海 外だより アメリカの農業団体NFUの 年次総会に参加して 西方見聞録 from DC│連載 12 藤本 卓 (JA全中農政部WTO・EPA対策室<在ワシントン>) 今回は、先日参加する機会のあった年次総会で やオークションを楽しみ、その収益は農村での教 の話を中心に、アメリカの農業団体であるナショ 育( 奨学金等)や経済支援( 災害援助等)に充てられ ナル・ファーマーズ・ユニオン(以下、NFU)につ るとのことであった。 いて紹介したい。 3 日目は、代議員による総会である。ここでは アメリカでは、作物ごとに数多くの農業団体が 活動計画を一言一句確認しながら進めていく。100 存在するなか、NFUはアメリカファームビューロー 人強の代議員からは次々と修正要望が出され、ひ 連盟(以下、AFBF)に次いで第 2 の品目横断の農 とつずつ多数決での決議をとっていく。約 6 時間 業団体である。会員数は 25 万人を数え、27 の州組 かけて審議され、代議員の活発な議論にはとにか 織(33 州をカバー)を有する。 く驚いた。JA全国大会議案や農政課題のように、 NFUは、アメリカの農業団体では珍しく、会員 組織討議という形で事前に議論を積み上げていく は家族経営の農家が中心で、農業の多面的機能を 日本のスタイルとは大きく異なるものであった。 重視するなど、JAグループと近い立場をとって いる農業団体である。国際農業生産者連盟(IFAP) 次世代育成対策 の活動や共同宣言の発表など、JA全中とは長年 の間協力関係を築いている。 2 日目のチャリティーイベントで同席した 3 人 の大学生からおもしろい話を聞けた。ノース・ダ 年次総会の内容 コタ州組織(NDFU)では、会員の子であれば、22 歳になるまでは会員資格が与えられるそうだ(農家 年 次 総 会 は、3 日 間 に わ た っ て 開 催 さ れ た が、 に な る 場 合 は 継 続 )。 し か も、 何 と 彼 ら の う ち 1 その概要を紹介する。 人は州の代議員として参加し、総会で議決権をも 1 日目は、当地観光とパーティー。年次総会は、 ち、しっかりした意見を述べていたことには最も 農閑期に毎年異なった場所で行われており、当地 驚かされた。 の観光地としての人気いかんで参加者数も変化す 彼らがどういう形で NFUの活動に参加している るそうだ。 の か と 尋 ね る と、「NFU 青 少 年 育 成 活 動(Youth 2 日目は、セミナー。ビルサック農務長官、レ Program)」のリーダーとして、子ども向け夏合宿 イテネシー大学教授の基調講演のほか、分科会(2 などの活動を主催しているとのことだ。日本の学 回に分け、計 9 つ)などが行われた。 童農園やグリーン・ツーリズムの活動を説明する なかでも、レイ教授の講演では、「農業・食料は、 と、熱心に耳を傾けていた。 軍 事 同 様、 国 家 安 全 保 障 に か か わ る 問 題 で あ り、 彼らは、農業をやるかどうかはわからないと言っ 一般的な自由貿易とは別ものとして扱うべきであ ていたが、少なくとも NFUの活動に自らも参加す る」との言葉は印象的であった。 ることで、将来、農業や NFUの活動にかかわって その夜開催された関連団体のNFU基金主催のチャ いくきっかけになる可能性はあり、とてもよい活 リティーイベントでは、参加者が手づくりゲーム 動であると感じた。 月刊 JA 2010/05 27
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