Banach-Tarski paradox とその一般化 梅本 悠莉子 大阪市立大学大学院理学研究科 M 1 1 4 G-分割合同 Banach-Tarski paradox 定義 1. (G-空間) 定理 1. A, B ⊂ R3 : 任意の閉球体 =⇒ A ≈E(3) B. 空でない集合 X に群 G が作用するとき,X を G-空間という. 特に G の任意の元 ( 証明 ) A ⊂ ∪m i=1 gi B E(3) が X に固定点を持たないとき, G は X に自由に作用するという. 同様に,B E(3) E(3) A より A m i=1 hi B B, B E(3) E(3) B より A E(3) B. A =⇒ A ≈E(3) B. 系 4. (Banach-Tarski paradox) A, B ⊂ R3 : 内点を持つ任意の有界集合 =⇒ A ≈E(3) B. 定義 2. (A ≈G B) G-空間 X の空でない2つの部分集合 A, B が G-分割合同(A ≈G B )である def. ⇐⇒ A = ∃ ni=1 Ai , B = ∃ ni=1 Bi ∃ gi ∈ G (i = 1, 2, . . . , n), s.t. Ai = gi Bi . 補題 1. S 3 を3次元単位球面,N := (0, 0, 0, 1), S := (0, 0, 0, −1) ∈ R4 とする.こ 定義 3. (A のとき S 3 − {N, S} は SO(4)-逆説的. B) G-空間 X の空でない2つの部分集合 A, B に対し, G A が B の部分集合と G-分割合同であるとき A 命題 1. (Bernstein)A G B ,B G S n は SO(n + 1)-逆説的 5 (証明) S 2 は SO(3)-逆説的より G B と書くことにする. ∃ A1 ··· Am 2 B1 ∪m i=1 gi Ai ··· Bn ⊂ S 2 , ∪nj=1 hj Bj . 3 ∃ s.t. S = = := {(x1 , x2 , x3 , x4 ) ∈ S − {N, S} | √ A =⇒ A ≈G B. A∗i Bj∗ 1 (x1 , x2 , x3 ) x21 +x22 +x23 1 √ 2 2 2 (x1 , x2 , x3 ) x1 +x2 +x3 G-空間 X の空でない部分集合 E は G-逆説的 def. ⇐⇒ ∃ B ∃ C ⊂ E s.t. B ≈G E, C ≈G E. := {(x1 , x2 , x3 , x4 ) ∈ S − {N, S} | 0 gi 0 hj ∗ ∗ gi := , hj := 0 0 0 0 1 0 0 3 m ∗ ∗ n ∗ ∗ S − {N, S} = ∪i=1 gi Ai = ∪j=1 hj Bj 例 1. 2元生成自由群 F2 は F2 -逆説的. 補題 2. S 3 ≈SO(4) S 3 − {N, S}. 2 g1 , · · · , gm , h1 , · · · , hn ∈ SO(3) G-逆説的 定義 4. (G-逆説的) 3 0 0 0 0 ∈ Ai } ∈ Bj } とすると, 1 (証明)原点中心,半径 1 の x3 x4 平面上の無理数 θ 回転 g ∈ SO(4) に対し,A := 命題 2. X は G-空間とする. n ∪∞ n=0 g ({N, S}) として命題4および命題6のように考えればよい.) 系 5. S 3 は SO(4)-逆説的. 1. X の空でない2つの部分集合 A, B に対し, A ≈G B かつ A は G-逆説的 =⇒ B も G-逆説的. すると補題1の証明と同様にして今度は S 4 − {N, S} は SO(5)-逆説的で,補題2 の証明と同様にして S 4 ≈SO(5) S 4 − {N, S} より S 4 は SO(5)-逆説的となり,この 2. G の部分群 H に対し, ようにして帰納的に次のことが言える. X は H-逆説的 =⇒ X は G-逆説的. 3. G は G-逆説的かつ X に自由に作用する =⇒ X も G-逆説的. 系 6. 