飼料用トウモロコシの湿害回避技術確立のための現地圃場試験

飼料用トウモロコシの湿害回避技術確立のための現地圃場試験
菅野 勉 1)・細川 寿 2)・澤村 篤 1)
1)畜産草地研究所
2)中央農業総合研究センター
はじめに
現在、我が国の飼料作物の作付面積は約 914 千 ha であるが、うち 110 千 ha が水田転換畑におけ
る作付けであり、水田転換畑は我が国畜産の重要な飼料生産基盤となっている。一方、水田転作の
観点からみると、水田における水稲以外の作付け延べ面積 707 千 ha の 26%(183 千 ha)で飼肥料
作物が栽培されており、飼肥料作物は水稲以外では最も作付けが多く、転作面積を確保する上で重
要な意義を果たしている。
水田転換畑における飼料作物の作付け(110 千 ha)の内訳は、牧草 78 千 ha、青刈りトウモロコ
シ 11 千 ha、ソルガム 10 千 ha、青刈りえん麦 3 千 ha 等となっている。単収及び栄養価を考えた場
合、青刈りトウモロコシの作付けを拡大することが望ましいが、トウモロコシはソルガム等に比べ
耐湿性が劣るために、比較的排水性の良い転換畑に限って作付けされている。従来、飼料用トウモ
ロコシの湿害回避技術としては、地下水位を低下させる以外に対策はないとされてきたが(清水
1990)
、近年、トウモロコシの種子の冠水抵抗性や幼苗の耐湿性に遺伝的な差異があることが明らか
となってきた(間野 2002)
。また、トウモロコシと同様に湿害が問題となるダイズにおいては耕う
ん同時畝立て播種技術が開発され、湿害を回避するための栽培管理技術が確立されつつある(細川
2004)
。こうしたことから、平成 18 年度より開始された農林水産省委託プロジェクト「粗飼料多給
による日本型家畜飼養技術の開発」においては、1 系(自給飼料の生産量・質の画期的な向上によ
る TDN 増産技術の開発)の「飼料作物の連年安定栽培技術の開発チーム」内にトウモロコシの湿害
回避技術の開発に関する課題を2課題設定し、こうした研究を進めている。本現地圃場試験は、こ
の2課題の一環とし、圃場を所有する増渕辰雄氏及び当該地域を所管する栃木県塩谷農業振興事務
所のご厚意を得て、実施しているものである。本年度はまだ圃場面積も少なく予備的な段階である
が、本現地検討会の討議の材料とし、今後の研究方向の指針を得たい。
試験1:飼料用トウモロコシの耕うん同時畝立て技術確立のための現地圃場試験
本試験は、プロジェクト課題「耕うん同時畝立て技術を活用した飼料用とうもろこしの
安定生産技術の開発(17001)」の一部として実施している。中央農業総合研究センター北陸
水田利用部により開発されたダイズ用の耕うん同時畝立て播種機(細川 2004)を飼料用トウモロコ
シに活用し、湿害軽減効果を検討する。
材料と方法
本現地試験圃場(栃木県塩谷郡塩谷町大字大宮、増渕辰雄氏所有)の一部(2a)を3分割し、平
畝及び畝立て高さ2水準で播種を行い、発芽及び生育の良否を比較した(図1)
。
1
品種比較試験
パイオニア KD520
KD772
125日
KD670
試験2
TH パイオニア
058 115日
スノーデ パイオニア
ント118 95日 KD640
4m
ニューデ ゆめそ
だち
ント95
パイオニア
3470
2.25m
反復1
試験継続
反復2
発芽不良のため
試験中止
平畝区
畝立て区︵
低畝区︶
畝立て播種試験
畝立て区︵
高畝区︶
試験1
20m
地下水位計
設置地点
Ehメーター
設置地点
3m
図1.供試圃場における試験区の配置
2
試験区は平畝区(対照区)及び畝立て2処理区(以下、高畝区及び低畝区)とも1区 60m2(3m
×20m)とし、3月下旬に堆肥 4t/10a、4月 17 日に苦土石灰 150kg/10a を散布した後、耕うんを行
った。5月 10 日の播種直前に基肥(N-P2O5-K2O の各成分 8.5kg/10a)を施用後、飼料用トウモロコ
シ(品種‘クミアイ 113’
)の種子を耕うん同時畝立て播種機を用い、畝間 75cm、株間 19cm で2粒
ずつ播種した。供試した耕うん同時畝立て播種機は2条用であり、各処理区の条数は4条とした。
播種後、5月 12 日に除草剤(ゲザプリム及びラッソー)を規定量散布した。6月 12 日に間引きを
