689 金沢大学医学部十全医学会雑誌 第78巻 第6号 689∼699 (1970) 麻疹ワクチンに関する研究 第皿編 麻疹ワクチン接種小児における皮内反応 金沢大学大学院医学研究科小児科学講座(主任:佐川一郎教授) 大 木 徹 郎 (昭和44年7,月3日受付) 本論文の要旨は,第72回日本小児科学会総会にて発表した. 麻疹不活化ワクチン(以下Kと略す)を接種した小 なった. 児に,麻疹弱毒生ワクチン(以下しと略す)を接種す 対象と方法 るとし接種部位に発赤・腫脹・硬結などの局所反応が 出現し,発熱・発疹・リンパ節腫脹などの全身反応を 工,使用した接種ワクチンおよび皮内反応用抗原 伴なうこともあるという報告があついでなされた1)” 1.接種ワクチン 5). 1)市販不活化ワクチン(武田,Lot IB)(以下Kと これらの反応は:L接種のみを受けた小児にしの再接 略す) 種を行なっても認められず,またKは猿腎細胞由来の 武田薬工会社により下記のごとく作製,市販されて ものでしは鶏胎児細胞由来のもので,異なった培養に いる.(健康な初代サル腎細胞の培養で増殖した田辺 よるワクチンでも局所反応のみられる例のあったこと 株をホルマリンで不活化し,硫酸アルミニウムを加え から,あらかじめ接種された不活化ウィルスによる感 て生ずるアルミニウム塩沈降物に不活化ウィルスを吸 作が問題となった. 着させてその抗原性を高め,その沈降物をあつめて生 一方KKLまたはKKKを接種されたi群が自然麻 食水でよく洗った後,No.199組織培養液に再浮遊さ 疹に罹患すると,ときに異型麻疹といわれる非定型例 せた桜赤色の懸濁液である. が発症することが報告された6)”11). 2)荒川弱毒生ワクチン(Lot 666)(以下L1と略 このような非定型例の明確な病因はいまだ不明であ るが,あらかじめ接種されたKによる過敏性反応であ す.) 東大医科研荒川教授により作製,分与されたもので ろうと考えられており,K接種の功罪が大いに議論さ ある.(これは米本株をFL細胞に分離培養5代,入羊 れるにいたった. 膜細胞3代,ついで亜硝酸処理後鶏胎児株細胞の限界 Lennonら12)はK接種をうけた小児にLワクチンで 稀釈培養を10回繰返してから初代モルモット腎細胞に 皮内反応を行ない,48時間後に4mm以上の硬結を 15良継代されたもので,感染価は103・oTCID50/0.1m1 認めたものが50例中29例あったと述べ,これに反して である.) L接種者では8例中1例のみ,また8例の未罹患児お 3)市販生ワクチン(千葉血清・Lot 2G) よび32例の自然麻疹経過者では4mm以上の硬結を (以下L2と略す.) 認めなかった.すなわちK接種をうけた小児ではしに 千葉血清研究所により作製・市販されたものであ より遅延型皮内反応の陽性率が高いと述べている.他 る.(すなわち,弱毒杉山株を牛腎細胞に接種し:増殖 にNelsonら13),岡ら14)も同様な成績を報告してい させ得られた大量のウィルス液に安定剤を加えたのち る.この遅延型反応の陽性者が多いという事実をただ 細胞成分を除去し,凍結乾燥したもので感染価は102・o ちにK接種群における異型麻疹の発病と結びつけると TCID50/0.1ml以上である) いうことはできないであろうが,著者はその機序の一 2.皮内反応に使用した抗原 端を知るべくつぎのごとく一連の皮内反応の実験を行 1)L2 Studies on Measles Virus Vaccines五. Intradermal Tests for Measles Virus Vac− cinated Children. Tetsurδ, Ohki, Department of Pediatrics(Director:Prof.1, Sagawa), School of Medicine, Kanazawa University. 字配鯉燗〇一b◎万国 ミ墾笥ユWど檸 O①一.o乞留蜘賢如 鯉累盈 朝OQ口邸乞 λq気ート 鯉目無出 逆目醐 。︼ ﹀出 ○日 儲=漏O哨qO山 紐環帯廿ど尽 ゐ碁申ミ卑ゼ富 紹纂灘 遜コー痺 磁店商 認纂禦農躍 磨製整粁く 留蜘本欄①一b◎邸国 .