「5Sの実践で職場問題解決力を高める」 - nifty

2009 春季特別企画①
2009 春季特別企画①
「5Sの実践で職場問題解決力を高める」
中小企業診断士会京都支部常任理事・
松野中小企業診断士事務所代表 松野 修典氏
特集記事の一つ目のテーマは、企業の経営改善の手法として再び注目を浴びている「5Sの実践」を選
定し、昨年12月に印刷会館で開催した「職場環境改善セミナー 5Sの実践で職場問題解決力を高める」
の講師を務められた松野修典氏にご寄稿をお願いいたしました。
「見えない問題を見えるようにする」
「あきらめていた問題が問題でなくなる」等、職場のあらゆる問題
に対して、
「5Sの実践」により解決に導く行程を平易に解説していただいております。
各部署の管理責任者の方はもちろん、経営革新を目指す経営者の方々にも大いに参考にしていただける
内容になっていますので、是非ご一読していただき、今後の糧にしていただければ幸いです。
うとしたが、通路
損失と労災は、なぜ起きた?
脇にあった残品資
材を除けきれず、
歴史のあるハイグレードな印刷物づくりを手が
乗り上げて重量物
ける会社でおきたこと。長年の有力得意先への納
ともども横転して
品が遅れ、予定していた仕事が全部キャンセルに
しまった。フォー
なり、大幅な赤字を計上することとなりました。
クリフトが周囲の
築城10年落城3日の憂き目を見たような信用失墜
印刷機械にぶつか
によるものでした。
り機械の破損を招
その納期遅れの原因は、工場内での大事故であ
き、稼動の再立ち
り、しかも熟練技能者である社員が事故の影響で
上げまで1週間かかることとなったのです。また、
重傷を負い、
職場復帰は当面できなくなりました。
飛び出した作業員とフォークリフトの運転手も1
労災の認定を受けることとなり、管理者責任と保
ヶ月以上の重傷を負いました。
険料負担などが求められるようになりました。
さて、その原因は何だったのか、作業員が通路
その事故の原因は何かというと、高速で運転し
に飛び出し、フォークリフトの運転手が急ハンド
ていた機械からグリスが飛散していたのを、作業
ルを切ったことも一因ですが、通路に残品資材が
員が拭き取ろうとしましたが、拭き取りの用具が
放置されていたことが、直接的な原因になります。
機械の下の棚になかったので、直接手を入れて拭
次に、なぜ作業員が飛び出したのか、運転中の機
き取ろうとしたところ、小指の先が巻き込まれそ
械に手を入れけがをしそうになったこと、と思わ
うになったので急いで手を引き出して、機械を止
れるかも知れません。だから、機械を止めてから、
めに通路の向かい側
確認して拭き取ればよかったのだ、と。では、な
にある停止スイッチ
ぜ手をいれたのか、拭き取るための用具が棚にな
を押すため飛び出し
かったから、です。そして、そもそもグリスが飛
た。そこに、重量物
散していたのは何故か、を考えると、日頃の機械
を載せたフォークリ
の点検ができていなかったことになります。また、
フトが走ってきてお
そのような作業環境が当たり前の風土になってい
り、急ハンドルを切
たこと、誰も注意喚起していなかったことが原因
って作業員をよけよ
として考えられます。
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「5Sの実践で職場問題解決力を高める」
つまり、
①残品資材の整理ができていなかった、
これらには、理由となる3大現場トークがあり
②機械整備の用具が棚になかった、③機械の日頃
ます。第一に、
「とりあえず、ここに置いておこう」
の清掃・点検ができていなかった、④適正な職場
という‥とりあえずトーク‥、次に、「いつか使
環境を維持する仕組みがなかった、⑤環境の乱れ
うから、置いておこう」という‥いつか使うトー
を指摘し合う風土がなかった、ことが、大事故の
ク‥、そして「買ったらいくらになる、もったい
原因の要点になります。
ないから置いておこう」の‥もったいないトーク
‥です。それから、もう一つ加えると、「これは
5Sの意味合いを考える
創業期に使っていたもので、先代が…」の‥思い
出トーク‥です。
前述の大事故は、
5Sの徹底さえできていれば、
これらの言葉が現場で多用されている限り、整
決して起こりえなかったことであり、損失も労災
理は実行できないということになります。とりあ
も招くことにはならなかったものです。
では、
5S
えず→いつか使う→もったいない、で、現場は無
の意味合いを再確認していきましょう。
駄と危険だらけになってしまいます。そのスペー
整理:
「要るものと要らないものをはっきり分け
