平成 16 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 B-3 SS400 材を用いた高性能弾塑性ダンパーの開発研究 (その3 設計図表を用いた応答予測手法) A development study of highly efficient elasto-plastic dampers by SS400 steel plates (Part 3 : A response prediction method by performance-based design diagram) 石丸辰治1 ○山中祐一2 久保田雅春3 §3−1 宮島洋平3 り,点線で囲った部分が,原構造に並列型となるよ はじめに 前報までの結果であるΦ型ダンパーの性能の把握 うにV型ブレース部分にΦ型ダンパーを適用した制 とモデル化を踏まえた上で,本報では前報その2で 震部分である。なお,原構造と制震部分とを接合す 提案した簡易設計図表を用いて,性能設計図表 3-1) る部材,及び制震層を構成する柱・梁・V型ブレー と合わせることにより,手計算で応答性能を推測す スは剛体仮定とし,質量及び構造減衰はないものと る手法を提案し,その解の精度確認として,質点系 する。原構造の諸元を表 3-1 に示すが,剛性Kiは1 モデルによる時刻歴応答解析を行った。 次固有周期T1が標準的となるように 0.6[sec]と定め, §3−2 粘性減衰係数Ciは構造減衰として 1 次粘性減衰定数 解析モデル Φ型ダンパーのモデル化は,前報にて提案した簡 1.0[%]の剛性比例型で与えることとした。 易設計図表を用いればよい。ここではその応答予測 制震部分 原構造 降伏荷重Qy/板幅W[kN/mm] 手法にて図表を使用するため,再録しておく3-2)。 1.5 R60 M3 R70 K3 R80 1.3 R90 1.1 R100 T25 K2 T22 0.7 0.5 K1 0.3 5 6 図3-1 7 8 9 11 12 13 14 降伏変位Xy[mm] 1000 El Centro 1940 NS 波)である。対象構造 物はS造3層構造で あり,図 3-3 に示す K p1 表3-1 原構造の諸元 質量 層 [ton] 粘性減 剛性 衰係数 [kN/m] [kN*sec/m] 3 100 2 100 1 100 99.7 101.6 109.3 52000 53000 57000 設計図表を用いた応答予測手法 本節では,前節で提案した解析モデルの制震設計 を行う。まずは,簡易設計図表と性能設計図表を用 Pseudo Velocity(cm/sec) ゴリーC3(位相特性: C1 §3−3 El Centro 1940 NS 波 VE,10 す石丸が提案してい るスペクトル:カテ K p2 図3-3 せん断型3質点モデル 簡易設計図表 対象とする入力地 震動は,図 3-2 に示 10 C2 M1 T19 T16 4 K p3 M2 0.9 3 C3 Mi:i層の質量[ton] Ci:i 層の粘性減衰 係数[kN*sec/m] Ki:i 層の剛性[kN/m] Kpi:i層のΦ型ダンパ ーの剛性[kN/m] SAVD いて,手計算で応答値を推定することとし,その後 100 決定されたパラメーターにて精度確認として,時刻 歴応答解析を行い,応答推定値と比較を行った。 pSV,40 10 γ40 対象としているカテゴリーC3の地震動(700[gal]) に対して,1層が弾性を保つとすると,その必要耐 ように,実線で囲っ 1 0.1 た部分が原構造であ 図3-2 1:日大理工・教員・建築 力は小さくても(M1+M2+M3)×g×0.7=2058[kN]と 1.0 Period(sec) なり, その変形は 2058[kN]/57000[kN/m]=0.036[m] 10 地震動スペクトル(C3) 2:日大理工・院・建築 となる。そこで,ここでは設計目標変形として,5.0 3:(株)i2S2 -40- 平成 16 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 B-3 Ay/A40 1.1 [cm] 程 度 と す る 。 ま た , 全 層 と も に 目 標 塑 性 率 1.0 μ=4.0,バイリニア係数p =0.4∼0.6 とする。図 3-4 p=0.6 0.9 0.8 には例として粘性減衰定数h=0.01 の性能設計図表 0.7 0.6 を示したが,各モードの減衰定数は,1次h1=0.01, μ=4 0.5 2次h2=0.03 ,3次h3=0.04 より,モードごとの 0.4 Dmax/D40を求めると,1次から 2.17,2.03,1.96 と 0.2 なっている。