唱﹄調.£邸ε8日 .匿.の oωoも邸臼 q咽届一ΦO 鍵目赴燦 q=謡9咽口①自 囲累日亀 .囲.の 習蜘外外〇一bo邸国 .℃あ﹄.£邸ε8日 ①Φ囲.o乞留蜘儀傘 λ笥レミ藁 。。OQ口邸乞 八珂、ート .芝.の q出︻唄O唱qO山 細目卦世 嚢貝田 留蜘縷,幽①一bの邸国 是 撫 蜘 Kミャ心身盤 β 5 パ笥 ト ミ 藁 ミ繁笥L好ど尽 ①9.o乞習蜘橿傘 紐藤高 留憩観欄①一bo邸国 nQ国邸乞 λq>ーレ 鯉目無ヒ λ笥トミ藁 口 = 躍 O哨環①山 .℃臥調.£8ぢd臼 囲畢窟廿ゼ・尽 。、 . 譲 . の oロロ。もd臼 台蝉想欄Φ一bの邸国 q哨 捻 一 ㊤ O ① ① H . o 乞 翼 蜘 塔 傘 認累融ミ墾ど尽 く心珂〃ミト 鯉目赴単 浬 Q Ψ 帷 田 O匝思囎潤 Kミャ心高盤 N申へ捧叙の騨覇 刷 慶 腱目赴車 燵 灘 蜘 P 。, 翠 Q Ψ 田 懸齪−Q瞳娼製監理思授以公転為%翼汎ホへ降製⊃旺駆.祠懸 瞳お蝦O野駆思授嘱起謎 畠 大 木 690 麻疹ワクチンに関する研究 691 2)Lo(L2の細胞抗原) 43年12月までのあいだに:Kあるいはしによる麻疹の免 千葉血清研究所で作製分与された. 疫を行ない,その後各種の皮内反応を実施し,同時に (初代牛腎細胞をL2と同じ条件で培養し,麻疹ウィ 血清の血球凝集抑制(以下H.1.と略す)抗体価を測 ルスを接種せず細胞成分を除去したもの.L2の濃度 定した. よりPBSで3∼4倍稀釈されている.) 対象者を以下のように群別した.(表2) 3)Kv(不活化ワクチン使用のウィルス抗原) 1)第1群(KKK群) 北里研究所で作製・分与された.(Lot 682)(初代 K3回接種した. ミドリザル腎細胞で培養,増殖した豊島株をホルマリ 2)第2群 (KKL2群) ンで不活化し,ついでボィレマゾンを申和する目的で K2回接種後:L2を接種した. NaHCO3を使用し,遠心して細胞を除去した.) 3)第3群(K2.Oi群) 4)Ko(不活化ワクチン使用の細胞抗原) K2.Om1を接種した. 北里研究所で作製・分与された. 4)第4i群(KO.5群) (初代ミドリザル腎細胞を培養し,これをホルマリン KO.5m1を接種した. で不活化し,ついでホルマリンを中和する目的でNa 5)第5群(KL2群) HCO3を使用した.) Kを1回i接種1後,L2を1回接種した. 使用ワクチンおよび皮内反応用抗原の組成をまとめ 6)第6震羊(L10.1君羊) て表1に記した. :L10.1m1を接種した. ∬。対 象 7)第7群(未引高晶群) 金沢市およびその周辺に居住する麻疹未既患の健康 健康乳幼児またはアレルギー疾患がない軽症疾患 乳児を対象とし186名について昭和41年6月から昭和 児で麻疹の既往歴がなく皮内反応実施前のH.1.が 表2.麻疹ワクチン接種対象者の分類 平均年令 例数 KKK群 4歳2月 42 2 KKL2群 3歳6月 11 3 K2.Oi群 3歳 14 群 接 種 群 種 接 法 1∼1.5年 → 1月 1月 1 方 B. i} @ }「 S.T. ↑ ↑ KO.5 KO.5 KO.5 1週 1月 11月 I l l ↑ ↑ ↑ KO.5KL5 L20.25 1年 lB, S.T. → IB. S.T. K:2.0 4月 r rB. KL2群 2歳8月 33 ↑ ↑ L10.1i群 3一 月 S.T. 11月 KO.5 L20.25 ホ1月 17 1→ 6 12 51 5 10月 KO.5群 a →K 4 S.T. 2年 未点鼻児一 3歳2月 21 8 軸患小児群 6歳11月 21 9 既患成人群 29歳 15 ㊧ K:麻疹不活化ワクチン,L1, L2:麻疹弱毒生ワクチン, iB. S.T. L10.1 7 注射量の単位:ml lB. B.:採血,S.T.:皮内反応, 692 木 大 第1編に記載した方法で実施した, 陰性であったもの. 8)第8群(既患小児群) 実 験 成 績 健康乳幼児またはアレルギー疾患のない軽症疾患 児で麻疹の既往歴があり皮内反応実施前のH.1.が 各群のL2,:Lo, Kvおよび1∼oによる皮内反応の 陽性のもの. 