2013 年度 第3 回ハラール研究会 サマリー - フード特区機構

報告書
2013 年度 第 3 回ハラール研究会 サマリー
日時 : 2013 年 8 月 27 日(火) 14:00~16:00
場所 : 札幌グランドホテル3F 涼風の間
1.講演① :
「ハラールフード認証について」
講師
東京ジャーミイ&トルコ文化センター
広報責任者
下山 茂 氏
●最近の傾向として、東京ジャーミイへの東南アジアからの観光客が急増している。
●この観光客の問題として、ハラールレストラン、食材販売店、ホテル(礼拝の場所)が少ないなどがある。
●東京で一番きれいなモスクへの礼拝をするため東京ジャーミイに訪れる。
●インドネシアは、ムスリム人口の No.1 であり、ベスト5の中にアラブ諸国は入っていない。
●今後、インドネシア・マレーシア・タイから予想以上に多くの観光客が訪れると思われる。
●イスラム教の考え方、行動規範などを理解していただいて、ハラールとは何か理解して欲しい。
●一神教~神と人間の垂直の関係、人間と人間の水平の関係、これがコーランに書かれている。
●ハラール・ハラームは食分野だけではなく、生き方におけるもの。例)商売におけるハラームもあり。
●アッラーの名前を唱えないで殺された動物の肉はハラーム。
・豚肉はコーランに書かれていればハラーム。啓示宗教は全てを受け入れるものだからである。
・コーランには、豚肉は不浄であると書かれているが、何が不浄なのかは書かれていない。
●イスラム教は幸せの為になる方法としてハラールに生きなさいと説いている。
●イスラム教の普遍性は平等~神の前での平等・兄弟である。
・預言者の別れの聖教の中で「アッラーの元でアラブ人はアラブ人でない者に対し、アラブ人でない者は
アラブ人に対し、何の優越性を持っていない」と言っている。
(7世紀のイスラム教の平等宣言)
講師 イスラミックセンター・ジャパン
理事 ムサ・ムハンマド・オマル・サイード 氏
●世界の宗教分布図におけるイスラム教の現状。
●聖地マッカのカアバ神殿で集団礼拝の際も、僅か20秒足らずで整列している。
●イスラーム教徒の人口:16億人、世界ハラール市場:15兆円、イスラーム教徒の購買能力:60兆円
●コーラン「第5章3」には、禁止事項が明記されている。ただし、命に係わる何も食べるものが無いよう
な場合は、罪にならず許される。
●ハラール認証のロゴは様々なものがある。ロゴは何でも良く、決めれたものは無い。
●コーランによって禁じられているものは、体に良くないものと理解しても良い。
●ハラームは食だけではないも、肉に関して言えば、屠畜方法が一番重要。海産物はタコを除いて、食べて
OK。禁じられたものとしては、豚肉、死んだ動物、血、ライオン、トラ、猛禽類など。
●動物については、飼料は何か、屠畜方法はどうか?イスラム教徒が確認した上で、宗教団体から証明書が
発行される。
●昔はハラールの判別の難しく、豚系原材料によって作られたスープのラーメンを何度も食べた経験がある
●飼育飼料→屠畜場検査→屠畜方法→加工場検査→使用原料(添加物を含む)→製造工程→包装資材→保管
場所。トレーサビリティによる一連の証明が重要となる。
●新千歳空港が先行して行っている「ムスリム・フレンドリー」の取り組みを、関西空港でも行うようだ。
【質疑応答】
Q1 商品ハラール認証に係る費用は?
A1 1通 10,000 円/1件当たり(船積毎)とテスト費用、交通費と工場視察に係る費用(20,000 円/
1人・1日)
。宗教団体であるから、宗教としてのサービスと考えてもらいたい。
Q1 商品ハラール認証におけるサンプリングは製造時かそれとも送付による?
A1 まずは工場や原料のスペックを全て出していただいてから、商品サンプルを送付していただき、例え
ば日本食品分析センターなどへ検査に出し、検査成績書によりハラールかどうか判断する。そして、
半年ごとに追跡検査に行き、任意に商品抽出し再度分析検査に出す。
Q1 ハラール対応設備は専用設備を設ける必要があるのかどうか?
A1 屠畜場の場合は、同じ場所で豚を屠畜してはダメ。加工場の場合は、豚由来の原料を使用した機械設
備であれば、いくら洗浄してもダメ。専用の設備・ラインが必要だと考える。
Q1 仮に専用設備での製造ではないも、食品分析検査(DNA判定)でパスしてもダメか?
