 出現 して き
た.急 性 心 筋 梗 塞 の所 見 と考 え られ た.
心 房 細 動 は血 圧 の低 下,肺 水 腫 の進 行 とと もに 拍 動
して お り,い わ ゆ る僧 帽Pの 所見 が み られ た.し か し,
数 を増 した が,各 種 の治 療 に よ りそれ らが 回復 した 午
心音 も純 で胸 部X線 写 真 上 で も心 肺 と もに異 常所 見 は
前2時 頃 に は 洞 調律 に 回復 し,ま たV2-V4のST上
み られ ない こ とか ら,僧 帽 弁 疾患 は考 え られ な い.し
昇 も お さ ま って きた.し か し,V2-V4で
たが っ て このP波 は心 房 内 に 軽度 の伝 導 障 害 が あ るた
を呈 し てお り,V2-V5で
め と考 え られ た,
の経 過 で あ るが これ ら所 見 か ら も急 性 心 筋 梗 塞 の 経過
b)手 術 中心 電 図所 見
て いた.こ の誘 導 では,12誘 導 心 電 図 に お け るV誘 導
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照 輯 羅 認 灘.11,
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e)回 復 期 の心 電 図 所 見
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翌 日の午 前 中 に は,γ 波 が 出 現 して きた.ま た,洞
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もみ られ,短
と考 え られ た.
手 術 中 は テ レメー タ ーに て心 電 図 を モ ニタ リ ング し
:
冠 性T波
闘
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輯
Fig.3.術
前 心電 図.正 常 範 囲 内の所 見 で あ る
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923
泉 ・ほ か:手 術 ・心 筋 梗 塞
1
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Fig.4.
上田lu⊥'轄
『1「"「.「T一
・lI.1て
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、,・
「
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術 後 肺 水 腫 発 生 時 の 心 電 図.心
びV5-V6とaVLのsmallg波
房 細 動,QRS幅
の 延 長,V2-V4のST上
の 出現
急 性 心 筋 梗 塞 の 所 見 で あ る.
購蜘 撒 題 頸
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一二二旨 世 土 戯
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幽
葦
…三二=∵ヨ
羅
術 後3日
目の心 電 図.
術 前 の 所 見 に 近 い が,V3-Vsに
圧 な どに と くに 変 化 は 認 め られ なか った.
術 後3日
目の心 電 図(Fig・5)で
それ に近 くな って きた.し か し,V3-V5に
.d。,
て 巨 大 陰 性T波
が み られ る
巨大 陰 性T波 が認 め られ る.
術 後 約1ヵ 月 目に 施 行 した 心 エ コー検 査 では 弁 の動
は,QS波
昇 は消 失 し,胸 部 誘 導 のQRS波
・・i嚢、.・vs
fa{、i-1+ifiv-tttt,..
調 律 と心 房 細 動 が 交 互 に認 め られ た が,自 覚症 状 や 血
ST上
IIL・#
論 瀬 註購 難,・
菱嘉←聴 譲
Fig.5.
蜷
▼邑
型や
きに 異 常 な く,心 室 壁 の動 き もほ ぼ 正常 に 近 い所 見で
型は術 前の
あ り,本 症 に認 め られ た 心 筋 梗 塞 は 比較 的 小範 囲 の も
てい わ ゆ る
の と考 え られ た.
924
泌 尿 紀 要30巻7号1984年
考
時 的 に 増 や して 血圧,脈
察
こ とか ら,恐
手 術 後 の心 筋 梗塞 の発 生 率 は0.1∼0.6%,死
亡率は
拍 な ど循 環 状 態 の安 定 を み た
ら く梗 塞 の範 囲が 小 さか った た めCar-
dioge甑icshockの
状 態 に は 陥 って い なか った も の と思
そ の うち の20∼83%と
され,術 前 に 心 筋 梗 塞 の既 往 の
わ れ る.し か し,こ の よ うな肺 水 腫,低 血 圧 な どの激
あ る場 合 は50∼55%で
あ る1).麻 酔 あ るい は 手術 後 に
変 が そ の よ うな 小 さ い範 囲 の梗 塞 に よ っ て惹 起 され う
発 生 す る心筋 梗 塞は,通 常 生 活 中に 発 症 す る場 合 よ り
るか は 疑 問 で,梗 塞 の程 度 ・範 囲 に つ い ては 充 分 に説
重 篤 であ る.急 性 期 の死 因 の 多 くは,心 室 細 動,心 停
明 しが た い点 が あ る.い ず れ に し て も,患 者 を救 命 し
止に よ る急死 で あ り,そ の ほ か不 整 脈,シ
えた のは 非 常 に幸 運 で あ った と考 え て い る.
不 全 お よび心 破裂 な どに よ る.と
shockに
ョッ ク,心
くにCardiogenic
結
よる心 不 全 では,死 亡率 は80%に 達 す る と言
わ れ て い る2).