発赤径,硬結径および膨隆径および皮内反応前の血清 9)第9群(適温縞入群) のH.1.抗体価幾何平均は一括して表3に示した. 金沢大学医学部小児科に勤務する医師および看護 婦,その他の健康成入で皮内反応仁の血清のH.1, 1.L2皮内反応 30分発赤径ではK:KK群は平均18.Ommで他の が陽性であったもの. 群にくらべて著明に大きく,有意の差を示した.48時 皿.皮内反応術式 間発赤径でもKKK群は平均19.3mmで他の群よ 両側前腕屈側をアルコールで清拭後ツベルクリン用 りも大きく,ついでKKL2群, K2.0群の順であり, 注射器および25ゲージ注射針を用いて,できるだけ正 確に0.05m1の溶液を皮内注射した. 48時間硬結径はKKK群とKK:L2群が他の群より大 きかった.かりに,10mm以上の発赤径を認めたも 皮内注射後30分および48時間後に発赤径,硬結径あ のおよび,4mm以上の硬結径をみとめたものを陽性 るいは膨隆径を測定した. として陽性率を図1一(1)に示したが,48時間発赤径は IV. H.1.術式 KKK群, KKL2群, K2.0群の順で低くなり, KKK 表3.各群の皮内反応(L2, Lo, Kv, Ko,)の発赤径,硬結径,膨隆径の幾何平均値: (mm),標準偏差,および皮内反応前のH.1.抗体価幾何平均 3・分}48翻 H.1. 6.1 2.9 6.0 4.1 5.5 2,0 10.0 5.9 4.6 1.6 5.5 3.6 硬結径 膨隆径 7.5 15.2 発赤径 8.2 14.0 発赤蔑 9.5 17.8 発赤径 7.2 18.8 硬結径 6.4 17,4 発赤径 硬結径 30分 48時間 発赤径 48時間 如隆径 膨隆再 発赤径 (1092N) 皮内反応 実施直前 2.9 5.3 4.2 幾何平均 9.4 6.4 13,2 9,2 7.2 4.1 8。5 5.7 8.9 4.9 10.6 5.68.2 4.4 5.5 2.7 標準偏差 3.5 2.9 5.6 4.6 2.5 2.7 4,5 4.6 3.5 2.4 4.3 4.12.4 2.9 3.5 3.2 幾何平均 8.1 2.78.3 3.4 4.6 0.61.9 0.6 8.0 2.1 4.8 1.6 8,5 1.5 3.7 1.8 標準偏差 2.7 2.64.8 2.7 1.3 1.22,3 1.4 2.8 2.3 3.8 2.4 3.4 2.5 3.6 2.7 幾何平均 8,6 4.2 5.6 2.2 5.6 3,5 4,7 1.8 8.3 4,2 3.61.3 7.7 3.8 2.5 0.7 標準偏差 3.2 2.1 2.4 1.6 3.6 2.4 3.5 2.1 2。4 1.6 3.72.0 3.3 2.6 1.7 0.9 幾何平均 9.5 0.63.1 0.2 5.0 1.3 6.70.1 4.2 6.1 1.9 3.6 0.5 標準偏差 1.6 2.4 2.4 2.7 0.9 幾何平均 8.0 2.1 3.21.5 10.0 5.32.0 0.3 6.5 1.6 1.5 0.2 標準偏差 1.2 4.1 2.5 2.0 0.6 9.0 6.2 4.1 4.6 5.2 KO.5君羊 1.23.6 6.7 3.6 2.5 2.8 4,1 2.8 2.0 未既患 児群 幾何平均 9.1 0.5 0.7 標準偏差 3.9 1.7 1.6 既 患 幾何平均 8.6 3.0 小児群 標準偏差 3.6 既 患 幾何平均 成人群 標準偏差 4.92.5 5.5 7.5 4.82.6 3.8 3,12.4 6.3 1.3 0.7 0.2 6.4 1.7 1.10.2 3.9 2.1 1.2 0.8 3.7 2.5 1.20.6 0,9 10.3 3,3 2.0 3.2 5.4 2.0 2.3 5.2 0.8 2.3 1.3 0,5 0.3 10.0 3.3 3.2 0.7 0.6 2.9 9.2 1.5 1.30.3 7.6 2.9 2.3 0.5 10.1 2.5 1.0 2.6 2.6 2,61.0 4.1 3.1 3.7 5.5 4.7 416 3> 4.7 3.0 1.7 10.2 3.1 2.1 4.3 1.9 2.0 11.1 3.3 0.8 