行い、各点1本立てとし、6月 21 日に追肥(N-P2O5-K2O の各成分 11.5kg/10a)を行った。
調査は、6月 12 日に各処理区 30 地点における出芽状況、及び 30 個体の個体当たり乾物重を測定
した。その後、7月 20 日に各処理区 30 個体の草丈等を、8月 17 日に各処理区5個体の乳熟期の新
鮮重及び乾物重を測定した。
また、
5月 24 日、
6月 21 日、
7月 21 日に各処理 15 地点において 100cm3
のコアサンプラーを用いて土壌を採取し、土壌表層(5cm)の含水比を測定した。地下水位の記録は
供試圃場の2か所で行い、地下水位計により 10 分ごとの水位の変動を記録し、1日ごとの平均水位
を算出した。さらに、土壌中の酸化還元電位を測定するため、酸化還元電位測定用ガラス電極を圃
場北端2カ所に設置し、地表から約 10cm 下層の酸化還元電位を測定した。
試験結果
図2に、供試圃場における地下水位の経時的変化を示した。播種5日後の5月 15 日より、隣接す
る水田で入水が開始されたため、地下水位が上昇し、5月下旬より7月下旬の期間のほとんどで地
下水位が地下 50mm 以上となっていた。この間、地下水位が一時的に低下したのは、明渠の泥を取り
除くことによると考えられるが、ほぼ 10 日以内に再び水位が上昇していた。また、隣接する水田か
らの漏水により、圃場内に水分条件のばらつきが生じ、高畝区の西側(向かって左側)及び平畝区
の東側(向かって右側)において湿潤条件が著しかった。
地下水位︵ mm
︶
0
-50
-100
-150
-200
-250
-300
-350
図2.供試圃場の地下水位の推移
(各データは2地点の平均値)
3
95
90
85
75
70
65
60
55
50
45
40
35
50
80
8/1
7/1
30
25
20
15
6/1
10
5
0
5/10
播種後
日数
表1.畝立て播種の条件
表1に畝立て播種機による播種状況
を示した。畝の高さ(畝中央部と畝間の
播種条件
畝高さ
畝の高さ(cm)
播種深度(cm)
平畝区
-0.5±0.9
3.2±0.7
畝立て区(低畝区)
8.3±3.9
2.7±0.8
畝立て区(高畝区)
12.5±2.7
2.8±0.6
高低差)は高畝区が 12.5cm、低畝区が
8.3cm であった。
畝立て区(低畝区)
平畝区
写真1.播種後12日目(5月22日)の出芽状況
表2.各播種試験区の初期生育
初期生育(6月12日調査)
表2に6月12 日における生育
調査の結果を示した。苗立ち率
畝高さ
苗立ち率
(% )
草丈
乾物重
(g/個体)
平畝
80
28.0±4.1
0.41±0.14
畝立て区(低畝区)
95
35.9±3.9
0.71±0.12
畝立て区(高畝区)
88
39.0±6.0
0.84±0.30
は低畝区が最も高かったが、草
丈及び個体当たり乾物重は高畝
区が最も大きかった。
畝立て区(高畝区)
平畝区
写真2.6月12日の初期生育調査時の生育状況
4
表3に、7月 20 日の草高を示した。畝立てを行った両処理区とも草高は 224cm で平畝区よりも顕
著に高かった。しかしながら、隣接する水田からの漏水により、高畝区の西側(写真3左中の向か
って左側)及び平畝区の東側(写真3左中の向かって右側)において生育の停滞が顕著であった。
また、各試験区の手前、中央、後方それぞれ 10 個体の平均草高を算出したところ、各処理区とも試
験区後方での冠水による生育抑制が顕著であった(図3)
。以上のような水分状態の空間的なばらつ
きが認められたものの、平畝区と畝立て区の境界において顕著な生育の差が認められ(写真3右)
、
畝立ての効果が明瞭であった。
表3.各試験区の生育中期の草高
(7月20日生育調査)
草高
(cm)
草丈
(cm)
300
平畝区
119±35
250
畝立て区(低畝区)
224±30
200
畝立て区(高畝区)
224±16
150
後方
中央
100
50
0
手前
畝
立
畝
て
(高
立
)
平
て
(低
畝
)
図3.各試験区の測定場所ごとの草高
(各データは10個体の平均値)
畝立て区(高畝区) 畝立て区(低畝区) 平畝区