スにかかる経費、そのモノをよけるための余分な
て、要らないものを捨てること」
動作、そのモノがあるために要るものを探す労力、
整頓:
「要るものを使いやすいようにきちんと置
そのモノがあるために発生する災害、果たして、
き、誰でもわかるように明示すこと」
どちらがもったいないのでしょうか、3大トーク
清掃:
「要るものが、常に良好な状態で使える状
の撲滅から5Sは始まります。
【次に整頓】
態であること」
清潔:
「良好な状態を維持するための仕組みがで
整理ができて無駄に使っていたスペースが空い
きていること」
たところも活かしながら、必要なモノをいつでも
躾:「つくられた仕組み、ルールをいつも正しく
すぐに取り出せる状態にすることです。作業を効
守る習慣がつくられていること」
率的に行うために、モノの再配置を主眼に行いま
になります。
す。人の動きの無駄をなくす、製品や材料の無駄
そして、この5Sができていれば、大事故の原
な移動をなくすなどです。従って、作業の流れを
因でまとめた①∼⑤の事象は起こりえないことだ
分析して、人の動作やモノの流れを見直すことが
ったことが理解できます。
必要です。
そして、5Sの活動そのものには、順番がある
整頓の目的は、「探す」という無駄をなくすこ
ということをしっかり押さえておく必要がありま
とで、「見つける」→「使う」→「戻す」→「見
す。順番であることを分かりやすく標語にしなが
つける」→…の標準化された作業体制をつくるこ
ら、イメージできるようにすると、次のようにな
とです。従って、
「どこに」=場所の表示、
「何を」
ります。
「まず整理」
、
「次に整頓」
、
「常に清掃」
、
=品目の表示、「いくつ」=数量の表示を徹底し、
「だから清潔」
、
「皆で躾」という表現で、順番で
定位、定品、定量の「3定」習慣づくりがポイン
トになります。それと、「直線・直角・垂直・水平・
あることを意識づけることが大切です。
【まず整理】
平行」の「3直2平」のおき方がよしとされてい
要るものと要らないものが混在している状況
ます。「形跡整頓」「色別整頓」などの知恵と工夫
は、職場のスペースが有効に活用されていないこ
も活かしたいものです。
【常に清掃】
とを意味します。印刷業で整理ができないものの
代表例として、
過去の機械及びその周辺機器です。
整理・整頓によって必要と判断された物が、常
業界の技術革新により、数年前の機械が使えなく
に良好な状態で使えるようにすることです。清掃
なりますが、残リースとの関係で使われないまま
は、作業の効率や品質、安全面、衛生面で極めて
放置されることになります。次に多いのが、材料
重要な役割を持っています。作業服を着た従業員
関連の製品、仕掛品、残品資材です
を整列させて、その汚れが多い順番に並び替える
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と、清掃ができていない職場の順になると言って
ルール化が必要になってきます。ルールは、実際
もいいくらいです。
「職場の汚れは心の汚れ」と
に「整理・整頓・清掃」を実践し、改善を行った
も言われています。日ごろ家庭で使っているお風
人が手順を定めて、管理基準を明確にすることで
呂と一緒で、
使う前にはピカピカにしておきたい、
す。ルールづくりでは、「なぜこのようなルール
それはお風呂で心の汚れも落としたいという心情
が必要なのか?」「このルールで清潔な状態を維
があるからではないでしょうか。
持出来るのか?」など、よく検討・協議し、ルー
清掃の基本は「拭く」
「掃く」
「磨く」ですが、
ルを運用しても良いという承認をする必要があり
機械をパートナーと思い、愛着を持って清掃をし
ます。これらをスムーズに行う為にも、現場の作
ていれば、不具合な点を見つけることができるよ
業員とのコミュニケーションが重要となります。
うになります。自分の愛車をワックスがけしてい
こうした仕組み、ルールがつくられ、皆が守り、
る時と同じ気持ちです。機械などの亀裂、破損、
整理・整頓・清掃の「3S」が維持できる状態が
錆、ネジのゆるみ、液漏れ、油漏れなど清掃をし
続けば、清潔の次の段階を目指します。「3S」
ながら見つけることができます。この時、普段清
の言葉のそれぞれの頭に、「予防」という言葉を
掃しない様な場所
(制御盤の中・チェーンカバー
つけて、レベルアップを目指します。
の中・棚の裏側など)も清掃します。以外と、機
「予防整理」とは、不要物が発生しないように
械故障や不良の原因は、普段点検しない場所に潜
することです。必要なものを、必要なときに、必