また,1層のDmaxの目標値よりD40は 0.0 p=0.025 p=0.075 p=0.15 p=0.3 p=0.6 µ= 4 µ= 7.5 µ= 15 µ= 25 µ= 40 µ= 100 p=0.05 p=0.1 p=0.2 p=0.4 µ= 3 µ= 5 µ= 10 µ= 20 µ= 30 µ= 50 0.3 0.1 1.0 図 3-2 より 0.38[sec]程度となる。 図 3-5 からμ=4.0, p =0.4 程度の場合の弾性周期TEは 0.33[sec]とみな せるから,これを満足させるように弾性剛性を1層 では 120000[kN/m],2層では 60000[kN/m],3層 では 20000[kN/m]となるダンパーを各層に付加し てみる。図 3-1 よりこれに該当するものを選定する。 R80T19L400W120(xe=0.0078[m])を1層に12基, 2層に6基,3層には2基を付加する。Φ型ダンパ 2.0 2.5 3.0 10 ーのバイリニア係数pf =0.04 とすると,層のバイリ ニア係数pとしては,1層から 0.35,0.49,0.73 と 1 なる。これにより,全層の塑性率μを 4.0 として複 1 1.5 図3-5 素固有値解析を行った結果を表 3-2 に示す。また, 表 3-2 と図 3-5 より実効周期T’を,図 3-2 よりD40 2 2.5 3 3.5 3層 2層 1層 以上より,推定される基準座標の値は,対象入力 地震動に対して以下のようになる。 ・1次モード:Dmax=9.07[cm],Ay=536[cm/sec2] 0.02 0.05 0.075 0.10 0.15 0.20 0.30 0.40 0.60 4 4.5 5 5.5 実効周期の比率T'/TE 塑性率μと実効周期の比率T’/TEの関係 表3-3 弾塑性時刻歴応答解析結果 El-Centro 1940 NS 絶対加速度 [gal] 最大加速度736[gal] とA40を,図 3-4 よりDmax /D40とAy /A40を求める。 3.5 Dmax/D40 100 バイリニア係数 こ こ で は 初 期 剛 性 Ke=10000[kN/m] と な る 1.5 図3-4 h=0.01の時の性能設計図表 表3-2 複素固有値解析結果 モーダル モーダル モーダル バイリニ 粘性減衰 モード(固有周期) 塑性率μ 定数h ア係数p 3.67 0.457 0.009 1次(T1=0.394) 2次(T2=0.160) 3.55 0.570 0.025 4.20 0.486 0.036 3次(T3=0.104) 塑性率μ 2.3[cm]となるから,これに相当する実効周期T’は, §3−4 1307 1295 1141 層間変位 [cm] 層せん断力 係数 2.2 3.3 3.5 1.3 1.2 1.0 まとめ ・2次モード:Dmax=1.12[cm],Ay=433[cm/sec2] 提案した応答予測手法による応答推定値と時刻 ・3次モード:Dmax=0.43[cm],Ay=418[cm/sec2] 歴応答解析結果が良い対応を示したことから,簡易 設計図表と性能設計図表を用いることにより,手計 また,層間変位に対する弾塑性時の刺激関数の絶 算で多質点系モデルでの応答予測が可能となった。 対値から,自乗和の平方根法を用いて最大値を推定 また,Φ 型ダンパーの弾塑性ダンパーとしての有 すると次のようになる。 1層:4.2[cm] 2層:4.5[cm] 3層:3.0[cm] 効性が確認できたが,加速度と変位の応答値のバラ ンスから,Φ 型ダンパーはオイルダンパーなど粘性 したがって設計目標値を満足していることがわ かる。また,本節で示したパラメーターを用いて時 系との併用で使用した方が良いと考えられる。 刻歴応答解析を行った結果を表 3-3 に示す。この結 【参考文献】 3-1) 石丸辰治著: 『応答性能に基づいた「対震設計」入門』, 彰国社,2004 年 3 月 3-2) 牛坂伸也,石丸辰治他:SS400 材を用いた高性能弾塑 性ダンパーに関する研究(その2),日本大学理工学部 学術講演会,2004 年 11 月 果,設計図表を用いた場合では,20%程度時刻歴応 答解析結果より大きいが,構造計画の段階で利用す るには十分な精度を有していると言えよう。 -41-
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