写真3.7月20日の生育状況
畝立て区(低畝区)
平畝区
表4に8月 17 日に調査を行った乳熟期の新鮮重及び乾物重を示した。単収に換算すると新鮮重が 3.8
∼5.5t/10a、乾物重が 1.0∼1.3t/10a、で低畝区が最も高い値を示した。
5
表4.各播種試験区の乳熟期の生育状況(8月17日調査)
新鮮重
乾物重
個体当たり
(g/個体)
単収
(t/10a)
個体当たり
(g/個体)
単収
(t/10a)
平畝区
547±82
3.8
143±25
1.0
畝立て区(低畝区)
784±230
5.5
185±54
1.3
畝立て区(高畝区)
699±35
4.9
170±11
1.2
表5に各試験区の土壌表層
における土壌含水比の推移を
表5:各播種試験区の土壌含水比の推移
示した。5月∼6月は畝立て区
の含水比が低かったが、7月以
降、畝立ての処理区による差が
みられなくなった。
表6に土壌中の酸化還元電
5月24日
6月21日
7月21日
平畝区
58.3
58.0
59.5
畝立て区(低畝区)
47.7
49.7
58.8
畝立て区(高畝区)
44.3
48.0
57.8
(含水比は(水分/土壌乾重)x100(%)で示した。)
位を示した。土壌中の酸化還元電位は、7月までは播種後日数の増加とともに低下したが、畝立て
区土壌では7月から8月にかけて値が上昇した。また、調査期間を通して、畝立て区の酸化還元電
位は平畝区よりも高く維持された。
表6.供試圃場の土壌中酸化還元電位の推移 (単位:mV)
5月24日
6月21日
7月21日
8月18日
平畝区
203
-76
-182
-203
畝立て区(高畝区)
355
193
-44
366
考察
供試圃場では、5月下旬より7月下旬の期間のほとんどで地下水位が地下 50mm 以上となるという
著しい過湿条件にあったが、畝立て播種機により高さ 8∼13cm の畝が形成されることにより、土壌
の水分状態や還元状態が改善され、播種されたトウモロコシの生育が良好となった。平畝区の生育
停滞には隣接する水田からの漏水も影響を及ぼしていたが、土壌水分が大きく変わらないと考えら
れる平畝区と畝立て区の境界においても顕著な生育の差が認められたことから、畝立てによる湿害
低減効果は明らかであった。
しかしながら、苗立ち率や乳熟期の個体生育量については、低畝区での値が高畝区での値を上回
っており、この要因が場所の影響(隣接水田からの漏水)によるものなのか、あるいは、一定程度
以上の畝高さでは、畝の高さの効果が明瞭ではなくなるためなのか未解明であり、今後の検討が必
要である。次年度以降、圃場内の水分条件のばらつきを少なくする方策を講じ、畝立てによる湿害
低減効果の確認を行う必要がある。
6
試験2:飼料用トウモロコシ市販品種の耐湿性評価のための現地圃場試験
本試験は、プロジェクト課題「耐湿性機構解明による転換畑における飼料用トウモロコシ
の安定栽培技術の開発(17002)」の一部として実施している。前年度の予備的な試験によ
り、種子の冠水抵抗性、幼苗の耐湿性等を評価した飼料用トウモロコシ市販品種の中から 12
品種を供試し、実際の湿害発生圃場を用いて耐湿性を評価した。
材料と方法
飼料用トウモロコシ市販品種 12 品種を供試し、本現地試験圃場の一部(2a)に各品種2反復で試
験区を造成し、発芽及び生育の良否を比較した(図1)
。供試品種は、極早生のパイオニア 95、TH058、
ニューデント 95、KD520、早生のパイオニア 115、KD640、早中生の KD670、スノーデント 118、中生
のゆめそだち、パイオニア 125、晩生のパイオニア 3470、KD772 であった。
3月下旬に堆肥 4t/10a、4月 17 日に苦土石灰 150kg/10a、基肥(N-P2O5-K2O の各成分 8.5kg/10a)
を施用後、耕うんを行った。播種は5月 15 日に行い、各品種の試験区は1区 4.5m2(2.25m×2m)で、
畝間 75cm、株間 20cm で2粒ずつ播種し、翌5月 16 日に除草剤(ゲザプリム及びラッソー)を規定
量散布した。追肥は6月 21 日に行い、各成分 11.5kg/10a を施用した。
