ドイチェ・アセット・マネジメント

臨時レポート
ブラジル・レアルの下落と今後の見通し
2015年2月16日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
 ブラジル・レアルは足元、対米ドルで2004年来の安値水準まで下落しています。
 ブラジルの景気見通しが下方修正されたことやペトロブラスの汚職問題に加え、為替介入の方針が変更さ
れる可能性に対する警戒感等の要因から、レアルは短期的には神経質な展開が続きそうです。
 2015年1月の第2期ルセフ政権発足以降、政府の財政健全化に向けた着実な動きが見られていることは、
短期的には景気を下押しする可能性があるものの、中長期的にはプラスに働くものと考えています。
【ブラジル・レアルが下落】
ブラジル・レアルは下落傾向が続いており、2015年2月11日には対米ドルで2004年来の安値となる水準まで下落しまし
た。ブラジルの景気見通しが下方修正されたことやペトロブラスの汚職問題を巡る混乱に加え、レビ財務相がレアルを
買い支えるための為替介入策に否定的な発言をしたこと等がレアル下落の要因となりました。
(円)
【図表1】ブラジル・レアルの推移
(2004年1月1日~2015年2月13日、日次)
(レアル)
80
0.0
レアル/円(左軸)
米ドル/レアル(右軸)
70
60
0.5
1.0
50
レアル高
1.5
40
2.0
30
2.5
20
3.0
10
0
2004/1/1
2006/1/1
出所:Bloomberg
レアル安
3.5
2008/1/1
2010/1/1
2012/1/1
2014/1/1
(年/月/日)
【ブラジル・レアルを取り巻く環境】
①景気見通しが悪化
ブラジル経済は2011年に第1期ルセフ政権が発足して以降、低成長が続いています。鉱工業生産は2014年2月を最
後に前年比マイナスで推移しています。また、2014年12月の小売売上高が前年比+0.3%と市場予想を大幅に下回る
等、景気の停滞感が強まっています。こうした中、ブラジル中央銀行(以下、中銀)が発表している民間エコノミスト約
100人による2015年のGDP成長率の予測値は2015年2月6日時点で前年比0%まで下方修正されました。このように、
景気見通しが悪化していることがレアル下落の一因となりました。
【図表2】実質GDP成長率の推移
(%)
(2005年1-3月期~2014年7-9月期、四半期 )
10
GDP(前年同期比)
8
GDP(前期比)
6
4
2
0
-2
-4
-6
2005 2006 2007
出所:Bloomberg
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (年)
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150216-5
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ブラジル・レアルの下落と今後の見通し
【図表3】鉱工業生産(前年比)の推移
(2009年1月~2014年12月、月次)
25
(%)
【図表4】小売売上高(前年比)の推移
(2009年1月~2014年12月、月次)
18
20
16
15
14
(%)
12
10
10
5
8
0
6
-5
4
-10
2
-15
0
-20
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1 (年/月)
出所:Bloomberg
-2
2009/1
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1 (年/月)
出所:Bloomberg
②インフレ率上昇と利上げ継続
ブラジルのインフレ率は2015年1月には前年同月比+7.14%と2011年9月来の高水準となりました。足元、インフレ率が
一段と上昇した主な背景として、従来政府がインフレ対策として実施してきたバス運賃や燃料・電力価格の抑制策を
撤廃したことが挙げられます。
今回の撤廃は政府の財政健全化策の一環です。インフレ率の上昇によりブラジルの経済成長は短期的には抑制さ
れると考えられますが、一方で財政健全化のための取り組みが具体的に進められていることに対し、市場では評価の
声も挙がっているようです。
金融政策については、市場では今後も中銀は利上げを継続すると予想しています。中銀は2014年10月以降、3会合
連続で利上げを行っており、議事録でもタカ派的な姿勢を維持しています。
(%)
16
【図表5】政策金利とインフレ率の推移
(2008年1月1日~2015年2月13日、日次)
政策金利
14
インフレ率(前年同月比)
12
10
8
6
4
2
0
2008/1/1
2010/1/1
2012/1/1
2014/1/1
(年/月/日)
出所:Bloomberg
※インフレ率=IPCA(拡大消費者物価指数)とは、最低給与からその40倍の給与
水準までの家計を調査対象にした消費者物価指数。政府の公式インフレ指標。
※インフレ率については、2015年1月時点まで。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150216-5
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③ペトロブラスの汚職問題
