電中研報告 火 力 発 電 03−033 固定床バイオマスガス化発電の調査 −バイオマスガス化発電システムの熱効率と経済性比較− 背 景 温室効果ガス排出抑制のため、CO2 排出を勘定しないバイオマス利用発電が注目 されている。政府は電気事業者に 122 億 kWh(2010 年)を再生可能エネルギーにより発 電することを義務付けたRPS法を施行した。このような中、当所ではバイオマスの 高効率利用発電技術開発に向けた調査、研究を行っている*1。 目 的 バイオマス利用発電技術の一つとして、国内外で先行して開発されているバイオマ スガス化発電について調査を行い、その熱効率解析および発電コスト試算を実施し、 技術開発課題の摘出を行う。 主な成果 国内外の代表的固定床バイオマスガス化発電として、現在運転中の山口バイオマス ガス化発電(YGC)、市来町廃棄物ガス化発電(スターミート)、キシロワットバイオマ スガス化発電等を調査した。設備概要を表−1、設備構成を図−1に示す。 1.バイオマスガス化発電の熱効率解析 木屑を燃料として各システムに対し、公表されたデータに基づき、熱物質収支計算 により、熱効率解析を行った結果を表−2に示す*2。例としてキシロワットの試算結 果の熱流れ図を図−2に示す。55kW と小規模ながらガス化発電であるため、送電端効 率は 15%(高位)に達する。YGC とスターミートの場合は、発電端効率は高いが、所内 動力が大きく、送電端効率はキシロワットと同等以下である。 2.発電コスト試算 各発電設備の建設費および実証機の建設コスト推定値*3 より試算した燃料費と発電 コストの関係を図−3に示す。3つのシステムを商用機(YGC は試算値、キシロワット は 500kW 計画値)で比較した場合、平均処理費 20,000 円/トン(-1.7 円/MJ)の廃棄物 を燃料とするスターミートは 11 円/kWh である。YGC は現状より建設コストを6割に 下げて*4、処理費 12,000 円/トン(-1 円/MJ)の廃棄物を使用するとした場合 13 円/kWh となり、製材所木屑を燃料とするキシロワットでは、燃料費 6,000 円/トン(0.5 円 /MJ)とした場合、約 14 円/kWh となることがわかった。 バイオマス発電を行う場合には、地域性を有するバイオマス種別、処理量、経済性を 考慮し、最適なシステムの選択が最も重要である。バイオマス粉砕・乾燥等の燃料前 処理技術の開発と安価で高性能なタール処理装置の開発が課題となる。 *1 市川他、木質系バイオマス発電技術の動向と実用化に向けた研究課題、電中研調査報告 W02026(2003/4) *2 森塚他、石炭ガス化複合発電の性能評価手法とガス化炉基本特性、電中研研究報告 W88022(1989/3) *3 YGC 建設費 3 億円、および実証機の建設コスト(推定値)は中外炉工業より、STAR-MEET の建設費 10 億円は EMS 社より、キシロワットの建設費 55,000CHF、実証機の建設コスト(計画値)2,500 ユーロ/kW はキシロワット社よ りそれぞれ公表することについて承認済み。 *4 笹内、田中、山口県における森林バイオマスのガス化・改質及びガスエンジンコージェネレーションの実証試 験事業、NEDO 平成 14 年度成果報告会予稿集(2004/1) 表−1 項 代表的固定床バイオマスガス化発電システムの比較 目 燃料種別 処理量 ガス化炉 メーカー タール処理装置 ガス浄化装置 発電装置 出力(メーカー) 動力/送電端出力 建設費 建設コスト(現状) 建設コスト(商用機) YGC スターミート キシロワット 木屑・竹その他 210kg/h(水分 16%) 一般廃棄物、肉骨粉 833kg/h(水分 20%) 製材所木屑 65kg/h(水分 15%) ロータリーキルン 中外炉工業 酸素吹き改質器 ガス冷却塔 ガスエンジン 176kW(独マン) 40kW/136kW 3 億円 220 万円/kW 132 万円/kW ガス化炉+溶融炉 道前築炉工業 空気+蒸気改質器 ガス冷却精製塔 ディーゼルエンジン 150kW×6(日ヤンマー) 300kW/600kW 10 億円 167 万円/kW 同上 固定床ガス化炉 キシロワット サンドフィルタ 水洗浄塔 ガスエンジン 55kW(瑞ダイマグ) 5kW/50kW 4,700 万円(55 万 CHF) 94 万円/kW 33 万円/kW(2500 ユーロ/kW) NEDO、農水省 スイスエネルギー省 スポンサー NEDO、山口県 改質ガス バイオマス 受入 酸素 ホッパ ロー タリーキルン 炉 ガ ス 改質塔 空気 予熱器 熱風炉 燃料ガス ガス ホルダ エンジン ガス 冷却塔 発電機 給水 蒸気 排熱ボイラ 空気 排熱ボイラ 蒸気 給水 ⅰ) 山口ガス化発電(YGC) ※ 表−2 蒸気 ペプル床 サイク ロン ガス 冷却 精製塔 改質炉 ガス ホルダ 熱交換器 灰 燃焼ガス 排ガス 目 発電効率試算結果 スターミート YGC キシロワット ダスト フィルタ 生成ガス ガス化炉 項 排ガス バイオマス 煙突 給水 灰 炭化物 発電端効率 蒸気発生率 所内動力率 送電端効率 18% 28% 23% 14% 18% 28% 33% 12% 17% 26% 12% 15% 補助燃料 高温空気 (600℃) ディーゼルエンジン 溶融炉 No.2熱風炉 発電機 ディーゼルエンジン排ガス ※ 溶融スラグ 80 ⅱ) 市来町廃棄物発電(スターミート) 図−1各種バイオマスガス化発電設備構成図 炭素損失10% 蒸気 8% 冷却損失 6% 炭素10% 入 熱 100% 生成ガス 62% ガスエンジン 排熱39% ガスエンジン 発電機出力 22 % エンジン 損失1 % 蒸気 12% バイオマス 乾燥 8% タール14% 空気 タール 損失14% 化学熱 図−2 ガスエン タルピ 排ガス 19% 蒸気エン タルピ 60 YGC(商用機) 40 スターミート(商用機) キシロワット(現状) 20 キシロワット(商用機) 0 -2 電力 動力 熱流れ図試算(キシロワット) 調査報告 W03042 YGC(現状) →発電コスト(円 / 破砕器 ⅲ) キシロワットガス化発電 高温空気加熱器 (ユングストローム型) No.1熱風炉 高温空気 (1000℃) -1 逆有償(廃棄物)← 図−3 0 1 燃料代(円/MJ) →有償(木屑) 発電出力と発電コスト試算 キーワード:バイオマス、再生可能エネルギー、ガス化、発電、熱効率 関連研究報告書 担当者 森塚 秀人 (横須賀研究所・エネルギー機械部) 連 絡 先 (財)電力中央研究所 横須賀研究所 事務部 研究管理担当 Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] C ○ 財団法人電力中央研究所
© Copyright 2024 ExpyDoc