ボアホールジャッキ試験における地盤と載荷板の摩擦係数

全地連「技術フォーラム2012」新潟
【15】
ボアホールジャッキ試験における地盤と載荷板の摩擦係数
1.
川崎地質㈱
○川久保
昌平
川崎地質㈱
原田
克之
川崎地質㈱
川井
康右
ん断応力成分τ rθは,孔壁と載荷板との動摩擦係数μ’
緒言
本研究では地盤と金属製の載荷板との摩擦実験を行
(<1.0)を乗じた分しか伝達されていないことが懸念され
い,両者の接触面でのμ’を求めることにより,すべりを
る(図-2).その場合には,境界条件を完全密着範囲と非
生じない範囲である有効載荷角度β’を検証した.以下,
密着範囲に区分して理論解析しなければならない3).
本論文では地盤材料に岩盤を想定し,数種類の岩石試料
を用いた実験結果について報告する.
3. 地盤材料及び金属板
岩石材料として第三紀砂岩(鋸山産)
,大谷石(宇都宮
産)及び花崗岩(小豆島産)を用い,縦100mm×横200mm
2. ボアホールジャッキ試験における載荷状況
y
剛体載荷板
2β
×高さ100mm の直方体の試験片を作成した(写真-1)
.
d
2
P
θ
O P
x
地盤
図-1 ボアホールジャッキ試験
すべり
範囲
σr
σr
µ 'τ rθ
τ rθ
完全密着
範囲
τ rθ
σr
σr
µ 'τ rθ
(a)砂岩
µ:動摩擦係数
'
2β:有効載荷角度
'
2 β :載荷角度
すべり
範囲
図-2 載荷板側の表面応力
図-1 に示すような等変位方式の孔内水平載荷試験(以
下,ボアホールジャッキ試験)は,地盤の変形係数を測
(b)大谷石
定する原位置試験であり,変形係数 D は,初期ボーリン
グ孔径 d ,荷重増分Δp ,変位増分Δu として次式で与
えられる1),2).
D=
∆p
d
⋅ φ (ν , β ) ⋅
.
2
∆u
(1)
ここに,φ (ν , β ) はポアソン比νと載荷角度βの関数値
であり,具体的には数表として文献2)に示されている.
この算定式は弾性理論から導出されるものであるが,
境界条件として孔壁と載荷板が完全密着していることを
前提としている.しかし,ボアホールジャッキ試験では
孔壁及び載荷板が一定の曲率を有していることから,荷
(c)花崗岩
重載荷時に載荷板の端部にすべりを生じ,接線方向のせ
写真-1 実験で用いた岩石試料
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4. 実験装置及び実験の方法
50
実験装置を図-3 に示す.載荷板と同じ材質の金属板
40
もりを載せ,側方からロードセルで岩石試料をゆっくり
30
と水平移動させた.荷重及び変位データは,ロードセル
F (N)
(縦100mm×横200mm×厚さ10mm)の上に岩石試料とお
砂岩
大谷石
花崗岩
20
及びシャフト起動装置内の変位計からデータロガーに送
10
信して記録した.
μ’は F と N を測定することにより求めることがで
0
きる.水平荷重を F ,動摩擦係数をμ’,垂直抗力を N
0
50
及び重力加速度を g とすると,これらには次式
F = µ' N g .
100
150
N (N)
(2)
図-5 水平荷重と垂直抗力の関係
の関係がある.N は岩石試料 M とおもり m の合計質量
(M+m) である.m は①0.8kg,②1.6kg,③3.2kg,④6.4kg
表-1 実験結果
の4種類を用意し,N を段階的に増加させることにした.
μ’
β’(°)
最小値
0.278
15.5
最大値
0.313
17.4
平均値
0.293
16.3
最小値
0.301
16.7
最大値
0.328
18.2
平均値
0.311
17.3
最小値
0.182
10.3
最大値
0.252
14.1
平均値
0.232
13.0
岩種
砂岩
大谷石
図-3 実験装置模式図
花崗岩
5. 実験結果と考察
(1) 実験結果
F によって岩石試料とおもりが変位する際の時間経過
その結果,平均値で砂岩16.3°,大谷石17.2°,花崗岩
によるデータは図-4 となった(花崗岩の場合).他の2
13.0°となった.これに対し,岩盤を対象とした国内ボ
種の岩石についても同様にデータを収集し,式(2)の関
アホールジャッキ試験の機種はβが13°程度である.つ
係に基づき F と N の関係をプロットすると,図-5 とな
まり,β’は実際の試験機のβと同程度以上であり,載荷
った.
この図 でプロットされた点を岩種毎に直線回帰さ
板端部ですべりはほとんど生じないことになるから,完
せ,その傾きを求めるとμ’となる(表-1 )
.その結果,
全密着を前提とした弾性解析は有効であるといえる.
砂岩で0.278~0.313,大谷石で0.301~0.328,花崗岩で
0.182~0.252 となる.
6. 結言
これまでほとんど把握されていなかった岩石と金属製
(2)考察
μ’から β ' = tan µ ' の関係よりβ’ を求めると,表
−1
載荷板の動摩擦係数を数種類の岩種について求めた.そ
の結果,岩石を対象とする国内のボアホールジャッキ試
-1 の右欄となる.
験において,変形係数の算定式(1)は有効であることが
35
2.5
て,同様の検討を行っていくことが必要である.
荷重
30
④
③
1.5
20
②
15
1.0
①
10
0.5
変位量( mm)
2.0
変位
25
荷重F ( N)
確認された.今後はその他の岩石や軟質地盤を対象とし
《参考文献》
1) 等変位孔内載荷試験における弾性厳密解を用いた岩
盤変形係数の算定,川久保昌平・結城則行,土木学会
論文集 No.666/Ⅲ-53,pp.45-53,2000.12.
2) ボアホールジャッキ試験による地盤変形係数算定の
5
厳密化への取り組み,
川久保昌平,
原田 克之,
川井 康
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図-4 荷重,変位データ(花崗岩)
右,第46回地盤工学研究発表会講演論文集,2011.7.
3) KKT を用いた孔内載荷試験結果の算定方法の検討,
全地連「技術フォーラム2011」京都 講演概要集,
【16】,2011.9.