二硫化炭素中毒に関する実験的研究 (2)

(
6
4
5
)
(
2
)
二硫化炭素中毒に関する実験的研究
二硫化茨素の吸入による臓器組織への吸牧
i
主分配及びその排、准に関する実験的研究
慶応義塾大学衛生学公衆衛生学教室(原島準教授)
草 野 弘
STUDIES O NPHYSIOLOGICACTIONOF CARBON
DISULFIDEVAPOR Part2
.
DistributionandElimination of CS.in
Tissues o
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BY
HiromuKUSANO
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.
ウサギの吸入実験で体内に吸牧された CS
2 が;呼気及び尿から体外に排推される量は僅か
1
5乃 至 20%
であることを明らかにし残りの 7
0乃至.80%が体内に残習するか, または代謝
され,分解物の一部は尿にお閉止されるであろう事を,著者はさきに報告した九
2) 外山 3
体内に吸牧された CS
r
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j
e
k
) 小ヰが等の研究
2 が各臓器組織に分配されることは , K
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m
a
t
t
e
r等勺の放射能を与えた CS2 の生体実験と .McKee~)
があるが,代謝については S
(
臼6
)
等の CS
2 吸牧者の尿中無機硫酸塩量の検討がある程度で,未だにその代謝の本態は明らかに
されていなし、。著者は体内に吸牧された CS
2 が主要臓器に対して分配される量を測定し,且
つまた,臓器に吸牧された CS
2
2 が時聞の経過に従って如何に変化してゆくか,すなわち CS
の排池ないし解毒の早さを実験的に追究する事により CS
2 中毒の機序の一端を解明する目的
で次の二つの実験を行った。
第 1実験として,さきに報告した吸入試験1)に用いたウサギの主要臓器中の CS
l 吸牧量を
測定して各臓器に分配された量を比較すると共に,第 2実験としてハツカネズミに CS
2 を吸
入させた後,臓器に吸牧した CS
2 量の時間的変化を実測した。
実験方法
1
. 吸入試験に用いたウサギ 5匹を CS
時聞にして呼気の CS
2 ガス吸入停止後 2-3
2 排池
が終った時盟に心臓穿刺により失血死させその採血金量を用いて CS
2 量を測定すると共に,
0cc の
主要臓器を摘出して速かに CS
2 を定量した。臓器は冷却した乳鉢で、軽く磨砕し約 3
水を加えて, McKeeの通気瓶7)に
移
1
.
, 9
00C の恒温槽中に於て一時間通気してヂヱーチル・
アミン法1)により臓器中の Cらを比色定量した。
2
.
3群にわけで,図 1の
装置を用いてそれぞれ 6
0
p
.
p
.
m
.の CS
2 ガス
を 2時間, 1
0
0
p
.
p
.
m
. を 3時間, 3
5
0
p
.
p
.
m
.
を 2時間吸入させ,吸入停止直後から数時間毎
比較的体重の揃った平均 25g のハツカネズミ 75~ を 25 匹づ~
図 1 動物ガス吸入装置
注量孟
主
主
主5
a
.
愈盆払盛ム
"A;
滞l
支持唾mr.
にそれぞれ 1固に
4-8匹づ与の脳,肝及び腎
臓中に含まれる CS
2 を臓器毎に一括して測定
/~\
して 2
2時間に及んだ。従って各時間の測定値
は毎回異った動物についてのものとなったが,
この種の実験にとってやむを得ないことで‘あった。
なお, CS 2 吸入停止後ガス吸入瓶に動物を入れたま
L 新鮮空気を通気しつ ~,
1群としての
吸気に含まれる CS
2 が消失する迄の時聞を記録した。
実験結果
2から 1
8
0
p
.
p
.
