創立100周年に向けた 大学のさらなる発展のために

NTERV IE W
学長
山﨑 純一
創立100周年に向けた
大学のさらなる発展のために
選挙再選によって、この7月に2期目を迎えた山﨑純一学長。
1 期目の 3 年間を振り返っていただくとともに、創立 90 周年を節目にした、
今後の大学運営に関する展望を語っていただきました。
●研究機能の強化
関する情報を収集・分析し、改革を支援する組織ですが、
大学の研究力を示す指標として、一般的に科学研究費獲
とくに学生の学修に関する調査やデータの分析を行い、改
得件数が挙げられ、本学でもさらなる獲得をめざします。同
善案を提示することで改革推進に役割を果たすことが期待
時に、大学や研究機関が取り組むべき科学的・教育的プロ
されます。今後は学内でIR 組織を機能させ、自己点検、教
グラム、医学や科学的研究は公明性と中立性が求められ、
育評価、各種の実態調査を、実際の教育改善に結びつける
倫理性と科学性を担保することが必須です。研究者には自
ことをめざすとともに、教育目標に対し、どのような手順、
然に対する謙虚な気持ち、真理の探究、社会への貢献など
環境、教材で学習すれば高い効果を発揮できるのかという
を使命とする崇高な精神を持っていただきたい。また、利益
インストラクショナル・デザインの研究も行っていきます。 相反
(COI)
は重要な課題で、COIの基本概念となるのが
「研
また、学校教育法の一部改正に伴って改正した本学学則
究者倫理」
であり、適切な倫理教育と、管理監査と研究活
の中で、教授会と学長の関係について、
「教授会は、学長が
動のガイドラインに沿った研究体制が不可欠です。4学部を
教育研究に関する重要な事項について決定を行うにあた
擁する本学で蓄積された知識と技能・技術を駆使した共同
り、意見を述べることとする。また教授会は、学長及び学
研究は、大学の研究レベルを飛躍的に向上させます。その
部長等が司る教育研究に関する事項について審議し、学長
ためには、各研究者が学部を超えて隣人の研究内容を知る
及び学部長等の求めに応じ、意見を述べることができるこ
ことから始まります。
ととする」
と述べられています。重要事項の最終決定にあた
っては、教授会の意見を十分に聞く必要があるため、新た
●地域連携
(COC:Center of Community)
な取り組みを各学部に提示する場合、事前に学長・学部長
―2期目再任にあたり、まずは1期目を振り返っていただ
―さて、2期目に入ります。1期目から継続する取り組み
大学は自治体を中心に地域社会と連携し、全学的に地域
会議にて意見交換を行い、その結果を教授会で審議してい
けますか?
が複数あると思いますが、そのアウトラインをお聞かせくだ
を志向した教育・研究・社会貢献を進めることで、課題解
ただく必要があります。これまで教授会での決定事項に誰
2期目を務めるにあたり、改めてよろしくお願い申し上げ
さい。
決に資するさまざまな人材や情報・技術が集まる、地域コ
が責任を負うかという問題もありましたが、今後は最終的
ます。
●特色ある教育の推進
ミュニティの中核的存在としての機能強化を図ることが可能
に学長の責任ということになりますので、大学ガバナンスの
さて、学長1期目は、就任直後から医学部、薬学部、理
今後も続く18 歳人口の急激な減少に対応するため、特
です。本学においてもCOCを推進するため、平成 25 年~
確立にはいっそうの努力をしていく所存です。
学部、看護学部の有機的な連携を推進するため、各学部の
色ある大学の在り方が最大の焦点になります。本学の建学
26 年に炭山嘉伸理事長の協力を得て、大田区、目黒区、
学長として、創立 100 周年に向かう本学のさらなる発展
教員と教育論および研究について個別面談を重ねてきまし
の精神である
「自然・生命・人間」
の具現と、魅力ある教育
船橋市、習志野市、佐倉市との間で包括協定を締結しまし
のために全力を傾注してまいりますので、皆さま、引き続き
た。とくに薬・理・看護の3学部における教員の研究を理
研究の質的充実を推進することが肝要です。
「4学部それ
