RC橋脚の固有周期に着目した地震時被害度指標に関する検討 - 大日本

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
Ⅰ-428
RC橋脚の固有周期に着目した地震時被害度指標に関する検討
大日本コンサルタント
正会員
○吉岡
寒地土木研究所
正会員
原田政彦
吉澤
佐藤
西
京
25
大規模地震が発生した際,リアルタイムに橋梁の被
0.1~5.0m
5.1~10.0m
10.1~15.0m
15.1~20.0m
20
15
頻度
対象橋脚総数:154基
道路の機能回復を図るために重要である.橋脚の被害
10
度指標について,兵庫県南部地震以降,いくつかの研
5
0
0.
0
0. ~ 0
1
0 . ~ 0 .0 9
2
0 . ~ 0 .1 9
3
.
0. ~ 0 29
4
.
0. ~ 0 39
5
.4
0. ~ 0 9
6
.5
0. ~ 0 9
7
.6
0. ~ 0 9
8
.7
~
9
0.
9 0 .8
1. ~ 0 9
0
~ .9 9
1.
1.
1
~ 09
1.
1.
2
~ 19
1.
29
究がなされているが,様々な特性を持った橋脚に対し
て汎用的な指標が見いだせないことや,橋脚の周期特
性を取り入れた指標では一般性を失うといった難点が
橋脚高
橋脚高
平均値
(m)
固有周期
平均値
(sec)
0.1~5.0m
4.4
0.33
5.1~10.0m
7.8
0.52
10.1~15.0m
11.0
0.59
15.1~20.0m
18.0
0.82
0 .1
5 .1~~ 5. 0m
1 0.0
1 0.1 ~
1 5. 1 ~ 1 5 .0 mm
2 0 .0 m
固有周期(sec)
あり,実用化に至っていないのが現状である.
本稿は,北海道内道路橋の橋脚に対象を限定して,
図-1 橋脚高と固有周期のヒストグラム(橋軸方向)
被害と相関性が高く,且つ,実用性のある指標につい
て検討した結果を報告するものである.
2.対象橋脚の選定
まず,北海道内の道路橋のうち,けた橋 45 橋(橋脚
313 基)を抽出し,橋脚高と固有周期の関係や保有水平
耐力などを調査した.調査結果の一例として,橋軸方
表-1 選定した橋脚
支持
適用
橋脚高さ 固有周期 周期特性
橋脚 方向
条件 耐震基準
(m)
(sec)
の分類
1
LG
M
S55道示
4.9
0.348
短周期
2
LG
F
S48道示
6.2
0.879
中周期
3
TR
F
S48道示
6.4
0.362
短周期
4
TR
FF
S55道示
14.5
0.354
短周期
5
LG
MF
S55道示
16.5
1.207
中周期
※LG:橋軸方向,TR:橋軸直角方向
(cm/sec)
向における橋脚高と固有周期のヒストグラムを図-1 に
示す.なお,ここで示す固有周期は降伏剛性を用いた
フーリエ振幅
場合の固有振動解析結果である.橋軸方向では,橋脚
高 5~15m で,固有周期 0.3~0.8 秒程度の橋脚が比較的
多く建設されている.
次に,5m ピッチごとの橋脚高別に固有周期を整理し,
橋脚である.固有周期が 0.3 秒台の橋脚1,3,4を短
周期型,0.8 秒より長い橋脚2,5を中周期型に分類し
た.
3.模擬地震波の作成
各震源域で発生する地震動は,異なる振動特性が発
現する.ここでは,地震動応答による被害度指標を検
討するため,入力地震波のエネルギー総量を一定とし
て模擬地震波を作成した.作成方法は桑村らによる論
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0. 0
T 0 =0.5
0. 5
1. 0
1. 5
2.0
2. 5
3.0
(sec)
図-2 模擬地震波の振幅スペクトル
加速度 (gal) 加速度 (gal) 加速度 (gal)
脚であり,橋脚基部の耐震補強が今後予定されている
1.2
周 期 T
各平均値に該当する橋脚を 5 基選定して動的解析の対
象とした(表-1).選定した橋脚はいずれも RC 壁式橋
弘明
橋脚
害度を把握することは,橋梁の応急復旧を迅速に行い
文 1)を参考に,図-2 に示す振幅スペクトルを共通とし
2 00 0
(a)直下 型 σ= 0.02×2π
0
-2 00 0
0
10
20
時刻
100 0
30
40
(sec)
(b)中距離 型 σ= 0.10×2π
0
-100 0
0
10
20
時刻
100 0
30
40
(sec)
(c)海洋 型 σ= 0.20×2π
0
-100 0
0
10
20
時刻
30
(sec)
図-3 模擬地震波の時刻歴波形
キーワード:橋脚,耐震,被害度指標,模擬地震波,動的解析
連絡先:〒170-0003 東京都豊島区駒込 3-23-1 大日本コンサルタント(株) TEL:03-5394-7611 FAX:03-5394-7601
-855-
努
高
1.はじめに
勉
40
土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
Ⅰ-428
て,位相差分分布の標準偏差を操作して 8 通りのフー
これは,短周期橋脚の場合,地震波の繰り返しによる
リエスペクトルを作成し,フーリエ逆変換により特性
動的増幅ではなく,1 回のパワーで損傷することを示唆
の異なる地震波を作成した.位相差分分布の標準偏差
している.また,PGA が 250gal 程度でせん断力比が1
を小さくしたケース(0.02×2π)が主要動の継続時間
を超えており,既設橋脚の設計水平震度 0.2~0.3 と概
の短い直下型であり,大きくしたケース(0.20×2π)
ね整合することから,250gal 程度が閾値となりうる.
