胸水と気胸を伴ったアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の一例 - 真菌症フ

一般演題(ポスター発表)
P-29
肺アスペルギルス症②
胸水と気胸を伴ったアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の一例
○古橋一樹 1、池田政輝 1、穂積宏尚 1、鈴木研一郎 1、志知 泉 1、白井敏博 1、須田隆文 2、千田金吾 2
(1 静岡県立総合病院、2 浜松医科大学呼吸器内科)
症例は 62 歳男性。既往として気管支喘息の発作がある。2003 年頃から持続する乾性咳嗽を主訴に近医
を受診し、胸部レントゲン写真で左右の肺野に浸潤影の出現、消退を認めていた。このため 2005 年 9 月
に当院を紹介受診し、10 月 11 日に精査目的で入院となった。胸部 CT では右中葉に一部 air bronchogram を伴う不整形の consolidation を認め、気管支拡張像は明らかではなかったが、中枢側の気管支
壁肥厚もみられた。気管支鏡で中葉は粘液栓で閉塞しており、生検でアスペルギルス菌糸と気管支粘膜
への好酸球浸潤を認めた。気管支喘息の既往、末梢血好酸球増多、IgE-RIST 2298IU/ml の高値、特異
的 IgE 抗体陽性、沈降抗体陽性、皮内反応で即時型、Arthus 型反応が陽性で、喀出された粘液栓から繰
り返し Aspergillus fumigatus が検出されアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)と確定診断し
た。10 月 20 日から PSL 30mg で治療を開始した。末梢血好酸球数の減少、IgE-RIST の低下傾向を確認
し 11 月 2 日に退院となった。しかし 11 月 11 日(PSL 治療開始後の第 23 病日)に右胸痛が出現し、胸部
レントゲン写真で右胸水の出現を認め、同日に再入院となった。胸部 CT では右胸水に加え、右中葉の
consolidation は拡大し、内部に肺野末梢まで拡張した気管支が透見された。PSL を 60mg へ増量し、抗
生剤 PAPM/BP も開始したが 3 日後には膿気胸に進展した。画像所見から ABPA による気管支拡張が胸
腔に穿破したと判断し、11 月 14 日胸腔ドレナージを開始し、VRCZ 400mg の併用を行った。PSL を
徐々に漸減する中、浸潤影は改善を示した一方で気管支拡張は数珠状に進行を来たした。約 4 週間の胸
腔ドレナージを要したが軽快し、気管支拡張の進行も止まったため、2006 年 1 月 12 日に退院となった。
その後、外来にて VRCZ を継続し、PSL の漸減を行っているが、現在まで病状の悪化はみられていない。
ABPA における胸水貯留や気胸合併の報告例は少ない。気胸発症の原因として気管支瘻を確認した報告
があり、本症例も画像所見から ABPA の治療経過中に気管支瘻を形成したと考えられた。ABPA の特徴
とされる中枢性気管支拡張は腐生したアスペルギルスから産生される toxin や蛋白分解酵素、脂質メデ
ィエーターなどによる組織破壊が一因と考えられている。本例ではステロイド単独治療中に気管支瘻が
形成されたが、その後のステロイド増量と抗真菌剤の併用により浸潤影は改善した一方で気管支拡張が
進行しており、短期間での気管支拡張の形成を観察し得た貴重な症例と考えられた。
肺一
ア般
ス演
ペ題
︵
ルポ
ギス
ルタ
スー
症発
②表
︶
133