3.8 3.0 1,0 0/ 0/ 5.0 2.0 0/ 0/ 1.9 5.3 0/ 0/ 0/ 4.3 L10.1群 0.7 0/ KL2群 1.3 0/ 9 Ko 標準偏差 0/ 8 8.1 11.0 0/ 7 18.0 7.0 1q.3 30分 硬結径 6 K2.0群 48時間 発赤径 5 KKL2群 膨隆再 4 幾何平均 KKK群 30分 Kv Lo L2 発赤径 3 \差 2 と七 二均標 幾平準 1 接種方法 群 皮内 反応 6.7 5.7 棚 麻疹ワクチンに関する研究 群ば他の群とくらべて有意の差で高値を示した.48時 皿.KΨ皮内反応 澗硬結径:の陽性率はKKK群, KKLが群とも・ほぼ同 最初試みにアルミニウム・アジュバントのはいった 様の高値を示した. 市販不活化K(武田Lot1B)をよく振盈し・OJO5m1 すなわちKi接種の屈数が多いものほど発赤径,硬結 を皮内・に1注射し〕たが,KKK鮮て12例)で30{分発赤径 径ともに陽性率が高く,これ1に反し動0.1群および は覇ユ8.8㎜り48時醗赤径:は平均132.3伽,48 既患成入群では陽性率が低い. 時間硬結径は14.5血mで,いずれも二重発赤を示し ∬.Lo皮内反応 た・ついでこのKを1,50①r.P.n1.15分間遠沈むた上 ll,oは」L2の:対照液として実施したがし2の濃度よ 清0.05m1を用いて皮内反応を実施した.その48時 りも3∼4倍稀釈されているために直接L2皮内反応 値と比較することなできな・い.しかしながら,各群の 間硬結径はKKK群で18.3m血であった.この値 は後述するKv皮内反応によるKKK群の48時間硬 ;Lo皮内反応を比較すると3Q分発赤径陽性率ではKK 結径平均18.8、mmと乏き1さに『有意差がなく,他の群 K群とKKL£群とのあいだτこは有意の差はなく,こ においてもほとんど同1じような結果を示していた.し の2群と他の7群とのあいだには有意の差を認めた. かしながら遠沈操作によって内容の組成が一定でない 48時間発赤径ではKKK群は他の8群よりも有意・の おそれがあると考えられ.・そのため北里研究所より譲 差で高い陽性率を示した.48時間硬結径ではKK:K群 渡されたKvで皮内反応を行なった. 30分発裁はKKK群平均18.8伽で他の8群 とK:KL2群との間には陽性率には有意差はなく,こ れらの群の他の7群との間に億有意の差を認めた. と比べて有意の差で大きかった。 (図1一(2)) 48時間発赤径でも,KKK群では平均17」8圃血は 図1 皮内反応による各群の48時間発赤径・硬結径のi陽性率とH.1.価幾向平均(その1) 8 b塵 X x X x × × 50 × 3 メ ロリ︶ 2 % ︵ FO4 75 7写。6 メ oo 陽性率1 H.1. (1)L2皮内反応 3> KKK:KKL2 K2.O KO.5 KL2 LO.1未既身近患出漁 群別→ 小 児 小児 成入 一・oo 陽性率1 H.1. (2)Lo皮内反応 8 x 50 x x 3 > 匠0︶ 2 % ︵ x 3 KKK KKL2 K2.O KO.5 KL2:L10.1未既患 既患 既患 群劉→ 小 児 小児 成人 ■■■■発赤径10mm以上 H.1. x価幾何平均 囮Z乙硬結径 4mm以上 (注) 陽性率 発赤径10mm以上の百分率 硬結径4mm以上の百分率 1092X 加0﹂b4 x 7 メ 75’ メ 694 木 大 他の群よりも大きく,ついでKKL2群, K2.0群の KvとKoとの間には有意差はなく,平均値では48時 順であった.48時間硬結径もKKK群が最も強い反 間硬結径のKKL2群でKvの方がKoよりも有意 応を示した. の差があったが他の群では有意差はなかった. 陽性率を見ると,48時間発赤径ではKKK群とK VI. L2とKv皮内反応との比較 KL2群とのあいだには有意の差がなく,この二群と L2とKvとの間には, K2.0群硬結径の陽性率で 他の7群の間には有意差をみとめた.48時間硬結径で L2の方がKvよりも高かった以外,48時間発赤径, も同様であった.