Thalidomide サリドマイドの教訓 およそ 50 年前、妊娠初期、つわりの

Thalidomide サリドマイドの教訓
およそ 50 年前、妊娠初期、つわりのひどい妊婦に、吐き気止めとしてある薬剤が開発販
売された。西ドイツやイギリスそして、日本で大量に使用されたが、米国では FDA(食品
薬品管理局)のケルシー女史が、製薬会社の猛烈な抗議にもかかわらず、データが乏しい
と頑として許可しなかったという。この結果、ひとりの産科医が、一生に一度みるかみな
いか、という Phocomelia フォコメリア(上肢の親指側が欠け、ひどくなると上腕骨も消失
し、肩から何本かの指が「生えている」状態になり、あざらしっ子とか Angel baby(エン
ゼル・ベビー)とか、と呼ばれる)が、信じられないくらい「大量に」発生した。東京の
築地産院だったかでは、ほぼ同じ頃に3人発生した。この時点できちんと報告していれば、
その後の犠牲者はでなかったはずである。ところが、妊婦に説明することなく、つまり「許
可なく治験」していたため「告白」
(というよりも白状に近い)できなかったから、報告し
なかった。
(註;この犠牲があったから、それまで先進欧米諸国で発売されている薬につい
ては、日本では自動的に製造許可がおりていたのを改めることになる。また、もっとのち
になるが、患者乃至は家族に無断で新薬を治験することが、できなくなった。)
小生は一度だけ、高齢の Phocomelia 患者をみたことがある。上記のくすりによるもので
はなく、突然変異か妊娠初期に、何らかの化学物質に曝されたものと思われる。それほど
少ないものである。小生、学生時代にこの子供たちと一緒になって、製薬会社に抗議して
いたものである。映画もある。
「典子は今」である。前記薬剤が Thalidomide であり、会社
は当然、後年の HIV 訴訟のみどり十字と同じく、徹頭徹尾否定し続けた。その製薬会社の
社員にも被害者がいたのであるが、生活のため沈黙せざるを得なかった。Thalidomide は、
当初、らい病の癩結節に有効だというので残りかけたのであるが、この病気は少ないため、
いつの間にか消えてしまった。ところがこの 10 年、多発性骨髄腫(造血器の悪性腫瘍)に
対して効果があることから米国などでは見直されつつあるのだが、今でも日本では製造さ
れていない。PTSD かも知れない。米国やブラジルから輸入しているらしい。
Thalidomide の教訓というのは、いくつもある。たとえば
1) Thalidomide 事件のときの厚生省薬務課長が、
HIV 訴訟のみどり十字の社長に天下っ
ていた。何の教訓も学んでいない。最後に TV カメラの前で土下座までさせられた。
(土下座はちょっとひどすぎるかも知れないが。)厚生省の薬務課長が自分だけクロ
ロキン(腎臓の薬だが、製薬会社から失明する恐れがあると注意をうけて。)を服む
のをやめていた事実もある。当然、国民には知らされていない。役得くらいに思って
いたのかもしれない。マスコミはそれ以上追求しなかった。なぜかわからない。
2) Thalidomide 以降、妊娠初期の妊婦に余計なくすり、たとえば、吐き気止めや膀胱炎
に対する抗生物質の使用がだめになった、
「はずである」。妊婦への安全性を確かめる
よりも、まず、使わないことになったはずである。
・・・ところが、10 年ほど前にこ
の「吐き気止め」を点滴したバカな産科医がいて、産まれた赤ちゃんの趾が何本かな
かったのである。
3)
つい最近、産科の医者から、インフルエンザ・ワクチンの接種を指示された、と小
生のクリニックに来た妊婦がいたらしい。小生のところに来る前に受付の段階で「ワ
クチン接種はできない」と帰ってもらった。スタッフの処置は全く間違っていない。
ところが、この妊婦「それなら産科で接種してもらう」と随分怒って帰ったという。
患者も患者なら医者も医者。TV では、予防接種は大丈夫と言っていたが、どこまで
わかって言っているのかがわからない。では、何か起こったとき責任をとれるのか?
妊婦でも、授乳婦でも、余計な化学物質を投与したくないのである。
・・・Thalidomide
から何の教訓も得ていない。
雪印製品のときなどに折にふれて話が蒸しかえされるのであるが、当時、会社の
前に座りこんだ患者や家族をガードマンを雇って排除した。しかし最終的には謝罪
せざるを得なくなった。
4) 御用学者が必ず、といっていいほどでてくる。西独のレンツ博士の論文を適当に
「まちがって」解釈して、サリドマイドは安全だ、といった阪大教授。アスベスト
の業界を代弁する、どこかの大学の教授。いつの間にか被害調査団の団長になって
いて、あきれてしまった。マッチ・ポンプや。あれだけアスベストは安全だと言っ
ておきながら、アスベスト「被害」調査団の長に就任していた。恥ずかしげもなく。
よくまあ、そんなことができるなあ。マスコミも、ジャーナリズムを標榜するなら、
もっと攻撃してもいいと思うのだが。・・・御用学者はアガリクスかなんかでも、で
てきていたし。
どうも品位風格に欠ける。人格高潔ならず。