んでいる場合が多いのです。
要なだけ調達し、生産する仕組みをつくることで
従って「拭く」
「掃く」
「磨く」+「点検する」
す。事務作業では、必要な資料を、必要なときに、
ことが清掃の基本となり、見つけた不具合点は、
必要なだけ作成・複写・配布する仕組みをつくる
修理や復旧が出来る様記録を取るようにします。
ことです。
目で見る、耳で聴く、鼻で嗅ぐ、手で触れること
「予防整頓」とは、乱れにくい、乱れない仕組
で、ほとんどの感覚をフルに活用して点検・保全
みをつくることです。乱れにくいようにするため
には、乱れた状態がすぐに分かるように、
「3定」、
を心がけます。保全は、出来るだけ自分達で行う
ようにします。たとえば、装置の取り扱い説明書
「3直2平」のルールをしっかり守ることです。
を読んでみたりメーカーに問い合わせたりして修
さらに、乱れないようにするには、乱れる原因の
理する。これにより、自分達の使う「モノ」への
大半といわれる「使う」→「戻す」の過程を見直
メンテナンスに対する知識・意欲がついて来ます。
すことです。つまり、「戻さない」で整頓する方
作業の原則は、
「1作業1片づけ」
、
「1作業1
法を考えることです。例えば、「使い終えたら手
清掃」
、
「1清掃1点検」とし、
「作業の切り替え
を離して「即時整頓完了」ができるように冶工具
は気持ちの切り替え」として心を清めて次の作業
を「吊るす」などの方法があります。
に快く取り組めるようにしたいものです。
「予防清掃」とは、汚れたゴミそのものを出な
【だから清潔】
いようにすることです。汚れの根源(発生源)に遡
整理・整頓・清掃が常に徹底できており、職場
って対処します。油モレの原点一箇所ずつ丹念に
の良い状態を維持するためのシステムが機能して
対処する、クズが出た時点で即座に拭き取る、飛
いる状態を目指します。整理・整頓・清潔で得ら
散させない、拡散させない、つまり汚さない仕組
みをつくることです。
れたノウハウを、ルール化し、みんなで守ること
【皆で躾】
で実現することです。せっかく、キレイになった
職場も、管理をしなければもとの姿に戻ってしま
「整理・清掃・整頓・清潔」を通じて得られた
います。これでは、職場の「清潔」な状態を維持
仕組みと習慣化された行動を、誰もが守れる様に
できているとは言えません。そこで、経営トップ
教育と訓練が必要になります。教育・訓練を継続
をはじめ管理者、全社員が清潔な状態を維持する
的に行うことが「躾」になります。教育は、ルー
為に必要な「管理点」を明確にすると共に、それ
ルを説明し、頭で理解する=分かるようにするこ
ら「管理点」が管理されているか判断できるよう
とです。訓練は、仕組みやルールを守り、反復し
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「5Sの実践で職場問題解決力を高める」
て自然に継続的に行動できるようにすることで
ぎのムダ、什器備品、書類・伝票の持ちすぎのム
す。5S月間、5Sデー、5Sパトロール、5S
ダは、不要なスペース、設備のムダ、探す・避け
モデル職場などの推進事項を決めて、全社的な共
る動きのムダ、取る、置く、数える、運ぶ、移し
通価値観を根づかせることが重要です。
替える作業のムダ、ムダがムダを呼んで、コスト
禅の修業は「履物をそろえることから始めて、
を膨らませています。ムダな動きをなくして作業
履物をそろえることでおわる」
といわれています。
効率を向上させ、利益が出る作業比率を高めるこ
仏様の教えを自分の足元から明らかにしていく、
とができます。
【不良ゼロに挑戦する】
いついかなるときでもそのことを忘れない、他人
ごとではない自分のこと、その意味から「履物を
雑然とした資料の置き方では、仕様書などの読
そろえる」といわれています。
「履物をそろえる
み間違え(改定資料の取り違え)によるミスが発生
と心もそろう」と言われるように、5Sが根づく
しやすくなります。置場が決められてなかったり、
ことで、従業員のこころもそろう、という「躾」
表示されていなかったりすると、部品の組違いや
の尊さを大切にしたいものです。
冶工具のつけ間違いなどのミスが起こります。雑
然とした汚い職場、工場であれば、不良品を出し
5S習慣化のメリット
ても、ミスをしても、雑然とした環境の中に埋も
れてしまい目立ちません。誰も気付かず、闇から
【多品種印刷へ対応】
闇に葬られてしまいます。
多品種小ロット印刷が当たり前、何件かの受注
情報や部品、材料や冶工具などの取り違えによ
をかけもち、多種の作業を同時並行で進めている