ブラジルの国営最大手の石油会社であるペトロブラスに対しては、閣僚ら与党の有力政治家に対し賄賂を贈っていた
とする疑惑が掛けられています。ペトロブラスの汚職疑惑については、ブラジルの検察当局に加え、米司法省や米証
券取引委員会も調査を進めています。会計事務所が決算書類への署名を拒否したため、2014年11月公表予定で
あった2014年7-9月期決算発表が遅延していました。2015年1月28日にようやく公表されたものの、汚職に関する資産
の評価損が決算内容には盛り込まれておらず、また監査法人の承認も受けていないものでした。決算発表を受け、米
大手格付け会社ムーディーズはペトロブラスの格付けを投資適格級の最低水準であるBaa3に引き下げるとともに、更
なる格下げもあり得るとしています。
2015年2月4日にはCEOと幹部5人が辞任し、翌6日にはCEOの後任に国営ブラジル銀行頭取のアルデミル氏が選出
されたと発表されました。市場では、政府との関係が薄い人物の選出が期待されていたことから、今回の決定に対し
失望感も見られます。そのため、新体制における同社の取り組みや監査済みの決算報告書を提出できるかどうか等
が注目されています。
④財政健全化策の進展
ブラジルの2014年12月の基礎的財政収支は129億レアルの赤字となる等、財政は厳しい状況にありつつも、政府は
2015年の基礎的財政収支の目標として対GDP比1.2%の黒字という水準を依然表明しています。第2期ルセフ政権発
足後、政府は財政健全化策を相次いで発表し、その実施に取り組んでいます。これまで批判されてきた政府の市場
等への介入主義が転換されつつあるようです。
歳入面については、政府は2015年1月初より自動車等に対する軽減税率の撤廃を実施したことに加え、2015年1月19
日には燃料、輸入品、消費者ローン等に対する増税を発表しました。これらの政策により政府は債務削減目標達成
に必要な資金のうち約1/3を確保できると予想しています。
歳出面についても大幅な削減方針を示しており、電力会社への公的財政支出を抑制するほか、世界で最も手厚いと
も言われている失業保険制度や年金制度を改正し給付を抑制すること等を決定しています。これらの政策は財政規
律を高める一方で、国民生活に影響することから、景気の下押し材料となる可能性もあります。
【今後の見通し】
為替政策については、今後方針が変更される可能性もあるものの、レアル相場への急激な影響を抑えつつ段階的な変
更が進められていくものと見ていますが、政府の方針には引き続き注意が必要と考えます。また、ブラジルの景気見通
しが悪化していることやペトロブラスの汚職問題が継続していることもあり、レアルは引き続き神経質な展開が続くと思
われます。
もっとも、レビ財務相を中心とする第2期ルセフ政権の経済チームが事前の予想を上回るペースで財政健全化策を推し
進めていることで、投資家の信頼回復が見込まれるほか、格下げリスクの低下につながると見られます。このため、財
政健全化策が短期的には景気を下押しする可能性もあるものの、中長期的にはブラジルにとってプラスに働くものと考
えています。
また、当局が強いインフレ抑制姿勢を維持していることを背景に、利上げが継続されるとの予想が市場では優勢となっ
ています。先進国を中心に金融緩和策が継続している中で、ブラジルの相対的に高い利回りが魅力となり、中長期的
にレアルにとってプラス要因となると考えています。
※上記見通しは現時点のものであり、今後変更となる場合があります。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
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によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
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ご留意事項
●投資信託に係るリスクについて
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とし投資元本が保証されていないため、
当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。したがって
お客様のご投資された金額を下回ることもあります。
また、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることか
ら、リスクの内容や性質が異なりますので、ご購入に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約
締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で判断して下さい。
●投資信託に係る費用について
【お申込みいただくお客様には以下の費用をご負担いただきます。】
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加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
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