(図1一(3)) 硬結径の陽性率では有意の差はなかった, IV. Ko皮内反応 W.K:vの10倍稀釈液(Kv10×)とK:oの10倍稀釈 KoはKvの対照液として使用した.30分発赤径で 液(Ko10×)の比較 はKKK群が他の群とくらべて有意の差で陽性率が KKK群にのみ実施した. KvおよびKo皮内反 高かった.48時間発赤径ではKKK群が他の群にく 応では有意の差は認めなかったので,10倍稀釈液を用 らべて平均値も陽性率も有意の差をもって大きかっ いたがやはり陽性率,平均値とも有意差を認めなかっ た、48時間硬結径の平均値はKKK群が他の群より た. も大きく,陽性率ではKKK群とKKL2群とはほ 田,KK:K群におけるL、2, LO, Kv, Ko皮内反応の とんど等しく,この2群の他の7群とは有意の差があ 比較 っナこ. (図1一(4>) この目的のために陽性率についてX2検定を,発赤 V.KvとK:o皮内反応の比較 径硬結径の平均値についてF検定を行なったが,陽 48時間発赤径および硬結径の陽性率では各群とも 性率では4種とも有意差はなく,平均値の:F検定で48 図1 皮内反応による各群の48時聞発赤径・硬結径の陽性率とH。1.価幾向平均(その2) (3)Kv皮内反応 メ oo 陽性率1 H.1. 8 x 7 1092× 6 x x X 50 β0︶ 2 % ︵ FO4 75 3 x KKK KKL2 K2.O KO.5 群別→ 3> KL2 L10.1未罹患 罹患 罹患 小 児 小児 成人 oo 陽性率1 H.1., (4)Ko皮内反応 8 X 75 71。9、X × x 50 6 霞り︶ 2 % ︵ PO4 x 3 x メ KKK KKL2K2.O KO.5 KL2 L10.1未既患既患既患 群別→ 小 児 小児 成人 ■■発赤径10舳以上砒・磯何平均 匠ZZZI硬結径 4 mm以上 (注)陽性率 発赤径10mm以上の百分率 硬結径4mm以上の百分率 3> 麻疹ワクチンに関する研究 695 時間発赤径がL2の方がKoよりも大き一く有意差が ]X.丁丁の陽性率とH.1.抗体価幾何平均との関係 あった以外ではそれぞれの間では有意差ほなかった. これら各群の陽性率とH.1.抗体価幾何平均との関 (表4,5,6) 係では平行関係は認められなかった.(図1一(1),(2), (3), (4)) 表4.皮内反応48時間発赤径・硬結径陽性率での各群間の比較 (1)L2の発赤径 (2)L2の硬結径 十十 十十十 十十十一 十十十一 群 8 9 群 2 1 2 3 4 群 5 5 6 7 6 7 ︸8 7 8 (3)Loの発赤径 (4)Loの硬結径 9 群 十 十 十 十 1 2 2 一 3 4 5 6 7 8 十 十 群 5 6 ︸6 5 7 } 7 8 (6)Kvの硬結径 群 2 1 2 4 3 4 5 6 7 } 群 5 十 十 4 群 8 5 6 一 7 6 7 8 」 8 9 十−十 十十 9 十十 十十 8 十十 十十3 7 十十 2 6 十十 5 十十3 4 十十十 十十十 十十十 3 十十 2 1 } 8 (5)Kvの発赤径 群 9 十十 8 十十 7 十十 6 十十 群 5 十.十一4 十一十4 十十3 4 十十3 3 十十 2 十2 1 9 5 6 群 8 十十十 十十十︸ 十十十 7 十十 6 十十十 5 十十十4 十一3 4 十十十一 3 十一3 十2 1 2 十十十4 群 696 大 木 ⑧ Koの硬結径 (7)Koの発赤一 一7. 8 9 一+++ 十十十 十十 3 6 5 十十 2 4 十十 1 3 十十十4 十十十一一一 群 十 9 一2 8 PO・ 7 十十十 群 6 十十 ﹁++ 3 十十十4 十 −十2 1 5 十十 斗1−213i4 群 5 6 6 7 7 8 8 ㊧ X2検:定 危険率5%以内で有意差あり……+,有意差なし……一 表5.皮内反応48時間発赤径・硬結径の陽性率 (1)Kvと辛く。