Annual Report No.27 2013 新規カーボン系多孔材料の溶液プロセスによる ナノ構造制御および機能性発現 Nanostructure Control and Development of Functionalities for Carbon Porous Materials by a Novel Liquid Phase Process H24助自40 代表研究者 徳 留 靖 明 大阪府立大学 大学院工学研究科 マテリアル工学科 助教 Yasuaki Tokudome Assistant Professor, Division of Materials Science, Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University 共同研究者 高 橋 雅 英 大阪府立大学 大学院工学研究科 マテリアル工学科 教授 Masahide Takahashi Professor, Division of Materials Science, Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University Mesoporous carbon (MC) films have drawn considerable attention due to fascinating characteristics such as, high electroconductivity, specific surface area, and chemical stability. A key to controlling physical and chemical properties of MCs is to realize flexible control of pore architectures. A promising pathway to produce MS films is micelle templating with a block copolymer, in which some additives are expected to allow the flexible control of pore architecture as is the case of mesoporous silica systems. On the other hand, the MC systems containing additives have not been developed sufficiently because of its complexity; special attention should be paid to that additives can significantly change the chemical characteristics of a precursory mixture. Herein, we have developed a MS system with organic additives incorporated in order to control pore characteristics in a versatile manner. The versatility allows to use conductive metal substrates as well as widely-used Si substrates. Metal substrates have been expected especially for applications including electric double-layer capacitor (EDLC) and gas sensor. Precursory polymer films were coated from a mixture of PS-b-P4VP (poly(styrene)b-poly(4-vinylpyridine)), resorcinol, and additives dissolved in a solvent. The discussion is mainly focused on appropriate starting composition and coating condition which afford the formation of well-defined mesostructure as well as use of metal substrates. の応用が期待されている。これまでMC薄膜の 研究目的 作製にはシリカナノ粒子等を鋳型に用いたハー メソポーラスカーボン(MC)は、材料由来の ドテンプレート法が広く用いられてきた。一方 高電気伝導性、高耐薬品性と構造由来の高比 で、ブロッコポリマーのミクロ相分離を利用し 表面積、優れた流体輸送特性を併せ持つ機能 たソフトテンプレート法によるMC薄膜の作製 性材料である。MC材料薄膜化およびその応用 法が近年注目を集めている。ハードテンプレー に関して多くの研究が行われてきおり、電気二 ト法では細孔の形状・サイズの制御に種々の 重層キャパシタやガスセンサー等の電極材料へ サイズ・形状を有する鋳型粒子が必要である ─ 468 ─ The Murata Science Foundation のに対して、ソフトテンプレート法では出発組 のに対して、ソフトテンプレート法では出発組 成や成膜条件を変化させることで多様なメソ構 成や成膜条件を変化させることで多様なメソ構 造体が形成可能となる。