A1 今までは基本的に専用設備が必要だが、DNA判定で何も入っていないと証明できれば多分大丈夫か
と思われるが、今後検討の余地はあると思われる。しかし、今現在、日本にある商品でハラールのもの
は沢山あると認識しているから、その調査をもっと行う必要があると考えている。
Q1 ビール酵母による製造品は、アルコールが入っていなければ大丈夫か?
A1 多分大丈夫だと認識しているが、曖昧な部分があるので調べてから回答する。
2.講演② :
「ハラールフードビジネス実践例」
講師
アル・イッテハード合同会社 執行責任者(CEO) 吉川 香潮 氏
●第1回研究会に参加された東洋水産㈱さんでは、ユダヤ教のコーシャの製品を製造しているも、専用ライ
ンを設けてはいない。どういう解釈をするか、ラインを見てどういう状況か、最終的にどういう結果がで
るか、それを見てからの判断となる。
●ハラール・ハラームはイスラム教徒が判断するものであって、それ以外の人間が判断するものでは無い。
●農産物や海産物、動物・家畜など自然な状態で育成し、神から与えられたものはハラールである。
●先程のビール酵母のような曖昧なものは、輸入国側の判断を仰がなくてはならず、日本で 100%判断する
には無理があるものも存在することを承知しておいて欲しい。
●既にドバイ・サウジへ日本製品が入っているが、大騒ぎになっていない。その国の輸入許可を得れば良い
訳なので、自然発酵系の商品で長く流通しているものはある。
●マレーシア政府では認定機関を作って、認定機関の登録業者が扱うことが可能。認定では無く、登録。な
ので、例えばフード特区機構が会社だとすると、その支店がジャカルタなどにあれば、認定業者の申請を
すれば、許可が下りれば自分たちがハラールだといえば、すべての食品が通る可能性がある。
●サウジアラビアではSFDA(サウジアラビア食品医薬品庁)が認めれば、全てハラールという解釈が通
用する。
●北海道の中に、既にハラールなものは多く存在すると思うので、チャレンジして欲しい。
●イスラム人口は増えてきている。東京だとハラールの肉の需要はある。現在は輸入に頼っているため、北
海道での供給が可能になれば、国内販売でも幾らかは流通できるのではないか。
【質疑応答】
Q1 イフタール開催の際にキーとなる商品が「ラーメン」だと感じたのだが、本格的な流通が可能になる
前の設備投資は負担が大きいので、それまでの対応策は何かないものか?
A1 代替案・代替策はあるのではないか?現状の設備で出来ることは全て行い、DNA判定を行い、残存
物が無い場合(日本の食品安全基準もクリアしていること)など、輸入する側に判断を任せる方法も。
Q2 食品分析検査については、日本食品分析センターを活用すべきか?イスラミックセンター・ジャパン
の指定する分析機関へ依頼すべきか?
A2 日本食品分析センターのような準公的機関での分析結果は尊重する。各宗教団体が持っている法学者
委員会でチェックして貰う方法もある。高度な判断が必要なケースは、その判断ができるイスラム法学
に精通している学者にお願いする。
4.報告 : 「イフタール開催(試食会)について」
報告者 北海道食産業総合振興機構 研究開発部 統括部長 鍋島 芳弘
●7月26日(金)サウジアラビア大使館の場所を借りて、北海道食品15品ほどの試食会を開催した。
サウジアラビア大使はじめ現ドバイ総領事、元リビア大使、大砂嵐などの方がにご参加いただいた。
●今回試食いただいたものは、かなり好評であったと感じている。
●この試食会は単なるイベントでは無く、ここで得たアンケート結果にある、評価・改良点を踏まえ、11
月のサウジアラビア、12月のドバイで開催予定の試食会に改良した商品を持ち込み、具体的なビジネス
に繋げて行きたいと考えている。
●11月末のリアドでの大使館公邸を借りての試食会、それからジェトロと連携しての B to B、現地の企
業を招いての試食会を計画している。
●今後予定している試食展示会に向けて、試食品提供と出展企業を募っておりますので、お願いします。
日程についても、ご希望がありましたら是非、お声掛けください。
●今回の試食会においても成分分析を行って試食いただいております。今後の試食展示会についても、同じ
ように成分分析を行って試食に臨みたいと考えております。この分析の手配は、フード特区機構で行いま
すので、ご協力をお願いしたいと思います。
以上