m
. の聞で 5段階の濃
ウサギによる吸収試験1) に於てさきに報告した通り, 2
度の CS
2 の排植が終ったとき,すなわちガ
2 ガスをほど 4時間吸入させた後,呼気による CS
スの吸入停止時から大体 3時間後の心臓穿刺による血液中には何れも CS
2 は認められなかっ
た
。
この時期に於ける各ウサギの脳,肝,腎,心肺, 牌及び腎上体についての CS
2 量,及びグ
ラム当りの濃度等は表 1に示すとおりで,臓器グラム当りの CS
2 濃度は脳, 腎上体の如き脂
質含有の多いものが他に比して多い傾向を示した。また吸入による牧支実験1)で得られたこの
時期に於ける体内吸牧 CS
2 量から,仮に体内で CS
2 が分解されずに一様に分配されたとみな
した体重グラム当りの CS
2 濃度を表 L 中に示したが,
この値と各臓器グラム当りの CS
2濃
度と比較すると,各臓器によって異るが何れも両者に著しい差のあることが認められる。すな
わち計算上体内に吸牧された CS
2 濃度は極めて:少ない。これは CS
2 に比して臓器組織 CS
2 が
各臓器組織内に於て代謝作用をうけ,分解した結果と考えることが出来る。
(
6
4
7
)
表 1 呼吸による CS
t 排法修了時に於ける臓器に対する分配(ウサギ)
A
うさぎの言己号
B
C
D
E
(
k
g
)
2
.
6
2
2.52
2
.
4
3
2
.
3
1
2
.
7
4
扱入 C
(
S
p
2
.
p
濃
.m
度
.
)
2
2土 1
6
2士 2
1
5
5土 3
1
6
3土 3
1
8
0土 3
吸 入 時 間(
min)
2
1
4
213
2
4
9
2
5
0
2
6
5
体 内 吸 牧C
S
(
2
μ
霊
g
)
2
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体 重 1 当 Pの
区
民
μ
g
)
吸 入 C>
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.
5
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.
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体
重
。
1
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g
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2
μ濃 度
血液 C
臓
脳肝腎
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器
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回
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肺 1
3.3
牌
腎上体 (
1
)
Wg・・・・・・臓器重量
μ
g
j
g
.
.
...・臓器グラム当 J CS
2濃度
また吸入 CS
2濃度の増すに従って各臓器の CS2濃度も増加しているが肝臓はこの関係が著
明でない。これは肝臓の解毒能の個体差が比較的大きな故と考えられる。
ハツカネズミに 60,100, および 350p.p.m. の CS2を 2-3時間吸入させた後の,
排世期
における臓器 CS2 濃度の時間的変化は表 2
,および図 2
,に示すとおりである。すなわち,吸
入停止後ほど 2時間で呼気による CS2 ;j;j民世が終っていることは,
さきに報告した吸入試験の
ウサギの場合と同様で、あるが,この時期における臓器 C色濃度はまだ比較的高く,
吸入停止
直後の濃度の 60-80%程度である。しかし 6-7時間までの聞に比較的急激な減少を示して,
}
b
それ以後は減少が緩やかとなり,どの群も 20時間に至つでも初めの臓器中の濃度の 20,,-, 40'
の含有率を示している。
また各群とも,脳,腎,肝臓の順序に含有濃度が小さく,且つどの時期においてもこの関係
を保っている。
以上二つの実験から, CS2 は吸入によって脂質含有の多い臓器に比較的多く吸牧し吸入停
止後 2
,
,
,3
時間で、血中及ひー呼気中に排池が終つでも臓器中の CS
2 は比較的高濃度に証明され,
更 に 20時間後に至るも,分解等の代謝機転によって徐々に減少はするが,
完全な消失は認め
られないことが明らかである。
考 按
CS2 は脂i
容性であるため血液に対する分配係数が小さな値を示すことはさきに報告1】したと
おりであるが,その反面ーたん血液に吸収された CS
!iは脂質含有の多い臓器に対しては親和
enderson及び Haggard
りの吸牧理論によっても明らかなことで、
性が大きいということは H
ejek等 2
)はウサギ及びダイコクネズミで 800,,-, 1500μgJ
lの CS2濃度の吸入に
あり,最近Kr
際して, 脂肪組織持に腸間膜脂肪及び皮下脂肪に多量の CS2 が吸牧されることを指摘し,
(臼8
)
表 2 排j
世期に於ける臓器 C
Sz量の時間的変化(ハツカネズミ)
CS2吸 入 条 件 │
60p.p.m. 2時間
100p.p.m. 3時間
350p.p.m. 2時間
呼気排分法
51
終了時間(
塁金書高齢)I
直 後 I4 I
1
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22 I
直後 I
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1
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.
