本人が特定月に提出した一般旅券発給申請書等の不開示決定 - 内閣府

諮問庁:外務大臣
諮問日:平成19年8月23日(平成19年(行個)諮問第81号)
答申日:平成19年10月30日(平成19年度(行個)答申第70号)
事件名:本人が特定月に提出した一般旅券発給申請書等の不開示決定(不存在)
に関する件
答
第1
申
書
審査会の結論
「昭和61年外務省にて交付を受けた旅券に関する旅券法第3条に基づ
き,外務省へ提出した一般旅券発給申請書および添附書類で,一般旅券発
給申請書には特定代理店のゴム印は押されていない,一般旅券発給申請書
の署名欄にはローマ字筆記体で署名した。」
(以下「本件対象保有個人情報」
という。)の開示請求につき,これを保有していないとして不開示とした決
定は,妥当である。
第2
1
異議申立人の主張の要旨
異議申立ての趣旨
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)
12条の規定に基づく本件対象保有個人情報の開示請求に対し,平成19
年7月19日付け個人情報保護第2007−00021号により外務大臣
(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った不開示決定(以下「原
処分」という。)について,その取消しを求める。
2
異議申立ての理由
異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記
載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)異議申立書
ア
原処分の取消しを求める。
イ
平成19年7月19日付け決定(個人情報第2007−00021
号)記載事項第1項「あなたの開示請求に記された「開示を受けよう
とする個人情報(または行政文書の名称等)」より法13条1項2号に
基づく「開示請求に係る保有個人情報が記録されている行政文書の名
称その他の開示請求に係る保有個人情報を特定するに足る事項」へ更
正することを求める。
ウ
異議申立人は,昭和61年8月外務省(東京都有楽町分室:交通会
館2階)より旅券の交付を受け,特定国特定州における英会話合宿へ
参加した。外務省(東京都有楽町分室:交通会館2階)にて交付を受
けた一般旅券発給申請書には,特定代理店のゴム印は押されていなか
1
ったことの確認を求める。
エ
昭和61年8月,特定国(特定州)入国に際し,I―94Wの裏面
に行った署名(ローマ字筆記体)と昭和61年8月,外務省より旅券
の交付を受けた一般旅券発給申請書の署名欄と突合することを求め
る。
オ
昭和61年7月17日付け一般旅券発給申請書は,異議申立人が外
務省へ提出した一般旅券発給申請書とは異なる。すなわち,
①昭和61年8月外務省にて交付を受けた旅券に関する一般旅券発
給申請書には,特定代理店のゴム印は押されていなかった,②一般旅
券発給申請書の署名欄にはローマ字筆記体で署名したが,昭和61年
7月17日付け一般旅券発給申請書の署名欄には漢字での署名であ
った,③昭和61年7月17日付け一般旅券発給申請書(裏面)写真
は,異議申立人ではなかったので,昭和61年7月17日付け一般旅
券発給申請書を削除することを求める。
(2)意見書
ア
諮問庁理由説明書の3枚目4行目に記載のある「要求する」は誤り
であるので,「要求した」へ更正することを求める。
イ
諮問庁理由説明書の3枚目12行目ないし13行目の記載に関し,
昭和61年当時,一般旅券発給申請書には申請者自署欄はあったので,
「所持人自署欄はなく」との記載は誤りであるので,更正することを
求める。
ウ
平成19年8月31日付け申立書の宛名について,内閣府・外務省
は内閣府ではなく,外務省であるとした。同申立書は異議申立ての趣
旨及び理由を変更する申立てであったが,同年8月22日外務省は内
閣府へ諮問に要する史料を提出しており,宛名について,内閣府特定
職員は内閣府には窓口がないとして外務省へ提出せよと説明したが,
平成19年8月31日付け申立書の宛名は内閣府が正しく,外務省と
の宛名は誤りであるので,内閣府情報公開・個人情報保護審査会事務
局
第3
1
局長
渡辺秀一および外務省外務大臣町村信孝は更正する。
諮問庁の説明の要旨
本件開示請求について
(1)本件開示請求に先立ち,処分庁は,異議申立人が平成18年1月4日
付けで行った開示請求「昭和61年8月に旅券法第3条に基づき申請し
た一般旅券発給申請書および添附書類(申請者
本人
生年月日