が継続時間の長い海洋型である.作成した模擬地震波 8
中周期橋脚の場合の相関図を図-5 に示す.曲げ破壊
波のうち代表的な 3 波の時刻歴波形を図-3 に示す.
型が多いため,縦軸は曲げモーメント比としている.
4.動的解析による橋脚の被害度指標の検討
検討した地震動指標のうち,SI 値が最も相関性が良く,
選定した橋脚 5 基について,単柱モデルによる線形
中周期橋脚の曲げ損傷において動的増幅を無視できな
動的解析を行った.線形解析としたのは,曲げ破壊型
いことを示唆している.また,SI 値が 40cm/sec 程度以
橋脚の場合に降伏しているか否かの判定を重視しよう
上で曲げモーメント比が 1 を超えているが,これは気
とした意図による.入力する地震波は,前述の模擬地
象庁震度階による震度 6 弱以上に相当する 2).
震波 8 波のほか,実地震波として道路橋示方書のレベ
5.おわりに
ル 1 地震動 3 波およびレベル 2 地震動タイプⅠの 3 波
道路橋 RC 橋脚を対象に被害度指標の検討を行った
を加えた計 14 波を用いた.解析結果より,発生する最
結果,橋脚の固有周期に応じて PGA や SI といった指標
大断面力と保有水平耐力との比を算出し,この値と地
を使い分けることで,せん断破壊もしくは曲げ損傷を
震動指標との関係を整理した.比較検討する地震動指
把握できる可能性を示した.今後は,選定した被害度
標は,最大加速度 PGA,エネルギー入力率 1)およびス
指標の検証や,支承に対する最適指標の検討が必要で
ペクトルインテンシティ SI とした.
ある.
短周期橋脚の場合の相関図を図-4 に示す.せん断破
【参考文献】
壊型が多いため,縦軸はせん断耐力比としている.同
1) 桑村仁,竹田拓也,佐藤義也:地震動の破壊力指標としてのエネ
図より,最大入力率では入力率が 0.2 以下の小さいとこ
ルギー入力率―直下型地震と海洋型地震の比較を通して―,
日本建
ろにプロットが集中し,SI 値では非線形的な分布が確
築学会構造系論文集,第 491 号, pp.29-36, 1997.1.
2) http://www.nilim.go.jp/japanese/database/nwdb/html/how-to-use.htm
認されるが,PGA は比較的良好な相関を示している.
6
実波
0.996
0.993
0.982
0.991
4
2
0
0
500
1000
最大加速度 PGA
1500
10
8
6
模擬波
0.997
0.997
0.998
0.997
実波
-0.297
-0.293
0.020
-0.190
4
2
0
0.0
2000
橋脚1
橋脚3
橋脚4
模擬地震波
実地震波
橋脚1
橋脚3
橋脚4
平均
0.2
0.4
10
せん断力比 S/Ps
8
橋脚1
橋脚3
橋脚4
模擬地震波
実地震波
模擬波
0.986
0.986
0.979
0.984
せん断力比 S/Ps
せん断力比 S/Ps
10
橋脚1
橋脚3
橋脚4
平均
0.6
0.8
8
6
(a) 最大加速度 PGA
実波
0.988
0.986
0.984
0.986
2
無次元化最大入力率(周期1秒)
(gal)
模擬波
0.983
0.984
0.979
0.982
4
0
0
1.0
橋脚1
橋脚3
橋脚4
模擬地震波
実地震波
橋脚1
橋脚3
橋脚4
平均
50
100
SI値
(b) 最大入力率
150
(cm/sec)
(c) SI
3
橋脚2
橋脚5
模擬地震波
実地震波
模擬波 実波
橋脚2 0.988 0.994
橋脚5 0.927 0.998
平均 0.957 0.996
2
1
0
0
500
1000
最大加速度 PGA
1500
(gal)
(a) 最大加速度 PGA
2000
4
3
橋脚2
橋脚5
模擬地震波
実地震波
模擬波 実波
橋脚2 0.974 -0.279
橋脚5 0.855 -0.252
平均 0.914 -0.266
2
1
0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
曲げモーメント比 M/My
4
曲げモーメント比 M/My
曲げモーメント比 M/My
図-4 短周期橋脚の最大応答と地震動指標との関係
4
3
模擬波
橋脚2 0.993
橋脚5 0.940
平均 0.966
実波
0.987
0.999
0.993
2
1
0
0
無次元化最大入力率(周期1秒)
(b) 最大入力率
図-5 中周期橋脚の最大応答と地震動指標との関係
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橋脚2
橋脚5
模擬地震波
実地震波
50
100
SI値
(cm/sec)
(c) SI
150