るミスを減らすことで、不良ゼロへの基礎を確立
印刷現場にとって、多品種化への対応は生き残り
することができます。
【故障の削減・自主保全が進む】
を賭けた取組みになっています。また、中小印刷
業では、大手の隙間を突いた小回り、機動力、迅
その日その日の機械の調子が分かり、ゴミや汚
速性が強みを発揮するところです。
れを除き、カゲの部分の損傷などの発見などを通
探すムダをなくすことで、2時間であった段取
じて、日々の保全業務を進めることができます。
り替えを40分でできるようになった例もありま
機械や設備の「可動率」(べきどうりつ:設備を
す。また、新入社員や外部社員にも準備が容易に
動かしたいときに、いつでも動いてくれる状態)
できるようになります。従業員の柔軟で迅速な動
が向上します。
きにより多品種化への対応ができるようになり
日々の点検と手入れで故障を未然に防ぎ、機械
ます。
の寿命を長くすることができます。
【納期の短縮】
【見えない問題が分かる】
「在庫は悪である」と言われます。一般的には
今の作業に必要なモノと、そうでないモノを混
金利負担やムダな作業の発生などの経費負担が問
在させて作業をしていると、受け持ちの仕事その
題とされています。在庫を5Sの観点から考える
ものも混乱してしまいます。それぞれの仕事の納
と、「在庫は会社のあらゆる問題を隠す」という
期も混在して分からなくなります。
ことになります。
「計画変更にうまく対応できな
目的の資料やモノを探し出すための乗せ替え、
い」「不良品が多い」
「設備故障が頻発」
「切り替
移し替えが頻繁に発生し、通常の作業の2倍、3
えや段取り替えが下手」
「工場レイアウトが悪い」
倍の時間を要することになります。
「工程間のバランスが悪い」
「欠品が日常茶飯事」
今の作業に必要なもの以外は持ち場に出さない
…などです。過剰在庫を排除し、過剰置場もなく
ことにして、仕事単位、納期ごとに資料やモノを
すことで、今まで見えていなかった問題を一掃す
整頓しておくことで仕事の効率を上げることがで
ることができます。
きます。情報や在庫の流れ、何が滞留しているか
【コストダウンが実現する】
を分かるようにし、作業進捗、納期管理がしっか
りできるようになります。
材料資材の在庫、仕掛在庫、部品在庫の持ちす
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【災害ゼロの実現】
良さを秤にかけて、人は易きに流れていきます。
5Sが習慣化されていない職場では安全は確保
向上心のない職場では、当然のことながら不良品
できません。作業者の安全を確保するために、職
やミスが多く、生産性が低くなり、業績が悪くな
場の機械、設備に潜む災害要因の除去、製品の安
ったりします。見せかけの生産性向上や業績向上
全に悪影響を与える要因の除去が重要です。製品
の掛け声倒れになり、現場では見て見ぬふり、
「そ
の安全を確保するために、安全に悪影響を与える
んなつまらないことで…」と迎合し、叱れない管
要因の除去が重要です。5Sを習慣化することで
理者、躾のない職場になってしまいます。
作業や製品への感受性が高まり、不安全行動、不
これでは、5Sのメリットを理解して取組みを
安全状態ゼロへの挑戦を促進させることができ
進めたことの意味がなくなってしまいます。前述
ます。
の7つのメリットを実現することが、厳しい景況、
競争環境の中で、勝ち残っていくための最重要経
5S活動推進の難しさ
営課題であるとの認識に立って、5S活動推進の
体制をつくることが肝要です。
5S活動を推進する上での難しさで、第一に上
5Sの完成基準をつくる
げられるのは、
「5Sができているという状態の
認識の違い」です。
「…もうできている」
「…もっ
とやって下さい」の水かけ論になりやすく、説得
そこで、5S活動を頓挫させないため、レベル
することが難しくなります。また、ある程度のと
アップを容易にするために、「完成基準」をつく
ころまですると、
「前よりよくなった」
「このくら
ることが重要になります。5Sの完成イメージを
いなら十分きれい」などと安心や満足が生まれ、
共有することで、常に従業員が意識して行動でき
それ以上やることに意義を感じなくなります。
るようにします。完成状態の着眼点を整理すると
最初は、かけた時間に応じて目に見えてよくな
以下になります。
りますが、
その後は印象としたあまり変化がなく、
1.誰でも取り出せる、元に戻せる
・置場所、置き方、表示
2.不足・余分が一目で分かる
整理
・見える管理
整頓
3.乱れない工夫ができている
