9. ろう付け実習

ろう付け実習
概要
ろう付けとは、古くから使われている手法で様々な金属を接合する技術である。この実習
では代表的なはんだ付けと銀ろう付けの基本技術を習得する。
内容
・安全なガストーチの使い方の習得
・前処理の仕方
・はんだ付け、銀ろう付けの習得
・後処理の仕方
ろう材の種類
ろう材の融点が450℃以下のものを軟ろう(はんだ)といい、450℃以上のものを硬ろう
という。
はんだの代表的なものは、Sn-Pb合金でありSnが50%の合金で溶融温度が183℃のものが
広く使用されている。最近では環境問題から鉛フリーが求められているが、接合の物理的
特性から依然として実験装置の組み立てでは、鉛入りはんだが有用である。
硬ろうの代表的なものは銀ろうであり、Ag-Cu合金にZn・Cd・Snなどを添加したものであ
る。溶融温度範囲は合金組成により違いがあるが、600~800℃である。銀ろうはAL合金や
Mg合金以外の金属材料の接合に使われる。
使用ガストーチ
都市ガス・酸素用を使用する。
ろう付けの手順
はんだ付け
1.黄銅板、ステンレス板(SUS304)各1mmを各10枚づづ50mm×50mmにシャーリングマシン
で切断加工する。黄銅板同士、ステンレス板同士、黄銅板とステンレス板の組み合わ
せを2枚1組で各5組つくる。2枚1組のうち1枚を軽く曲げて上に置き、T型にする。
2.材料接合面の脱脂、酸化物層を除去し、きれいな金属表面をつくる。
中性洗剤を用い超音波洗浄器を使って脱脂する。また、材料表面を清浄にするために、
はんだ付けをしたい部分にフラックスを塗る。
はんだ用のフラックスは、主成分が塩化亜鉛である。
3.ガストーチを用い、材料を加熱し毛管作用によりはんだを流す。
はんだの化学組成は、Sn63%、Pb37%で溶融温度183℃のものを使う。
一般的なガストーチの炎の外炎は弱い青紫色の炎(酸化炎)が1300℃とすれば、内炎
の青から青緑の明るい炎(還元炎)は800℃位である。還元炎の部分でろう付けすれ
ば、酸化しやすい金属に比較的影響を与えずにロウ付けできる。
4. 材料表面が冷めたら、表面のスラグ等を除去するためブラシ類を使って水洗または湯
洗する。ただし、急冷するとクラックが入る場合があるので注意する。
5.水分を乾燥させて終了。
銀ろう付け
1.黄銅板、ステンレス板(SUS304)各1mmを各10枚づづ50mm×50mmにシャーリングマシ
ンで切断加工する。黄銅板同士、ステンレス板同士、黄銅板とステンレス板の組み
合わせを2枚1組で各5組つくる。2枚1組のうち1枚を軽く曲げて上に置き、T型にする。
2.材料接合面の脱脂、酸化物層を除去し、きれいな金属表面をつくる。
中性洗剤を用い超音波洗浄器を使って脱脂する。また、材料表面を清浄にするため
に、銀ろう付けをしたい部分にフラックスを塗る。銀ろう付け用のフラックスの主
成分はフッ化物である。
3.ガスバーナー等を用い、材料を加熱し毛管作用により銀ろうを流す。
銀ろうは、Cdを含まないろう(BAg-7)を使う。BAg-7の溶融温度は、650℃である。
銀ろう付けの場合もガストーチの炎は還元炎の部分でろう付けすれば、酸化しやすい
金属に比較的影響を与えずにロウ付けできる。
*BAg-7の化学組成
Ag55-57%、Cu21-23%、Zn15-19%、Sn4.5-5.5%、その他0.15%
(参考)BAg-1の化学組成(一般的によく使われる銀ろう、溶融温度は、620℃)
Ag44-46%、Cu14-16%、Zn14-18%、Cd23-25%、その他0.15%
4.材料表面が冷めたら、表面のスラグ等を除去するため希硫酸で酸洗いし、その後、水
酸化ナトリウムで中和したのちブラシ類で水洗または湯洗する。ただし、急冷すると
クラックが入る場合があるので注意する。
5.水分を乾燥させて終了。
(上) 共晶ハンダ(融点183℃)
(下)銀ろう(融点650℃・BAg-7)
ガストーチ(都市ガス・酸素用)
ろう付けサンプル(銀ろう)
(左)ハンダ付け用フラックス
(右)銀ろう付け用フラックス
還元炎
酸化炎
(内炎)
(外炎)
還元炎と酸化炎