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日本骨髄腫患者の会 第11回国際骨髄腫ワークショップ「多発性骨髄腫治療の展望」
群馬大学医学部付属病院 血液内科 村上博和先生
2007/8/20
多発性骨髄腫に対しては、1990 年代前半まで MP(Melphalan/Prednisolone) 療法を中心と
した化学療法が行われてきましたが、その生存期間中央値は約3年であり、治癒が不可能な
疾患と考えられてきました。しかし、1990 年代後半より、初期治療に自己造血幹細胞移植を
伴う大量化学療法が、さらに再発・難治例治療には Thalidomide や Bortezomib などの新規
薬剤が導入され、生存期間の延長がもたらされました。さらに、 heat shock protein 90 (Hsp90)
阻害剤などの新規薬剤が次々と開発されています。
これらの新たな治療ツールが得られた
現在、骨髄腫治療はどのように変わるの
でしょうか。2007 年 6 月 25 日から 30 日ま
で、猛暑の中、ギリシャのコス島で第 11
回国際骨髄腫ワークショップが開催され
ました(写真)。本項では、
Thalidomide、Bortezomib、Lenalidomide
以外の新薬を紹介し、さらに骨髄腫治療
の展望を示したいと思います。
コス島の街角にたたずむ村上先生
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日本骨髄腫患者の会 1.新規薬剤
骨髄腫において期待されている新規薬剤の中では、heat shock protein 90 (Hsp90) 阻害剤
の臨床試験が進んでいます。 Richardson は、phaseI/II study で、その安全性と bortezomib 不
応 例 に 対 し て の 有 効 性 を 示 し 、 さ ら に Tanespimycin (KOS-953) と い う Hsp90 阻 害 剤 と
Bortezomib の併用で、 PR 以上が 8/23 例( 35% )に、 MR 以上が 13/23 例 57%) に得られたと
報告しています。本剤の phaseIII study が FDA に認可され開始されます。
また、 Bortezomib 以外の新しい proteasome inhibitor も開発されています。 Carfilzomib
(PR-171) は 、 Bortezomib 無 効 例 に も 有 効 で 、 phaseII study が 始 ま り ま し た 。 ま た 、
Salinosporamide A (NPI-0052)は、Bortezomib に比して強い活性を持っており期待される薬剤
ですが、まだ臨床試験には至っていません。
2.既存薬剤の有効利用
既存薬剤をいかにうまく使うか、または併用するかも重要です。今回のワークショップでは、
Lenalidomide+Dexamethasone 療法において、Dexamethasone の投与量削減が有用であると
の報告に注目が集まっていました。 ECOG は、本年の ASCO で、 Lenalidomide 25mg/day を
21 日間投与し、これに Dexamethasone 40mg×4日を、day 1~4, 9~12, 17~20 に投与する標
準群と、dexamethasone 40mg を day 1, 8, 15, 22 に投与する低用量群を比較しました。低用量
群の dexamethasone 使用量は、1/3 となります。その結果、低用量群は、深部静脈血栓症を
含めた副作用の発現率が有意に低く、また生存期間も有意に良かったと報告しました。この
報告をもとに、多くの発表者が、他の治療レジメンにおいても、 dexamethasone 用量検討の必
要性を強調していました。
3.今後の展望
ひとつは、治癒を目指した治療法の検討が進んでいました。 Thalidomide や Bortezomib な
どの新規薬剤を移植前寛解導入療法に用い、腫瘍量をより減少させてから自己末梢血幹細
胞移植に持ち込む臨床試験が行われています。これらの中間解析結果が報告され、良好な
成績が示されていました。また、移植後の新規薬剤による維持療法も様々な国で行われてお
りました。今後、「新規薬剤による寛解導入療法+自己末梢血幹細胞移植+新規薬剤による
維持療法」の成績が明らかになるでしょう。
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日本骨髄腫患者の会 また、骨髄非破壊的同種幹細胞移植(ミニ移植)は、治癒を期待できる治療ですが、最近
は治療関連死および再発が多いことより、あまり行われなくなっていました。しかし、イタリア
のグループが TBI(全身照射)200cGy のみという軽い前処置を行った後、兄弟間同種移植を
行った良好な成績を報告したため、再検討が始まりました。日本においても、同様の臨床試
験が行われていますので、多くの患者さんにご協力いただけることを期待しています。
第2には、自己末梢血幹細胞移植が必要か否かの検討も始まっています。自己末梢血幹
細胞移植施行群と新規薬剤のみによる治療群の比較試験の結果が待たれます。
さいごに
以上の通り、骨髄腫治療は様々な治療ツールを得て、治癒を目指す時代となりました。本
邦においても、医療従事者、患者さん、製薬業界および行政の協力で、世界に情報発信でき
る多施設共同臨床試験が施行されることが望まれます。
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