の比較48時間発赤径 (2)KvとKoの比較48時間,硬結径 Vac 十十 十十 十十 L2 7 8 9 【 3 4 5 6 7 8 9 十十 十十 十十 十十十 一 一 一 一 Kv 2 十十十十十 7 1 十十 十十十 一 群 十十 V 十十 9 :L2 十十十 8 一 6 十 十 7 十十十十十十十 6 十十 5 十十 十十 十 十 十 十 十、十 十 4 十十 3 十十 2 5 Vac 十十 1 十十十十十十十 Rv 群 4 (4)IKvとL2の比較,48時間,硬結径 十十 V 3 十十 〔3)Kvとし2の比較,48時間,発赤径 十十十十十十十 十十十十十十十 Ψ 2 十十 十・十 Kv Vac Ko 1 十十 十﹁十 V 群 十十 9 十十 8 十十 7 十十 6 十十 5 123456789 1、 234567 4 十十・ 十 3 十十 2 Vac 十十十十 十十十十十十十 Kv 1 1234567$1 92345678 V 群 Ko 697 麻疹ワクチンに関する研究 表6・KKK群における:L2, Lo,:Kv,:Lo皮内反応の比較 1.陽性率のX2検定 2.発赤径または硬結径のF検定 (1)一48時間発赤径 (1)48時間発赤径 Lo L2 Kv Ko L2 L2 Lo Kv L2 :Lo 十 :Lo Kv Kv (2)48時間硬結径 Lo L2 Ko (2)48時間硬結径 Kv Ko L2 Lo Kv Ko L2 L2 Lo Lo Kv 危険率5%以内で有意差あり……+ 危険率5%以内で有意麗なし……一 考 察 麻疹ワクチンを抗原とした皮内反応の報告はさほど Kv 危険率5%以内で有意差あめ……十 危険率5%以内で有意差なし……一 前にKを3回接種した小児に10倍稀釈のKを0。1ml 皮内注射し,37例中30例に5mln以上の発赤を72時 間内に認めたのに反し,未既患児では19例中17例まで 多くない.Fulginitiら15)はKKLを接種した小児 全く反応を示さず,Schwarzワクチンを2年前に接 に3∼4年を経てLO.5m1を皮下接種し局所に発赤 種した10例には6例に5mm以上の発赤を認めたと ,腫脹,硬結などの異常を認めたもの(reactors)と 報告している. 認められなかったもの(nonreactors>とに分け, L L皮内反応もK皮内反応もその傾向は同じであっ O.1m1(著者の量の2倍)で皮内反応を行なった. て,K接種回数の多いほど皮内反応も強く未既面隠, 18入のreactorsのうち,1Q入に24時間で1∼3 c皿 既患者,L接種者では皮内反応陰性例が多かった.こ の硬結径をみとめ,18人のnonreactorsでは3人の れらのことは不活化麻疹ウィルスが不活化操作その他 同様な硬結をみとめたと報告している.すなわちL接 によって一部の抗原性が変化し,そのための過敏性状 種局所の変化の強いものが皮内反応も強い傾向がある 態がその後のL接種の際における局所変化あるいは遅 と考えられるが著者の症例ではKKIK群42例にL1を 延型皮内反応の原因ではないかと想像されている. 接種し,ほとんど局所変化を認めなかったにもかかわ しがし,既往にKを接種したものから非定型麻疹の らずL皮内反応は48時間硬結径で最大21.5mm,平 均8.1mmとかなり強い反応を示したものが多かっ 発病例の多いことと遅延型皮内反応陽性者の多いこと た.これにはLennonらの症例が接種後3ないし4 ついで不活化ウィルスを含まないKoおよび弱毒生 の関連性については今後の検討をまたねばならない. 年経過しているめに対して,著者の症例は1ないし1 ウィルスを含まないLoの皮内反応成績をみると, 年半という時間的な差が関与しているかもしれない. KvあるいはL1皮内反応成績と同様にKKK群は 岡ら16)の成績は皮内反応に用いたしの量が0,25m1 有意の差で他の群よりも強い反応を48時間後に示して と著者の量の5倍であり,したがって反応の大きさも いた.症例が多くないので明確な結論は出せないが, 強く,KKK群で48時間10 mm以上発赤例が95.0 ワクチンそのものの接種回数がふえれば,皮内反応陽 %,L群で14.0%と報告しており,著者例の75.0%, 性率が高くなる可能性がある.いいかえればワクチン 40.0%とやや異なった成績である.しかしK3回i接種 そのものに含有するウィルス以外の抗原性物質が皮内 群はK1回接種群よりも陽性率が高く,未既患,自然 反応陽性の原因となる可能性を否定できない.