1 LHD プラズマ実験日誌(#716) 「7.高エネルギー粒子の物理/波動

平成 22 年 12 月 3 日(金)
LHD プラズマ実験日誌(#716)
「7.高エネルギー粒子の物理/波動加熱物理」実験報告
作成:小川国大、伊藤隆文、永岡賢一、磯部光孝、長壁正樹、西浦正樹
問い合わせ先:磯部(2173, [email protected])
1.日 時:2010 年 12 月 2 日(木)9:12-15:19
2.題 目:高速イオンと高速イオン励起 MHD 不安定性の相互作用
・磁場配位:
(Rax, Bt, γ, Bq)=(3.7 m, -0.75 T, 1.2538, 100 %)
: #101432 ~ #101472
(Rax, Bt, γ, Bq)=(3.8 m, -0.75 T, 1.2538, 100 %)
: #101473 ~ #101477
(Rax, Bt, γ, Bq)=(3.8 m, -0.9 T, 1.2538, 100 %)
: #101478 ~ #101508
(Rax, Bt, γ, Bq)=(3.85 m, -0.9 T, 1.2538, 100 %)
: #101509 ~ #101539
・ガス種 :
水素
3.実験概要
【実験1】
:従来未実施であった低磁場外寄せ磁場配位におけるトロイダルアルヴェン固有モ
ード(TAE)、並びに高速粒子モード(EPM)と損失高速イオン束との相関(小川国、永岡、
磯部、長壁)
これまで、Rax=3.60 m、3.75 m、及び 3.90 m の低磁場条件下で NB 入射高速イオンにより
励起された TAE 磁場揺動強度(bTAE)と 8O ポート設置のシンチレータ型損失高速イオンプ
ローブ(8O-SLIP)で観測された TAE に起因する損失高速イオン束の上昇(ΔΓSLIP)との関係
を調べてきた。その結果、有限ベータ平衡における実際の磁気軸位置(Rmag)が外に寄るに
つれて、bTAE の増大とともに、より急峻に ΔΓSLIP が増大するという知見が得られている。今
回、これまでに未実施であった Rax=3.70 m、3.80 m、及び 3.85 m の磁場配位において、従来
取得したデータの補完を意図した実験を行った。今回行った実験においても、TAE に起因す
る損失高速イオン束の増大分は、磁気軸位置が外側にシフトするほど TAE 磁気揺動振幅に強
く依存する結果が得られた(図1)。今後、これまでに得られた結果との比較を行い、磁場配
位・構造の違いによる bTAE と ΔΓSLIP の相関について理解を深める。
図1. 磁気プローブ位置での TAE 揺動強度と損失高速イオン束(8O-SLIP)の関係。
次に、EPM により引き起こされる高速イオン輸送について得られた実験結果の代表例を
示す。ハイブリッド型方向性ラングミュアプローブ(HDLP)搭載の磁気プローブにより、磁
気揺動周波数の下方掃引を伴う回帰的 EPM バースト、並びに上方と下方の両方に周波数掃引
する TAE バーストが観測された。EPM に対しては、E//B-NPA により、約 160 keV のエネル
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平成 22 年 12 月 3 日(金)
ギー領域にある高速イオンの増加とその減速が観測された。この時、磁気揺動は m/n=2/2 の
構造を持ち、且つ、EPM により大半径方向外側に輸送された高速イオンのエネルギー減衰時
間は、TAE(m/n=~1/1)の場合に比して短く、EPM は周辺領域で励起されていることが示唆
される。一方、TAE に対しては、約 150 keV のエネルギー領域にある高速イオン束が増加し
(クランプ)、170 keV のエネルギー領域にある高速イオン束の減少(ホール)が観測された。
高速イオンのエネルギースペクトル上のホールとクランプは、それぞれ、磁気揺動周波数の
上方掃引と下方掃引成分に対応していると考えられる。また、TAE に応答する高速イオン成
分は、長い減速時間を持つことから、TAE は EPM に比してよりコア領域で励起されている
と考えられ、今回、モード数(m,n)から推測される不安定性の励起・存在位置に関する議論
をサポートする形のデータが荷電交換高速中性粒子測定から得られた。
図 2. 上より順に、磁場揺動スペクトロ
グラム、磁気プローブ信号、高速イオン
束(以上、HDLP から得られた信号)、
E//B-NPA で観測された高速イオンのエ
ネルギースペクトル。(shot#101484:
Rax/Bt=3.80 m/-0.9 T)
【実験2】FICXS による高速イオン空間分布測定の試み(伊藤隆、長壁)
JAEA との共同研究に基づいて導入した高時間分解能の分光器によって、接線の FICXS
計測は、NBI#4 のモジュレーション運転を用いた背景光計測や、高速イオンの空間分布の時
間発展の計測が可能になった。今回はこの分光器による波長スキャンを行い、特に NB 停止
後の高速イオンの減速や、EPM が励起されている時刻と励起されていない時刻での高速イオ
ン空間分布の違いに着目する形で、高速イオン荷電交換スペクトルの時間変化の計測を試み
た。詳細については今後データを精査し、後日改めて報告する。
【実験3】協同トムソン散乱(西浦、田中謙、久保)
AE 放電の後半を利用し、77 GHz ジャイロトロンを用いた協同トムソン散乱(CTS)計
測により、低磁場 Bt=-0.75 T ~ -0.9 T、Rax=3.7 m ~ 3.85 m の磁場配位においてバルクイオン、
並びに高速イオンの空間分布取得(外寄せ配位の場合、r/a>0.3)を試みた。9.5U ジャイロト
ロンをプローブビームとし、散乱波は 9.5U-ECH アンテナにより受信した。今回の測定では
バルクイオンに起因する散乱波は受信できたが、高速イオンと ECE 背景光との有意な差を検
出することはできなかった。この実験条件では散乱信号が弱いのか、ビーム位置調整が不十
分だったのかを含め改めて検討し直し、次の機会に再度計測を試みる予定である。
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