特定
年月日)」に対し,1件の保有個人情報を特定し,開示する決定を行った
(以下「前決定」という。)。なお,前決定により開示を実施した保有個
人情報には,特定代理店の押印があり,また,申請者署名欄は漢字氏名
2
で記載されている。
(2)前決定により開示を実施した保有個人情報を踏まえて行われた本件開
示請求及び本件異議申立てに係る保有個人情報は,
「 昭和61年外務省に
て交付を受けた旅券に関する旅券法第3条に基づき,外務省へ提出した
一般旅券発給申請書および添附書類で,一般旅券発給申請書には特定代
理店のゴム印は押されていない,一般旅券発給申請書の署名欄にはロー
マ字筆記体で署名した。」である。
2
不開示決定(不存在)の妥当性について
処分庁は,本件開示請求及び異議申立てを受けて,改めて領事局旅券課
職員が取り扱う保有個人情報を含めて事実関係を確認したが,旅券発給申
請書の原本は保存期間(6か月)満了により既に廃棄されており,同課が
保有する本件対象情報は,前決定の際に開示を実施した,映像保存されて
いる当該保有個人情報のみであり,本件開示請求に係る文書を保有してい
ないため,不存在を理由とする不開示決定をしたものである。
3
異議申立人の主張について
(1)異議申立人は,本件開示決定通知書の1の標題「あなたの開示請求書
に記された「開示を受けようとする個人情報(または行政文書の名称
等)」」を「開示請求に係る保有個人情報が記録されている行政文書の名
称その他の開示請求に係る保有個人情報を特定するに足る事項」に更正
することを求めている。
しかしながら,異議申立人より更正を求められている内容は,決定等
通知書の様式に関するものにすぎず,行政不服審査法2条が定める処分
に該当するものではないため,異議申立ての対象となる論点ではない。
(2)異議申立人は,昭和61年8月外務省(東京都有楽町分室:交通会館
2階)にて交付を受けた一般旅券発給申請書に特定代理店のゴム印が押
されていなかったことの確認及び昭和61年8月,特定国(特定州)へ
入国前に航空機内で記載したI―94W裏への署名(ローマ字筆記体)
と昭和61年8月外務省より旅券の交付を受けた一般旅券発給申請書の
署名欄との突合を要求する。
しかしながら,外務省が保有している文書は,前決定により開示を実
施した,特定代理店のゴム印が押された一般旅券発給申請書のみであり,
異議申立人が求める確認や突合は,上記2で述べたとおり,文書不存在
により行うことはできない。
なお,一般旅券発給申請書署名欄は,戸籍の記載事項と照合すること
により本人確認を行っているため,ローマ字表記による署名は指導して
いない。一方,所持人自署欄にはローマ字表記も可能であるが,昭和6
1年当時,一般旅券発給申請書には所持人自署欄がなく,旅券冊子に直
3
接自署(いわゆる「サイン」)していた。なお,国内においては平成4年
11月1日以降の申請から機械読み取り式旅券(MRP)として一般旅
券発給申請書上の写真及び所持人自署は旅券冊子へ転写されることとな
った。
外務省は,特定国の公文書であるI−94Wの記録は保有していない。
(3)異議申立人は,原処分の取消しを求めているが,これについては上記
2のとおりであり,異議申立人の主張には理由がない。
4
結論
以上の論拠に基づき,諮問庁としては,原処分を維持することが適当で
あると判断する。
第4
調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
第5
1
①
平成19年8月23日
諮問の受理
②
同日
諮問庁から理由説明書を収受
③
同年10月19日
審議
④
同月26日
審議
審査会の判断の理由
本件対象保有個人情報について
本件開示請求は,
「 昭和61年外務省にて交付を受けた旅券に関する旅券
法第3条に基づき,外務省へ提出した一般旅券発給申請書および添附書類
で,一般旅券発給申請書には特定代理店のゴム印は押されていない,一般
旅券発給申請書の署名欄にはローマ字筆記体で署名した。」の開示を求める
というものである。
上記第1に掲げる開示請求は,特定代理店のゴム印が押されておらず,
署名欄にローマ字筆記体の署名がある,昭和61年の本人に係る一般旅券
発給申請書及びその添付書類に記録された保有個人情報の開示を求めるも
のと解釈できるので,当該情報を本件対象保有個人情報として,以下,本
件対象保有個人情報の保有の有無について検討する。
2
本件対象保有個人情報の有無について
(1)諮問庁は,本件対象保有個人情報の不存在について,次のとおり説明
する。