語
高 齢 者 の術 中 。術 後 に 発 生 した 心 筋 梗 塞 の 予後 は非
虚 血 性 心 疾患 の多 い欧 米 で は,手 術 時 の 麻 酔に 関 係
常 に 悪 い.今 回わ れ わ れ は,術 前 に 心 疾患 の既 往 な く,
した 心 筋 梗 塞 例 が多 く報 告 され て い るが3∼6),日 本 で
膀 胱 全 摘 ・回 腸 導管 造 設 時 に 心 筋 梗 塞 を起 こ し救 命 し
の報 告 例 は 非 常 に少 なか った.し か し,近 年 に い た り
え た症 例 を経 験 した の で報 告 した.
高齢 者 の手 術 の増 加 とと もに 増加 しつ つ あ る7).
麻 酔方 法,麻 酔剤 の相 違 と心筋 梗 塞 の発 生 率 お よび
本 論文 の 要 旨 は 第103回
日本 泌 尿 器 科 学 会 関 西 地 方 会 に お
い て発 表 した.
死 亡 率 との 間 に は直 接 的 な 関 係は 認 め られ て いな い8).
術 後 の心 筋 梗 塞 で注 意 しな けれ ば な らな い の は,典
文
型 的 な臨 床 症 状 が欠 如 しや す い こ とであ る.と くに 意
識 が 明瞭 で な い 時 は胸 痛 を 訴 え る こ と もな く,ま た 胸
1)EliottHW:Anesthesiaforthecardiacpa.
痛 を訴 えて も術 後痛 と間 違 え やす い.低 血 圧,不 整 脈
お よび シ 。ッ クな ど も,出 血 や落 痛 な どに よ り術 後 し
tient.AmHeartJ87'134∼136,1974
2)劔
ば しば み られ る こ とで あ る.こ こで も っ と も重要 な こ
とは そ の疑 い を もつ ことで,と
くに 術 前 に 冠 不全,不
修
・石 突 美 保
中 の 心 筋 梗 塞
・並 木 昭 義
麻 酔24;923∼927,1975
,Endrey-WalderP,BauerGE
andStephensFO:Myocardialinfarction
内 で あ ったが,状 態 が急 変 した時 点 で モ ニ ター して い
followingsurgicatoperations.BritMedJ4:
た心 電 図 よ り心 筋 梗 塞 の発 生 が示 唆 され た.ま た そ の
725∼728,1968
常 に幸 い で あ った.本 症 の発 生 時期,す
5)MauneyFMJr,EbertPAandsabistonDc
なわ ち術 中か
JrPostoperativemyocardialinfarction.
AnnSurgl72:49フ
術 後 か につ い ての 判 断 は きわ め て 困難 で あ り,ま た そ
の前 兆 がす でに 術 前 よ りあ った もの かに つ いて も問題
∼503,1970
6)TarhanS,Mo田ttEA,TaylorWFandGiu-
であ る.心 電 図 上2段 階 と心 房 細 動 が術 後 ま もな く交
1ianiER=Myocardia里infarctionaftcr
互 に 認 め られ た こ とを 重視 す れ ば,お そ ら く手 術終 了
gcncralanesthesia.JAMA220:1451∼1454.
前 後 に 発症 した もの と推測 してい る.そ の正 確 な 時期
・原 因 に つ い ては 不 明 で あ っ て も,本 症 の発 生 が 麻 酔
・手 術 と時 期 を 同 じに す る もの であ った こ とは 事 実 で
あ る,
本 症 例 は心 筋 梗 塞 後 に 肺 水腫,つ
酔
Gyne&Obst1201315∼322,1965
'1)HunterPR
本症 例 では 術 前 に冠 不 全 は な く,心 電 図 も正 常範 囲
時点 で 循環 器 内科 の 専 門医 の参 加 が得 られ た こ と も非
・ 高 橋 長 雄=麻
perativemyocardialinfarction。Surgery
ョッ クな どが あ れ ば,心 筋
梗 塞 の発 生 を 疑 い心 電 図を と る必 要 が あ る.
物
3)BearS,NakhjavanFandK助aniM:P・sto-
整 脈,高 血 圧,糖 尿病 な どが あ る患 者 や 高 齢 者 で術 後
頑 固 な不 整 脈,低 血 圧,シ
献
1972
7)中
条 信 義
・友 松 栄 二
び 虚 血 性 心 疾 患,麻
・高 折 益 彦:手
術 と 麻 酔 お よ
酔 と 蘇 生.10:3∼9,1974
8)ArkinsR,SmessaertAAandHicksR.G:
いで 低血 圧,頻 脈
Mortalityandmorbidityinsurgicalpatients
な どを 呈 し シ 。 ッ ク状 態 に 陥 り,強 心 剤,昇 圧 剤 に 対
withcoronaryartervdisease。JAMA190:
しほ とん ど反 応 しな か った た め,Cardiogcn三cshock
485∼488,1964
か と思 われ た.し か し,臨 床 症 状 を 見 な が ら輸 液 を 一
(1981年1月26日
受 付)