た。これを発展させることにより、大学・自治体間の教育・
ご支援ご協力のほど、よろしくお願い致します。
解することは、東邦大学の知的財産を見いだしたような新
ぞれの特色を生かし、豊かな知識・技能・態度を身につけ、
研究・医療・災害対策など諸問題への対策が円滑に推進さ
鮮な感覚でした。しかし、教員の研究テーマを把握するの
知識偏重ではなく、自ら考え行動し、国際的視野に立ち、
れるでしょう。
に3年間を要しました。また、初の試みとして、学生から直
積極的に社会貢献できる学生の育成」
こそが、本学のディプ
接意見を聞くことを目的とした昼食会を定期的に開催する
ロマ・ポリシー
(DP)
であると確信しています。本学は自然
―学長の2期目は創立 100 周年に向けた次なる10 年間
ことを始め、一部の学生ではございますが、在学生の意見
科学系の総合大学であり、教育に関しては全学部での共通
の端緒となります。東邦大学のいっそうの振興のためのお気
を聞くことができ、私としても有意義な時間を過ごすことが
教育の推進、アクティブ・ラーニングの導入、さらにアウト
持ちをお聞かせください。
できました。昼食会で得た学生の意見などは、各学部の教
カムを見据えた学習成果基盤型学習体制の確立をめざして
●健康科学部の開設
員と共有し、今後の学生支援に役立てたいと思います。
いきます。
我が国の老年人口は、2025 年に30%を占めることが予
また、学長・学部長会議、学長・学長補佐会議を定期
平成 27 年1月に文部科学大臣から
「高大接続改革実行
測され、医療の高度化、疾病構造の変化に伴い、効果的・
的に開催し、主に学事のあり方などについて討議を重ねて
プラン」
が提示されました。高等学校教育、大学教育、大
効率的な医療・介護サービス提供態勢を構築する必要があ
きました。各学部の教授会にもオブザーバーとして出席
学入学者選抜を通じて
「知識・技能」
のみならず、
「思考力・
り、とくに看護師不足はますます深刻な問題となっていま
し、教員の意見を直に聞くことができました。佐倉看護専
判断力・表現力」
「 主体性・多様性・協働性」を持った学
す。高度医療現場はもちろんのこと、地域連携における保
門学校の4年制大学化をめざしての閉校と同時に、新たに
生を確保できるように努力します。
健医療活動においても、その能力を発揮できる質の高い自
健康科学部看護学科(習志野キャンパス)を新設すること
立した看護師の人材育成に取り組む必要性があることか
について、薬学部・理学部の両教授会にて自ら説明させ
●グローバリゼーション
ら、佐倉看護専門学校を閉校し、4年制大学看護教育へと
ていただき、討議を重ねた結果、各教員が趣旨を理解の
これまで MoU(Memorandum of Understanding)
発展的に移行することとなりました。健康科学部
(習志野キ
上、皆様の協力を得られるものと確信しております。さら
を積極的に進め、大学間 MoU が 10 大学、学部間 MoU
ャンパス)
開設にあたり、建設費、学生定員数、学納金、教
に、4学部との運営連絡会議、法人の部長会議、理事
が14大学の計24大学と学術交流協定を締結しました。い
員確保などについて、法人のご理解とご支援をいただき、平
長・常務などとの役員会などを介して、学事以外に財政安
ま大学に求められているのは、短期的に有為な人材を社会
成 29 年度に開設する運びとなりました。
定のために本学が取り組むべき今後の運営方針を知るこ
に輩出するのではなく、生涯にわたり学びの精神を有した
とができました。
社会人の育成にあります。今後、ますますグローバル化が
● IR の設置と大学ガバナンスの確立
そのほかに着手した数々の事案は、2期目への展望に直
進むにつれて、社会で活躍できる、豊かな知識、優れた技
教育の恒常的改革に向けて、
IR
(Institutional Research)
結しますので、後ほどご説明します。
能、柔軟な創造性を有した学生教育をめざしていきます。
組織の役割と機能が注目されています。IRは教育や経営に
2 TOHONOW 2015.July
I NT E RV I E W
July.2015
TOHONOW 3