CS7-017 輪荷重を受ける道路橋床版防水工の疲労耐久性の評価 ㈱ピー・エス 正会員〇大江 大阪大学大学院 正会員 大西 大阪大学大学院 フェロー 松井 博文 弘志 繁之 1.まえがき 道路橋床版はその使用環境において様々な劣化要因の影響を受けている。その中でも、現時点で 道路橋床版に与える影響が大きい要因として認識されているのが過積載車の輪荷重と雨水の影響で ある。活荷重に関しては、近年の研究成果からその影響の程度や対策の立て方が明らかになったと 考えられる。しかし、雨水に関しては床版に浸透したときにその寿命が大幅に短縮されること、従 来のアスファルト系のものやエポキシ系の防水工では寿命の確保に十分な性能を期待できない可能 性が高いことが言われているものの、防水工にどのような性能を持たせれば良いのかが明確ではな い。そこで、本研究では近年開発されたポリウレタン系の防水工に着目した。模型床版で滞水状態 での輪荷重走行試験を実施して、防水工の耐久性を調査し、どのようなタイプの防水工が床版寿命 の確保に適しているのかを検討した。 表 1 供試体説明 2.輪荷重走行疲労試験 供試体名 防水材料 プ ラ イ マ ー層 載荷荷重(kN) 母床版 N1 なし なし 14.7+17+19.6 A 1) 供試体 N2 19.6 A 供試体説明を表 1 に、また各防水 N 3 14.7 E UP1 ポリ ウレ タ ン P エ ポキシ 系プ ラ イ マー + 硅砂 22 D 材の材料物性を表 2 に示す。 UP2 22 D UP3 14.7 E 2) RC 床版 UP4 17 E ポリ ウレ タ ン M エ ポキシ 系プ ラ イ マー 22 B RC 床版の寸法は 100cm×160cm UM UB1 ポリ ウレ タ ン B エ ポキシ 系プ ラ イ マー + 硅砂 22 B で床版厚は 6cm とした。床版コンク UB2 水性エポキシ + モ ルタ ル 22 B UO1 ポリ ウレ ア エ ポキシ 系プ ラ イ マー + セメ ン ト 22 C リートの材料物性を表 3 に、鉄筋配 UO2 22 C 置図を図 1 に示す。 表 2 防水材の材料物性 3)試験方法 UP UM UB UO 床版に対する防水加工は上面のみに 厚さ(mm) 3 3 3 3 対して行った。また、この面が常に滞 引張強度(MPa) 10.86 12.74 12 13 引裂強度(N/cm) 412 392 120 630 水状態になるように床版上面には発泡 伸び率(%) 20℃ 663 590 >400 300 ウレタン製の防水提を設置し、試験期 間中はこの内側に水を貯えることで滞 表 3 床版コンクリート物性 水状態を実現することにした。滞水範囲を床版 A B C D E E(Mpa) 26253 27302 28482 28166 24000 の支持条件と併せて図 2 に示す。本研究で使用 σck(MPa) 46.28 46.91 52.74 52.82 41.19 した小型輪荷重走行試験機の荷重移動範囲は ν 0.19 0.19 0.19 0.20 ±50cm で、走行速度は 23 往復/分である。 520 22496049 22 150 90 滞水領域 荷重移動範囲 引張側鉄筋 圧縮側鉄筋 35 弾性支持 CL 単純支持 弾性支持 10@64=640 90 150 49604922 22 CL 34@45=1530 35 13341330 15 15 30162816 単純支持 7020 1420 図1 2070 図2 鉄筋配置図 キーワード:床版防水工、ポリウレタン、輪荷重走行試験 連絡先 :大阪府吹田市山田丘 2−1 06-6879-7618(TEL) -414- 滞水範囲および支持条件 06-6879-7621(FAX) 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月) CS7-017 200 N3漏水 N2漏水 150 N1漏水 100 × 50 0 0 deflection(×1/100mm) N1 N2 N3 20 40 60 cycle(×10000) 80 UB2 UB2防水工剥離 100 50 UB1水浸入 UB1防水工剥離 0 0 20 UP2 UP4 200 150 100 50 0 0 100 UB1 UB2水浸入 150 UP1 UP3 250 20 40 60 80 100 cycle(×10000) 250 200 deflection(×1/100mm) 250 deflection(×1/100mm) deflection(×1/100mm) 3.試験結果 1) 活荷重たわみ-走行回数曲線 活荷重たわみ-回数曲線を図 3 に示す。ここで、活荷重たわみは計算により載荷荷重・床版強度を 統一するため、以下に示す換算式による換算たわみで示した。 w=wexp×P0EI/PE0I0 (wexp:実測たわみ P,E,I:実際の値 P0,E0,I0:基準値) さて、防水工を施していない床版は床版下面からの漏水が確認されるとすぐ破壊した。UP は活 荷重たわみが大きいが防水工の損傷は見られず、防水効果は高いと思われる。UB は防水工がプラ イマーとの界面で剥離した後、摩耗により破断し、水が浸入した。UM は防水層の層間剥離が見ら れたが、水の浸入はなかった。この層間剥離は、輪荷重に起因するものではなく、施工不良による ものであると考えられる。UO は全く損傷が見られず、防水効果は高いと言える。 40 60 cycle(×10000) 図3 80 100 UO1 UO2 UM 250 200 150 100 50 UM防水工層間剥離 0 0 20 40 60 cycle(×10000) 80 100 活荷重たわみ-走行回数曲線 P/Psx 2)過去の実験との比較 1 今回 の 実験 の デー タお よび 過 去に 本研 究室で行われた同様の実験のデータを S-N +:アクリルコンクリート 曲線上にプロットしたものを図 3 に示す。 ×:アクリル系 ウレ タン 系防 水工 は 乾 燥状 態以 上の 疲労 ○:ウレタン系 寿命であり、従来一般的に床版防水工とし △:アスファルトシート 乾燥時S‐N曲線 -:エポキシ て用いられていたエポキシ系、アスファル トシートと比較して、ウレタン樹脂は優れ 水張時S‐N曲線 ているといえる。また、アクリルコンクリ ートは、1cm 近い厚さがあり、床版を増厚 するため、疲労寿命を伸ばすことがわかっ 0.1 ている。 10000 100000 1000000 10000000 N 4.結論 図 4 過去の供試体との比較 ・ ポリウレタン、ポリウレア樹脂は耐久 性が高く、クラック追従性があり、防水工に適していると思われる。また、従来の防水材料と 比較しても防水効果は高いと言える。ただし、ポリウレタン中で比較すると、床版から剥離し たり、破れから浸水する場合があり、慎重な施工管理が必要であると思われる。 ・ 今後の課題として、アスファルトとの接着性に関する評価が必要である。 参考文献 松井繁之:水環境下にある道路橋RC床版の耐久性向上のための防水工の研究、1990.2 -415- 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
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