ア
本件開示請求に先立ち,処分庁は,異議申立人が平成18年1月4
日付けで行った開示請求「昭和61年8月に旅券法第3条に基づき申
請した一般旅券発給申請書および添附書類(申請者
本人
生年月日
特定年月日)」に対し,1件の保有個人情報を特定し,開示する旨の
前決定を行った。なお,前決定により開示を実施した保有個人情報に
は,特定代理店の押印があり,また,申請者署名欄は漢字氏名で記載
4
されている。
イ
処分庁は,前決定により開示を実施した保有個人情報を踏まえて行
われた本件開示請求及び異議申立てを受けて,改めて領事局旅券課職
員が取り扱う保有個人情報を含めて事実関係を確認したが,旅券発給
申請書の原本は保存期間(6か月)満了により既に廃棄されており,
また,同課が保有する昭和61年当時の本人に係る保有個人情報は,
前決定の際に開示を実施した,映像保存されている保有個人情報のみ
であり,本件対象保有個人情報を保有していないため,不存在を理由
とする不開示とした。
(2)諮問庁は,旅券発給申請書の原本は保存期間満了により既に廃棄され
ている旨説明することから,当審査会において,諮問庁より昭和61年
当時の一般旅券事務処理規則の提示を受け,確認を行ったところ,一般
旅券発給申請書及び一件書類の原本の保存期間は,昭和45年12月1
日から昭和62年2月18日までの間に受理したものは1年間,また,
昭和62年2月19日以降に受理したものは6か月とされており,当時
の保存期間は「6か月」ではなく「1年」であったことが認められる。
しかし,
「6か月」と「1年」の差異はあるものの,いずれにせよ,本件
開示請求が行われた平成19年6月の時点においては,昭和61年当時
の一般旅券発給申請書及び一件書類の原本の保存期間は既に大幅に徒過
していると認められることから,仮に,本件対象保有個人情報が作成さ
れたとされる当時,異議申立人が主張する内容の一般旅券発給申請書及
び一件書類が存在していたとしても,保存期間経過により廃棄されたも
のと推認される。
また,当審査会において,事務局職員をして諮問庁に確認させたとこ
ろ,諮問庁は,旅券発給申請書については,旅券が申請者に交付された
場合,そのすべての申請書を映像化して保存しているとのことであり,
念のため,当審査会において,これまでに異議申立人が申請を行った一
般旅券発給に係るすべての映像化された申請書(複数)の提示を受け,
確認を行ったところ,うち1件は昭和61年の一般旅券発給申請書であ
るが,残りの申請書はいずれも当該年より後に行われた一般旅券発給申
請書であることが認められる。さらに,昭和61年当時,異議申立人が
前決定で開示を受けた一般旅券発給申請書に係る旅券発給申請の外に,
別途一般旅券の発給申請を行い旅券の交付を受けた事実を推認させる特
段の事情があるとも認められない。
なお,諮問庁は,本件開示請求及び異議申立てを受けて,改めて領事
局旅券課職員が取り扱う保有個人情報を含めて事実関係を確認し,文書
を探索したが,昭和61年当時,異議申立人から提出された一般旅券発
5
給申請書及び関係書類で,現在もなお映像保存されているものは,前決
定において異議申立人に開示した保有個人情報が記載された文書のみで
あり,それ以外の関係書類は存在しなかった旨説明する。
これらのことから,本件対象保有個人情報の性質にかんがみ,処分庁
における探索の範囲は妥当であり,また,外務省において本件対象保有
個人情報を保有していないとする諮問庁の説明には,不自然・不合理な
点は見当たらない。
したがって,本件対象保有個人情報を保有しておらず,不存在である
とする諮問庁の判断は是認できる。
3
異議申立人のその他の主張について
異議申立人は,本件異議申立ての手続中において,本件開示決定通知書
の1の標題「あなたの開示請求書に記された「開示を受けようとする個人
情報(または行政文書の名称等)」」を「開示請求に係る保有個人情報が記
録されている行政文書の名称その他の開示請求に係る保有個人情報を特定
するに足る事項」に更正することを求めるなど,上記第2の2のとおり,
さまざまな要求を掲げているが,いずれも本件異議申立ての範囲を超える
ものであり,当審査会の上記判断を左右するものではない。
4
本件不開示決定の妥当性
以上のことから,本件対象保有個人情報につき,これを保有していない
として不開示とした決定については,外務省において本件対象保有個人情
報を保有しているとは認められず,妥当であると判断した。
(第2部会)
委員
寳金敏明,委員
秋田瑞枝,委員
6
橋本博之