電力中央研究所報告 火火 力 力 発 発 電 報告書番号 : M 0 9 0 0 2 石炭ガス中アンモニアの分解技術の検討 −担持ニッケル触媒の分解特性− 背 景 当所では石炭ガス化複合発電(IGCC)のさらなる高効率化が可能な乾式ガス 精製技術の開発を進めており、IGCC の排出窒素酸化物(NOx)低減対策のひと つとして、触媒による石炭ガス中アンモニアの分解除去技術の基礎検討を行って いる。これまでに、アルミナ担持ニッケル触媒を用いれば、燃料に少量の酸素を 添加することにより、従来必要とされた 800℃以上の高温から、設備に高価な耐 熱材料を用いる必要のない 400∼550℃でアンモニアを選択的に窒素に分解でき ることを明らかにした。しかし、目標の排出 NOx 濃度の達成に必要な、80%以上 のアンモニアの窒素転換率 注1) は得られず、炭素析出などの副反応が発生するこ とが明らかになった。 目 的 80%以上のアンモニアの窒素転換率の達成、および副反応の抑制を目指し、前 報で活性を示した担持ニッケル触媒を基に、担体成分の最適化を図る。さらに、 最適化した担体成分を用いて実用性のあるペレット状成形触媒を試作し、初期性 能を評価する。 主な成果 1.担体成分の最適化 比表面積などの物性に着目して選定した各種担体粉にニッケル(Ni)を担持・ 粒状化した触媒(表1)について、石炭ガス化模擬燃料を用いて加圧反応実験を 行った(表2)。その結果、ZSM-5 ゼオライト粉に担持した触媒(Ni/ZSM-5)が 優れた性能を示し、300∼350℃で 94%のアンモニアの窒素転換率を得た(図1)。 さらに、400℃以下で反応させることによって炭素析出、燃料消費、メタン(CH4) ・ 窒素酸化物(NOx)・亜酸化窒素(N2O) ・シアン化水素(HCN)の生成などの副 反応を大きく抑制できることがわかった(図2、3、表 1) 注2)。 2.成形触媒の性能評価 ペレット状の ZSM-5 を試作し、Ni を担持して性能を評価した。その結果、300 ∼350℃で 80%以上のアンモニアの窒素転換率が得られ(図4)、副反応も抑制可 能であることが明らかとなり、所期の目標性能を達成できた。 今後の展開 反応条件の影響評価や最適な触媒形状の選定を進めるとともに、より長時間の炭素析出特 性を含めた性能評価、および劣化防止対策について検討する。 注1)アンモニアの分解率から窒素以外の含窒素化合物(N2O、HCN など)の生成率を引いた値。80%の 値は、ガスタービン燃焼器で燃料中アンモニアが全て NOx に転換すると仮定し(実際は一部が窒素 に転換するので最も厳しい条件を仮定)、排煙脱硝装置(脱硝効率 90%と仮定)を組み合わせて、煙 突出口 NOx 濃度を 5ppm に低減するために必要な、燃料中アンモニアの窒素転換率の想定値。 注2)炭素析出は 2CO → CO2 + C の反応で発生するため、O2 が存在しない条件で CO が減少せず CO2 が増加しなければ、炭素は析出していないと考えられる。 各種担体を用いた触媒の評価 100 CH4 炭素 HCN 生成 析出 総合 生成 濃度*1 抑制 評価 率*1 [%] 効果*1 [%] 触媒 比表 面積 [m2/g] 平均 細孔 径 [nm] N2への 転換率 が最大 となる温 度 [℃] N2 への 転換 率*1 [%] N2 O 生成 率*1 [%] Ni/Al2O3-a 114 22 400 36 0.3 0.2 0.0 △ △ Ni/Al2O3-b 148 17 400 66 0.6 0.1 0.0 △ ○ Ni/La添加 Al2O3 101 22 400 34 0.6 0.1 0.0 △ △ *2 *2 *2 Ni/TiO2 73 21 − − Ni/SiO2 300 11 − −*2 −*2 −*2 Ni/CeO2 123 7 − − − *2 − *2 NH 3 の N2 への転換率 [%] NH3の転換特性 − − *2 *2 × −*2 −*2 × *2 *2 × − − *2 − − Ni/ZrO2 74 17 350 20 2.5 0.3 0.2 × × Ni/SiO2・ Al2O3 418 8 450 13 0.0 0.5 0.0 ◎ △ Ni/Y型 ゼオライト 726 2 450 16 0.1 0.1 0.0 ○ △ Ni/ベータ ゼオライト 570 3 300 17 0.7 0.0 0.0 △ × Ni/ZSM-5 ゼオライト 388 2 300 94 0.3 0.0 0.0 ○ ◎ 触媒 80 ○ △ □ ▽ ◇ 60 40 Ni/Al 2O3-a Ni/Al 2O3-b Ni/La添加Al 2O3 Ni/ZrO2 Ni/ZSM-5 20 0 -20 100 図1 200 300 400 500 触媒温度 [℃] 600 担体成分のアンモニア分解特性への影響 35 CO 30 濃度 [Dry%] 表2 実験条件 触媒寸法 粒状:2∼3mm メッシュ、ペレット:φ4mm×L4mm 燃料組成 H 2=10.5mol%, CO=28.4mol%, N 2=54.3mol% 0.008mol/mol 空間速度 20000h -1 反応圧力 0.9MPa ○ Ni/Al 2O3-a ▽ Ni/ZrO2 △ Ni/Al 2O3-b ◇ Ni/ZSM-5 □ Ni/La添加Al 2O3 20 15 10 H2 析炭 出素 しは なほ いと ん ど CO 2 5 0 CO2 =3.6mol%, H2O=3.1mol%, NH 3=0.104mol% 酸素/燃料比 変 化 小 触媒 25 *1:N2への転換率が最大となった温度での値 *2:NH3分解効果を示さなかったため評価せず 100 図2 200 300 400 500 触媒温度 [℃] N2 Oの生成率 [%] NH 3 の N2 への転換率 [%] 触媒 ○ Ni/Al 2O3-a ▽ Ni/ZrO2 △ Ni/Al 2O3-b ◇ Ni/ZSM-5 □ Ni/La添加Al 2O3 4 3 2 1 40 20 ペレット寸法: φ4mm×L4mm 80 60 N2 転換率 NO生成率 NO2 生成率 N2 O生成率 HCN生成率 0 100 図3 200 300 400 500 触媒温度 [℃] 600 8 6 4 2 0 -20 100 700 10 ○ △ □ ▽ ◇ 0 600 担体成分の燃料反応特性への影響 100 6 5 700 200 700 図4 担体成分の N2O 生成特性への影響 300 400 500 触媒温度 [℃] 600 NO,NO 2 ,N 2 O,HCN生成率 [%] 表1 -2 700 ペレット状 ZSM-5 担持ニッケル触媒の アンモニア分解特性 研究報告 M09002 キーワード:石炭ガス化複合発電,アンモニア分解,乾式ガス精製,触媒, 選択接触酸化 関連報告書 「石炭ガス中アンモニアの分解技術の検討−ニッケル・ルテニウム担持触媒 の分解特性−」、M04016 担 当 者 小沢 連 絡 先 (財)電力中央研究所 エネルギー技術研究所 Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] 靖(エネルギー技術研究所 高効率発電領域) C 財団法人電力中央研究所 平成22年1月 ○ 09−001
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