急性心不全

2回
第
本連載では,循環器ナースとして
連 載
おさえておきたい疾患を取り上げ,
病態生理の面から解説していきま
す。キーワードは「基本からしっか
企画編集
急性心不全
原田智雄(聖マリアンナ医科大学病院 循環器内科 病院教授,ハートセンター長)
りと」
「わかりやすく」! ナース力
UP を目指して,頑張りましょう!
いては次回解説したいと思います。
まずは,急性心不全の病態を 5 つのシナリオ
に分けて説明してみましょう(
図1
CS1
肺水腫
)
。
クリニカルシナリオ 1(CS1)
140mmHg
以上
救命外来受診時の収縮期血圧が 140mmHg
以上で,心原性肺水腫になるパターンです。何
かを契機に,交感神経の興奮により急速な血管
2回
第
収縮(静脈収縮による前負荷〔静脈還流量;心
急性心不全
執筆
木田圭亮(聖マリアンナ医科大学病院
臓に戻ってくる血液の量〕の増大と動脈収縮に
よる後負荷〔末梢血管抵抗;全身への血液の出
CS2
体液貯留
CS3
低灌流
100∼
140mmHg
100mmHg
未満
やすさ〕の増大)を起こすと,血液のセントラ
ルシフト(心肺に血液が集まること)により肺
うっ血をきたします。
循環器内科 講師)
CS4
急性冠症候群
CS5
右心不全
特徴としては,急激に発症し,急性の左室充
満圧の上昇によりびまん性肺水腫となります。
図 1 クリニカルシナリオ
急性心不全による入院の多くは,これらの肺水
腫に伴う呼吸困難(起座呼吸など)や低酸素血
症が原因です。「Vascular failure」とも呼ばれ,
クリニカルシナリオ 4(CS4)
左室駆出率は保持されていることが多いです
急性冠症候群によるものです(詳細は第 8 回,
が,拡張機能が低下しており,高血圧と動脈硬
第 9 回をお楽しみに!)。
化が発生に関連しています。
クリニカルシナリオ 5(CS5)
クリニカルシナリオ 2(CS2)
右室不全による急性心不全です。肺高血圧ま
救 命 外 来 受 診 時 の 収 縮 期 血 圧 が 100 〜
たは右室梗塞により発症し,三尖弁逆流を呈し
140mmHg で,体液貯留になるパターンです。
ます。通常肺うっ血は認めず,左心系は低灌流
肺うっ血よりも全身浮腫が優位であり,慢性心
を呈します。
不全の状態を呈します。
この病態による心不全は他の病態による心不
ケアのポイントについて,後半は「慢性心不全」ということで,退院前後の心不全管理,終
特徴として,腎機能障害,貧血,低アルブミ
全と管理が異なるため,別のシナリオに分類さ
末期の緩和ケアのポイントについて解説します。
ン血症など種々の臓器障害を合併しています。
れています。
急性心不全とは
急性心不全とは,慢性心不全の急性増悪もしくは新規発症により起こり,症状や徴候だけで
はなく,病態や原因疾患もさまざまで,迅速な診断とそれぞれに合わせた治療や管理が必要
な病気です。キーワードは「臓器うっ血」と「低心拍出」
(LOS)で,この 2 つを常に意識
した薬物治療と非薬物療法をチーム医療で行います。
これから 2 回にわたり,心不全について解説したいと思います。前半は「急性心不全」とい
うことで,入院前の救急外来から集中治療室での集中管理を中心とした心不全の診断・治療・
クリニカルシナリオ 3(CS3)
1
救命外来受診時の収縮期血圧が 100mmHg
発生機序
なぜ急性心不全になる?
2
・
が慢性心不全の急性増悪とされ,欧米のデータ
(新規発症は約 20 〜 40%)と比較して,新規
日 本 の デ ー タ で は, 急 性 心 不 全 の う ち 約
の心不全入院が多いのが特徴です 。欧米は心
60%が新規発症の急性心不全であり,約 40%
不全の再入院が多いともいえますが,それにつ
2015/7 Vol.5 No.7
どのような原因で心不全になる?
未満で,低心拍出症候群になるパターンです。
急性心不全はさまざまな心疾患により発症し
低灌流の徴候が優位であり,肺うっ血,全身浮
ます。その原因疾患は何か,そして,この原因
腫ともにあまりみられません。
疾患のもとで発症した増悪因子は何かを迅速に
特徴として,多くの患者は進行した終末期心
見極めることがポイントとなります(
表1
)。
不全の状態を呈します。
1)
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3