柑きつ「はるみ」の交互結実による安定生産

柑きつ「はるみ」の交互結実による安定生産
ねらい
長門・北浦地域では、消費者ニーズに即した中晩柑の新品種として「はるみ」の導入が
推進されている。しかし、「はるみ」は新品種であるため、その特性は十分明らかにされ
ておらず、隔年結果性が強い等の栽培上の問題点もいくつか指摘されている。そこで、隔
年結果性の強い「はるみ」の特性を考慮して、隔年交互結実栽培法での高品質安定生産技
術を確立し、品種導入の推進に資する。
主要成果
1 「はるみ」の特性
(1) 着果率が高く、「川野ナツダイダイ」の約2倍と良く着果する。
(2) 果実の大きさで糖・酸が大きく変化し、小玉ほど糖・酸とも高い(図1)。
2 着果管理
(1) 高接樹では、樹勢・収量・果実品質のバランスからみて半樹別交互結実が良い。若
木では、樹勢低下が起こらないため、樹別交互結実が良い(表1)。
(2) 生産年の摘果は、葉果比 100 ~ 120 を目標に行う(図2)。
(3) 遊休年は、7月上旬に全摘果する。
(4) 商品性の高い L・LL 級果実(ネーブル規格)を生産するための摘果は、表2を参
考に行う。
(5) 偏平果を確保するために、有葉果で葉の枚数が多い果実を残す(図3)。
3 整枝・せん定
(1) 生産年(表年)は、原則として無せん定とする。遊休年は、3月に樹形を整えるた
めの間引き主体のせん定とし、うんしゅうみかんのような強せん定は避ける。
(2) 秋枝に着果した果実も、夏枝に着果した果実に、糖・酸含量とも劣ることはない(図
4)。そのため、秋枝もせん除せず結果母枝として利用する。
4 水腐れ防止対策
(1) 12 月上中旬に防鳥対策を兼ねて防寒用被覆資材(サニーセブン)で樹全体を被覆
する。
5 収穫・貯蔵
(1) 収穫は1月上中旬に行い、酸含量が1%前後になるまで貯蔵して出荷する。
(2) 短期貯蔵では、予措の必要はなく、裸果で2ヶ月程度の貯蔵は可能である。
(3) 長期貯蔵では、5%予措でポリ個装し、3月 20 日以降5℃で冷蔵貯蔵する。冷蔵
すると、5月上旬まで貯蔵可能である。
(4) 生産樹の収穫量は4 t/10a を目標とする。
成果の活用面・利用上の留意事項
1 うんしゅうみかん又は中晩柑の栽培適地に植栽する。
2 「はるみ」は、かいよう病や傷果が出やすいので、風当たりの少ないほ場を選ぶと共
に、防風対策やかいよう病防除には十分配慮する。
3 遊休樹・遊休枝に発生する夏秋梢は結果母枝として利用するため、加害するミカンハ
モグリガの防除は必ず行う。
4 L・LL 級果実は短期貯蔵とし、M 級以下の小玉果を長期貯蔵とする。
5 樹勢を維持するために、適正摘果や土作り等の肥培管理に努める。
関連文献等
なし
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試験成績
大田ポンカン
宮内伊予柑
川野ナツダイダイ
土佐文旦
はるみ
16.5
14.5
糖
度
12.5
g
300
1 250
果
平 200
均
重 150
100
10.5
S
M
L
LL
3L
果実の大きさ
0
4L
図1 果実の大きさと収穫時の糖度の関係
(H15年)
100
200
葉果比
300
400
図2 若木における葉果比と1果平均重の関係
(H15年)
10
18
8
秋枝果実
夏枝果実
16
有
葉 6
果
の
葉 4
数
2
糖
14
度
12
10
0
90
100
(腰高)
110
120
果形指数
130
50
140
(偏平)
柑試
若木
大井
高接
若木
高接
慣行
樹別
慣行
慣行
樹別
慣行
樹別
半樹別
150
200
果実重 (g)
250
図4 秋枝と夏枝の果実糖度の違い
(H17年)
図3 果形指数と有葉果の葉数の関係
(H15年)
区 名
100
表1 栽培法別の生育及び果実品質の推移
3
樹冠容積 (m )
酸 (%)
H14年度 H15年度 H16年度 H17年度 H15年度 H16年度 H17年度
3.5
5.5
7.2
8.4
1.08
1.15
1.53
3.8
4.7
7.7
8.7
1.61
1.22
2.33
24.9
21.4
29.1
21.3
1.45
1.14
2.24
2.3
4.3
4.0
4.7
(0.76)
1.65
2.5
5.8
4.7
6.8
1.12
1.91
35.8
58.0
52.6
49
1.27
1.60
28.5
30.6
34.7
33
1.40
1.97
25.1
57.0
43.4
44
1.21
1.78
糖
H15年度 H16年度 H17年度
13.2
13.0
11.4
14.3
13.2
12.6
14.2
11.5
12.8
(10.2)
11.9
13.4
12.1
13.1
11.4
14.3
11.7
14.1
11.9
注1)摘果は葉果比120を目標に行った。
注2)平成15年度の大井 若木 慣行は、着果数が極端に少なかったため参考デ-タとした。
表2 果実肥大の推移 (横径)
7月25日 8月10日 8月25日 9月10日 9月25日 10月10日 10月25日
3.1
4.1
4.8
5.5
6.1
6.5
6.9
3.4
4.4
5.2
5.9
6.6
7.0
7.4
3.7
4.8
5.7
6.4
7.1
7.6
8.0
(cm)
12月10日
階級
L
7.3
(7.3~7.9)
LL
8.0
(8.0~8.7)
3L
8.8
(8.8~9.4)
注)H15年~H17年の値を基に算出
研究年度
研究課題名
担
当
平成 14 ~ 18 年
カンキツ「はるみ」の安定生産技術の開発
農業技術部 萩柑きつ試験場
大田 勉・福田真理(現 農業研修
部)・品川吉延(現 美祢農林事務所)
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