接種に 麻疹経過者,L接種群などでは陽性例が多く,著者の 使用されたウィルスの株,培養細胞および培地の種類 成績と同じ傾向を認めている. と皮内反応に使用したそれらの種類とはそれぞれ異な Kを用いた皮内反応は,Nelsonら13)が6∼12カ月 ったものであったために,その点に関する検討は実施 木 大 698 できなかった.しかしLennonら12)は鶏胎児細胞あ るいは犬牽細胞によるL皮反応の成績にはほとんど差 文 献 をみとめなかったと報告している. 1)Scott, T. F. M.&Bonanno,1). E.: N. H.1.抗体価と皮内反応の発赤径,硬結径との関係 England J. Med.,277,248(1967). 2) について,Nelsonら13)は48時間発赤径が5mm以 Buser, F.:N. England J. Med.,277,250 上の群と5mm未満の群とに分け,それらの群と, (1967). 3)Fulginiti, V. A., Arthur,」., H.1.抗体価とは関係がなかったと述べている.岡ら Perlman, D. S.&Kem:pe, C. H.:J. Pe− 14)は皮内反応発赤率(発赤径10mm以上のものの比 diatr.,69,891 (1966). 4)Fulginiti, V. 率)と流血中麻疹抗体価(中和抗体価(N.T.)赤血 A.,Eller,」.」., Downie, A. W.&K:empe, 球凝集抑制価(H.1.),補体結合抗体価(C.F.)〕と C.H.=J.A.M.A.,202,1075(1967). 5) の関係は必ずしも平行関係が得られなかったと述べて 岩井利男・松本 稔・若生 宏・川名林 治・金子 いる.この結果は著者の成績と同様であった. 克=小臨,21,965(1968). 6)Louise, W. R.&Schmidt, R.: Amer. J. Dis. Child., 結 論 109,232 (1965). 7) Norrby,]E., KKK i群, KKL2 i群, K2.0群, KO.5群, KL2 Lagercrantz, R.&Gard, S.= Acta pediatr. 群,未既記児群,既患小児群および既知成入群計186 Scand.,55,457(1966). 8)Nader, P. R., 名に対して,L2(弱毒生ワクチン), Lo(L2培養の細 Horwitz,遭【.&Rousseau, J。; Amer. Pedi− 胞抗原),Kv(不活化ワクチン培養のウィルス抗原) atr. Soc. Abstracts(Apri1),13(1967). Ko(不活化ワクチン培養の細胞抗原)で皮内反応を 9)中村健・南谷幹夫・竹下尚徳・岡田一穂・藤井 行ない30分および48時間後の発赤径,硬結径あるいは 良知3小臨,21,968(1968), 10)川崎 膨隆径を判定した.得られた結果は次の如くである. 憲一・手腕宗一:小臨,21,975(1968). 1.L2皮内反応の48時間発赤径ではKKK群が他 11)麻生治夫・坂田 婁・窪田誠一3小臨,21, の8群よりも大きさも陽性率も有意の差をもって高 980 (1968). 12) Lellnon, R. G.& く,48時間硬結径ではKKK群とKKL2群が他の7 Isacson, P.: J. Pediatr.,71,525(1967). 群よりも大きさ,陽性率ともに高かった.Lo, Kv, 13)Nelson,」. D., Sandusky, G.&Peck, F. Koによる皮内反応もL2皮内反応の成績と同様であ B.=J.A.M.A.,198,185(1966). 14)岡 った.すなわちKの接種回数の多いものほど皮内反応 秀・佐藤 肇・大高常正・大石 久・中沢 進・ の陽性率が高い. 国保喜寛・竹内方志・海老原勉・近岡秀次郎・中村 2.KvとKo, L2とKvとの皮内反応の比較 直吉・牧野 慧・笠原四郎: 日小会誌,72,1587 KvとKoとの間には,48時間発赤径および硬結径 (1968). 15):Fulginiti,」. A., Arthur, の陽性率では各群とも有意の差は:認めなかった.