・姿置き、一対表示
・発注点管理
マンネリ感を抱くこともあります。さらに一定レ
ベル以上を求めると、根本的にやり直す必要性が
生じることもあり、緊張感が薄れた職場では行動
が頓挫することもよくあります。
そして、マンネリ感とともに職場の一部で「仮
置き」
「ちょい置き」
「整頓中」などの言い訳がま
1.一定基準より汚さない
・清掃基準、清掃サイクル
2.異常が生じると一目で分かる
清掃
・箇所別の清掃基準
3.清掃時間の短縮
・併行清掃、工夫改善
かり通り、完全でない状態が当たり前になり、ル
ール違反が頻発するようになります。職場が乱れ
始めると、ある段階から加速度的に乱れていくと
いう事態を招きます。
また、増産、トラブル、要因不足等で取り組め
ない時期があると、急にレベルダウンしてしまい
ます。
完成基準をつくるには、こういう状態まででき
そして、再度5Sの取組みを推進しなければ、
れば、「完成した」と言える全社共通の基準を設
と掛け声をかけると、
「いまさら整理・整頓なん
定することがポイントになります。
て…」
、
「どうせまた、すぐに汚くなるのだから…」
対象箇所の単位活動(作業)に取り掛かるときの
といった開き直りや、あきらめの言葉が出てき
単位エリアは、部屋よりも小さく、物よりも大き
ます。
くします。「キャビネット」、「パソコン台」、「工
最初のころは5Sによる効果を多少は感じなが
具棚」、
「清掃用具置き場」などは適切ですが、
「管
らも、その面倒さと過去の安易な習慣の居心地の
理室」、
「○○ライン」、
「部品庫」、
「ファイル」、
「清
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「5Sの実践で職場問題解決力を高める」
掃用具」などは不適切です。
資材ロス率など)
完成基準と日常の活動の展開については、対象
生産性に関するデータ(労働生産性、残業時
を目標化し、
「今期は□□と△△が重点箇所」
「今
間など)
【導入時の運営体制】
回は○○のレベル」
(表示を徹底、
清掃基準の完成)
1.活動の枠組み
まで、など段階的にレベルアップを図ります。
【5S完成基準】(フォーマット例)
No.
共 通
ルール
チェック
ポイント
別基準
目的:何のために5Sをやるのか
方針:どういう考え方でやるのか
対象箇所
期間:いつから、いつまで実施するのか
□整理基準
□表示ルール
□色ルール
□清掃基準
目標:どの程度までやるのか(前述のデータ
を数値目標にする等)
推進体制:委員会、責任者、活動単位
エリア設定:管轄、実施、箇所の明確化
■台車・交換部品
置き場所が明確である
表示が明確である
スペース表示の色は赤以外
■作業台
作業代に置くものは表示
作業終了時、
作業台にはものがない
作業台の下には、基本的に物は置
かない
作業台の下に棚がある場合、表示
物以外は置かない
2.予算や時間など
廃棄予算、教育予算、残業代、
備品導入予算、修繕費など
【共通ルールづくり】
■整理基準
捨てる基準、決済ルール、廃棄サイクル
■整頓基準
置き場所のルール:区分線、配置図など
表示ルール:表示方法、種類の明確
色のルール:色の分類
その他:在庫基準、発注点、行先表示など
写 真
■清掃基準
初期段階の一斉清掃に関する計画
日常の清掃方法・サイクルの基準
5S活動の仕組みづくり
点検・給油・部品交換のサイクルや基準
【活動の活性化策】
【5Sに取り組む前の準備】
活動の活性化策としては、社内報などを通じた
PR、5Sに関する掲示板やメーリングの活用、
1.現状写真
活動報告会、社内監査、奨励表彰などがあります。
主要な対象箇所について写真を撮っておきま
す。特に定点観測できそうなところは抑えて
おきます。
以上、5Sの重要性と取組みについて概要を論
2.問題状況の記述
じましたが、企業現場では、また独自の展開法を
検討することが必要になります。「現場」、「現実」
どういう問題が発生しているのかを具体的に
「現情」でいう、「情」の部分です、経営トップの
記述します。モノを探したり、なくなったり
理念と組織風土の問題を外しては考えられないか
する頻度、汚れの状態などを記述します。
らです。5Sを機会に、経営革新をも目的にする
3.各種データの記録
ことをお勧めします。
効率に関するデータ
(稼動状況、型替時間、
(文責・編集委員会)
停止時間など)
品質に関するデータ
(異物混入、その他の不
良など)
コストに関するデータ
(部材在庫量・購入額、
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