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) I2.
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I
μ
g
)・・・・臓器中の CS
CS
ょ量
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W(g)・・・・臓器の重量
J
札間
図 2 排j
世期に於ける臓器 CS
2量の
時間的変化(ノ、ツカネズミ)
検菩中匂刊日課友
42
.
また神経組織で、は踏,脊髄,末梢神経の順に
1:2:4.5 の比を以って親和性のあることを報
告している。更に排、准に際しでも神経組織から
60p
.
p
.m. 2 時 間 吸 入 札
は 14時間以上を要するとみなしている。また小
林 9 はウサギで脳には筋よりも多量吸牧される
ーすニニてでーーーーてt 土 で ご ニ ニ ー ご と
1
0
I
I
1
4
凶
1
6
20
ことを報告している。著者は脊髄,末梢神経等
伎の
e
j
の CS2 測定はおこなわなかったが,Kr
担
時閉
如
-0----0-
ノ
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骨
一
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.
.
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. IOOp.p.m.3時 間 吸 入 仇 ← + 肝
<
<
1
中
、
、
,
,
CS
J 4
2
1i
-よ一一一一
1
0
慢 性 CS2 中毒の早期診断法として他の他覚的
病状に先んじて四肢筋のクロナキシ戸が増加す
)
10
のや B
ourguingnon
の報告
るという Lewy
1
1
均等の視器の軸性神
amilton
や,久保同 札ヤ H
経炎などが初期症状に挙げられていることから
「一~一一一一一一一二三 7二二ここで二ここここでこここ芋ニー
4
t末梢神経に親和陸が大きいということは,
1
2
ゐ
1
6
4量
1
8
2
0
も同意出来ることである。
22
J
1
寺闇
また CS2 の体内に於ける代謝については,
)
16
McKee
等 が CS2 はアミノ基と結合して他の
S化合物となり,また酸化により無機硫酸塩と
350r
m
.
2埼問吸入イ久
.
r
.
なって尿中より排世されることを報告しており
l
3
5含 む CS2 の
S
t
r
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t
t
m
a
t
t
e
r等}i)は放射性を S
とモルモットに対する実験で,CS2 としてではな
1
0, 1
1
1
4
1
6
・・
2
12
時開
発たての点線は
CSz呼気による排洗終了の時間
3
5が 48時間後に於てもなお臓穏に検知さ
くS
れ,また尿中にも長い期間検出されていること
から,著者の二つの実験の結果と比較的考案し
(
6
4
9
}
CS
zが体内の各臓器でいろいろの程度に分解作用をうけることが明らかであり,またその
0時間後に至るもな
与さはエーテル等に比して緩徐であり紛,遊離の CS
z として主要臓器に 2
て
,
お分解されずに存在することが言い得ると思う。
生体内に於ける
CS2 の分解等の代謝作用はどの臓器に於いて最も盛んに行われるであろう
t
r
i
t
t
m
a
t
t
e
r
均等は S
3
5 が肝に多く脳に少いこと,
か。これについて ,S
も速かであること,
尿中に硫酸塩が増加する事,
叉減量の割合は肝が最
そして尿中の S品は殆んど無機硫酸塩中に
あることから,肝に於ける代謝が速やかでらると云っている。著者の第 1及び第 2の実験結果
で分解されない CS
3
5 の場合と反対広他の臓器に比して肝に少い点,
2 としての臓器濃度は S
肝臓はこの関係
かつ,吸入 CS
z濃度の増加に従って各臓器中 CS
2 濃度も増加しているが,
が著明でない点は肝が他の毒物の主要な解毒個所であると同様に CS
2 の代謝にも最も重要
な役割をしている事を裏書きするものである。
abre等 ゅ の
また吸入停止後 20時間経過しでも臓器中に遊離 CS
2 を検出し得ることは F
CSzの組織からの消失は緩慢であるという事や ,T
e
i
s
i
n
g
e
r等 1
5
)の CS2 を常時吸入するビス
コース・レイヨン工場員が 24時間の休憩後にも尿中に CS
2 を排池するということ等と併せ考
えると,反復
CS2 吸入によって体内に蓄積をおこす可能性のあることが想像され,実際の産
業面に於℃労働医学上潜在性の慢性中毒が存在することを疑わせる。この点について外山等ゅ
は自覚症状のないスフ工場紛讃エの血清コレステリン量が CS
2 を吸入しないものに比して高
い値であることを報告しており,反復吸入による潜在性な生体に対する影響を検討している。
以上綜括すると
CS2 はヱーテルなどと同様血液に対しては難溶性でその分配係数が小さい
)
1
3
)
_,脂質を含む臓器組識に対しては親和性が強く,
にもかかわらず 1
一旦吸牧され宇 CS
2は
徐々に分解されるが,ヱーテルと異り完全な排、准は緩慢で反復吸入により体内に蓄積を起す可
能性があるものと考えられる。
結 論
ウサギに 2
2から
1
8
0
p
.
