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周期軌道の安定性とマスロフ指数に関する最近の話題(「
有限量子多体系の励起構造と相関効果」-原子核・量子ド
ット・ボース凝縮・クラスターを中心として-,研究会報
告)
杉田, 歩
物性研究 (2002), 78(3): 291-292
2002-06-20
http://hdl.handle.net/2433/97229
Right
Type
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
「
有限量子多体系の励起構造 と相関効果」
周期軌道の安定性 とマスロフ指数に関する最近の話題
杉田 歩 (
阪大 RCNP)
Gut
z
wi
l
l
e
rの トレース公式は 、非可積分系 において古典系のダ イナ ミクス と量子系のスペ ク ト
ルを結び付け るほ とんど唯一の道具 として 、近年盛んに研 究 されてい るが 、原論文 におけ る導 出
は決 して分か りやすい ものではない。この講演では、 トレース公式の構造が明確に見 えるような、
正準不変性 を重視 した新 しい定式化の試みについて話 した 。 特 に、オ リジナルの導 出では意味の
わか りに くいマスロフ指数 をど う捉 えるか 、とい うのが 中心 になるテーマであ る。
まず 、出発点 として分配関数 を相空間上で経路積分表示 した もの をとる :
- e
x
p
[
去
f
(
p
d
q
-
Z(
T) /DpDq
Hd
t
)
]・
(
1
)
準位密度は、分配関数の Fo
ur
i
e
r
La
pl
a
c
e変換か ら得 られ る :
∑
6(
E-Ei
)--1
I
mg(
E'i
e
)
,
7
r
I
p(
E)-
g(
E) -
最 ∞dTe
i
ET/h
z(
T)
I
(
2
)
(
3
)
この量 を半古典近似 (
停留位相近似 )で評価すれば 、 トレース公式が得 られ る。
1
)の停留位相位相条件は、ハ ミル トンの運動方程式にな り、また、周期境界条件がつ
分配関数 (
いてい るので 、停留解は古典周期軌道にな り、分配関数は周期軌道に関す る和 の形 にかけ る。
'
T
)
吉K
e
x
p
[
k
R
]
・
Z
(
4)
ここで 、R - ipdq-Hdtは作用関数 、また 、K は古典解の まわ りの 2次の経路積分 の寄与で
ある。
K
-
/Dxe
xp[
i
6
2
Rl
x(
i
)
]
]
,
x
(
i
)
-義(
6
q
,
6
q
)
・
(
5
)
(
6
)
これ は一種の Ga
us
s
Fr
e
s
ne
l積分であ るか ら、位相因子は 2次形式 62R を対角化 した ときの、対
角要素の符号か ら決 まる。もし正の対角要素 と負の対角要素が 同数あれば 、位相因子は互いにキャ
ンセル して現れないが 、数がずれていれば 、その分位相がずれ る。これがマス ロフ指数である。 き
ちん と書 けば 、
p- と
(
7)
青史 ,
ここで 、〃はマスロフ指数 、〃十 (
〟-)は正 (
負 )の固有値 の数であ る。
この経路積分 を、より幾何学的に見てみ よう。周期軌道か らのずれを表わすベ クトルの集合 (
x(
i
)
)
は 、一種 の ファイバ ーバ ン ドル とみなす ことが で き、ハ ミル トニアンが定め る流れが 、 自然 にそ
の上の接続 を定義す る。(図 1)実際 、経路積分 (5) はゲ ージ理論の形
K
/
D
x
e
x
p
[
妄
x
T
Q
x
]・
(
8)
に書け る。ここで 、
p - JD,
- 29 1
-
(
9
)
研究会報告
x
(
t
)
sl
a
c
e
me
nt
di
p
p
e
r
i
o
d
i
co
r
b
i
t
図 1:周期軌道の まわ りの構造。周期軌道か らのずれ を表わすベ ク トル全体はファイバ ーバ ン ドル
を成 し、ハ ミル トニアンが定め る流れが接続 を定め る。
β は共変微分
D-孟
十
A(
i
)- 孟 十JH"
(
i
)
,
(
1
0)
Jはシンプ レ クテ ィツク内積 を定め る行列
J
(O:
)
・
_I
(
ll
)
である。
数学的に言 えば 、この ような、Sl上の ファイバ ーバ ンドルで 、構造群が Sp(
2
n,
R)の ものの接
続 を分類 していけば よいのだが 、ここで気 をつけなければ ならないのは、実は全てのゲ ージ変換
(
今の場合正準変換の こと)に対 して経路積分が不変 とは限 らない 、とい うことであ る。 シンプ レ
クテ ィツク群の基本群は
7
T
l
(
Sp(
2
n,
R)
)- Z,
(
1
2)
となって no
nt
r
i
vi
a
lなので 、ゲージ変換の中には トポロジー的にね じる (つま り、wi
ndi
ngnumbe
r
を変える)よ うな ものが存在す るのだが 、その ような変換 に対 しては、Ma
s
l
o
v指数が変化 し、経
l
oba
lanoma
l
yと呼ばれてい る
路積分が符号 を変えて しま う場合が あ る。(これは 、場の理論で g
3
】と類似 の状況であ る。
)この ように 、Ma
s
l
o
v指数は 、周期軌道の まわ りの空間の 「ね じれ
もの [
具合」を反映 した量 となってい る。
以上 を一応 まとめ ると、マスロフ指数は、
1.変分空 間における、停留点の まわ りの 2次の展 開の符号 に関係 した量 (モ ース指数の一般化 )
であ り、 また 、
2
.相空間におけ る、周期軌道の まわ りの流れのね じれ を表わ した量
と見 るこ とが で きる。 この よ うな二つの観点 を うま く使 うことで 、新 しい結果 を導いた り、これ
1
ト【
2
]を見て く
まで知 られていた結果 をよ り簡単に再導出 した りす ることがで きる。 詳 し くは 、[
だ さい。
参考文献
【
1
】A.Sugi
t
a,Phys
・Le
t
t
・A 2
66(
2000)3
21・
[
2
]A・Sugi
t
a,Ann・Phys
・288(
2001
)277・
[
3
】E.Wi
t
t
e
n,Phys
・Le
t
t
・ち 117(
1
982)32
4・
- 29
2-