インテリジェンス・コラム 第16回 分散投資の効果について(その2) 今月は、引き続き「資産の分散」について、具体的なファンドを利用して分析を行います。 ここで分散投資を代表するファンドは、ベストバランス4月号(ベストバランス)、財産3分法ファンド(財産3分法F)、ダイワ株式・外債ファンド 2003(ダイワ株式・外債F)の3本を、個別資産を代表するファンドとしては、ノムラ日本戦略ファンド(日本株式)、DL外国株式オープン(外国株 式)、東京海上・国内債券ファンド(日本債券)、海外国債ファンド(外国債券)、DKAJ−REITインデックス毎月決算型(J−REIT)の5本 を、残高および設定年月を考慮して採用しました。 図表1から図表3は、分散投資ファンドと個別資産ファンドのリターンとリスクの散布図です。図表中の直線は、個別資産ファンドのリスク・リターン の単純平均値とリスクフリー・レート(0%と仮定)を結んだ直線で、その傾きは個別資産ファンドを等金額で保有して、分散効果がない場合のシャー プ・レシオに相当します。 ここで、図表1から図表3全てに共通する日本株式のリスクとリターンを比較します。 図表1から図表3では、投資期間が異なるものの、リスク(15.02%、14.28%、13.86%)が比較的安定していることが分かります。これに対して、リ ターン(10.76%、18.37%、24.02%)は最大で2倍以上の差が生じています。一般的に、リターンはリスクよりもタイミングの影響が大きいことが他の 資産についても見られます。 図表1のベストバランスは、直線よりも上方に位置しており、シャープ・レシオ0.70で、個別資産ファンドを等金額で保有して、分散効果がない場合 のシャープ・レシオ0.56よりも大きくなっているので、分散効果が働いて、効率的な運用ができていると思われます。図表2の財産3分法Fも、直線より 上方に位置しており、シャープ・レシオ2.59で、個別資産ファンドを等金額で保有して、分散効果がない場合のシャープ・レシオ1.68よりも大きくなっ ております。図表3の株式・外債Fも同様に、直線より上方に位置しており、シャープ・レシオ2.18で、個別資産ファンドを等金額で保有して、分散効 果がない場合のシャープ・レシオ1.39よりも大きくなっております。 次ページでは、シンプルな2資産の分散投資である図表3を利用して、資産分散によってリスクが低減する効果を確認してみましょう。 図表1 ベストバランスと個別資産ファンドのリターンとリスクの分布図 (2001年12月∼2006年11月) 図表2 財産3分法Fと個別資産ファンドのリターンとリスクの分布図 (2003年11月∼2006年11月) 25% 図表3 株式・外債Fと個別資産ファンドのリターンとリスクの分布図 (2003年4月∼2006年11月) 25% 25% Jリート 20% 20% 10% 外国債券 ベストバラン ス 5% 0% 5% 15% 10% 5% 外国株式 15% 15% 10% 外国債券 5% 0% 10% リスク(%) ダイワ株式・ 外債F 日本債券 日本債券 0% リターン(%) リターン(%) リターン(%) 日本株式 20% 日本株式 財産3分法F 15% 日本株式 20% 0% 0% 5% 10% リスク(%) 15% 20% 0% 5% 10% リスク(%) 15% 20% 本誌をコピー等で複製することは、社内用、社外用を問わず出来ません。 1 / 2 ページ 図表4では、日本株式および外国債券のリターンとリスクの分布図に2資産で構成される効率的フロンティアを表示しました。効率的フロンティア は、日本株式100%から徐々に外国債券の比率を高めて、外国債券100%まで結んだ点の集合で、ほとんどの場合は弧を描きます。また、通常は同じ リスク水準で低いリターンが選択されることはないので、投資対象ポートフォリオはリスクが最小の点までです。 日本株式と外国債券のリターンおよびリスクを単純に平均するとリターンは15.25%、リスクは10.96%となりますが、期初に等金額分散投資した 場合、リターン15.34%、リスク7.52%となり、リターンは同程度のままで、リスクだけが3割強も低減しています。つまり、2資産を結ぶ直線から左 に移動しています。これが「分散投資の効果」なのです。 最後に、図表5では、各資産のインデックスを用いて代表的な4つの分散投資ポートフォリオの効率的フロンティアを作成しました。 なお、採用した資産については、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券、途上国株式、G−REIT、商品、低格付債券を用いました。 また、代表的な分散投資のポートフォリオの効率的フロンティアは、全ての資産から構成される「全8資産ポートフォリオ」と、日本株式、外国株 式、日本債券、外国債券から構成される「伝統4資産ポートフォリオ」、外国株式、外国債券、G−REITから構成される「財産3分法ポートフォ リオ」、日本株式と外国債券から構成される「2資産配分ポートフォリオ」の4種類です。 最も一般的な「伝統4資産ポートフォリオ」とそれぞれを比較すると、「2資産配分ポートフォリオ」は、選択の幅が狭くなっています。一方、 「財産3分法ポートフォリオ」は、G−REITのリターンが伝統的な資産よりも高かったため、最大リターンが大きくなっています。そして、「全 8資産ポートフォリオ」は、低リスクから高リターンまで最も選択の幅が広くなっていることが確認できます。 以上のことから、高いリターンが期待できる資産を組入れることでリターンを上昇させることができます、その際にリターンの平均化よりも、リ スクの低減の方が大きくなるのが「分散投資の効果」です。また、資産数を増加させることによって幅広い選択が可能となります。 図表4 日本株式と外国債券のリターンとリスクの分布図と効率的フロンティア (2003年4月∼2006年11月) 図表5 各ポートフォリオの効率的フロンティア (1995年∼2005年) 18 25 日本株式 幅広い選択が可能 等金額分散投資 15 単純平均(各資産50%) 10 分散投資の効 果 5 リターン(%) リターン(%) 20 13 8 外国債券 3 0 0 0 5 10 リスク(%) 15 5 10 15 20 リスク(%) 20 全8資産 伝統4資産 財産3分法 インテリジェンス・コラムについての、ご意見、ご質問は ※分析対象: 日本株式はTOPIX(配当込み) 外国株式はMSCIコクサイ (日本除く、ドルベース)の円換算 日本債券は日興BPI総合指数 外国債券はシティグループWGBI (日本除く、ヘッジなし、円ベース) 途上国株式はMSCIエマージングマーケッツ (フリー、ドルベース)の円換算 G-REITはS&P/Citigroup Global REIT指数 (トータルリターン、円ベース) 商品はDJ/AIG Commodity 指数 (トータルリターン、ドルベース)の円換算 低格付債券はメリルリンチUSハイ・イールド・ボンド・ インデックス(ドルベース)の円換算 円換算する際、東京三菱銀行ドル円TTM/TTS を利用 2資産配分 fund@nrc.nikko.co.jp までお気軽にご連絡下さい。 本誌をコピー等で複製することは、社内用、社外用を問わず出来ません。 2 / 2 ページ
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