任意の n 2 に対し S n は SO(n + 1)-逆説的. 2 に対し S n で球面距離を考えると Banach-Tarski の定理が成 立する.S は SO(2)-逆説的ではないし,Banach-Tarski の定理も成立しない. 注意 1. 任意の n 1 3 Banach-Tarski paradox への準備 命題 3. SO(3) は F2 と同型な部分群を含む.具体的には次の行列 A, B で生成され る部分群 H は F2 と同型. √ 1 −232 3 √ 1 A = 232 3 0 0 0 0 , 1 1 B= 0 0 0 1 3 √ 2 2 3 0 √ −232 . 1 3 系 1. H − {e} の元 g による回転軸を g とし,D := 系 7. 任意の閉球体 B n ⊂ Rn は E(n)-逆説的. g∈H−{e} ( g ∩ S 2 ) とすると, 命題 4. S 2 ≈SO(3) S 2 − D (証明)相異なる m, n ので,A := n ∪∞ n=0 g (D) 3 に対し B n ⊂ Rn : 原点 0 中心の閉球体 =⇒ B n − {0} は SO(n)-逆説的,よって特に Euclid 等長変換群 E(n) に関して E(n)-逆説的. 補題 3. 任意の n 補題 4. B n ≈E(n) B n − {0}. S 2 − D は SO(3)-逆説的. (証明)H は S 2 − D に自由に作用するので. 0 に対し g (D) ∩g (D) = φ となる g ∈ SO(3) が存在する とすると,S 2 = (S 2 −A) A かつ S 2 −D = (S 2 −A) g(A). m n 系 2. S 2 は SO(3)-逆説的. 以上から Banach-Tarski paradox の一般化が言える. 定理 2. (Rn (n 3) における Banach-Tarski paradox ) A, B ⊂ Rn : 任意の閉球体 =⇒ A ≈E(n) B. 系 8. A, B ⊂ Rn : 内点を持つ任意の有界集合 =⇒ A ≈E(n) B. 注意 2. Euclid 平面 R2 では Banach-Tarski の定理は成立しない. 7 命題 5. K ⊂ R : 原点 0 中心の閉球体 =⇒ K − {0} は SO(3)-逆説的,よって特 に Euclid 等長変換群 E(3) に関して E(3)-逆説的. 3 (証明)A ⊂ S 2 に対し,A := {ta | 0 < t Rn における Banach-Tarski paradox さらに命題5,命題6,系3と同様にして よって特に H は H-逆説的である. ∪ 6 1, a ∈ A} ⊂ K − {0} を考えればよい. 命題 6. K ≈E(3) K − {0} (証明)簡単のため K : 単位球面,(1/3, 0, 0) ∈ R3 中心で半径 1/3 の xy 平面上の Hn における Banach-Tarski paradox n-次元球体 B n に双曲計量を入れた空間を双曲空間といい Hn で表す.その向きを 保つ等長変換群を Iso(Hn ) とすると,原点 0 の固定部分群は SO(n) となり,Rn と E(n) の場合と同様に、Hn と Iso(Hn ) に関して Banach-Tarski の定理が成立する. 注意 3. 双曲平面 H2 でも Banach-Tarski の定理は成立する. n 無理数 θ 回転 g ∈ E(3) に対し,A := ∪∞ n=0 g ({0}) として命題4のように考えれば 8 よい. 系 3. 任意の閉球体 K ⊂ R3 は E(3)-逆説的. 参考文献 1. 砂田利一 ,新版バナッハ・タルスキーのパラドックス,岩波書店,2009. 2. Stan Wagon, The Banach-Tarski Paradox, Cambridge University Press, 1985. 3. Jan Mycielski, The Banach-Tarski paradox for the hyperbolic plane, Fundamenta Mathrmaticae 132(1989) p143-149.
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