新潟県農林水産業研究成果集(平成21年度) 活 用 技 術 平成21年度 水稲栽培における基肥としての牛ふん堆肥利用法 [要約] 牛ふん堆肥を水田に春施用すると、堆肥に含まれるアンモニア態窒素相当量を基 肥より減肥できる。 農業総合研究所畜産研究センター 生産・環境科 連絡先 TEL0256-46-3103 FAX0256-46-4865 [背景・ねらい] 牛ふん堆肥の水田での利用が進んでいるが、その肥料的効果は明らかとはなっていない。 一方で近年の肥料価格の高騰から、減化学肥料栽培の確立が求められている。そこで基肥 窒素を代替できる牛ふん堆肥の利用法を開発する。 [成果の内容・特徴] 1 牛ふん堆肥の堪水条件下での培養無機態窒素量(水田での窒素肥効量)は 4 週、10 週 とも堆肥中アンモニア態窒素(0 週)とほぼ一致する(図1)。これは堆肥中アンモニア 態窒素を基肥窒素として利用できることと、牛ふん堆肥の窒素は後効きしないことを示 す。 2 春施用により堆肥に含まれるアンモニア態窒素相当量を基肥より減肥できる(表 1、 表 2)。堆肥中アンモニア態窒素で基肥窒素を 50%または 100%代替した栽培法は化学肥 料のみの栽培法と同等の生育・収量・品質が得られる(表1、表2の堆肥 A、堆肥 B)。 3 アンモニア態窒素が極めて少ない堆肥は基肥窒素節減効果がない(表1、表2の堆肥 C)。このような堆肥を施用する場合は通常量の基肥窒素を施用する。 4 減肥可能量は以下の計算式より求める。 基肥窒素節減可能量(kg/10a)=通常の基肥窒素施用量(kg/10a) −堆肥施用量(kg/10a)×堆肥中アンモニア態窒素含量(kg/10a) 堆肥施用量自体が多すぎると異常還元による生育阻害を招く恐れがあるので、施用量 の上限は乾物 500kg/10a 程度とする。 [成果の活用面・留意点] 1 本法は AD 可溶有機物 250mg/gDM 以上の堆肥(通常未熟といわれている堆肥)には適用 できない。 2 春施用後、すぐに耕起およびかん水を行う。 3 連用により地力窒素が増大するので、SPAD 値等により生育を確認し、穂肥を加減する。 4 堆肥中アンモニア態窒素含量およびリン酸、加里は塩酸または硫酸抽出−小型反射式 光度計で簡易に測定することができる。リン酸、加里も同様に減肥できる。 5 牛ふん堆肥のアンモニア態窒素含量はものによって大きくばらつくので、アンモニア 態窒素を測定せずに通常量の化学肥料を施用した場合には過剰生育を招く恐れがある。 新潟県農林水産業研究成果集(平成21年度) [具体的データ] 培養無機態窒素量(窒素肥効量) mg/g DM(kg/t DM) 4.5 堆肥Ⅰ (146) 4.0 3.5 堆肥Ⅱ (145) 3.0 2.5 堆肥Ⅲ (140) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 2 4 6 培養週数 8 全窒 素 6mg 相当 量 の 堆 肥 と 乾 土 20g 堆肥Ⅳ (161) 相当 量 の水 田 土壌 堆肥Ⅴ (181) 水条 件 下で 培 養 を 混 合 し 、 30 ℃ 堪 10 ( )内はAD可溶有機物含量 mg/gDM 0週の培養無機態窒素=堆肥中アンモ ニア態窒素 図1 表1 牛ふん堆肥の 30℃堪水条件下での培養無機態窒素量(窒素肥効量) 堆肥中アンモニア態窒素を活用した施肥設計 区名 堆肥中 堆肥施用量 アンモニア態 (kg/10a) 窒素含量 現物 乾物 mg/gDM 説明 慣行 堆肥A50% 堆肥A100% 堆肥B100% 堆肥Cのみ 堆肥C+化肥 穂肥のみ 化肥のみ(対照) 堆肥中アンモニア態窒素で基肥50%代替 堆肥中アンモニア態窒素で基肥100%代替 堆肥中アンモニア態窒素で基肥100%代替 アンモニア態窒素が少ない堆肥は効かない証明 アンモニア態窒素が少ない堆肥の利用法 5.4 5.4 8.1 0.0 0.0 277 555 373 550 550 基肥なし(対照) 1) 堆肥中アンモニア態窒素 穂肥はすべて窒素2kg/10a 表2 650 1300 1100 1400 1400 基肥窒素 (Nkg/10a) 堆肥 化肥 由来1) 由来 0 3 1.5 1.5 3 0 3 0 0 0 0 3 0 0 計 3 3 3 3 0 3 0 基肥リン酸 (P2O5kg/10a) 基肥カリ (K2Okg/10a) 堆肥 化肥 計 由来 由来 0 5 5 6 0 6 13 0 13 8 0 8 12 0 12 12 0 12 0 0 0 堆肥 化肥 計 由来 由来 0 3 3 7 0 7 14 0 14 7 0 7 18 0 18 18 0 18 0 0 0 4/21堆肥・基肥散布 4/22耕起・入水 5/11コシヒカリを移植 上記施肥設計での生育・収量・品質 SPAD 値 草丈 cm 稈 長 茎数 穂数 倒伏 2 2 2) /m /m 稲体 精玄 千粒 タンパ 3) 3) 風乾 米 重 ク質 ) 重 kg/10a kg/10a g % 6/19 7/1 7/15 7/30 9/2 9/17 6/19 7/1 7/15 7/30 9/2 7/15 9/2 慣行 36 41 36 33 29 16 31 50 67 89 92 485 421 0.8 1203 514 23.2 6.0 堆肥A50% 37 42 35 32 28 15 31 51 68 89 92 499 447 1.3 1252 523 23.3 6.0 堆肥A100% 36 42 36 31 28 16 30 50 67 88 92 478 414 0.3 1206 528 23.2 5.9 堆肥B100% 38 42 36 32 29 16 31 50 68 89 93 507 444 1.0 1196 502 23.3 6.2 堆肥Cのみ 34 39 35 33 29 16 29 46 64 88 90 447 372 0.0 1101 458 23.0 6.0 堆肥C+化肥 37 43 38 32 29 17 33 53 71 93 96 526 433 1.3 1274 538 23.2 6.1 穂肥のみ 29 45 63 85 88 385 350 0.3 1021 444 23.1 5.8 33 39 34 33 30 17 2) 無0~甚5 3) 精玄米中水分15%として [その他] 研究課題名:農業環境規範に適合する家畜ふん堆肥の肥効評価システムの確立 予算区分:公募(実用技術開発事業) 研究期間:平成 18∼20 年度 発表論文等:
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