p
.
mまでの色々な濃度の CS2 を 3
,
.
;
.
,4
時間吸人させた後,及びハツ
0から 3
5
0p.p.m. までの CS 2 を 2~3 時間吸入させた後に,体内に吸牧された
カネズミに 6
CSzが主要臓器にどのように分配されるか,また時間の経過による臓器からの排沼状態を検討
して次の結果を得た。
1
. CS
zは吸入により血液を介して脳,肝,腎,心肺,牌及び腎上体等の主要臓器に分配さ
れp 吸入濃度の増加と共にこれら臓器に吸牧され、る量も;増す。また脂質含有の比較的多い脳及
び腎上体等に特に親和性が大きい傾向を示した。
2
.
CS
2 の排地が終った吸入停止後約 3時間で血中には
CSzが証明されず,また各臓器のグラム当りの CSz濃 度 は 計 算 上 の 体 重 グ ラ ム 当 り の 平 均
ウサギの笑験に於て,呼気によ~
CSz濃度にくらべて低ぐ,また吸入停止後 2
.
.
.
.
.
.
4時聞に於けるハツカネズミの臓器 CSz濃度は
吸入停止直後の臓器 C色 濃 度 の 6
08
0%の値を示してその後漸次下降する,等のことから,
吸牧された C
S2 が臓器で分解等の代謝作用をうけることが明らかである。
",
3
. 更にハツカネズミでは 6
.
.
.
.
.
.
7時間後迄比較的急速に臓器内で減少して, その後緩やかと
なり 20時間後に至るも完全な消失が認められない。すなわち臓器における分解または排池は
比較的緩慢である。
4
. ウサギの肝臓中に含まれた CSzの値が比較的不定で、あることは S
t
r
i
t
t
m
a
t
i
e
r等 の 放
(
6
5
0
)
射性 S
3
5を含む CS2 による実験から考察して,
肝臓の CS
2 代謝能がこれらの臓穆の中で最
も活躍であると推定することが出来ると思う。
5
. 以上をさきに述べたウサギによる吸入実験1) で得られた知見と総合すると, CS2 は血液
に対して難溶性で,吸入による分配係数は小さいにもかかわらず,脂質を含む臓器組織に親和
i
的に吸牧され,臓器における分解または排世は緩慢で反復吸入により蓄積を起す可能性あるこ
とを推察せしめる。またこのことは実際の産業上とくに C
S
:を多量に用いる・ビスコ{ス・レイ
ヨン工業の受働衛生上重要な問題で、あると考える。
終 Pに臨み御指導と御投開を受げた原島主主教授並びに外山敏夫助教授に深謝する。
本研究の費舟の一部は昭和 27 年度労働省試験研究補助費及び日本化学繊維協会の研究費によったこと~
記して,謝意を表す。
文 献
1
) 草 野 弘 : 二硫化炭素の吸入と排法の l
政支に関する実験的研究.労働科学に掲載予定
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)外山敏夫,草野弘:二硫化炭素中毒の実験的研究(第 1報),呼気,血液及び臓器中。二硫化炭素
の測定,労働科学2:7, 1
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) 小 林 治 一 郎 : 二硫化炭素の吸入排法及び体内分布に関する実験的研究,国民衛生 2
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9,228
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) 外山敏夫,模井勤: 二硫化炭素吸入による血清ヨレステJ);y量の変化,労働科学 2
リ