試験設計は当初、各品種につき2反復の乱塊法により行う予定であったが、播種翌日から冠水状
態となり、2反復目のブロックでは供試品種の半数において全く発芽がみられなかった(写真4)
。
このため、この2反復目の試験を中止し、反復無しの試験として調査を継続した。
初期生育の調査は6月 12 日に行い、各品種 10 地点の出芽状況、及び 10 個体の草丈及び乾物重を
測定した(写真5)
。また、7月 20 日、8月 18 日に各品種 10 個体について草高を測定した。
さらに、本現地圃場試験と同時に、供試 12 品種について畜産草地研究所内の普通畑に5月 18 日
に播種し、上記とほぼ同時期に同様な調査を行うことにより、本現地圃場の生育量と比較した。
写真5.6月12日の初期生育調査時の
生育状況
写真4.2反復目のブロックにおける
冠水と発芽障害
白線で囲まれた部分は品種KD772
7
試験結果
表7に6月 12 日における供試品種の初期生育の状況を示した。
苗立ち率が高かった品種は KD772、
ニューデント 95 であり、低かった品種はスノーデント 118 であった。草丈はパイオニア 95 が高か
ったが、対照区(畜草研普通畑)との比数は、パイオニア 3470、パイオニア 95、パイオニア 125 が
高かった。個体当たりの乾物生産速度は実数及び対照区(畜草研普通畑)との比数ともに KD772 が
最も高かった(表7、写真5)
。
表7.供試品種の初期生育 (6月12日調査)
苗立ち率
(%)
草丈
個体当たりの乾物生産速度
(cm)
(mg/日/個体)
KD520
80
25 (44)
10.8 (19)
KD640
85
27 (48)
10.4 (19)
KD670
65
25 (48)
15.2 (23)
KD772
100
25 (50)
19.7 (28)
パイオニア95
75
33 (56)
8.9 (15)
セシリア
80
25 (38)
13.7 (22)
パイオニア125
85
29 (55)
10.0 (16)
パイオニア3470
70
27 (58)
6.5 (12)
スノーデント118
50
21 (38)
12.2 (21)
ニューデント95
95
18 (29)
13.0 (17)
TH058
65
23 (35)
15.1 (22)
ゆめそだち
85
21 (36)
9.3 (14)
品種
草丈及び乾物生産速度の括弧内の数字は対照区(畜草研の普通畑)の測定値に対する比率(%)
表8に、7月 20 日及び8月 18 日の草高を示した。草高及びその対照区(畜草研普通畑)との比
数の全てにおいて KD640 が最も高い値を示した。
表 8.供 試 品 種 の 生 育 中 期 ∼ 後 期 の 生 育
7 月 2 0日 草 高
(cm )
8 月 1 8日 草 高
(cm )
K D 520
欠測
214
K D 640
1 8 1 (8 0 )
266
K D 670
1 3 0 (5 9 )
232
K D 772
1 0 1 (5 4 )
209
パ イ オ ニ ア 95
1 2 5 (4 7 )
196
セシリア
1 2 7 (5 9 )
232
パ イ オ ニ ア 125
1 0 0 (4 2 )
214
パ イ オ ニ ア 3470
1 0 2 (5 6 )
225
ス ノ ー デ ン ト 118
1 4 0 (6 0 )
251
ニ ュ ー デ ン ト 95
1 5 0 (6 1 )
226
TH 058
1 6 6 (6 0 )
221
ゆめそだち
1 0 9 (4 5 )
244
品種
7月 20日 の 括 弧 内 の 数 字 は 対 照 区 (畜 草 研 の 普 通 畑 )に 対 す る 比 率 (% )
8
考察
圃場試験の結果は、苗立ち率や初期生育は KD772 が最も優れているが、一方、生育中期から後期
になると KD640 の生育が優れていた。表9に、前年度の予備試験の結果を示した。種子の冠水抵抗
性は、試験管中に各品種の種子 20 粒を詰め、8日間の冠水処理後の発芽率をみたものである(デー
タは無処理区との比数)
。また、幼苗の耐湿性に関するデータは、ポット試験により播種後2週目の
幼苗に2週間の冠水処理を行い、無処理区との比較を行った値であり、低窒素耐性は無窒素の土壌
