土被りの浅い道路直下のトンネル掘削における補助工法の選定 石川県 南加賀土木総合事務所建設課 非会員 鍬田雅之・石川敏充 大成建設株式会社北信越支店土木部 非会員 原 康彦 1.はじめに (仮称)日谷トンネルは,北陸自動車道小松IC・小松空港から加賀市東部の丘陵地にある山代温泉を経由 して加賀ICに至る延長 27.9km の南加賀道路整備事業の一部を構成する延長 1,061m,全幅 10.5m(車道歩 道 6.5m,路肩 0.75m×2,歩道 2.5m)のトンネルである.そのトンネルの起点側約 350m の地点については, 土被りが非常に浅く,地表部にある市道とは立体交差となる計画であり,今回はその低土被り区間の施工に 際し,安全かつ経済的な掘削工法について検討を行ったので報告いたします. 日谷トンネル 市道交差部 現 場 位 置 図 ゴルフ場 風呂源泉 ゴ 道路脇水路 段差約2.5m 市道部 土被り約6.0m 沢部 土被り約3.5m 現 地 トンネルセンター 写 真 2.現地地質状況について 現地の地質状況は,トンネル直上に約 2.0 から 1.0m の一軸圧縮強度 10~12N/mm2 の新鮮な凝灰角礫岩が あり,その上に約 1.0m の風化凝灰角礫岩がある.さらに約 1.0m の強風化凝灰角礫岩,礫混じり粘土である 表土が堆積している状態である.トンネル直上部の新鮮な凝灰角礫岩については,調査ボーリングにおいて も亀裂が少なくコアの採取率も良く,また,室内試験における弾性係数が比較的大きいこと(E=3,500~ 7,000MN/m2)が確認されている. 道路部 沢部 土被り約 6.0m 土被り約 3.5m トンネル トンネル掘削方向 道 路 横 断 部 模 式 図 3.設計時のFEM解析について 今回の低土被り区間については,計画時から入念な地質調査とコンサルタントによる詳細な検討がされて おり,弾性非線形によるFEM解析(トンネルの施工ステップによる逐次掘削解析)がなされているが,そ の解析結果については,弾性係数が非常に大きいこと等から道路部でもほとんど沈下が生じない結果となっ た.しかしながら将来における凝灰角礫岩の強度低下や地質の不均一性,掘削に伴う三次元的な応力再配分 など計算上考慮しにくい不確定要素がありこれらをカバーするために,トンネル掘削の実施に際しては十分 な安全性が要求される. 4.補助工法の選定について 以上より安全かつ経済的なトンネルの掘削工法について検討した結果について,次頁の低土被り区間にお ける対策工法の選定フローに示す. このフロー図により,現地の地下水位・水圧をボーリングにて確認したところ,沢部の表面水とほぼ一致 し高い水圧は確認されなかった.そこで,車輌の通行を確保しつつ安全かつ経済的にトンネル掘削工事を行 うために,次のような施工方法を採用する. ① 地表面からは,堆積土・盛土部分を事前にセメント改良して地盤の剛性を高めることにより,岩盤がト ンネル掘削により緩んだ場合でも道路等に陥没が生じないように補強する. ② トンネル内からは,手前からトンネルの天端部にΦ114.3mm の鋼管約 21.5m(AGF)を 20 本打ち込み, 早強タイプのモルタルを充填(岩盤の亀裂が少ないため,周辺地盤への注入補強は考慮しない)するこ とにより,トンネル周辺地盤の見掛けの剛性を高める。仮にトンネル掘削により地盤を緩めた場合には その鋼管が天端部の防護の役割を果たすことが期待される. ③ 道路直下部のトンネル掘削に際しては、昼夜で監視に当り,万一異常が生じた場合は通行止めを含めて 直ちに対応できる体制を取る. 5.おわりに 当該地点のトンネル掘削通過時期は今年11月初旬を予定しており,地表面からの改良工事は10月上旬 を予定しております.施工結果につきましてもご報告いたします. 施 工 模 式 図 29.33 45.89 32.95 37.82 44.50 39.96 32.82 R=2000 R=∞ 37.11 T.6-1 42.49 NO67+10.846 35.28 39.36 T.6 32.92 30.53 39.46 39.48 40.49 28.57 30.27 33.36 33.89 29.87 29.66 28.59 34.55 28.34 28.93 32.04 31.10 27.40 32.95 31.36 31.53 31.77 BV-7 NO.70+15.0 T.57 29.50 29.48 NO.70 +10.0 BV-6 30.71 NO.70+5.0 NO.70 NO.69+15 NO.69 NO.69+5 NO.69+10 28.03 BV-5 NO.68+15 NO.68+10.0 36.90 NO.68 NO.67 +10.0 37.44 38.65 NO.68+5.0 NO.6+7.15.0 EC.8 31.96 30.66 27.28 30.95 35.36 34.26 28.58 30.35 31.01 32.88 31.06 30.51 28.98 35.78 27.12 38.40 40.79 28.88 29.65 30.85 28.76 30.48 37.67 29.47 40.75 39.69 42.69 T.58 27.90 28.61 30.21 39.96 道路横断部施工断面図 DL.35.0 No. BV-5 土砂 ▽29.75m 0 +1 68 No. 70 N o. 69 ソイルセメント工 2 設計強度 qu=1N/mm 埋戻し工 舗装工 DL.30.0 BV-7 ▽30.86m N値 0 10 20 30 40 50 BV-6 表土 ▽28.68m 礫混じり 粘土 強風化凝灰 角礫岩 礫混じり粘土 強風化凝灰岩 N値 0 10 20 30 40 50 粘 土 強風化凝灰 角礫岩 凝 灰 岩 強風化凝灰 角礫岩 DL.25.0 風化凝灰 角礫岩 1300 凝 灰 角 礫 岩 S.L F.H 凝 灰 角 礫 岩 4972 600 凝 灰 岩 質 砂 岩 泥 岩 トンネル断面図 NO.69 GH=29.79 FH=16.669 13000 埋戻し工 ソイルセメント DL=30.0 BV-5 ▽29.75m BV-6 N値 0 10 20 30 40 50 ▽28.68m N値 0 10 20 30 40 50 粘 土 表土 表土 礫混じり 粘土 強風化凝灰 角礫岩 強風化凝灰 角礫岩 強風化凝灰 角礫岩 風化凝灰 角礫岩 充填式AGF 凝 灰 角 礫 岩 凝 灰 角 礫 岩 SL NO.69+10 GH=28.53 FH=16.877 埋戻し工 DL=30.0 ソイルセメント 設計強度 qu=1N/mm2 BV-6 ▽28.68m 粘 土 N値 0 10 20 30 40 50 強風化凝灰 角礫岩 風化凝灰 角礫岩 充填式AGF 充填式フォアポーリング 凝 灰 角 礫 岩 SL
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