一方で、ソフトテンプ 造体を形成することが可能となる。一方で、ソ レート法を利用した多孔性カーボン材料に関 フトテンプレート法を利用した多孔性カーボン する従来研究では、親水部/疎水部比の異な 材料に関する従来研究では、親水部/疎水部 るブロックコポリマーを逐一合成した上で分相 比の異なるブロックコポリマーを逐一合成した ドメイン構造を制御することが一般的に試みら 上で分相ドメイン構造を制御することが一般的 れてきた。出発組成や成膜条件による自在な に試みられてきた。出発組成や成膜条件による 細孔制御を実現した例はほとんどなく、ソフト 自在な細孔制御を実現した例はほとんどなく、 テンプレート法の利点が十分に生かされている ソフトテンプレート法の利点が十分に生かされ とは言い難い。メソポーラスシリカ系では、疎 ているとは言い難い。メソポーラスシリカ系で 水性分子添加による分相ドメイン形態制御は は、疎水性分子添加による分相ドメイン形態 広く用いられており、これに対応する手法の開 制御は広く用いられており、これに対応する手 発がMC材料系においても期待されている。本 法の開発がMC材料系においても期待されてき 研究では、20nmを超える比較的大きなメソ細 た。本研究では、20 nmを超える大きなメソ細 孔が形成する組成系に着目し、疎水性分子添 孔が形成可能な組成系に着目し、疎水性分子 加によるメソ構造の制御を試みた。また、コー 添加によるMC薄膜のメソ構造制御を試みた。 ティング液が基板汎用性を有するような組成 また、コーティング液が基板汎用性を有する 系を調査し、セラミックス基板のみならず実用 ような組成系を調査し、セラミックス基板のみ 上重要な金属基板上へのMC薄膜の作製および ならず実用上重要な金属基板上へのMC薄膜の メソ構造の制御を試みた。 作製を試みた。 ブロック共重合体としてポリスチレン-b-ポ 概 要 リ(4-ビニルピリジン) (PS-P4VP) 、炭素源と メソポーラスカーボン(MC)は、材料由来の してレゾルシノール、疎水成分調節剤として 高電気伝導性、高耐薬品性と構造由来の高比 ポリスチレン(PS)および1,3,5-トリメチルベン 表面積、優れた流体輸送特性を併せ持つ機能 ゼン(TMB)を用いた。これらを溶媒であるジ 性材料である。MC材料薄膜化およびその応用 メチルホルムアミド(DMF)またはテトラヒドロ に関して多くの研究が行われてきおり、電気二 フラン(THF)に溶解しコーティング液を得た。 重層キャパシタやガスセンサー等の電極材料へ 4VPブロックのピリジン環上の窒素原子とレゾ の応用が期待されている。これまでMC薄膜の ルシノールが水素結合を介して親水部を形成 作製にはシリカナノ粒子等を鋳型に用いたハー する一方でPSブロックおよび疎水性添加物が ドテンプレート法が広く用いられてきた。一方 疎水部を形成する。前駆体溶液を種々の基板 で、ブロッコポリマーのミクロ相分離を利用し 上にスピンコートした後、ホルムアルデヒド暴 たソフトテンプレート法によるMC薄膜の作製 露を経て、不活性雰囲気で熱処理することで 法が近年注目を集めている。ハードテンプレー MC薄膜を得た。熱処理の過程で親水部はカー ト法では細孔の形状・サイズの制御に種々の ボン化され疎水部は炭化水素として除去され サイズ・形状を有する鋳型粒子が必要である るため、分相構造を反映した多孔質カーボン ─ 469 ─ Annual Report No.27 2013 が形成する。コーティング液の液性は疎水性 成分の有無に大きく依存し、極めて少量の疎 水性分子添加によって基板表面濡れ性は大き く変化する。PS-4VPを用いたレゾルシノール− ホルムアルデヒド(RF)ゲル膜を作製する際に は、溶媒としてDMFが用いられてきた。一方で、 疎水性添加物共存系で D M F 溶媒を用いた場 合、dewetting現象が生じるため基板汎用性が 失われる。そこで、dewetting現象を抑制するた めに比較的高蒸気圧を有しかつ出発原料との 混和性の高いTHFを溶媒として利用した。THF を溶媒として用いることで、各種セラミックス 基板および金属基板への成膜が可能となる。 適切な量のTMBもしくはPSを添加すること でブロックコポリマーの相分離形態を制御す ることが可能であり、それに伴い種々の細孔 特性を有するMCが形成した。低分子である TMBを添加した場合には、メソ細孔形状を維 持した上で細孔径が変化し、平均細孔径は10 nmから25 nmの範囲で制御可能であった。一 方で、PSを添加した場合にはその分子間相互 作用によりMCの形状はダイナミックに変化し、 繊維状構造や粒子凝集構造が形成した。これ ら各種MC薄膜は用途(対象分子/イオン)に 応じた多孔構造の使い分けを可能にする。ま た、接触角試験の結果、得られたMC膜の接触 角はナノ構造に応じて変化し極めて親水性の 高い表面構造の創成が可能であることが明ら かになった。一般的にカーボン系材料は疎水 性であるため、水溶液反応場においてナノレベ ルの細孔・分子レベルの細孔を有効に活用す ることは容易ではない。一方で、本研究で得 られたMC薄膜は特殊な表面処理を要すること なく親水性表面を実現することが可能であるた め、金属基板上への成膜が可能であることと 併せて、電極・センシングを始めとした電気化 学的応用に適すると考えられる。 ─ 470 ─ −以下割愛−
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