で育成した播種後4週間目の幼苗の乾物重を無処理区と比較した値である。これら、予備試験の結
果は、本年の圃場試験の結果とは異なっており、その要因としては、①現地圃場では水分条件の空
間的なばらつきが大きく、そのことが供試品種の発芽・生育に影響を与えたこと、②試験管での冠
水処理やポットでの生育条件が圃場とは異なること、③前年度の予備試験で用いた種子と本年度用
いた種子は異なり、種子の品質が異なっていた可能性があることなどが考えられる。次年度以降、
これらの点を考慮し、引き続き検討を継続する予定である。
表9.予備試験で把握された供試品種の特性
予備試験で調査した特性
種子の冠水抵抗
性
幼苗の耐湿性
低窒素耐性
8日冠水後発芽率
(%)
2週間冠水した幼植物体
乾物重の対照区と
の比数(%)
無窒素下の幼植物体乾
物重の対照区と
の比数(%)
KD520
0
77
98
KD640
30
82
78
KD670
15
118
90
KD772
23
78
55
パイオニア95
42
102
-
セシリア
25
101
65
パイオニア125
42
86
48
パイオニア3470
35
100
77
スノーデント118
44
79
-
ニューデント95
20
89
65
TH058
21
101
77
ゆめそだち
0
97
65
品種
9
おわりに
本試験では、①畝立て播種によりトウモロコシ幼苗の土壌水分や土壌の還元状態が改善され、ト
ウモロコシの生育が良好となること、②湿害発生条件下におけるトウモロコシ市販品種の発芽・生
育に品種間差があること等が示された。しかしながら、本年度は、隣接する水田からの漏水や圃場
表面の高低のばらつき等の影響が大きかったため、次年度以降、これらの問題への対策を講じ、本
年度得られた結果を検証していく必要がある。
発表者らは、本現地圃場試験と平行して、栃木県大田原市湯津上地区の農家圃場においても飼料
用トウモロコシの湿害発生の状況を調査している(写真6)
。梅雨期に大規模な湿害が発生し、圃場
全体で植物体の黄白化症状を呈したため、圃場の一部に追肥区を設け、7月 26 日に N-P2O5-K2O の各
成分 10kg/10a を施用した。従来の知見(青田ら 1985)と同じく、追肥により、トウモロコシの生
育は良好となったが(図4)
、興味深いことは、追肥を行っていない部分においても、梅雨明けの8
月 18 日時点で黄白化症状が回復していたことである。このことは、植物体内の養分転流により黄白
化症状がなくなったとも考えられるが、主な要因としては梅雨明け後に湿害が軽減され、土壌から
の養分吸収が可能になったためでないかと考えられる。すなわち、梅雨期間中は、根が冠水条件下
におかれ、酸素不足により根の好気的呼吸が阻害され、根の生育や根による養分吸収が抑制されて
いるが、梅雨が明けることにより、それらの阻害要因が軽減され、養分吸収が容易になるのではな
いかと考えられる。以上のことは、まだデータによる裏付けがなされていないが、今後、湿害の軽
減技術を検討していく上での重要な視点であると考えられる。
追肥区
無追肥区
追肥区
7月26日
無追肥区
8月18日
写真6.栃木県大田原市湯津上地区の湿害発生圃場
10
200
個体当たり新鮮重
180
160
140
枯死部
雌穂
葉
茎
120
100
80
(g)
60
40
20
0
無追肥区
追肥区
図4.湯津上地区湿害発生圃場における追肥の効果
追肥区は7月26日にN-P2O5-K2Oの各成分10kg/10aを施用
生育調査は8月18日に実施.
参考文献
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転換初期における生育・収量の種間差.日本草地学会誌 30(4):389-395
2)清水矩宏(1990) 転作田での飼料作物栽培技術の留意点.畜産コンサルタント 303 号:17-24.
3)細川 寿(2004)大豆の耕うん同時畝立作業機による重粘土転換畑の湿害回避技術.農業機械学会誌
66(5):14-16..
4)間野吉郎・村木正則・小松敏憲・藤森雅博・秋山典昭・高溝正(2002)トウモロコシ自殖系統における種子
の冠水抵抗性および幼植物の耐湿性の変異.日本作物学会紀事 71(3):361-367.
11