し とKvとの間には, K2.0群硬結径の陽性率でL2の 方がKvよりも高かった以外,48時間発赤径,硬結 径の陽性率では有意の差はなかった.すなわち皮内用 抗原におけるウィルスの生死,有無による差は認める ことはできなかった.このことは皮内反応にはウィル 以外の要因が関与している可能性を示している. 3.KKK群におけるKvの10倍稀釈液とKoの 10倍稀釈液との間に陽性率,平均値ともに有意差はな かった. 4.各群の陽性率とH.1,抗体価幾何平均とのあ いだには平行関係は認めなかった. 三筆にあたり御指導,御検閲を賜った恩師佐川一郎教授,寺村 文男博士に厚く感謝致します。また御援助と御指導をいただいた 北里研究所牧野慧博士,中村直吉博士,千葉血清研究所橋爪壮博 士に深く感謝し.御子養いただいた教室員諸兄に感謝します。 」.HりPearlman, D. S.&Kempe, C. H.: Amer. J. Dis. Child.,115,671(1968). )El5Fzffv 7 i, ye('ee'II-JklliVllfi 699 Abstract Several groups of children who had been vaccinated with live attenuated (Li or L2) and/or killed (K) measles virus vaccines were intradermally skintested, using O.05ml of kv or L2 vaccine as antigens and, as control antigens, Ko (cell antigen of inactivated measles virus vaccine) and Lo (cell antigen of Li). The skin tests were read at 30 min. and 48hours after injection for their erythemas and indurations. Hemagglutination inhibition titers were measured before the skin test. KKK group, vaccinated three times with K vaccines at one month intervals showed significantly greater responses at 48 hour erythema and induration by the four kinds of skin tests than those of the other groups. For example, the average diameter of i・nduration by Kv skin test was 8.2mm in KKK group and O mm in KL2 and measles-infected groups. There were no significant differences recognized between the skin reactions of L2, Lo, Kv and Ko in. each group. The average diameter of induration in KKK group was 8.1mm by L2, 7.2mm by Lo, 8,2mm by Kv and 6.1mm by Ko skin test. These results suggest a possibility that the cause of strong skin reaction in KKK group implies other factors than the existence of live or killed measles virus in the skin test antigen.
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